第二十四話 長い学際・・って学際関係無いじゃん!
ドンッという突然の衝撃で、部屋が揺れ天井からぶら下がるライトは、左右に揺れる。
「くそっ・・・何だってんだ。・・上の階ではすでに始まっているというのか?」
「そんな馬鹿な。ここを通らないと上の階には、行けないんだ。どうやって行ったってんだよ」
あぁだこうだと騒ぎ始める但馬組の人達。
そして、そのざわついた部屋に、何のためらいもなく入ってきた三島を見てざわつきが一気にやんだ。
「あの〜・・・すみません。俺の友達が、ここに迷い込んでないっすかね?」
無造作に伸びた髪をいじくり、最近散髪してないな〜なんて思う三島。
「よぉ、元。会いたかったぞ」
声の主の方を見ると、その人の周りにいた人達は、彼のために道をあける。
そして、彼らが作った道を堂々と歩く但馬。
「ども・・・但馬さんご本人が登場するなんて珍しいですね」
「いや、お前が来るって言うなら直に会わないとな」
「で?・・・但馬さん、あんた一体何やらかしたか、わかってんの?」
三島のその言葉を聞き、懐から銃を取り出し、三島に向けて撃つマネ事をして見せる但馬
「あのガマガエルの事か?・・・もちろん、これで俺達がこの街を大手を振って歩けるってもんだ」
「そう・・・その言葉を聞いて、安心した」
「あん?」
お前等全員を殺す大義名分が出来た。
口で言ったのか、それとも心の中で言ったのか・・それはわからない。
ただ、気がつけば三島は、握った拳を振りかざし、目の前に立つ但馬に向かって飛びかかっていた。
その事に気付いた若い衆は、飛びかかろうとする三島に、一斉に飛びかかり取り押さえようとするが、目の前にいたはずの三島は姿を消し、周りをどんなに見渡しても三島の姿はどこにもなかった。
目の前にいた但馬の顔面めがけて放った一撃は、空を切り気付けば、小さな薄暗い部屋に三島一人立っていた。
「くそっ!こんな時に・・・」
足元を見ると、但馬組の奴らが仁王立ちしているのが見える。
『ここで壊れたものは、すべて壊れる。それは人間でも例外ではないわ・・・』
過去の仙田が、三島に話しかけてくる。
「・・いや、やらないし」
なんて、過去の仙田を三島は軽くあしらう。
「・・・・ん?」
足元に描かれた絵がいつもとは違う事に気付き、床を見つめる三島。
これまでの絵は、写真のように鮮明な模様が描かれているはずなのだが、今回の絵は鮮明なのは変わりないのだが・・
「・・動いてる」
三島の足元では、三島が目の前から消えてなくなった事に慌てふためく但馬の連中が、床で動き回っていた。
「・・・まったく、なんで生徒に自分の過去を話そうとするかな、親父さんは・・」
見回りという名目で、田村の親父と先生とで廊下をウロウロと繰り返す。
「いいじゃないか、過去があってこその今の自分だ。自分の過去を笑い話のように出来るようになれたら、お前はもう一人前だ」
「一人前って・・俺そろそろ三十路ですよ。まだ親父さんにとって俺は、半人前なんですか?」
「さぁな・・・でも、元をあそこから引きずり戻して来た時は立派だったと・・」
続きを言おうとする親父さんの携帯が震えだし、着信画面を見て強面の顔をまた更に、しかめる親父さん。
急ぎ電話に出て、電話越しに慌てふためく声が漏れるのを聞いて、嫌な空気を感じ取る先生。
「・・・わかった。すぐに行く、一応警察にも連絡しておけ・・そこに元はいるか?・・・そうか、わかった。いや、あいつの事だ。またどっかに出かけてんだろ」
「・・・三島に何かあったんですか?」
電話を切ると同時に、進行方向を変えて歩き出す親父さんを引きとめる先生。
「いや・・まだわからん。・・・とにかく、俺はあいつのアパートに向かう」
そう言うと再び歩き出す親父さん
「俺も行きます!」
そう言って親父さんについてこうとする先生を「駄目だっ!」とその一言で、先生の足を止めた。
「どうしてですかっ!俺は、あいつの担任です。・・・いつまでも、俺を半人前扱いしないでください!」
「だから、お前は半人前なんだ!・・・元一人だけが、お前の担任なのか!・・違うだろっ!」
その言葉に反論も出来ず黙りこむ先生。「詳しい事がわかったら連絡する」そう言ってその場から立ち去る親父さん。
「・・・何か今、熊の鳴き声みたいなの聞こえなかった?」
「えっ?・・う〜ん、多分聞こえなかったと思う」
三島のクラスのクレープを教室で食べながら「田村だ」「横の奴誰?」「美野様だ」「横にいるの誰?」そんな熱い視線に全く気付かずに田村に至っては、親父さんの声に反応する始末。
「わかった。座敷わらしだ!・・俺にしかきっと見えないんだぁ!」
「「んな訳、あるかーー!!」」
発狂する一人の男子に、二人係でエレボーを食らわす女子を横目にクレープを食べる二人。
「えっ?二人にも見えてるの?・・なに、霊感でも」
再び話を続けようとする男子に止めを刺す二人。
「まったく、何考えてんだろ。ここの男子は・・」
「これで何人目だっけ」
「知らない」
ぐったりとした男子を引きずるように、裏方へと消えて行く女子二人。
そして、女子が裏方に消える瞬間、裏方から一瞬だけ意識を失った男子共の山が見えた。
「やっぱり、元気がいいね。ここのクラスは」
なんて満面の笑みを浮かべる仙田。
「いやいや、あの死体の山を見てそんな事言える千尋ってちょっと尊敬しちゃうわ・・」
「えっ?そうかな・・・元気があるのっていいと思うよ」
「いや、だからあの死体の山・・・まぁいいわ」
そう言って再び、大きなクレープに噛みつき始める田村。
そして、心の中で仙田に話しかけてくる仙田と会話を始める仙田。
『ちょっと、ヤバイ事になったかも』
・・ヤバイ事って?
『わからない。どうなってるのかな?』
何かあったの?
『よくわからないんだけど、・・・元の気配が消えた』
えっ?・・・消えた・・何それ
『だからわからないって・・』
それって向こうの世界に飛ばされたって事?
『・・・だとしても、すぐにこっちの世界に戻されてるはずよ。時系列が違うんだから・・・一番あり得るのは・・死ん』
嫌!言わないでっ!
『でも・・』
三島君は、大丈夫なの!絶対に戻ってくるもん!
「くそっ、あのオカルトの野郎だ!」
数人が急ぎ階段を上り、長い廊下を駆け抜け扉を蹴破り、部屋の中を見渡すがそこにいたはずの錬金術師の姿はどこにもなかった。
「どこに行きやがった!」
「探せ!まだこの建物内にいるはずだ」
そう言って部屋のあちこちを探している人達の床では、錬金術師と魔術師の戦いが行われていた。
ウッソが部屋一面に散らばる紋章の一つに持っている杖で指すとその紋章は、突如光り出しその紋章に描かれた術が発動し、伊吹に襲いかかる。
「くそっ、今度は矢かよ」
伊吹に襲いかかる無数の矢の雨を何とかかわし、かわしきれなかった矢を伊吹は右手で払いのける。
向こうの攻撃も止み、反撃に移ろうと伊吹はライターを取り出し火を灯そうとするが、ライターからは、ガスも火花も出ることはなかった。
「くそ、さっきから一体どうなってやがる」
「無駄だ。この世界は、俺の作りだした世界だ。ここに存在するものすべてが、俺の味方になる」
ウッソの声に気付き、伊吹が顔を上げると大量の瓦礫が襲いかかってきていた。
伊吹は右手を前に出し、飛んでくる瓦礫を目の前で止め逆にはじき返した。
伊吹の予想外の反撃に驚き、ウッソは杖を使って瓦礫を消した。
「なるほど、道理でここで吸う空気が不味いと思った訳だ」
「・・そんなジョークを言えるほど君は余裕ってことかな。少々、君を舐めてかかっていた」
「期待を裏切れてうれしいよ」
なんて笑って見せる伊吹だが、かなり苦戦していた。
ベルも鳴らないうちに、この世界につれてこられ、術を使おうとしてもここでは、ライターも土も使えない。
だが、向こうはそんな事もなくバンバン術を使ってくる。
伊吹に出来る事は、飛んでくる攻撃を防ぐだけ
次第に体力も残り少なくなってきていた。
「くそったれ・・・やっぱホームってのは有利なんだな」
「そうだな・・・アウェーで戦うのはやはりつらいか」
「どうかな、相手にもよるな・・・だが、お前みたいな奴との相手だったら正直つらいかも」
「・・・お前は何のために戦っている。つらいのなら止めてしまえばいいのに」
「そうだな・・・こんな戦い止めちまったらどんなに楽なんだろうな・・でも、俺はやめねぇ。その理由はきっとお前と同じはずだ」
「・・同じか・・」
「魔術も今は衰退している・・・それは俺の地元でもそうだった。」
山々に囲まれた小さな村で、周りから異端な物と嫌な眼で見られるあの目線を思い出す伊吹。
「そうか・・お前も血族に投げ出された身か・・」
「もしかして、初めて俺の苦しみを共有できる奴に会えたのかもな」
互いに似た境遇だという事に気付き、笑みもこぼれる。
「だが、戦いは戦いだ。俺は自分の今の居場所を守るために戦う」
「自分の居場所だと・・」
「そうだ。・・ここが俺の場所だ」
ウッソの言葉に、伊吹は拳を強く握る。
「だったら・・・なんで俺の居場所を奪った」
「・・・お前の居場所を奪ったつもりはない」
「とぼけるなっ!毒島さんを殺しておいてなに寝ぼけてやがる!」
「違う!あれは俺の居場所を確保するために、仕方なく・・・」
「自分の居場所を確保するために、人の居場所を奪う権限なんて錬金術にはあるって言うのかよ!」
「黙れ!錬金術を侮辱するな」
「・・・お互い同じだな」
「何がだ」
「この街に来て・・居場所を探して俺は偶然、毒島さんに拾われた。そしてお前は但馬に拾われた。・・・力がある者と力を求めるものは引かれあう。俺とお前は逆の立場たったことだって、ありえたんだ」
「そうだ。俺達は、決して人柄でもなんでもなく、その力を利用しようと考えた者たちが、俺達に居場所を与えてくれる。だが、俺達はそれを拒むことはできない」
「そして、お前は俺の居場所を奪った。・・・その行為はどんな理由があろうと許す事はできねぇ」
「こんな事にならなければ・・どっかで楽しく会話してたのかもな俺達・・」
「あぁ・・そうだな」
そう言うと、二人は再び戦いを始めようと構える。
「今度こそ、終わりにさせてもらう!魔術師」
「それはこっちのセリフだ。錬金術師!・・こっからは攻めに転じさせてもらう」
「馬鹿な事を・・無駄に決まっているだろ」
そう言いながら杖を振るい伊吹にめがけて石つぶてが飛んでいくが、伊吹の周りに見えない壁が出来上がり、つぶては伊吹に届く事なく地面に落ちた。
「くそっ結界か・・・魔術師め・・魔術に結界は存在しないぞ」
「それは、お前だって同じだ。杖は本来、魔術に使用されるものだ」
そう言うと伊吹は、右腕の袖をまくりあげ、無数に刻まれた紋章の一つに左手をかざし、術を唱え始める。
伊吹の痛々しい刺青を見て思わず息をのむウッソ
「・・・互いに身を削る覚悟ってことか・・」
杖を自分の額に近づけ、術を唱え始めるすると自分の足元に大きな円が広がり、その円の中に杖で素早く術を書き始める。
『我と契約せし炎の聖霊よ 我の力と成り剣と成りて姿を表せ』
『紋章よ 我の思考に基づきその姿を我の前に表せ』
伊吹の右手には、炎に包まれた剣が現れ、ウッソの目の前には巨大な大砲が現れた。
「召還完了・・燃やす尽くせ!焼き尽くせ!」
「創造完了・・弾薬を装填、目標物をなぎ払え!」
伊吹が剣を振り下ろし、それと同時にウッソは上にあげていた杖を振り下ろす。
伊吹の振り下ろした剣からは赤い斬撃が飛び、ウッソの合図で放たれた弾はその赤い斬撃へと飛んでいく。
周りの状況を確認し終わり、再びビルの中へと入ってきた三島の体に大きな衝撃が走りぬける。
「な、なんだ・・伊吹か?」
大きな衝撃は、次第に止み動けるようになった三島は、階段を上り、先ほどの部屋を通りずぎ長い通路の先にある扉を開いた。
「伊吹っ!」
「・・よぉ、生きてたか・・ちょっと待ってろ。こっちもこれで終わる」
三島の目に飛び込んできた光景は、両膝をつく一人の男に伊吹が、炎を纏った剣を彼の喉に突き立てている所だった。
「待て、待て!伊吹、殺すな」
「なにを言っている。こいつを殺さないと元の世界には戻れない」
「そうかもしれない。だが、こいつにだって降伏する意思だってあるだろ」
「違う、そうじゃない。お前、この世界はいつもの世界だと勘違いしてないか?」
「・・・・違うのか?」
「そうだ。こいつが作り出した世界だ・・・」
「だったら、こいつが解除すれば元の世界に戻れるんじゃ・・・」
「解除する方法は、こいつを殺さないといけないらしい・・・」
「そんな・・・・」
落胆の色を隠せない三島を見て「すまない」と小さくつぶやくウッソ。
「わかったろ・・・お前は見ない方がいいんじゃないのか?」
「わかった・・・でも、まだ殺すな。今向こうの世界で、かなりヤバイ状況になっている」
「と言うと?」
「警察が乗り込んでくる・・・」
「そんな馬鹿な」
「嘘じゃねぇよ。・・・若菜達だ。出入り口は全部、抑えられてる。だから、この建物の外に出てから・・・くそっ本当に殺すしかないのかよ」
悔しがる三島。そして、ウッソはゆっくりと立ち上がろうとするがそれに気付いた伊吹が、「動くな」そう言ってまた更に剣を首に近づけた。
「違う、俺にはもぅ反撃できるほどの力は残っていない。そして少年の言う通りだ。とにかく、場所を移そう」
そう言って再び立とうとするウッソを剣で妨害した。
「誰が、三島の意見に乗ると言った?・・・三島、お前は先にこの建物から出ておけ。後から俺も行く」
「え・・・でも」
「いいから・・そうだな、建物から出た事を確認したいから・・窓の向かいのビルの屋上に行け。」
「いや、そうじゃなくて・・他の方法を」
「早くしろ!じゃないと、こいつが死ぬ所を目にしちまうぞ。・・それに発狂したお前を無傷で止めれる自信は俺にはねぇ」
「・・・・・くそっ!」
そう言って三島は、振り返りもせずに部屋から立ち去った。
「・・・伊吹、お前は優しいんだな」
「・・言われた事ねぇよ。そんなの・・」
「そんなお前に頼みがあるんだ・・・錬金術師から魔術師への頼み事だ」
駆け足で何段も飛ばしながら上る階段は、まるで永遠に続くようで、ぐるぐると曲っても同じ風景が目に飛び込んでくる。
そして、変わる物と言えば自分の息遣い。なぜ急いで上がっているのかは分からないが、次第に息も上がってくる。
駄目・・もう無理・・そう思って足を止めようとした時、変わらなかった風景が変わり、目の前には屋上に続く扉が現れた。
ドアノブを握り、扉を押すとそこにはさっきまで向こうの部屋にいたはずの伊吹が立っていた。
「おせぇーよ。」
「えっ?なんで・・」
「俺は、向こうのビルから飛び移ってきた」
「へぇ〜なるほど、便利だね魔法使いって・・ってじゃない!錬金術師は?・・まさか殺したのか・・でも、まだ戻ってないぞ」
「あぁ・・大丈夫だ。そろそろ戻る」
伊吹はそう言いながら向かいのビルに合図を送る。
合図を送った方向を見ると、先ほどの錬金術師が立っていた。
「えっ?・・・なんで・・」
「つまり、あいつに死の予定があれば、俺達は元の世界に戻れるって訳だ」
「死の予定?」
「あいつから血液を採取した・・・」
伊吹が取り出した小さな瓶の中には揺れ動く赤い液体が入っていた。
「これを奪って割ろうとしても駄目だぞ。もぅ術は発動している。・・あいつの目の前で発動した」
そんな説明をしているうちに三島達は、元の世界に戻ってきた。
そして、向かいのビルにはウッソの姿もあった。
「あいつが、俺に覚悟を決めて合図を出したら俺は、あいつを殺す。」
「どうして、そんな残酷な事が出来るんだ!・・俺だったらもっと・・」
「お前だったらどうやって殺した。武器もなしでどうやって殺すんだ。撲殺か?圧殺か?絞殺か?どれもろくな殺し方じゃないと思うが」
「そうじゃなくて!」
「あいつの頼み事なんだよ・・」
「頼み事?」
「最後に但馬組の奴等に会ってから死にたいってさ・・・」
「これだけでいいのか?」
「あぁ、血液さえ手に入れば、そこから魔術では色々とする事が出来る」
ウッソの腕から血を抜き取った後、伊吹は右腕の紋章の一つに血液を垂らし術を唱える。
「・・・よし、終わりだ。」
「頼み事を聞いてくれてありがとうな」
袖を元に戻す伊吹にお礼を言うウッソ
「いいさ・・このぐらい」
「そのついでに、もう一つ頼み事があるんだけど・・・それは別に叶えてくれなくても構わない」
「一応、聞いてやるよ」
「頼む・・・俺の血を使って錬金術師を全員殺してくれ・・・」
ウッソの言葉に驚く事もなく、深くため息を漏らす伊吹。
「気持ちはわからんでもない。けど、俺に大量殺戮兵器になれって言うのかお前は・・」
「冗談だよ・・・忘れてくれ・・・」
ウッソは、長い廊下をゆっくりと歩き、最後となる自分の居場所をしっかりと目に焼き付けていた。
これから死にに行く・・そう考えても気を取り乱す事もなくやけに落ち着いていた。
それはもしかしたら、実際に死ぬ事についてあまり考えないようにしているのかもしれない。
誰だって死ぬ事に恐怖を抱く事はある。けど、実際に死ぬ時。それは一瞬の出来事なのだから死ぬ事について考える事は出来ない。
今は恐らくそんな状態なのだろうか・・・けど残り数分の命、後悔はしたくない。
但馬達が待つ部屋への扉を開くとそこにはたくさんの仲間がいた。
「・・・三島をどこにやった」
「三島?・・・一体何の事だ」
「とぼけるな!オカルト野郎っ、三島をどこにやったって聞いてんだよ」
「俺が会ったのは、伊吹と名乗る奴と子供だけだ」
「その子供が三島なんだよ。ボケっ!」
「まさか・・その子供をおびき出す為にこんな人数を揃えて、俺にあんな事をさせたのか」
机に腰をかける但馬に問いかけるウッソ
「・・・いや、俺達はここの土地を手にすることが一番の目的だったが、サイドメニューにあいつをついでに殺す事も含まれていたんだよ」
「そんな事はさせない。彼はまだ子供だ・・・未来を担う種子を摘む事は許されない事だ」
「やはり、お前が三島をどこかに飛ばしたんだな」
但馬はウッソに銃を向け、周りにいた奴等もウッソへ銃を向ける。
無意識のうちに両手を上げるウッソ。だがとにかく、周りに警察がいる事を伝えなくては・・
「・・・あぁ、確かに俺が少年を遠くへ飛ばした。だが、聞いてくれ・・今周りには」
「黙れ」
但馬は、小さくそう呟くとウッソに向けて引き金を引いた。
乾いた発砲音が部屋の中を飛び回り、但馬の銃声を合図に、周りの奴等も一斉にウッソに向けて撃った。
スモークのかかった部屋からはフラッシュが焚かれ、光しか見えないが「死んだ」伊吹が悔しがるようにそう呟くのを聞き、なにが起こっているのか大体検討がついた。
「くそーーっ!!但馬の野郎っ・・・俺達は・・俺達は都合のいい道具なのかよ!・・あいつは・・ウッソは、お前の事を信用してたって言うのに・・・そんなの・・あんまりじゃねぇかょ」
手すりに掴まりながら崩れおちた伊吹はなにかが、頭の中で切れたのだろう突如「燃やしてやる」そう言って立ち上がり術を唱え始める。
「よせ、伊吹っ!」
「邪魔をするな・・・あいつ等は俺が殺さねぇと気が済まねぇ」
「違う、そうじゃない。お前が手を汚す事はないよ・・あんな奴等のために」
三島は、そう言いながら顎である場所を指し示す。
その指し示した方向にいたのは、刑事達だった。
裏口や正面から数名の刑事達が入って行く所が見えた。
「クズにはクズで仕返しをしなくちゃ・・・」
そんな事を言う三島の目からは怒りと、それよりも多く復讐心が映し出されていた。
「お前等、全員動くな!」
そう言って警察が銃を構えながら但馬達がいる部屋へと侵入していく。
それに反応し、但馬達は手に持つ銃を警察に向けた。
「銃をおろせ!これは警告だ」
だが、但馬組の奴等も銃をおろす事はなく、硬直状態が続き、銃を構える新米の刑事は、部屋の隅でダラリと横たわるウッソを発見する。
「若菜さん・・・あれ・・」
目で指す方向を見ると若菜にもウッソの死体を目にする
「お前等、一体何やってん・・」
続きを言おうとする若菜の言葉を遮るように、窓ガラスの一枚が、音を立てながら割れた。
「くそぉっ!」
窓ガラスが割れる音が合図となり、銃撃戦が始まった。
互いに物陰に潜み腕だけを出して敵の方へ向って銃を撃ちまくる。
定年をあと数年に迎えようとする若菜は、ソファーに身を潜め弾を込める途中、横をコロコロと転がるボールを目にする。
「くそっ・・・誰が仕込みやがった」
弾を詰め終わると腕と頭を半分だけだし、一人に標準を合わせ引き金を引く。弾は左肩を貫通し、後ろの窓ガラスと弾を食らった人を崩した。
「ヘッ・・ざまぁ・・」
再びソファーに身を潜める若菜の横に一人の警官が倒れこんできた。
そして、倒れこんできた警官を見て若菜は、思わず目を疑った・・・
窓ガラスが大量に割れ始め、銃声が周りに聞こえるようになっていた頃、三島と伊吹はまだ屋上にいた。
「・・・これで俺達は、手をつけないで傷も負わないで奴等をつぶす事が出来る」
ボールを手の上で転がしながら三島はそう呟く。
「・・これでいいだろ。伊吹・・・ガマさんとウッソとか言う錬金術師への弔いは・・」
「あぁ・・・あいつ等にもちゃんと報告が出来るよ・・・けど、三島・・お前って結構残酷だな」
「・・・よく言われる」
屋上から下を見下ろすと、警察の応援と但馬組の応援が鉢合わせになり、またしても再びそこで銃撃戦が始まっていた。
「・・本当に、これでよかったんだよな?」
屋上から見下ろす光景を見ながら、三島は伊吹にそう尋ねた。
「さぁな・・・でも、俺達の目的はどんな内容であれ達成された。・・・ありがとな、三島」
「・・・お礼なんてもらいたくもねぇよ」
「そうだろうな・・・弔い合戦なんて、誰も浮かばれねぇよ・・」
伊吹はそう言うとビルを飛び移り、その場から立ち去った。
「元っ!」
屋上で銃撃戦が止むのを待っていた三島の目の前にあらあれたのは血相を変えた仙田だった。
「どうした?・・・そんなに慌てて・・」
「そりゃ、あんたの気配が突然消えて・・まぁそれは良しとして・・・大変なの」
「この下で行われてる事よりか?」
「世間一般は、こっちの方が大変かもしれないけど、あんたにとってかなり大変な事よ・・」
「なにがあった・・」
「あんたの家が・・・・」
続きを聞いた三島は、急ぎ自分のアパートへと向かって行った。




