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第二十三話 楽しい学際・・・?

「はぁ?・・嘘っ・・ガマガエルのおっさんが・・なんで?」

伊吹はポケットから煙草を取り出し、火をつけようとするが、その前に三島がとりあげた。

「あっ、てめぇ・・決まってんだろ。あの土地を欲しがってる奴って言ったらわかるだろ?」

「・・但馬・・組?」

「十中八九、間違いないだろうよ。・・でも、証拠は絶対に出てこないさ・・」

「どうして、そんな事が言える」

「それは俺も現場に行ってみたんだが・・毒島さんを殺ったのは、おそらく人間じゃないからだ」

「人間じゃないって・・・でも、おっさんを殺したのは但馬組だって言ったのは、お前だろ」

「あぁ、殺したのは但馬組だ。」

「話が矛盾してる」

「まだ、わかんねぇのか?・・」

伊吹は、見せつけるかのように手のひらに炎を出し、三島に見せる。

その行動を見て、三島はある事に気がつき、ハッとする。

「まさか・・・」

「そうだよ」

「お前が殺したって言うのか?」

「はぁ?・・・ちげっ、ちげ−よ!なんでそうなんだよ!確かに俺も人間じゃないが、なんで俺がガマさんを殺さなくちゃいけないんだ!」

なんて言い訳をしているが、考えてみれば一方的に解雇通知を言い渡され、法外な退職金の口座は凍結され、この不景気の中、職もうまく見つからず、・・確かに俺にも殺人の動機は十分にあるな。なんて思う伊吹。

「で、冗談はさておき、とりあえず言っておくが、犯人は俺じゃない。そして、犯人は俺達がやっている大会の参加者だ」

「大会の参加者・・」

「そして、そいつはおそらく錬金術師だ。」

伊吹のその言葉を聞いて、ため息を漏らす三島。

「・・?どうした」

「いや、魔法使いに吸血鬼・・・そして、ついには錬金術師と来たか・・て思ってさ。そして、そんなありえない話に納得する俺って正直どうなんだって、思った訳よ」

「おぃおぃ、目の前にその魔法使いがいるって言うのに、信じられないって言うのか?」

「そりゃ信じられねぇよ。・・だったら、なんでお前は、その錬金術師が犯人だと思うんだよ。」

「・・言っただろ。俺はその現場に行ったって。・・現場には、魔法の時に使う術式と似た紋章が書かれてあった。・・魔法で描かれる紋章にはその自然現象の元になる神の名前が書かれる。・・だが、錬金術の紋章には主にその具現化するに必要な物質が事細かに書かれているんだ。・・そして現場にあった紋章は明らかに錬金術で使われる紋章だった」

「でも、悪戯って可能性は?」

「悪戯で、原子レベルの事をそんな事細かに、しかも正確に描けると思っているのか?」

「・・たしかに、でもそんな証拠になりそうなもの普通だったら消すんじゃないか?」

「・・ったくお前な。これを見ろ」

伊吹は自分の袖をまくりあげる。腕には無数の紋章が刻まれ、所々痛々しく皮膚は凸凹と盛り上がったり、逆に抉り取られているような部分があった。

「紋章って言うのは、その能力の源となるものだ。一度使用された紋章は、そう簡単には消えたりしない」

一度見せると伊吹は素早くその右腕を隠した。

「おぉ〜、いつも長袖を着ている理由はやっぱりそれだったか」

「いや、俺は別にかまわないんだ。ただ・・・」

「ただ?」

「一度、合コンって奴に行って、右腕の紋章をみてキモいって言われて・・・」

気落ちする伊吹の姿を見て、自分の左腕の痛々しい傷の事を思い出し、その落ち込む伊吹の姿と自分の姿を重ねて見る三島。

「あぁ・・・その気持ちちょっとわかる気がする」

「・・・とまぁ、それ以来気になってしょうがなくて、今現在に至るって訳」

「そうですか・・」

「なんか、話が脱線してるな。・・そんな事より、今大変なことが起こってるんだよ」

「大変な事?」

「ガマさんの事だよ。頭を無くした組織だ、何をしれかすかわからねぇ。」

「弔い合戦ってことか・・」

「そうだ。お前だって知ってるだろ?・・俺達は、普通の人間じゃない。何人束になって掛ろうともそんなのは無意味なんだって」

「だから、俺は普通の人間だ」

「うるさい、ボケっ!・・何度も言ってるだろ。普通の人間が生き残れる訳ないだろ!・・ってそんな事はどうでもいい。とにかく、ガマさんの弔い合戦なんて止めさせないといけない。でも、俺一人の力じゃどうする事も出来なかった。だから、頼む!・・お前からも言ってくれ!・・」

そう言って突然、三島の方に向きを変え、土下座をし始める伊吹。

「ぬぉっ!何やってんだよ。伊吹、頭上げろ」

「じゃぁ」

「・・・いや、でも・・・俺はもぅ関係がない話だ・・・」

「三島・・・お前だってガマさんには、お世話になってたんだろ?・・俺だってそうだ。返し切れないほどの恩だってある。三島、お前にだってその恩って奴は必ずあるはずだろ。その恩を返す人間ももういない。だったら、いつ返す・・・それは、今だろ」

「でも・・・今日は無理だ・・今日は外に出る訳には行かない・・」

「それは、無理だ。あいつ等、兵隊集めてからかなり日数は経ってる。いつ戦争が起きてもおかしくない。・・・それに、天狗になってる但馬組の奴等はふんぞり返って、あの街を歩いてる。いつそんな奴等にブチ切れてもおかしくないんだ。」

悩む三島。そして、部屋にかけられてあるカレンダーに目をやり髪を掻きまわす。

「なんでよりによって、今日なんだよ・・」

「三島っ、頼む!」

「あぁあ!もうっ、わかったよ!止めりゃいいんだろ!・・・ごめん!先生っ!・・タクシー呼ぶぞ」



数分後、三島の住むアパートに一台のタクシーが止まり、そのタクシーに二人が乗り込む姿を停車していたワゴン車から若菜と新米の刑事が見ていた。

「ついに動いたな。・・三島」

助手席でシートを倒しながら動き出すタクシーを見て笑みを浮かべる若菜。

そして、無線機で連絡を取り始める新米の刑事。

「三島 元。動き出しました。・・こちらも移動します」

『こちらC班、タクシーを確認・・・○○通りを北上中』

車を動かしていると無線では、三島が乗ったタクシーを追いかける人達の声が飛び交う。

「若菜さん・・・やはり、向かってるんでしょうか?」

「さぁな。まぁ、あいつがこのまま、毒島の奴等の所に道案内してくれれば、万々歳だ。」

「そろそろ、タクシーと合流します。」

そう言って新米が、左折するとちょうど、信号待ちをしているタクシーが目の前に現れた。

その事に驚き、強張る刑事。

「落ち着け、自然体だ。・・・こっちの方が車高が高いんだ。ばれたりはしねぇよ」

「はい・・・でも、やっぱり信じられません。あんな子供が、本当に一年前の事件に関わっているなんて・・」

「犯罪を起こしそうな顔なんて、あるとでも思っているのか?」

「いえ、そう言う訳じゃないんですけど・・」

「そんな事をやるようには、見えませんでした。・・周りの奴等がそう言うのは、至極当たり前の事なんだよ。」

「・・・タクシー、止まりました」

新米の刑事がそう言うと、若菜は倒していたシートを起こしタクシ−の方へと目をやる。

路上に停止したタクシーからは、三島がだけが降り、伊吹の方へと手を振りタクシーは再び進みだし、三島はそれを見送ると、人ごみの中へと入って行った。

「追うぞ・・」

「はい」



車を降りた二人は、人ごみをスルスルと抜けていく三島を追い、人ごみに苦戦しながら進んだ。

しばらく歩くと車線を挟んだ向こう側にも二組の刑事が、三島と並走して歩く。

だが、三島は一向に彼らが願う目的地とはかけ離れた場所をフラフラと歩く

伊吹を追っていった仲間からの無線で、伊吹もタクシーから置いた事が伝えられる。そして、伊吹もまったく、そういった場所へは進む様子を見せない。

「・・・次はゲーセンか。」

三島は、ハンバーガーを店で食べると、次はゲームセンターへと入る所を見て若菜は呟く

「でも、大丈夫でしょうか・・・もしも岬高の奴らに見つかったりしたら・・」

「大丈夫だよ。あいつ等は、ここにはいない」

「・・・どうしてですか?」

「さぁな・・」

若菜の発言を不思議に思った刑事を横に、若菜の口は思わず歪む。


ゲームセンターから出てきた三島は、店の横の狭い道へと進み始める。

その後を追う若菜達。

「裏道の出口に人を置いときますか?」

後をつけながら新米刑事が若菜に話しかける。

「無駄だ。出口すべてに人を置くのに一体、何分かかって何人必要だと思っている」

ほぼ自然体で歩いていた三島だが、突如後ろを振り向きこちらと目があった瞬間、急に駆けだし、横道に入り若菜達の視線からいなくなった。

「追うぞ!」

「はい」

三島が入って行った横道へと急ぐと、そこには三島の姿はない。

周りを検索し始め、「若菜さん」錆びついた螺旋階段の上からそう呼びかける刑事の立つ場所には開きかけた扉が、キィキィと音を立てながら揺れていた。

階段を音を立てながら、上がってくる若菜。

扉の前に立つと、自分の懐から銃を取り出した。

若菜の行動に一瞬、驚くが先輩の行動に従い新米刑事も銃を取り出した。

「念のため、安全装置を外しておけ」

「わかりました」

新米の刑事がドアノブを握り、若菜と目を合わせ、一呼吸入れた後に合図を目で送り扉を開いた。

扉を開くと若菜が先に部屋の中へと入り、その場に片膝をつきながら銃を構え周りの確認をする。

同じく、遅れて入ってきた刑事も若菜の後ろに立ち、周りの状況を確認し、異常がない事を確認すると、若菜の肩を二回叩く。

この部屋は、どうやら何らかの倉庫らしい。小さな段ボールが積み重ねられ、二階にいる若菜達の所まで達しそうな勢いだった。

二階の踊り場らしい所に出てきた若菜達。そして、下へと降りられる階段を見つけ若菜はそこを指差し、移動を始める。

階段をおり始め、一階に到達しかけたその時、若菜が手を横に出し、後ろをついて来た刑事が足を止める。

若菜はその場にしゃがみ込み、足元に張られる細いワイヤーを指でなぞり、糸の先にセンサーが仕掛けられえいる事を確認する。

「・・・・・戻るぞ」

若菜がそう言った瞬間、建物内にベルが轟き始め、すべての出口に、シャッターがゆっくりと降り始める。

急ぎ出口に向かう二人、先についた刑事はパニック状態になりながら必死に扉を開こうとするが、扉は揺れるだけで開こうとはしない。

「若菜さん!開きませんっ」

「落ち着けっ、ここのセキュリティーシステムが作動いただけだ。」

そんな事を言っている間もシャッターは段々と降りてくる。

扉にたどり着いた若菜は、コートの中から工具を取り出し、鍵穴へと差し込みしばらくいじくると、カチャという音とともに、扉が半開きになる。

「よし・・・」

一安心した若菜達は、鍵の開いた扉から出ようとするが、その前に扉が勢いよく閉じられた。

その事に驚き、若菜はドアノブを握り何度も扉に体当たりをする。

・・・誰かが向こうで扉を抑えてる・・。

扉の上半分の、不透明な強化ガラスには、向こう側で扉を抑える人影が薄っすらと映り、その姿もシャッターで徐々に見えなくなり、扉は完全にシャッターによって閉ざされてしまった。

「くそっ!!」

若菜は、降りてきたシャッターに八つ当たりをし、向こう側で立ち去ろうとする奴に声をかける。

「待てっ三島!・・・てめぇ、一体何考えてやがる!人を散々コケにして、何をしようってんだ!・・人の人生メチャクチャにして、なんで、のうのうと生きてやがんだっ・・」

シャッターをバンバン叩き、喚く若菜。「いつか豚箱に入れてやるっ!絶対にお前を捕まえてやる」そう言って叫ぶ若菜。

「・・・自分の人生のために、人の人生をメチャクチャにしたのは誰だ。」

扉を挟んで聞こえてくる小さな声に気づき、若菜は喚くのを止める。

「自分の人生のために、人を狂わせたのは、人を苦しませたのは誰だ。・・・お前だろ」

その淡々と聞こえてくる言葉に身震いを覚える新米の刑事。

「・・・俺は、お前なんて死ねばいいって思ってる」

扉の向こうの人は、その言葉を言い終わると、階段を下りて聞く音が聞こえ、その場を去った。

「・・・これは、流暢な事言ってられなくなってきたぞ・・・おぃ、伊吹を抑えろ!」

「・・は、はい」

刑事は、若菜に言われた通り無線を手に取り、他のメンバーに連絡を入れ始める。







無線で連絡をもらった刑事達は、伊吹を拘束しようと後を追うが、伊吹も狭い路地を使って逃げていく。

だが、袋小路に捕まり、伊吹は完全に出口を失ってしまう。

「やれやれ・・・」

伊吹は、囲まれた事にため息を漏らし、囲んでいる刑事達の人数を数え始める。

「抵抗はするな。・・・抵抗をしてもいいが拘束時間が長くなるぞ」

「八人か・・・ずいぶんと舐められたもんだ。」

伊吹のその言葉に気構えする刑事達。

「マジックの最高のトリックって知ってるか?・・・それは、人の五感を抑える事だ。五感をすべて押さえられた人間は、自分が今どんな状況にいるのかも、なにが起こっているのかも判断する事が出来なくなる。」

伊吹は、ゆっくりと刑事達がいる方へと歩き出す。

「・・・そぅ、まるで今のお前たちみたいにな・・」

そして、そんな事を言いながら、ただ立ち尽くす刑事達の間をすり抜けて路地の中へと消えていった。

そして、しばらくすると刑事達が、動き出し、目の前にいたはずの伊吹が消えた事に驚く。




伊吹との待ち合わせ場所のガードレールに腰をかけて待つ三島。

「おぉ、ちゃんと撒いてきてるじゃねぇか。関心、関心」

そして、待ち合わせ場所に先に来ていた三島に声をかけながらやってきた伊吹。

「なにがちゃんと撒いてきただよ・・・お陰さまで、またあの刑事と対面しちまったじゃねぇか・・」

「仕方ないだろ。俺、張り込まれてたんだもん・・・あいつ等に会う前に、撒く必要があったんだよ」

「俺にも疑いの目かけられちまったじゃねぇか」

「大丈夫だ。それは最初からだから」

「それは、あの刑事のせいだよ・・・」

残念そうに肩をおとす三島。そして、そんな三島を見てある事を決心する伊吹。

「よしっ!・・・とりあえず、ここでハッキリしておこうじゃないか!」

「なにを・・・?」

「一年前の『俺を殺してみろ傷害致死事件』の事だ。」

伊吹がそう言うと、目の色を変える三島。

「・・・お前は何も関係してないんだな?」

「・・・どういう意味で?」

明らかに隠し事をしている三島

「・・つまり、お前が真犯人じゃないかって事」

「そう言う事か・・・俺は、犯人じゃないので、ご心配なく」

「何だよ。何か隠し事か?」

「ん?・・・もちろん隠し事」

「うわっ、ハッキリと言っちゃうね〜」

「いつか、話してやるよ・・・さっさと場所案内してよ。」

「へぃへぃ・・・」



裏道をぐるぐると回り、建物の裏口に案内され、中に入ると小さなフロアいっぱいに、ごつい人から、明らかにそちら系の方が押し込められ、怒り狂った声が行き来する。

「ハジキの数が、人数よりすくねぇぞ!」

「くそっ、但馬の野郎。親父をやりやがって」

伊吹が言った通り、これは確かにいつ戦争が起きてもおかしくはない状態だった。

それぞれ色とりどりの銃や短刀を持ち、部屋の隅に積み重ねられる段ボールからは、明らかに違法と思われる武器がぎっしりと敷き詰められていた。

「これは、確かにやばい状態だったんだな・・」

「だろ。だから、これからどうにかして、こいつ等を抑えないといけないんだよ・・」

部屋の入口で会話をする二人に、周りのヤーさん達も次第に気付き始める。

「おぃ、あいつ・・・元じゃね?」

「なに・・三島だと?」


バラバラと別の内容を喋っていた彼等は次第に、三島を見て「三島だ」と呟きだす。

「・・・今まで信じられなかったけど、やっぱお前、こっちの世界にいたんだな」

「まぁね。・・・むしろ、伊吹が俺の事を知らなかった事が俺に取っちゃ驚きかな〜」

「いやいや、普通なら知らないから」

「この街に住んでたら、普通なら知ってるよ・・・いろんな意味合いで」

「あいにく、俺は最近ここに来たんだよ」

「じゃぁ、なんでこの街に来たの?」

「さぁ・・・なんでだっけ」


なんて雑談はさておき、周りの奴等を説得に動きだす伊吹。

「・・・とにかく、毒島さんをやった奴は、俺が自分なりに調べただけだが、かなりヤバイ。おそらく、俺たち全員でかかっても勝てる保証があるとは思えない」

伊吹のその発言に、「なんだとっ!」なんて怒鳴り出したりする奴も出てくるが、

「だったら、今、三島と喧嘩して勝てる奴がいるのか?」

伊吹がそういうと自信満々に「もちろん」と、自信満々に言う奴は誰一人、出てこなかった。

三島って一体何者?なんて心の中で思いながら伊吹は、話を続ける。

「相手は、三島ほどの強さだ。それは、間違いない・・・もしかしたら、三島よりも強い」

「マジかよ・・」

なんてざわつき出す。

「とにかく、・・・まずは、俺と三島だけで但馬の所に乗り込む。」

伊吹のその言葉に納得する彼等と「えええぇぇ!」とオーバーリアクションを見せる三島

「えぇぇえ!ちょっ、なんで俺?」

「別にいいだろ。俺達は、もぅこことは本来は繋がりが無いんだ。警察に捕まっても俺達の単独行動だって言い張れば、ここは一切、傷を負わない」

「確かにそうかもしれないけどよ・・・」

「よし、そうと決まれば、さっそく行動だ。・・・行くぞ、三島。」

そう言うと伊吹は、三島の腕を掴み、部屋から出て行った。





繁華街のメインストリートの一角に、大きなビルが建ちその中で、一人の男が部屋に大きく描かれた円陣の中心に手を置き、毒島の奴等が潜む建物から二人が出てくるのを確認した。

「・・・二人、こっちに向かってきている」

円陣に手を置きながら、扉の横に立つ黒いスーツを着た男に話しかける。

「そいつ等の特徴は、わかるか」

「さぁ・・・一人は、まだ成人の儀も済ませてないような子供だ・・」

その言葉に驚くが「あいつか・・」そう呟いてニタリと笑う

「・・・餓鬼は俺達はよく知っている奴だ。もう一人は、誰かわかるか」

「・・餓鬼の方は知らんが、そのもう一人の方は、俺と同種の人間だ」

「なに・・・お前、言ったよな。俺と同じ人間は、そういないって・・・なのに何で向こうに付いている」

「それは、ちゃんと説明したはずだ。・・俺の『同族』の奴はいないと」

「つまり、同族じゃないと?」

「そうだ。・・・つまり、俺の敵だ・・・そいつの相手は俺がしてやる。・・・だが、もう一人はまだ子供だ。なのにやるのか・・?」

「悪いが、その餓鬼に俺達は、苦しめられたんだ。お前の道徳に付き合う義理はねぇよ」

スーツの男は、携帯を取り出し仲間と連絡を取り合う。

「俺だ・・・あぁ、餓鬼と仲間が一人ここに来るそうだ。・・準備しとけ」

携帯を切ると、円陣の中心に立つ男が口を開く。

「この部屋一つを、貸してくれと言っていたが、もう一つ頼み事をしていいか?」

「なんだ?」

「このフロア・・・いや、建物全体を貸してくれ・・・おそらく、あいつは俺と同等の力を持っている。先に手を打っておかないと、勝てるかどうかもわからない」

男の頼み事に、一度は迷うが「好きにしろ」そう言ってスーツ姿の男は部屋を後にした。

錬金術師は、その言葉を聞くと再び円陣に手を置き、力を込める。

すると、大きな円陣は次第に小さくなり、数を増やし、壁を伝って建物全体に広がっていった。

廊下を歩いていると壁を小さな紋章が飛んで行く。スーツ姿の男はその光景を見て、軽く舌打ちをする。

「オカルトめ・・」

別室に入るとそこで待機していた兵隊が、こっちを見てくる。

「但馬さん・・・これは一体」

「大丈夫だ。別にあいつが、反乱を起こした訳じゃない。」

「ですが、あいつの力は危険です!いつあいつが反乱を起こすかもわからないんですよ。それなのに、この建物全体に、紋章を張り巡らせるなんて・・」

「黙れ!・・・あいつとは、ビジネス関係だ。この一件さえ、片付けばあいつとはおさらばだ。・・あんな人間離れした野郎をここに置いておく気はサラサラねぇよ」

「しかし・・」

「同じ事を二度も言わせるなっ!・・・とにかく、俺達はこれから乗り込んでくる三島を今度こそぶっ潰す。ただそれだけの事だ、全員、気張っていくぞ」

「「はいっ!」」

図太い掛け声が、小さな部屋で木霊する。





「ここなんだな?」

伊吹は、建物の前に立ちそのビルを見上げながら、三島に聞く。

「あぁ・・・ここで間違いない・・最終確認だけど、俺達は停戦交渉に来ただけであって、乱闘とかは起こさないんだよな?」

「お前も・・しつこいな。そうだよ、向こうが素直に犯人を引き渡してさえすれば、乱闘騒ぎにはならねぇ」

「何事もなければいいけど・・・」

「ほら、さっさと行くぞ」

ズカズカと乗り込む伊吹と、あまり乗り気でない三島は建物内に入っていく。

だが、入口を入る所までは伊吹と一緒であったが、建物内に入った途端、横にいたはずの伊吹は三島の横から姿を消した。

「あり?」

なんてヘンテコな反応を示す三島。

そして、そんな返事をしているうちに建物の唯一の出口は、大きな音を立てながら防犯シャッターが勢いよく落ちてきて、三島から出口を奪い取った。

「交渉なんて、所詮は無理な話しってことか・・・」




一方、小さな部屋に飛ばされた伊吹は、目の前に立つ男とにらみ合いを続けていた。

「・・・お前が、錬金術師だな」

「あぁ、そうだ。・・・俺は、ウッソ・バーサーだ」

「そうか・・よろしくな。俺は伊吹だ」

「本名じゃないな・・大丈夫だ。本名を知ってどうこう出来るほど、俺は芸達者じゃない」

「伊吹が、今の俺にとっては本名みたいなもんだんよ」

「そうか」

「・・・今の・・俺をここに飛ばしたのはどうやってやった?・・錬金術はそこまで発展してたのか」

「いや、本来ならここに現れた瞬間に、お前は肉片になっている予定だった。・・・そっちこそ魔術はかなり進歩しているみたいだな・・」

「お互い様だな・・」

「そうだな」

「さてと・・・本題に移ろう。」

そう言って伊吹は、目の前に立つウッソに向かって手のひらを向け、一方、ウッソは小さな杖を取り出し、伊吹に向け、互いに睨みあう。





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