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第二十話 昔話 一

「えっ?じゃぁ、その尾形って人は知り合いだったの?」

タクシーの中で聞かされる三島の過去のお話に驚く仙田。

「ん〜知り合いって言うか、もぅなんて言うか、親友?みたいな感じだった・・中学の時に知り合って、まぁそれも全国の大会の決勝戦なんだけどね。試合が終わった後にちょっと話しただけで意気投合みたいな?・・それからしばらくもしないうちに、互いの家に行ったりしてたみたい」

「え・・・でも、それって・・」

先に結末が見えていると、その話は面白くない。と言うが、この結末はあまりにも

「まぁ・・残酷よね。・・・私もその会場にいたから・・・試合の時は必ずヘッドギアや防具は付けてたから、今まで死者は出てなかったんだけど。当たり所が悪かったのね。フローリングの床に、剛の血が広がっていったわ。あの時、本当にパニックになっていたのは元だったわ。・・倒れた剛に駆け寄って、何度も何度も、剛の名前を呼び続けてたわ・・・」

「で、・・その後は?」

運転手も話の続きが気になるようで、バックミラーからチラチラとこっちを見てくるのがわかる。

「運転手さん、道路、一本間違えてる」





その頃、三島の教室ではまた一騒動起きるような気配があった。

「おぃ、ヤバいって・・・」

そんな慌てて教室に入ってきた生徒。その後にやってきたのは、三年の先輩方だった。

その光景を目にした三島は、横でこの光景に血の気を失った女子に話しかける。

「おぃ、大丈夫か?」

「えっ?・・・うん、大丈夫」

「じゃぁ頼み事、先生を急いで呼んできてくれ」

三島がそういうと、女子は急いで立ち上がり、三年がいない方の出口から急いで出て行った。

「てめぇ等、なんて事してくれたんだ。」

そう言いながら教室へとズカズカト入りこんでくる先輩方の前に三島が立ちはだかった。

「落ち着いてください。たしかに俺たちに非がある事は確かです。でも、ここで暴れたいしたら、それこそ水の泡じゃないですか。」

「黙れ、俺達はまだ内定決まってねぇンだよ。評判が悪い高校の上に、また更に悪化させやがって・・・」

何も答えられずにただ黙りこみ、俯く三島。

ただ、その静寂な時間を叩き壊したのは先生だった。

「何やってんだてめぇ等!」

そう言いながらやってきたのは数人の先生がやってきた。

「おぃ、ここで乱闘でもしてみろ。全力で止めてやる」

卒業の恒例行事、お礼参りを返り討ちにする事、この高校に来て早3年。そんなうちの担任の言葉が三年の先輩方には響いた。

舌うちや、壁に当たるなどして、この不完全燃焼を燃やしつくしながら、帰っていく先輩方、そんな中、一人の先輩が帰り際にある一言を小さな声で呟いた。

「・・・この人殺しが・・・」

その言葉が胸に深く刺さったのが三島。そして、その言葉で怒りが爆発したのは三島のクラスの奴だった。

バギッという音を立てながら木材を割って手にもつ一人の生徒。

「誰だっ!今、言った奴出てきやがれ!」

「おぃ、よせ!」

木材を手に持ちながら、先輩方に近づこうとする奴を三島は止めた。

「ぁあ?おぃ、先輩に向かってなんだその口のきき方は」

そう言いながら、近づいていこうとする先輩方を今度は先生が止める。

「てめぇ等こそなんだ!・・結局、内定決まらない理由を俺達にコジつけてるだけだろがっ!・・それを立ち去り際になんつった!」

「人殺しに人殺しって言って何が悪い、お前らだって心のどっかじゃそう思ってるだろ。」

その言葉にブチ切れ今にも飛び出しそうな、三島のクラスの人達。だが、そんな彼等の気持を代弁したのは担任だった。

人殺し、そういった先輩を思いっきり殴り飛ばした。

「いって・・・何しやがるんだ!」

「これ以上、俺のクラスの奴等を侮辱するな。次言ったら、そのヒン曲った根性叩きなおしてやる」

威圧感のある拳を倒れる先輩に見せつける担任。

「くそっ・・・」

そう言葉を残しながら先輩方は教室から出て行った。

その光景に固まっていた三島達。

「おぅ、お前等、よく我慢したな」

担任の言葉で、凍っていた氷が砕け散った三島達。

「うぉぉぉぉ!さすが先生!」

「よせやい、照れるだろ」

「いや、カッコよかったッス!先生」

「おぃおぃ、おだてても何も出ないぞ。」

「さすが、族あがり!」

「族あがり言うな!」





「・・・ったく、この街、一体いくら高校があるんだよ・・・公立なのか私立なのかぐらい聞いて置けばよかったぜ・・」

汗だくになりながら、先日から高校巡りを繰り返す伊吹。

「今じゃ、ネットで行き先がわかりますって言うけど、ネット使えない奴は一体どうすればいいんだよ・・」

グチグチと愚痴を漏らす伊吹。

「ん〜って言うかなんで、三島探してたんだっけ?・・なんでだっけ〜」

「ほぉ、あの三島を探してるのか?」

伊吹の独り言に口を挟んできたのは、背中を曲げ、不気味に笑みを浮かべる若菜だった。

「ゲッ・・・刑事さんが俺に一体何の用ですか?・・悪いですけど、俺、もぅあの店とは関わりないっすよ」

「そうか、だから堂々と人探しが出来るってもんだな。」

嫌味を言ってくる奴だな・・・

「で?何の用っすか」

「いや、別にこれと言った用はないんだ」

「じゃぁ失礼します」

「待て待て、一度は泥に足をつけた身。そいつの意見も聞こうじゃないか」

「何の事っすか・・」

「とぼけんなよ。現場のヤジ馬をとった写真の中にお前も写ってた。大体の目星はついてんだろ?」

伊吹は真っ黒に焼き焦げた焼死体を見て、高笑いをする若菜の事を思いだした。

「一つわかった事は、あんたは刑事でも、正義のために動いてないってことだけだ」

若菜はその言葉に怒り狂う事もなく、ただニタリと笑うだけだった。

「刑事ってもんは、新米の頃の輝かしい気持ちを、己の出世願望に変えるか、己の欲望を満たすものに変えるんだよ。俺はその後者なだけだ。」

「よく、そんなんで、精神鑑定クリアしたな。」

「ヘッ、俺だって一年前までは、出世願望の持ち主だったよ。三島の件を捜査してた時まではな・・」

『三島』その言葉を口にすると人は色々な表情をする。若菜の場合は三島という言葉に憎しみを抱いていた。

「なぁ、なんでそこまで三島に固執する。なんで、三島はこの街で色々な顔を持ってるんだ?」

「・・・聞きたいか?」

「お前と長く一緒にいるのは、嫌だから短めで頼む」

「ハッキリ、物事を言うね〜・・・まぁこれはあくまでも俺個人の主観的な物だからな」





一年前、この街である事件が起きていた。

『俺を殺してみろ事件』

犯人は、そう言って数数の傷害事件を起こしていった。

犯人の人物像も人相も、動機も共通点も規則性も一切つかめないまま、警察はほぼお手上げ状態だった。

「・・ったく、まったく持ってわからん。こいつは、一体何のためにこんな事を繰り返す、止めてほしいのか?」

外でタバコを咥えながら手帳と睨めっこをしながら髪をかく若菜。

「若菜さん」

そんな中、一人の新米刑事が若菜に駆け寄ってきた。

「信頼できる情報源じゃないんですが、一つ情報が・・・」

「なんだ、言ってみろ」

「異種武道の高校生の大会の決勝戦の事、知ってますか?」

「あぁ、あの事故の話だろ。知ってるさ」

「実はその子の通夜での出来事なんですけど・・・『俺を殺してみろ』そう言い放ってそこにいた高校生十数名にけがを負わせた奴がいるんです。」

その言葉を聞いて眉をひそめる若菜

「誰だ、そいつは?」

「三島 元、その大会の決勝戦で相手だった子です。」






「・・・その後、『俺を殺してみろ事件』は、傷害致死へとなった。ついに死者が出たんだ。これ以上、被害を出してはいけない。俺は、あいつが犯人だと確証があった。だから、奴を拘束した。・・・だが、それでも事件は終わらなかった。冤罪だょ。あいつの家族は俺達相手に裁判を起こした・・・その責任として俺の相方は、ほかの場所へ飛ばされ俺はこんな所でブラブラしてる」

「それって、ほぼ逆恨みだろ」

「違う、奴が犯人だ。間違いない。奴は毒島の奴等の所をよく行き来してた。そして毒島の奴らがよく使う手だ、替え玉を用意したんだよ。奴が釈放されてから数日後、別の犯人が逮捕された。だが、その犯人はもぅしゃべる事が出来ないくらいに、ボコボコにされてたんだ。」

「でも、そいつが逮捕されてから、事件は起きなかったんだろ?」

「あぁ、あいつも拘束されてから、もぅ懲りたんだろうよ」

「こりゃ何言っても利かねえな。」

「だから言っただろ。これは、あくまで俺個人の意見だ」

「そうですかい、聞かなきゃ良かったって後悔してるわ」

「で?・・・お前はこれからどうなると思う?」

「どうなるって言うのは?」

「但馬組と毒島の事だよ・・・正直に言うと、すでに抗争は始まってる。それだけは確かだ」

「悪いけど、俺の知ったこっちゃない。だから答えようもない」

伊吹は、そう言って若菜から離れようとする。

「だったら、なんで三島を探してる。なんか関係あるんだろ?」

「知り合いを尋ねちゃ駄目だっていう法律でもあんのか?互いに足洗った身だ通じる処でもあんじゃねぇの?」

そういうと、伊吹は若菜の前から立ち去った。





「ねぇ、待ってよ〜美野〜」

そう言いながら、ホットプレートの入った段ボールを体全体を使って持ち、ヨロヨロと歩く仙田と、自分も忘れ物をしてて自分の手荷物をタクシーに乗せ終わった田村。

「あっ、千尋危ないって」

そう言って急いで階段を上がり、仙田が持つ段ボールを軽々と持ち上げる田村。

「ありがとう、美野」

「いえいえ、どういたしまして」

そう言いながらタクシーに乗り込む二人。

「で?話の続きは?」

「えぇ〜知りたいの?」

「おじさんも知りたいな。」

そんな事を言いながらギアを入れる運転手。

二人にせがまれ、ため息を漏らしながら話をしようとする田村。

「どこから言えばいいの?」

「さっきの話の続きからでいいよ。道場の後」

「道場って・・・あそこから大会まで結構、期間あるわよ」

「それは・・美野の語部かたりべとしての腕の見せ所だよ」

親指を立て笑って見せる仙田。

「別に語部じゃないんですけど・・・まぁいいか・・練習の間とかは飛ばすわよ・・」





練習が終わった後、三人は決まってある所に向かっていた。

「お前等、いつか金を請求してやるからな・・」

口を尖らせながら、三島がそんな事を言ってくる

「まぁいいじゃないか。俺結構、お前の料理好きだよ」

「私も、っていうか、もぅ高校卒業したら継いじゃいなよ。私も通ってあげるから」

「おぉ!それいいね。俺ももちろん通ってやるよ」

「そん時は、金請求するからな。覚悟しとけよ」

そう言いながら、暖簾のれんのかかった店の中へと入っていく三人。

そこには、小さいながらもいくつかのテーブルやカウンターテーブルが置かれ、何人かお客さんも入ってかなり賑わっていた。

そんな中、厨房にいるおじさんが客が入ってきたと勘違いをする。

「はい、いらっしゃい。お好きな席に・・・なんだお前らか・・元、お前裏口から入れって何回言ったらわかるんだ?」

「いやいや、こいつ等はお客さんだから。金とっていいよ」

「馬鹿たれ、友達からお金取ろうなんざ百年早ぇ」

「百年って死んでるっての!・・・台所一つ借りるよ」

そう言いながら、三島は厨房へと消えて、親父が「好きな所に座んな」そんな事を取り残された二人に言ってくる。

カウンターの席に座ると、二人の前に水が入ったコップを置くおばさん

「いらっしゃい、二人ともお疲れ様」

なんて言ってくる。

「あっ、おばさん。今日は大丈夫なんですか?」

「えぇ今日は体の調子いいから、大丈夫です」

なんて笑顔で答えてくれる。

「母さん、あんまし無茶済んなよ。」

そう言いながら現れたのは白い服に身を包んだ三島だった。

「あれま、この店の看板娘にそんな事言っていいんかい?」

「看板娘って・・もぅ四十過ぎたオバ」

「ストップ、それ以上いったら、お母さん怒るよ〜」

なんてやり取りをしていると、酒に酔ったお客さんもそれに便乗してくる。

「その通り、この看板娘がいるからこの店は成り立ってんだよ」

「そうだ。看板娘がいなきゃ残されたものは、むさ苦しい親子の料理人といまいちな料理だけだぞ。それに看板娘という香辛料がふりかかってるから、ここは繁盛してるんだよ」

「あらやだ。ありがとね、お客さん」

なんて喜ぶおばさんと、親子二人と一括りにされ不機嫌な三島と親父さん。

「いやいや、おじさん。俺は結構好きですよ。ここの味」

なんて、尾形は親父を励ます。

「おぅありがとな。剛君、君だけだよ。うちの味をわかってくれる奴は・・・」

「いや、親父。これは明らかに励ましの言葉だろ。真に受けんなよ」

「馬鹿野郎、励ましを自分の機動力に変えないで、なにを機動力にするって言うんだ。・・・他の奴等は飯よりも看板娘と来たもんだ。あとで塩撒いてやる」

「なんかそれ、同情しちゃうな・・・ちなみに、剛。俺も励ましてくれよ〜」

「今日は、お前に負けたから励ましの言葉なんてあるかっ!今度は負けねぇ・・・ちなみに、代わりと言っちゃなんだが田村が励ましの言葉を言ってくれるそうだよ。」

「ヘッ?わ、私?」

突然のフリに驚く田村。

「おぅ、美野。俺を励ましてくれい。それによってお前等に出す料理が、変化します」

「おぃおぃ、田村。責任重大だぞ」

「え・・・えっ・・えっと、・・わ、私は、その・・す好きよ。元・・の料理が・・」

「美野・・・お前、店の外まで言えてた事が、なんで言えなくなってるんだよ」

「う、うるさい。好きなんて言葉を堂々と言えるか!」

「今、言えてんじゃん。・・・こりゃ、ご飯一杯に生卵で決定だな」

「えっ嘘、ちょっと・・私おなか減ってるんだから」

「冗談だよ。ちゃんと作ります〜。美野から励ましの言葉もらったしな」

なんて言いながら調理を始める三島。






「・・・とまぁ、こんな感じの昔話があったって訳よ。」

そんな昔話を聞きながら、仙田はある疑問が出てきた。

「えっ?でも、今は三島君、アパートにいるじゃない。なんで?」

「あぁそうか・・あのアパート実は、私のお父さんがオーナーやってるのよ。まぁ、私はもともと住んでたけど、そこの空き部屋に元がやって来たのよ。」

「いや、そうじゃなくて、なんでアパート暮らしになったの?」

「まぁ・・・色々とね・・」

「で、続きは?」

「いや、そろそろ学校でしょ。もぅ終わりでいいんじゃない?」

「嫌。運転手さん、遠回りして。」

「了解。任せとけ、それにさっきからしてるから大丈夫だ」

「ちょっと、ずるい。そうやってお金取る気でしょ!」

「いやいや、人聞きの悪い。うちの会社は、会員様は走行距離、5K以上は、一律なんですよ。ですから問題ありません」

「えっ?会員?」

「あ、私会員なの。よく病院の行き来で使うから」

「毎度、ご贔屓ひいきありがとうございます」

「へぇ〜そうなんだ。」

「で?つ・づ・き」

「続きね・・・まぁ、無駄な話は省いて行った方がいいわよね・・・」






試合が近づくにつれて、次第にピリピリムードが小さな格技場では、支配し始めていた。

そんな中の岬高校との合同練習が行われていた。

練習場所が舟高のため、はじめは舟高のいつも通りの練習を行っていた。

「じゃぁ、最後の練習は試合形式で行いましょう。」

うちの部長が、そんな事を言い出し、向こうもそれを了解した。

しばらくの小休憩があるうちに、互いにオーダー表を作る。格技場の隅で互いに対角線の場所で、内密に・・・

「・・・おそらく、最後に向こうは尾形を持ってくるはずだ。だから、最後は三島、お前が」

「待ってくれ」

そんな部長の言葉を遮ったのは、73で出場予定だった先輩だった。

「三島・・俺にやらせてくれ。俺は73で悔いを残したくない・・・」

「・・・わかりました。でも多分、剛は大将じゃないですよ。向こうだって、いい流れを掴みたいはずです。おそらく、最初、確実に勝ちを取りに来るから、先鋒で来るはずです。」

「いや、そういうと勝ちを確実にするために、中堅もしくは副将の可能性も・・・」

大いに悩む中・・

「三島〜!」

岬高の方から、尾形が三島に向かって手を振って声をだす。

「何〜?」

「お前、どこで出るの?」

「剛は?」

「お前と別の場所がいいから、言ってくれ。どうせ、試合で戦うんだし今日やらなくてもいいだろ」

「確かに・・・でも、こっちはまだ何にも決まってないから、剛が出る処言ってよ」

「えぇ〜じゃぁ・・・先鋒で」

「わかった〜」

再び作戦会議。

「・・だそうです。」

「なんか調子狂うな・・・」

「まぁ、ならこっちのオーダーは決まりだ。・・・次方に三島、お前だ。流れをこっちに持って来い。それから先方は思いっきりやってこい、悔いが残らないようにな」

「はい」




そして、試合形式の練習が始まった。

先方は、岬高校は予告通り、尾形が出てきた。

だが、先輩にとっては最悪な試合内容だった。「はじめっ」という声とともに試合が開始され、30秒もたたないうちに尾形が先輩の手から武器を2回弾き落とし、先輩は反則負けとなった。

礼をして、先輩が戻ってくる。

「おぃ、大丈夫か?」

部長のその言葉で、ストッパーの切れた先輩はその場で泣き崩れた。

「先輩、まだ試合は終わってません。そんなんじゃ、俺達の試合に響きます。ですから泣くのは後にしてください。」

三島は、そう言いながら、如意棒をもって白いテープで囲まれた試合会場へと入って行った。

次方戦は、先ほどとは打って変わって、長く続いた。

だが、一方的な試合展開だった。

三島の猛攻に相手は、防ぐのが精一杯、正確には、三島がわざと防がしていた。

何度も、一本を取る要素があったのにも関わらず、三島はそれを取ろうとは、しなかった。

決定的だったのが、敵が倒れたのに止めを刺そうともせずに、三島は相手が立つのを待っていたのだ。

残り5秒になった所で、三島はようやく一本をとり三年目の向こうの先輩は、戦意を喪失しながら、帰って行った。

「部長、頼みますよ」

三島が戻ってくると中堅ででる部長の肩を叩き、バトンをタッチした。

中堅戦は、互いの部長がぶつかり合い、引き分け。

副将戦は岬高の優勢勝ち。そして、大将戦は岬高の一本勝ちで、終わり。

試合結果を見てみると一勝三敗一引き分け、という惨敗で舟高はその試合を終えた。

敗因は経験の差、向こうは、ほとんどが三年生で経験も豊富。それに引き換えこっちは二年がほとんど、だが、負けは負け。



「いやはや、お前の戦い方を見てると、なんだか相手が可哀想に見えてくるんだよな〜」

「そりゃ、こっちのセリフだ。うちの先輩なんてお前と戦いたいたくて先方にでたのに1分も経たないうちに倒しちゃうんだもん。さすがに酷いよ」

「酷いのは、あんたら二人ともだ!・・・あんたら、自分の事しか考えてないでしょ」

格技場から帰り道の途中、での話。

「「当たりまえだろ」」

「最低ね」

「そうでもないさ。むしろ向こうの事を考えるようになってしまったら、それこそ最低だ。相手に失礼だしな。・・・美野だったらどっちがいい?剛の不完全燃焼の試合と、真っ白な灰になっちまう俺の試合」

「どっちも嫌・・・それに、それは実力差があるから言える事でしょ。自分の力を過信しすぎなんじゃないの?」

「まぁ・・・でも、今の所、最強だと思われる人物を親父さん以外で俺は知らない。なぁ剛」

「ん〜確かに、人間で親父さんより強い奴っているのかな〜」

「だって、おやっさんは素手で熊を倒した人物ですぜ。きっと人間じゃないって」

「ちょっと待った。そのお父さんから生まれた私って一体何よ」

「新人類じゃね?」

「おぉっとぉ!忘れるところだったぁ」

そう言いながら、鞄をあさり始める尾形。

「何やってんだ?剛」

「いいから、ちょっと待ってろ・・・ほらこれ」

そう言って、二人に手渡したのは、小型の音楽プレイヤーだった。

「なにこれ?」

「お前等にやるよ。俺も同じ型の奴、持ってるんだ。」

「いや、俺、音楽とか聞かないし・・・」

「まぁそう言うなって、試合前に自分の好きな音楽とか聞いてるとモチベーション上がるぜ。リラックスもできるし、自分の気持ちをコントロールできる」

「へぇ〜そんな事やってたんだ〜。剛は・・・それに引き換え元は・・・」

「・・・寝てたな」

「まぁ取り合えず、使ってくれよ。・・そんじゃ、俺はこれから用があるから、じゃぁな」

そう言って駆けだす尾形。

「えっちょっと待てよ。俺の今日のスペシャルメニューは喰わねぇのかよ。」

「悪い、また今度」

そう言うと、尾形は二人からどんどんと離れて行った。

「まじかよ・・残念だな。・・・美野、お前は喰ってくだろ?」

「もちろん。でも、その前に今日は、道場で子島君の相手でしょ。」

「あぁ〜そうだった。すっかり忘れてた・・・あいつ、もしかして高校入ったら、こっちに鞍替くらがえするんじゃね?」

「かもね。剣道じゃあんまし、結果残せてないみたいだし・・」

「でも、曲って何入れよ・・・」

「さぁ?民謡とか?」

「無理、聞いてると眠くなる」

そんな事を言いながら二人は、道場へと向かっていった。





最後まで読んでいただきありがとうございます。

なんとか二十話まで行くことが出来ました。

このままの調子で行ければいいと思っております。

これからもよろしくお願いします。

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