第二話 男子生徒にダイブ
三島が倒れた後、チュパカブラの子供が突如燃えだした。
「自分が死んででも、殺生はしたくないか・・・どんだけきれいごと並べてる餓鬼だよ」
真夏だと言うのに黒いコートを羽織った男が他の車両から現れ、燃えている子供を右手で掴み上げ、真っ二つになった親の方へと投げた。男は右手をかざし、何やら呪文を唱えると子供が火種となって親にも燃え移り始めた。
男は、倒れている三島の首襟を掴み、意識があるかを確認するが、三島はすでに意識を失っていた。その事を確認すると三島を燃え上がる炎へと入れようとする男を彼女が止めた。
「待って、殺す必要はないでしょ」
「冗談、自分でまいた種だ。俺が助けなきゃこいつは死んでた。それに、これから死んでも文句はないだろ」
「そうじゃない。格下を殺しても、あなたのランクが下がるだけよ」
「・・・ちなみに、こいつのランクは?」
「私が間違えて連れてきちゃったの。ただの人間よ」
「連れてきただ?お前、それはつまり、こいつと体の半分以上が密着してたって事になるが?」
「う、うるさいなぁ。私のせいじゃないわよ」
「・・・って事は、こいつは新規登録だから最下位だな」
「上位ランクのあなたが、最下位を殺したらどうなる事やら」
「俺のランクが中まで下がって、上位ランクに当たるって事か・・・それは勘弁だな」
三島の首襟を放し、三島は地面に頭を思いっきりぶつけた。
「どの道、彼は次で終わりよ・・・まぁ、私を助けてくれた事だしチャンスぐらいは上げようかしら・・」
『まもなく、2番線に列車が参ります。危険ですので白線の内側までお下がりください』
三島を起こしたのは、あのけたたましい目覚まし時計ではなく、地下鉄の案内のコールだった。
腕時計を見ると、時刻はもうすぐ一時限目終了のチャイムが鳴りそうで鳴らなさそうな所を針がさしていた。
「やべっ!」
慌てて立ち上がる際に足の上に何かが置いてあったのか、足から何かが落ちた気がした。
「なんだ?」
下を見渡すが、何も落ちている物はない。
気のせいだ・・と判断し慌てて階段を上り、外に出ると意味もなく周りを見渡し学校へ続く道を急ぎ走った。
学校に着いたのは二時限目のチャイムがちょうど鳴り始めている時だった。
三階の教室へと階段を何段も飛ばしながら走り、教室の前で中に先生がいるかを確認する間もなく、扉を勢いよく開いた。
「すみません、遅れた理由は、産気づいたおばあさんが、重たい荷物を持って歩道橋を下りている所に出くわして、荷物とおばあさんを背負って階段を下りて、救急車を呼んだら一緒に連れてかれちゃって・・・」
だが、教室にいたのは担任の先生だけで生徒は一人もいなかった。
「三島・・産気づいたなんだって?」
教卓で出席簿を確認する物理担当のくせに、バスケ部顧問で明らかに体育会系の体系をした先生が、顔を引きつらせながら三島に聞いてくる。
「あれ?・・・みんなは?」
「二時限目は体育だ。みんなグラウンドに行ってるよ。・・・で?産気づいた何?」
「産気づいた・・おばぁちゃんが重たい荷物を・・」
「お婆ちゃんが産気づく訳ないだろ。遅刻した本当の理由は?」
「えっと・・地下鉄のホームで寝てました」
「なんだぁ?昨日、家に帰らなかったのか?」
「いえ?帰りました。・・・あれ?それで、目覚まし時計が壊れてて・・地下鉄乗って・・」
「ホームで寝てた?」
「でも、俺ん家の近くで地下鉄なんて走ってないですよ。いつもなら電車できますし・・」
「なんだそりゃ?大丈夫か」
「先生は、出席簿なんか見て、何してるんですか?」
「ん?・・・ちょっと調べもんしに来たんだが、お前が無事に来たからもぅ大丈夫だ」
「・・・?」
「ほら、いいからさっさとグラウンドに行け。」
「えぇ・・いやでも、遅れて行ったら、グラウンド走らせるだけなんで、行かなくてもいいんじゃないですかね」
「そっか、体育の出席日数足りないからお前、留年だな」
「体育、楽しく行ってきます」
三島は鞄を窓側の自分の席に置くと急ぎ教室から出て行った。
そして三島と入れ違いで隣のクラス担任が、教室へと入ってきた。
「どうでした?」
「私のクラスの子ではありませんね。今、遅れて一人きました。」
「私のクラスもさっき遅れて一人きました。あと欠席した生徒にも安否確認が出来たんで問題ありません」
「ここだけの話、自分のクラスの子じゃなくて良かったとか、思っちゃいますよね」
「まぁ・・そうですね」
「はぁ・・・マジで疲れた」
二時限目も終了し、更衣室で汗まみれで倒れる三島。
「元、お前は手を抜くって事を知らないのかよ。普通、2,3周したら歩くだろ。なのになんで10周もするかな?」
「トラック一周400だから、それを10周で4×10だから・・・すげー俺。40キロも走ってるよ」
「スゲーのは、お前の頭だ。4キロだ。」
「ところで、元。どうして遅刻したんだ?」
「それは、目覚ましが壊れてて・・・」
その時、電車でのあの彼女の出来事を不意に思い出した。
「あぁ!そうだ。今日、スッゲー思いをしたさ!」
「何!どんな?」
満員電車での彼女のうたた寝がマジ寝に変わった所まで話すと、周りの男子達の鼻息が荒々しくなっていく。
握った拳にも力が入り、「ホォ!」とか「それでっ!」とか中には「羨ましい」なんて声が、むさ苦しい男子の更衣室の中で充満する。
小説を使って音を出して彼女は目を擦って・・・男どもは周りにいたおっさんみたく唾を飲み込む。
「そしたら!なんと!・・・あれ?・・地下鉄のホームで目覚めた」
「「「ハァッ?」」」
「あれ?やっぱ俺、電車に乗ってたんだよな・・」
汗臭い更衣室からは匂いとともに溜息が漏れ始める。
「んだよ・・・夢オチかよ」
「聞いて損した」
着替え終わった人達から更衣室から出て行く際にそんな言葉が三島に飛んでくる。
「いや、違うって。俺だって、電車で急ブレーキがかかって俺浮いたもん。」
「浮く時点で夢だろ。」
「それで、先頭車両とかがスクラップになっていってさ、次第に俺の乗ってる車両もどっちが上なんだがわからなくなってよ・・」
「なんだよ、その大惨事。そんな事になってたらお前、生きてる訳ないだろ」
「で、気付いたら、地下鉄のホームだったの」
「はぃはぃ。テレポートでもしたのかね」
「おっかしぃな。その後、お淑やかだった彼女の性格が急変しておっそろしい事に巻き込まれるような、盛大なイベントに出くわした気がするんだけどな・・・」
「夢だから忘れたんだろ。早く教室に行こう。授業始まっちまう」
窓際の席は、風通しも良く心地よい日差しで授業中は、いい眠気が襲ってくると言うが、それは全くの嘘だ。
日差し強すぎ!風ねぇじゃん!しかもスズメバチ大流行により窓の学校内で開閉禁止令が出され、教室内は、軽いサウナ状態だった。
「三島君、寝るんじゃありません」
副担任の女性の先生が、三島に指さすが、三島からの応答はなく左右に揺れるだけだった。
「先生、違います。意識が朦朧としてるだけです。・・・って言うか窓際の奴等、全員死んでます」
「これはいけない。全員、窓際から退去させなさい」
先生の指示で周りの生徒達が倒れている生徒達を引きずりながら、窓際から廊下側へと退去させ、机も移動させようとするが、日差しのせいで机の足が熱を帯びていて、足を触った生徒の一人が軽いやけどを負ったので机達は、あきらめることになった。
「それじゃぁこの問題を解いてもらおうかな〜。え〜っと今日は、○○日だから〜出席番号で〜三島君」
先生、あなたは鬼だ。地べたに座る三島はペンを取り出しその場で黒板に向かって空中でペンを走らせる。
「三島君、ちゃんと教壇の方へ来て書いてください」
三島が空中でかいた文字は、黒板にちゃんと現れていた。
「いいじゃないですか、ここでも書けるんだし・・・それに俺、血を取られて貧血気味なんですから・・・あっ!」
三島の頭の中にあの時の光景がよみがえり、周りのみんなは突然立ち上がる三島に注目する。
「そうだ。思い出した、やっぱり俺、電車に乗ってたんだ。あの彼女も夢じゃねぇ」
呆れる男たちと何の話かさっぱりわからない女子。
「電車は突然横転してさ、なんやかんやで未確認生命体と対峙してさ」
熱く語る中、女子がクスクスと笑い始めているのに気づいた。
一人の男子が、三島に黒板を見るよう指をさす。
黒板を見ると三島は熱く語りながらペンで黒板に《俺は彼女に恋をした》と書いてあった。
「恋だぁ?冗談じゃない」
《恋をした》の部分を二重線で消し
「俺は彼女に殺されかけたんだ。どちらかと言うと、さつ・・」
ある事に気づき、三島の口は止まったが、ペンはさらに書き続け黒板に《殺意が芽生えた》と書かれ、三島は急いで消すが、教室の空気は一変して凍りついていた。
「・・・すみません、やっぱ夢でした」
三島は、そうみんなに言うと急ぎ下に座って俯いていた。
「さ、さぁ気を取り直して次の問題を誰に解いてもらおうかな〜」
静まり返った教室の雰囲気を何とか立て直そうと先生は明るくふるまうが、それに対して生徒は引きつった笑顔しか見せる事が出来なかった。
一方、三島は自分がまいた種だが、とにかくこの場から逃げ出したかった。
だが「逃げるなよ」隣の男子にそう呟かれ「あぁわかってる」そう呟き返す事しかできなかった。
地べたに座っていると床の冷たさが三島の体の芯まで冷やしてくる。必死に冷静さと保とうと頭をかいたり、手で足をこすったり、していたが先生の声なんかは、もぅ何も聞こえなくなっていた。
意識しないようにすると逆に意識してしまうとは、まさにこの事だ。昔の出来事が今にも蘇りそうになる。
『至急、至急。教員は速やかに職員室に移動願います』
校内放送により、我を取り戻した三島。
副担任は、全員に教室から出ないよう、促しておき放送に従い教室から出て行った。
「何があったんだ?」
なんてそれぞれ口にする中
「おぃ、みんな。これ」
そう言って、一人の生徒が自分の携帯からコードを出し、黒板へとつなぎ黒板全体にある動画を表示した。
『こちら、現場上空です。ご覧頂けるでしょうか?列車が横転し所々、火の手も上がっているように窺えます。この列車は8時32分発○○行きの列車です。通勤ラッシュ時の列車が・・・このような事故になると言う事は・・・おそらくかなりの犠牲者がでるかと予想されます。』
黒板いっぱいに表示されたのは6両編成の列車が線路からはみ出し、横転している状況だった。
『番組の途中ですが、一部内容を変更し報道する事をご了承ください。現在入っている情報によりますと、数名の学生も中に取り残されている模様です。現在、消防による賢明な消火活動が行われています。』
全員が息をのむ中、三島はこの映像を見てあれは夢じゃなかった事を確信した。
「おぅ、三島。お前の夢って、もしかしてこれだったんじゃね」
「・・違う、やっぱりあの中に俺いたんだよ」
「何言ってんだよ。そんな訳ないだろ。でも、そうなるとお前が言う、彼女は誰なんだろうな?・・・どんな奴だった?」
「で、いま思い出したんだけど、あの制服どっかで見た事あると思ったらここの高校の制服だ」
隣の奴とそんな事を話していると、周りの男子達も食いつきだした。
「マジでか?知ってるやつか?」
「知ってたら、苦労しねぇよ」
「で?そんな奴だったの?」
「ん〜顔は、よく思い出せないけど・・・とりあえず、大人しそうな奴だった」
「なら、うちのクラスは除外だな」
そんな事を言うと「ちょっとそれどういう意味よ!」なんて女子から反感を買うが「明るいって意味だよ」なんて一人の男子がフォローを出し、女子達を落ち着かせた。
「それで・・まぁ可愛かったかな・・?」
なんて呟きながら、三島が言うと男子達が全員「えええぇ!」なんて声を出しながら、驚いた表情をする。
「なんだって!お前が可愛いなんて思う奴なのか?くそっならさらにわからなくなるぞ!」
「はぁっ?なんでよ・・・ってか、どういう意味だよ」
「お前な。男子全員が可愛いと言った田村 美野をお前は『えぇ〜?そうか』なんて軽く流したくせに!」
「はぁ?美野が?お前等な、あいつの凶暴な面を知らないからそんな事が言えるんだぞ」
「いいじゃねーか!田村目当てに、あの部活に入部する奴だっているんだぞ!・・・まぁ対外練習が辛くて、辞めてくけどな」
「いや、もっと蹴ってくれ的な、ド変態どもは残ってる・・と思う」
「で?お前が、可愛いと言うほどの奴の背丈とかは?」
「それが、かなり小さかったんだよ。同じ高校生か?って言うくらい小さかった気がする」
一般の高校生男児の身長を足して二で割った感じの・・・まぁ平均身長的な三島が、小さいというくらいの小ささか・・・なんて、頭を回転させる男子生徒。
「・・・そんな目立ちそうな奴がいたら、評判になると思うんだけどな・・・」
男子全員が、首をひねる中、一人の女子が手を挙げた。
「私、わかったかも」
「えっ、マジで?誰」
男子全員が手を挙げた女子の方に目を向ける
「三島君、その人ってこぅ・・髪は肩ぐらいで、なんか病弱そうな人?」
「あぁ〜・・・そうだっだかもしれない。うちの高校では珍しく髪は真っ黒でさ」
髪を染めるのが、主流のこの高校。いや、実際は校則で禁止になってるけど、まぁ・・そういう事さ・・いや、でも髪黒い人だっているよ。レアな人って言うか、数少ないだけで・・・先生方も半ば諦めてます。
ちなみに三島も、そのレアな人間の一人です。
「私の予想だけど、それ隣のクラスの・・・」
話しを続けようとする女子の言葉は、無視して男子全員が教室から飛び出した。「ちょっとぉ!」呼び止めようとするが、その前に教室からは半数の男子はいなくなっていた。
「おぃ、どれよ」「ちょ、押すなって!」「誰だ!今、俺のズボンをズリ下げようとした奴」
隣のクラスの二つある出入り口に、三島のクラスの奴等が群がり、教室待機していた隣のクラスの人達は、不思議そうにこっちを見てくる。
三島も、あいまいな記憶を使って彼女を探す。
「隣のクラスって、AじゃなくってCのほうよ」
三島達の教室から顔を出し、さっきの女子がそう教える。
案の定、その声に従い男子の大移動が起きた。
「どこだぁ!ちっこいの!」
一人の男子のボルテージが上がり、C組の教室の扉を開けた途端そう叫び、C組の奴等は驚き、視線がその男子に集まる。
「馬鹿野郎!俺達は、隠密機動だ」
なんて数名の男子が、叫んだ奴をダイブし取り押さえる。
このテンションの高さは、まぁ授業中だと言うのに自由に動けると言う、非常事態だからこんなにも高いのかもしれない。
出入り口は、三島以外の男子に占領されてしまい、主役の三島は仕方なく、扉の窓ガラスから探すが一向に見当たらない。
「あれ?・・・おぃ、あれじゃね?」
入口から探していた男子が窓側を指さす。
「えっ?どこ」「おぃ、押すなって!」「あっ!誰だ!俺の財布、盗った奴!」
三島も窓ガラスに顔を押しつけながら窓側を見渡す。
「んん?どこ・・」
窓側を前の方から順に見て行くが、未だに見当たらない・・・結局、最後まで見たがわからない。
いや、ちょっと待て・・そう思いもう一度、見てみると規則的に生徒の頭が見えているが、途中、頭が途切れる部分があった。
そこをもう一度見ると、頭がない訳ではない。ただ、小さくて見落としていたのだ。不思議そうにこっちを窓際の奴等が見ているが、その小さい奴は俯き、下をただ見ている。
肩まで髪を伸ばして、この高校では珍しく黒髪で、小さくて、大人しそうで、病弱そうで・・・全ての条件に当てはまる。
「あっ!あいつだ!」
三島は、目の前の扉を開き、開いていた方の男子は「おわっ」とか「あぶねっ!」とか言いながら襲ってくる扉を巧みによけ、三島は教室内へと入って行った。
「おぃ、元!」
「三島!お前、行ってどうするんだよ」
などの声は耳に入らず、彼女の方へと歩んで行った。
とにかく、聞きたかった。俺は、どうしてあの場所へ行ったのか。あの未確認生物は、一体何なのか。
三島が、教室の半分くらいまで行った頃、ようやく俯いていた彼女も三島に気づく。
徐々に近づいてくる三島に段々と彼女の顔も恐怖に引きつってくる。
三島が、彼女の席の前に来た頃には、彼女は完全に固まっていた。
「なぁ・・聞きたい事・・がぁ!」
彼女しか目に入ってなかった三島に、強烈なハイキックが決まった。
「おおぉぉぉっ!」
入口にいた男子達がそのハイキックを見て唸る。
そのハイキックをした人物は、赤髪の女子高生。我校で一番と言われる田村 美野である。
「おぃ、見えたか?」「くそ〜、今のスローで見てぇ」「ってか、短パン履いてなかった?」
群がる男子ども。
「あんた、私の友達を何、怖がらせてるのよ」
仰向けに倒れる三島を田村は見下ろすように、そう聞いてくる。
「おぃ、青い布が見えてるぞ」
三島がそう言うと、入口の男子が発狂し、田村の上履きが三島の顔面を踏みつけた。
「ぬぉぉぉぉ!」「やっべ、羨ましい」
燃え上がる一部の男子
「美野、違う!別に俺は、その子を怖がらせに来たんじゃない。ちょっと聞きたい事があるんだ!」
「はぁ?あんた、千尋とどんな接点があるって言うのよ」
「いや、俺が言ったってお前、絶対に信じないだろ!・・なぁ、あんたもなんか言ってやってくれよ」
田村の後ろに隠れる彼女に問いかけるが、田村の後ろにまた更に隠れるだけで、彼女は何も喋ろうとはしなかった。
「ほら、やっぱり。何にもないじゃない。わかったら、さっさと自分のクラスに戻りなさい」
「そんなぁ・・・」
三島は、男子に引きずられるように教室を後にした。
三島達が自分達のクラスに戻ると、さっそく談議が始まった。
「なぁ、確かに彼女は可愛かったかもしれないが俺は断然、田村だと思うんだが」
「うん、俺もそう思う」
「やっぱ、三島の見る目は、おかしいんだな・・・」
「えぇ〜?そうかぁ?可愛いと思うけどな・・なんて言うかこぅ、あの整った髪をグッチャになるぐらい掻き回してやりたいとか、思うんだけど」
「はぁ?お前、どんな趣味してんだよ」
「フェチってもんだよ」
「そんなの田村でもいいだろうが。あいつだって髪、染めてはいるけどストレートだぜ」
「馬鹿だな。俺は、あいつの髪が乱れてるとこなんて、よく見てるんだよ」
「・・・なんか、その発言、とらえ方によっては、エロく聞こえるのは俺だけか?」
男子が、そんなくだらない談議をする中
「嘘、三島君ってそんな趣味あるんだ。」
「うわ〜なんか元々嫌いだけど、さらに嫌になったかも」
なんて、女子の中で三島のランクは一気に下がっていった。
『彼女の名前は、仙田 千尋。転校生で、よく通院してるらしくて、たまにしか学校には来てなかったんだけど、最近はよく来るようになったわね。・・・通院の理由?私だって詳しくは知らないわよ。・・・なっ何が使えないよ!私のお陰で彼女見つけること出来たんだから、感謝してほしいくらいだわ!』
横転した電車内にうちの高校の制服を着た生徒が、数名乗り込む所が映像に残っていたらしく、身元確認のため学校は急きょ、休校になり三島は、一人バーガーショップでポテトを食いながら、あの出来事の事を考えていた。
突然、あれは地球の裏側とか言われても、それはそれで色々と混乱する要因であって、そしてあいまいな記憶の中に最後の方に出てきた黒いコートを着た男。
あの男が現れて、子供が突如燃えだした。
その後、意識を失って、気がつけば地下鉄のホームで・・・
『あ・・・気がついた?・・・まだハッキリとはしてないみたいね。まぁいいわ、あなたは、また近いうちに、あの世界に呼び出される事になるわ。多分、それであなたは、死ぬ事になる。』
「うおぉぉっ!」
いきなりの記憶の回復に驚き、変な声を出しながら立ち上がると、周りから変な目で見られる。
「あっ・・・すみません」
再び、席に戻りその記憶を掘り返そうとする。
場所は地下鉄のホーム、三島の顔を窺うようにこっちを見てくる仙田。そして、その横には黒いコートの男が、タバコを吸っている。
『で、ただで死んでも、あなたはスッキリしないでしょ。それに、私を助けてくれた事もあるしね。だから・・・』
その時、突然店内の照明と音楽が止まった。
「なんだ?停電・・・」
辺りを見渡すと人で賑わっていたはずの店内は人っ子一人もいない。いるのは、三島一人だけだった。
「おぃおぃ・・まさか、冗談でしょ?」
テーブルや椅子の下の床には、椅子に座って楽しそうにおしゃべりしている人達が、映っている。だが、動いてはいない。
「またチュパカブラとか、そんなやつか?・・・やめてくれよ。あれは、夢なんだろ・・・?」
その時、鈴の音がチリンと一度なった。静かな空間に鈴の音はかなり響き渡るし、背筋が一気に凍りつく。
とにかく、落ち着こうと自分の席にあるポテトに手を延ばそうとするが、誰もいないはずのこの空間で、何か動く物を目で捕えた。
道路側に面してガラス張りの店。そのガラス越しに、外の歩道を鈴を響かせながら、何かが動いている。
片手に鈴のついた鏃をもち、修行僧のような格好をし、横顔なのに立派な鼻が突き出ているのが見える。
ガラス越しに、完全に固まる三島の前にまで鏃を持った奴は来て、顔の向きを三島に向けた。
大きな目はつり上がり、口はへの字に曲げ、鬼のような形相。腰には、ヒョウタンの酒をつけ、真っ赤なお顔。
「・・・て、天狗?」
天狗は、鏃を両手に持ちかえ、振り上げたかと思うと、一気に窓ガラスを割った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
みなさんの学園生活は、一体どんなものだったでしょう・・私の高校は、この学校風景に似た所がありました。
「どこだぁ、ちっこいの」では、なく「どこだぁ、ゴッツイの!」そう言って鬼のような顔で教室に入って来た先輩方の顔は、今でも忘れられません。




