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第十八話 仙田と猫の冒険

三島の背中を襲おうとしてくる大きな鎌。三島は、揺らぐ意識の中、渾身の力を込めて柄の部分を掴むが、無情にも柄の動きは止まる事はなかった。

「何やってるのよ!」

仙田は、鎌と三島の間に立ち、刀で鎌を受け止める。

金属と金属がぶつかり合い、軋む音が周りに反響する。

三島は、仙田が助けてくれた事に気づき、掴んでいた柄を骸骨から無理にもぎ取った。

そして、もぎ取った大鎌の柄を骸骨の顎にぶつける。その攻撃は、骸骨に当たり、骸骨は揺らめき、三島達は再び、距離を取る。

「元、大丈夫?」

「あぁ・・悪い、助かった」

脇腹をさすると、ろっ骨が動く事を確認する。

「・・くそ、折れてる。道理で呼吸が辛い訳だよ。」

「大丈夫よ。元の世界に戻れば元通りなんだから。」

三島は、上着を乱暴に破り、太ももから流れる血で少し濡らすと、その布を手にグルグルと巻き始める。

「・・何してるの?」

「別に・・滑り止めだ。何故か知らないけど、この大鎌はあいつに触る事が出来た。なら、これを使うしかないだろ。」

布を手に巻き終えると、墓石に立てかけておいた鎌を取り、いとも簡単に大鎌をグルグルと回し始める。

その動きに、仙田は不機嫌そうな顔で三島を見つめる。

「よぉし!オッケィ!」

鎌を地面に叩きつけ、三島は大きな声で叫ぶ。

そして、鎌に何やら彫られている事に気づいた。

「・・・え?これ、鎌鼬かまいたちって書いてあるぞ」

「はぁ?何言ってるの・・・本当だ。」

「じゃぁあれが、鎌鼬だって言うのかよ・・なんかイメージと違うんだけど・・」

向こうでは、骸骨が顎を抑えながら、ふらついている。

「違うわよ。あんなのが鎌鼬な訳ないでしょ。彼等は三人兄弟なんだから。」

「はぁ?」

「知らないの?一人目が、相手を突き飛ばしてバランスを崩し、二人目が鎌で相手を切りつける。そして、三人目が切り傷に塗り薬を塗る。鎌鼬にあって切り口から血が出ない原因よ」

「じゃぁ・・あいつ誰?」

「知らない。とにかく、鎌鼬の鎌を持っているって事は、鎌鼬に勝ったって事でしょ。」

「そっか、あいつもこの戦いに参加してるんだもんな・・・」

「とにかく、その鎌、私に貸して。あいつは私がやるわ」

仙田は、そう言って三島から大鎌を奪い取る。

「あっ、・・おぃ、仙田」

「またあんたに発狂されたら困るのよ。だから、私がやる。」

「でも、お前。鎌なんて扱えるのかよ・・・」

「何言ってるの?」

仙田は、先ほど三島が鎌を振り回していた動きを、完璧にマネし、三島よりもさらに早く、空気を切る大鎌は、低い音を鳴らしながらグルグルと回った。

「刀なんかじゃなくて、大鎌が本来の武器よ」

大鎌を縦に構え、仙田は呪文を唱え始める。

それに気づいた骸骨は、下に転がっている瓦礫を仙田に向かって投げ始める。

だが、三島がその瓦礫を、仙田の刀を使って全て叩き落とす。

「降伏しろ!・・そうじゃないと死ぬぞ!」

三島は、骸骨に向かってそう叫ぶが、骸骨は逃げる事もせず、瓦礫を投げ続ける。

呪文を唱え終った仙田は、姿を消し、次に現れた時には、骸骨が腰から砕けて、その後ろに鎌を振り終わった姿で現れた。


「・・・これで終わりか?」

「えぇ、多分ね・・」

仙田は、刀と大鎌をどこかに消しながらそう答えた。

「この骸骨、化けて出るとかないよな?」

「イヤッ!ちょっとそんな事言わないでよ!」

「冗談です。」

「あぁ〜せっかく忘れてたのに〜・・また怖くなってきた・・」

仙田は、そんな事を言いながら再び周りを気にし始める。

そんな仙田に三島は、思いっきり大きな声で「ワッ!」っと声を出すと仙田は、その声の倍以上の金切り声を上げ、三島を蹴飛ばした。

「ちょっと!次そんな事やったら、本気で殺すよ」

「すでに死にそうです・・・」

太ももは切られ、アバラを何本か折られている三島にとっては、今の蹴りでもかなりのダメージになる。

「あぁ!ごめん、大丈夫?」

「は、早く・・向こうの世界に戻らなくてはな・・」

三島はそう言いながら、墓を伝って何とか立ち上がる。

「そうだ。それより、美野ちゃんには、言わないでしょうね?」

「言う訳ねぇだろ。言っても信じねぇよ・・・それより、お前の方がヤバいんじゃないの?こんな所に突然現れたりしたら・・」

「それもそうね・・・じゃぁ先に帰って、美野ちゃんをそっちに集中させておいてよ。私その内に帰るから」

「わかった。」

三島は、再び鳴り始める携帯をポケットから取り出し、通話ボタンを押すと姿を消した。

三島が姿を消した後、仙田は三島が身を呈してかばった墓石の前に立つ。そして、そこに彫られている名前を見る。

「尾形・・ね。」






「ちょっと〜、どうして繋がらないのよ〜。元〜」

一人残された田村は携帯を片手に、三島がどこに消えたのか周りを見渡す。

そして携帯からは未だに着信音しか聞こえてこない。

「脅かすのとか、そう言うのないからね・・」

そんな田村の後ろに現れた三島は、かなり低い声で「もしもし・・」そう答えた。

「キャァァーー!!・・・ちょ・・元〜脅かさないでよ〜、何急に消えたりしてんのよ〜」

「消えてねぇよ。ずっとここにいたんですけど」

田村が三島の方を見ている内に、その後ろで仙田が現れる。

「はぃはぃ、わかったから。そう言うの言いから。」

「イヤ、本当だって。ずっとここにいたから」

なんとか、田村をこっちの方を見させていようとする間、仙田は鞄から出てきてしまった猫を捕まえようと格闘し始める。

「嫌、そう言うのいいから。」

「いやだから、・・」

なんとか猫を鞄につめ終えると、仙田は三島にOKサインをだし、この場を去った。

「いいのー!元は、私を驚かせたかった!それでいいの!私驚いたんだからそれでいいでしょ!そうじゃないと、私発狂するよ!」

「わかったよ。じゃぁそれでいい!そう言う事にしましょう。」

「何その言い方!まるで、嘘ついてないみたいに言いやがって!」

「じゃ、どう言えばいいんだよ!」

「うるさい馬鹿!」

「とにかく、さっさと、ここから離れよう。」

「そうしましょう!」

そう言うと、二人は霊園から急ぎ足で出ていった。




「で?なんで、霊園に来てたんだ?」

「な、何でもないの。ただ、偶然、三島君達を見かけてどこに行くのかな〜って思ってついて行っただけなの。」

病室で子猫を迎えにきた三島と、説明に慌てふためく仙田。子猫についたダニにやられて、鼻を抑えながら病室を出ていった田村。

「へぇ〜・・」

「うん。。。だから、特にそれと言った意味合いはないというか・・ないみたいな・・」

明らかに嘘をついているのがバレバレの仙田。

「・・・まぁいいや。それより、仙田はどうするんだ?」

「ん?なにを?」

「何って、学校だよ。そろそろ、始まっちまうぞ。」

病室にかけられているカレンダーに目をやると、確かに学校が始まるまでのタイムリミットは刻々と迫っていた。

「・・うん、とりあえず。しばらくは、休むのかな?・・たまに学校に行けたらいいなぁって思ってるの。」

「この猫、置いて行こうか?」

「いや、それはいい。病室にいたって、多分暇なだけだから・・」

「そうか・・・」

「そういえば、もうすぐ学際だね。」

「学際?・・・あぁ、忘れてた」

「しっかり楽しんで来てね」

「ん?・・・うん」

そんな事をしばらく話すと、三島は毛づくろいを始める子猫を鞄につめると、病室から出ていった。





「そっか〜もうすぐ学際か・・私もすっかり忘れてたわ」

帰り道、仙田と話していた事を田村と話していて、学際の話へと変わっていった。

「俺もだよ・・去年の学際ってどうだった?」

「そりゃ、先生方はピリピリムード。去年の学際は私服の警官が張ってたって噂もでたくらいだから」

ため息交じりに田村は首を横に振りながら、やれやれみたいな感じで言う。

「よくそんなんで、うちの学校も学際をやろうなんて思うよな・・中止にすればいいのに」

「もしくは、生徒のみで来訪者はお断り!みたいな」

「それは、つまんないだろ。」

「まだ一回しか学際体験してないけど、そのつまんない学際っていうのも、私見てみたいわ・・」

「まぁ、それもそうだな」

「高校の選び方、私間違えたかな・・・」

「同感です・・・」

「あんたは別に、もっと上の高校も行けたでしょが!部活があるし、家からも近いからって、この高校選んだくせに」

「おぅ!その言葉、全部お前に打ち返してやる」

互いに言葉がつまり、ほぼ同じタイミングでため息を漏らしながら家へと帰った。




「・・・なんだか、私の学際のイメージとあんた方の反応がいまいち一致しないんだけど」

三島の部屋で狭いカバンから解放された子猫が、そんなことを言い始める。

「お前のイメージって・・・どんな感じよ」

「えっ?そりゃ、ウキウキわくわく・胸キュンお色気あり!ちょっとシリアスな展開もあるかも!・・って感じ?」

台所でリズムよくキャベツを千切りにし始める三島。

「残念でした。シリアスなのはあるかもしれないが、うちはそんな甘くないんだよ。それに、去年学際出てないし」

「へ?」

「多分今年も許可下りないんじゃないかな?・・・あの校長、へそ曲がりだから」

千切りをし終えたキャベツを水がたまったボウルへと投入し、その後ろでは首をかしげる子猫。

「あぁ・・・ごめん、よくわからないんだけど・・」

「ん?大した話じゃないさ。去年、色々と問題を起こした生徒は、学際に出るな!って校長が言ってるのさ。暴力事件とか起きたりしたら困るからな」

「・・・で?なんで、あんたが出るなって言われてるの?まさか、暴力事件でも起こしたって言うの?」

冗談半分で笑いながらそう言い放った仙田だが「そうだよ」と三島が簡単に答え、その笑い声が止まった。

「はぁ?・・えっ?嘘でしょ?・・またまた〜。そんな事できる玉じゃないって」

言葉を選ぶ余裕もなく、口から独りでに言葉が出てくる仙田。

そんな中、手慣れた手つきでひき肉や、玉ねぎやらをこね始める三島。

「まぁ、実際そうなんだけどね・・・」

「でしょ〜あんたみたいなのが、暴力事件とか起こしたってんなら、きっとここら一帯は無法地帯ね」

「おぃおぃ、いくらなんでもそりゃないでしょ・・・」

「あんたみたいな、謎の偽善者は、そこら辺探したって早々見つからないって・・」

熱しておいたフライパンに丸く形を作った肉を載せると、肉が焼ける音が鳴り始める。

「人殺しの元」

「えっ?」

「・・・俺の異名。その名前が一時期、この街を独り歩きした時があったんだ。」

「はぁ、ないない。あり得ないから」

「まぁまぁそういう時期もあったんだよ。そのお陰で校長は、俺を問題児の部類へと入れちまったって訳」

両面を軽く焼き終えると少々水を加え、香辛料や調味料を入れ始め肉の上に生卵を載せると蓋を閉めた。

「で?だから、去年は学際に出れなかったって訳だ」

「その通り。信じてくれた?」

肉を少々煮る時間にキャベツの水を切り、ご飯の入ったどんぶりの上に載せ始める。

「誰がそんなデタラメ信じるか!」

「・・まぁ別に信じないならそれでいいんだけどさ」

「なんで学際に出なかったの?・・・もしかして、みんなが盛り上がってるの見ると逆に冷めちゃうタイプ?」

「冗談。むしろさらに盛り上がっちゃうタイプ」

「だよね〜ならなんで出なかったのさ〜?」

口を尖らせながら仙田は、三島に問いかける。

「だから、あれが本当の真相だって〜・・・よし、完璧だ!」

蓋を取り、濃い煙が晴れ始めるとそこから出てきた半熟玉子付きハンバーグを先ほどのどんぶりの上へと載せ、フライパンに残った汁をその上から少し垂らす。

「どうよこれ!ロコモコって奴らしいんだけどよ。昨日の店で食ったんだ、そんで、俺にも出来るんじゃなかって思って作って見たんだけど、俺ってやっぱ天才!」

「おぉー!おいしそうじゃない。でわでわ、さっそく・・」

そう言いながら、仙田はどんぶりに手を伸ばすが、透明な手はどんぶりを透き通り、握りしめた手には、何も掴めていなかった。

その不可解な光景を見て三島の目がにやりと笑った。

「えっ?あれ?掴めないよ?えぇ!なんで?」

「なんでって、これ俺のだから。」

三島はそんな事を言いながら、仙田が何度も挑戦するどんぶりをとりあげた。

「はぁ?あんたいつも、そっちの茶碗じゃない。」

「そんなことないさ。」

仙田は、残り一つのどんぶりに目を光らせ、そのどんぶりを取ろうとするが、結果は空を切るだけだった。

「いや〜、本っ当にどうなってるわけ!」

次第にイライラとし始める仙田。

その光景を見て、笑い始める三島。

「うん、いい加減種明かしするか」

「種明かし?」

「そう。墓参りに行って思ったんだけど、墓参りの時ってなんか、食い物とか持ってくべ?それって先祖とかそんな人達に、これあげます。みたいな感じで差し出したりするしょ?まぁ貢物って言うのかな?・・初詣とかでも、自分の財布から渋々小銭をとって投げ入れるしょ。それって自分の所有物を放棄するのと同じなんじゃないかなって。・・・つまり、今まで俺は、お前に何の迷いもなく飯を放棄してたって訳だ。」

「・・・じゃぁ今、私がこのどんぶりを取れないのは、あんたがこのご飯を放棄してないからだっていうの?」

どんぶりの前に正座で座りながら、どんぶりと睨めっこをし始める仙田。

「そういう事。あの骸骨が鎌鼬の鎌を触れてた訳もこれで説明がいく」

「なるほど!・・って言うかぁ!私はご飯が食べたいの!ねぇ、早く頂戴!」

「とまぁ、そういう訳だから、うまくいけば、ご飯の支度とかも当番制にすることが出来るかもしれない!・・手伝ってくれるか?」

「わかった。手伝う、手伝うから。早く早く!」

「よし、ならば食って好し!」

「やったぁ!」

喜びながら飯にありつく仙田だが、不意に三島が庇った墓石のことを思い出す。

「ねぇ?」

「ん?」

口の中に物が入った状態で、返事をする三島。

「尾形って誰?」

仙田のその言葉で、三島の口の動きが一度止まった。

再び三島の口は動きだし、口の中にあったものを喉に通した。

「えっ?なんで知ってるんだ?」

「いや、知ってるも何も、墓石に彫ってあったじゃない」

「あぁ、それでか・・・」

「何?もしかして、触れちゃいけないところだった?」

「別に・・・尾形 剛。去年の大会、俺の決勝戦の相手だ。」

「へぇ〜そうなんだ・・・」

「なんだ、反応悪いな。もうちょい、オーバーリアクションすれよ」

「ん〜ちょっと予想してたから。むしろ予想道理で幻滅って感じ」

「幻滅って、俺にとってはトラウマみたいなもんだぞ。それを幻滅って・・」

「まぁ仕方ないんじゃない。」

「そんなもんなのかな?・・・御馳走さん」

三島は、自分の食器を持って台所へ向かう。

「ねぇ、私がどうして実体を失ったか知りたい?」

突然、何を言い出すんだが・・そんな感じでため息を漏らす三島。

「それで興味ないって言ったら怒るだろ?」

「もちろん。」

「じゃぁ知りたいです。」

「私ね。実は人間に憬れてたの。だから、よく人里に下りて悪戯とかをしてた。」

「おぃ、憧れと悪戯がどうやったら結びつくんだ?」

「まぁ聞けって、そのせいで私は捕えられて、体を縛りあげられ、青い炎の中に投入されたの。そして実体を失った私は、壺に封じ込められたって訳。あぁ、今思い出すだけでも身震いしてきちゃった。」

飯を食い終わった仙田は、そんな事を言いながら軽く体を震わせる真似をしていた。

「殺されるような悪戯って、いったいどんな事してきたんだよ・・・」

空になった仙田の食器をとりながら三島は聞いた。

「別に・・作物を荒らしたり、空家に火を放ったりしただけよ」

「それを『だけ』と言えるのがすごいな・・・」

「なんでよ。現代風に言ったら、万引き犯と放火魔なだけよ。」

「どっちも犯罪なんですけど!」

「いいじゃん、ばれなきゃいいのよ。」

「駄目に決まってんだろ。」

「それにもぅ時効だし〜」

「はぁ、時効制度なんてなくなればいいのに・・・」

「何百年も前の話よ。時効も何もないじゃない。それに昔の時代ならそんなのしょっちゅう起きてたし。このくらいで済んだらいいほうよ」

「じゃぁ悪い方だと、どんな事が起きるのさ?」

「そうね・・・疫病とかで村壊滅・・とか、山火事で大惨事・・とか」

「いや、もういいわ・・なんか凄い時代だったんだな・・」

「まぁね。」

「でも、仙田。なんで突然、そんなこと言い出したんだ?」

「さぁ?なんとなく・・・」

なんて、なんに意味もない会話をしていると、窓の方で物音がした事に気付き、目をやる一人と一匹。

そして、窓のところに立っていたのは、何やら変な目つきで三島を見てくる田村だった。

「あれ?美野じゃん。どうした?こんな時間に」

「いや、ちょっと香ばしい匂いに誘われてだけど・・じゃなくて、あんた、今誰としゃべってた?」

「えっ・・・?」

「そして、その相手をなんて呼んでた?」

「あっ・・・」

顔から一気に血の気を失う一人と一匹。

三島の反応を見て、聞き間違いではないことがわかる田村。

「あんた、ネーミングセンス・・じゃない、えっ?」

頭の中が混乱し始める田村。

そんな田村を落ち着かせようとする三島。

「あの・・・美野。これには、ちょっとした訳があってだな・・」

「訳?・・訳があるの?・・よ、よし。聞こうじゃないの」

そんな事を言いながらも田村は完全に三島を警戒していた。警戒しながら田村は真ん中にあるテーブルの横に腰を下ろす。

そして、そのテーブルに近づく三島は言い訳を考えている最中である。

テーブルまであと2メートル。到着するまでに何か良い言い訳を考えなくては・・・

そんな事を考えているうちに、三島はテーブルへと腰をおろしていた。

「・・・で?訳って言うのは?」

「いや・・・実はだな・・えぇっと、この猫。・・・その名前にしか反応しなくでだな・・仕方なく、それを使ってるんだ。」

「・・・・はぁ?」

「いや、だから。」

「ちょっと待って。猫ってそもそも反応しないだろ・・って、それでなんで千尋と同じ名字になるんだよ。」

「いや、違う。正確には、こいつの名前は、三島 仙田だ。一応、全部試したんだよ。危なかったぜ、きっと。下手したら、三島 美野になってる可能性だってあった訳だから。」

「な、なんで、私が元と結婚しなくちゃなんないのよ!」

「いや、違うって猫の名前だよ。」

硬直する猫を指差す三島。

「あぁ・・・そ、そうか」

「な、なんで残念そうな声出してんだよ・・・」

「出してなんかないもん!」

その時、突然電気が大きな音を立てながら消えた。

「ん?停電か?」

三島は、窓から外を覗くと周りの家にも光は点っていなかった。どうやらここら一帯が停電になっているらしい。

「何〜?停電?」

そんな事を言いながら田村も窓辺に近づいてくる。

「ん〜そうみたいだな・・・しかもここら辺一帯だ。変電所で何かあったのかな?」

「でも、びっくりした〜。いきなり暗くなるんだもん」

「にしても、何にも見えないな・・・たしか懐中電灯が・・・」

そんな事を呟きながらそこら辺を歩く三島。そして、足で何やら毛深い物を踏み驚く。

「オワッ!」

「ギニャーー!!」

「キャーー!!」




30分後・・・・・

「・・・にしても、電気、回復しないな」

「そうだね・・・ほんとに何かあったのかな?」

そして、三島はあることに気がつき、大きな声を上げる。

「しまった!!」

「何?どうしたの?」

「電気!冷蔵庫!・・・発泡スチロール!アルミホイルぅ!!」

三島の言葉を理解し、田村も急ぎ自分の部屋へと戻ろうとするが、冷蔵庫の現状を思い出し、部屋に戻るのをやめた。

三島は、とりあえず危険そうなものを発泡スチロールに詰めて、保冷剤を突っ込み蓋をした。

相も変わらず暗闇の中、目が段々と慣れてきた田村が、部屋を見渡していると、暗闇の中で光る子猫の目に驚いた。

「キャー!!」

「ニャー!!」

「おわっ、なんだぁ!」





その頃、街から離れた変電所では、何台もの消防車と救急車に交じりパトカーが数台その場にやってきた。

「・・・ったく、なんで俺らが殺人現場に行かなきゃいけないんだ?」

ブツクサと文句を言いながら車から降りてきた若菜だったが、変電所にある焼死体を見てその文句を垂れていた口は笑みへと変わっていた。

「詳しくは鑑識に出さないことにはわからんが、おそらく見たことのある顔だ。」

背丈に合わない程の丸みを帯びた焼死体の指にはいくつもの指輪が付けられいる。

「こりゃ・・・戦争が起きるぞ」

若菜はそう言い終えると、大きな声で高笑いをし始め、野次馬達はその刑事にくぎ付けになり、その中には伊吹の姿もあった。




一方、三島宅ではテーブルに一本のロウソクが立てられ、二人は怖い話で盛り上がり、そんな話は聞きたくない!と必死に外に出たいと懇願し窓を爪でカリカリと引っ掻く一匹がいた。

「・・・それはお前の事だぁぁぁ!!!」

三島のその叫びに田村は笑い、子猫は気絶した。





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