第十六話 仙田の大冒険?
「・・・ん〜、まぁ部長としての最後の言葉とか言われても、何も思い浮かばないけど・・」
小さな駅に、体格のがっしりとした男子や、目付きの悪い女子が集まり、赤い髪の女性がその集団をまとめ上げ、周りからは一体何の集団!?みたいな目線が飛んでくる。
「まぁ、この一年間、・・一年間じゃない人もいるけど、私のわがままのせいで辛い練習とか、付き合ってもらってどうもありがとう。これからは、子島を中心に新しい一年間を創り上げてもらいたいと思います。私達2年も、まぁ辛かったけど・・みんなのお陰で、楽しく部活をする事ができました。」
厳つい集団からは、次第に鼻のすする音や、小さく鳴く声なども聞こえ始める。
「まっ、有望株の子島が日本一になれたんだし、来年は入部希望者も増えると思うしね。私の代よりももっと厳しくやってもらわないと。たまには、顔も出すから、サボってたりしたら承知しないからね!・・・えぇ〜以上、最後の部長の言葉終わり!解散!」
「「お疲れっした!!」」
全員が、田村や2年の人達に一礼すると、ぞろぞろと皆それぞれの帰り道へと歩いて行き、その姿を田村達は見送った。
「・・・まぁ、みなさん。どうもお疲れ様でした。」
固まっていた空気を田村の言葉で溶けはじめ、涙を眼に浮かべる人や、ようやく終わったと溜息を洩らす人など、それぞれこの一年間を思い浮かべていた。
「終わっちまったな〜、こんな辛いの早く終われ!とか思ってたけど、いざ終わっちまったら、なんだか拍子抜けだ」
「そうだな・・・」
「でも、楽しかった。・・・ホント、辛い事もあったけど、いいメンバーに恵まれたと思う」
しみじみとする空気に誰かが、さらに追い打ちをかける
「元が、ここにいればな〜。こんな空気、フッ飛ばしてくれるのに・・・あっ・・・」
気付いた時には、さらに重くなった空気にそいつも押しつぶされる。
この空気を打開しようと田村が口を開く
「・・・と、とにかく、みんなはこれからどうするの?私は、帰ろうと思うけど・・」
「まぁ、そうだな〜腹も減ったし、どっかで飯食って俺は帰るかな〜」
「おぉ、いいねぇ。俺も行く」
「私は親が迎えに来てるから・・・」
そう言って、みんなのこれからの予定が定まっていく。そんな中、田村は一人早く、その集団から抜け出した。
「それじゃ、私そろそろ行くわ。みんなお疲れ〜」
「おぅ、お疲れ様〜」
涙を見せる事なく、遠ざかっていく田村を、他の2年が見送り、おそらく同じ事を考えているであろう全員が、顔を合わせる。
そして、一人が携帯を取り出し、電話をし始める。
今日も、いつも通り蒸し暑い部屋の中で三島は、ベットの上に座り、携帯で通話をしていた。
「そうか・・・うん、わかった。お前等もお疲れさんって、みんなに言っておいて・・・うん。・・じゃぁな」
携帯を閉じ、一度溜息をつく三島。
問題と言うのは、どうしてこうも積み重なるのだろうか・・・
一難去ってまた一難ではなく、まだ去ってないからね、一難あるって言うのに、また更に一難きやがった!
仙田もまだ帰って来ないのに、その上、美野の事まで・・
「なんて励ませばいいんだよ。くそ〜・・・」
ない頭をフルに回転させ、頭を掻きまわす三島。
さて・・どうしたものか・・・仙田は、まぁ腹が減れば帰ってくるから放っておいて・・・美野は、まぁ腹が減ればここに来るだろう・・・あれ?似たもん同志?
つまり、考えてもしょうがないという結果になりました。
その結論に納得し、三島は学生服に着替えると、学校へと繰り出した。
「み〜し〜ま〜くん。異種武道の全国大会の結果知りたい〜?」
先ほどから担任は、問題を解く三島の周りをグルグルと動きながら、同じセリフを言ってくる。
担任の言葉を無視し、三島は問題に集中する。・・なぜなら、これはテストだから。
テストのくせに、担任は暇を持て余し、三島に話しかけてくる。
教員として正直、それってどうよ?
「よぉしっ!おわった〜」
名前の最終確認も済まし、体を伸ばす三島。
「なに?まだ時間は半分以上あるぞ。見直さなくていいのか?」
「別にいいですよ。成績に関係する訳じゃないし・・・この補講でどれほど勉強したか、確認するためのテストでしょ」
「ちぇ、可愛くねぇな・・・じゃぁ終了な」
担任は、三島から答案用紙を受け取ると、再び顔がニヤケ始める。
「で?三島、結果を聞きたいか〜?」
「先生・・・・悪いと思うけど、結果、知ってますから。男子は子島が優勝で、女子は美野が準優勝でしょ・・」
「え?マジで・・・そうだったのか・・いや、てか言うなよ〜。俺も後で顧問から聞こうと思ってたのに・・」
「知らなかったの?・・・って知らなかったのに、俺の邪魔をしてたんですか?うわっ最低だ!」
「いいだろ。暇だったんだ」
「どんな教師だよ!」
「・・・まぁいい!今の発言は、俺の心を傷つけたが、聞かなかった事にしてやろう。そして、俺はこれから部活の練習だ!」
担任は、時計を見て完全に遅れた事に気づき、急ぎ教室から出ていった。
「ちょっと、テストの採点は?」
「また今度な〜・・・」
担任を呼び止めようとする三島の声も虚しく、担任は廊下を豪快な足音を響かせながら消えた。
「また今度って・・今日最終日なんですけど・・・・」
「しまった!エコバック忘れた!」
食材をかごに入れ、長いレジに並ぶ中、三島はスクールバックの中に、いつも入れていたはずのエコバックがない事に気がつく。
・・・確か昨日、仙田が帰って来ないのを心配しながら、カバンの中身を最終チェックしている時に、エコバックを鞄から一度出したんだった!
「くそ〜、最終チェックのせいで、最終的にミスをしてしまった!」
悔しがる三島を、一緒に並ぶ奥様方は一歩引いた眼で見てくるが、まったく気がつかない三島。
仕方なく、袋を買いミスをしてしまった自分が情けなく、肩を落としながらアパートへと向かう三島。
重い足取りで階段を上り、扉を開く
「ただいま〜・・・」
「やぁやぁ。お帰り!」
返ってくるはずのない返事に驚き、下がっていた顔を上げ、部屋を見渡す。
「そして、お邪魔してます」
部屋の真ん中にあるのは、丸いテーブルなのだが、その横にセットでいたのは田村だった。
「えっ?・・・か、鍵は?・・」
「窓が開いてた。あんた不用心にも程があるわよ」
立ったまま動く事が出来ない三島が持つレジ袋をあさり始める田村。
「珍しいね、エコバックでも忘れたの?・・・ってなんだこれ。煎餅が無駄に多いな」
「いや・・・これは、せん・・じゃない、猫の分だ」
「猫?・・・猫に煎餅なんか食わせて大丈夫なの?」
「さぁ、どうなんだろう・・」
実際は、猫から出てきた仙田が食べているのだが、そんな事は言えるわけがない。
「・・・で?準優勝だって?」
「ゲッ、もぅ聞いちゃったの?」
「俺の情報網を舐めるなよ〜。」
三島は、冷蔵庫に食材を入れ始めながら、話題をそっちに持って行き、本心を突かれた田村は、うろたえる。
「うん、また準優勝だよ・・・去年とは相手は違ったけどね。延長戦で、効果取られちゃって、試合終了」
ベットに腰をかける田村。
「そっか、まぁ良かったんじゃね?日本一になるって良い目標がまだ残ってるんだから。」
冷蔵庫に、食材を入れ終え、冷蔵庫から缶ジュースを取り出し田村に投げる。
「いいね、そうやってボジティブに考えれるんだから」
「ネガティブに考えたって、何にも変わらねぇからな・・・」
「前向きだろうがなんだろうが、変わらないわよ。」
「それを言っちゃ駄目だろ」
「まぁね・・・・」
「これでお前も、しばらくは部活じゃなくて趣味として、異種武道と向き合えるんじゃね」
「確かに・・・久しぶりに道場に顔でも出すかな・・ねぇ元も」
「いかねぇよ」
「だよね・・・」
「その通り。」
三島は、テーブルの横で田村に背を向けるように座り、床に置いてあるテレビのリモコンを手に取り、スイッチを入れる。
「じゃぁ今度、千尋のお見舞いに行こうか」
「そうだな・・・」
チャンネルを回し、特に観たい物はないが、ドラマの再放送の所で止め田村を見ようとはしない。
「夏休み中に、部活が終わるなんて実際凄い事だよね・・・実感しちゃった」
「まぁ、部活から解放された時ってかなりの開放感があるよな・・」
「そうそう、明日からあの汗臭い道場に行かなくていいんだって思うと・・結構、嬉しいような寂しいような・・」
次第に声のトーンが小さくなっていく田村。
「お疲れさん。部長」
「・・・うん・・大変だった・・・」
「もぅ部長じゃないもんな」
「うん・・」
「辛かったろ?」
「うん、辛かった・・・大変だった・・・」
そして、田村は三島の背中の服にしがみ付き、何事!?そんな感じで振り向こうとする三島の首を途中で止めた。
「今、振り向いたら殺す・・・」
三島の視界からは、自分の肩とその横から赤い髪が少し見えるだけだった。
「・・・わかったよ・・」
三島は、テレビに視線を戻し、テレビのボリュームを上げる。
そして、テレビのボリュームが上がるのと比例するように田村の泣き声も大きく部屋の中に響いた。
あぁ・・・お腹すいた・・そろそろ戻った方がいいかな・・
そんな事を思いながら、アパートの周りをグルグルとうろつく仙田。
馬鹿野郎!今まで、っどこに行ってやがった!・・はぁ?俺がそんな事でおちょくる訳ねぇだろ!心配かけさせんじゃねぇよ!
心の中では、三島がマジギレした姿が浮かんでくる。
あぁ〜こんなんだったら、さっさと帰ってるんだった・・・・
お帰り。さっさと飯にしようぜ、・・・はぁ?怒ってる?何に?・・そりゃ心配はしたさ・・でも、帰って来てくれたんだから、それで良しさ。
「有り得ない!そんな元の態度は、絶対に有り得ない!」
謎の三島の心の中から放り出すが、先ほどの元が出てきて、再びアパートへ向かう足取りが重くなる。
「えぇい、悩むな!背に腹は代えられぬ!腹が減っては、なんとやらだ!」
一気に階段を上るが、ドアノブに手が届かない事に気づき、階段を降りる仙田。(いや、その前に猫の手で扉を開けるなんて無理だし)
「ベランダから行きますか・・・」
アパートの裏に回り、背の低い塀に飛び乗り、一気に三島の部屋のベランダへと飛び乗った。
ちょっと様子でも窺ってみますか・・・
そんなつもりで、部屋の中を窺い、謎の光景に目を疑い、その場に凍りつく仙田。
三島は、テーブルに手を置き、その手に顔を乗せテレビを見て、その後ろで三島の背中にしがみ付きながら泣いている田村。
「・・・えっ・・なにこれ?・・」
そして、ベランダで何か動く気配を察知した三島の目線が子猫にヒットする。
三島の表情は、見られてはまずい物でも見られてしまった!なんて顔でこっちを見てくる。
その目線に、金縛りが解けた子猫は、身をひるがえし、すぐにベランダから立ち去った。
行き先も決めずにただひたすらに走り続ける仙田の心の中では、先ほどの怒鳴り散らす三島、やけに優しい三島が交互に出てくる。
「何よ!何よ!どっちも違ったじゃない!・・・私の嘘つきーーー!!」
猛スピードで走り抜ける仙田。そして、バイトが決まったウキウキ気分の伊吹の目の前を通り過ぎていった。
「うぉっ!何だ今の?・・・猫?日本の猫ってあんなに足が速いんだ・・・」
そして、腹を空かせた猫は、三日目の朝を迎えた時に、三島の部屋に戻ってきたそうだ・・・
「ねぇ・・・本当にいいんだよね・・」
「あぁ、もぅ決めた事だ」
暗闇で声を潜ませるあやしい二人。
「でも、私やっぱり不安だな・・・」
「そりゃ、俺も初めての時は、不安だったけど、やっちまえばなんだこんなもんか・・なんて思うぞ」
「で、でもさ・・」
それでも不安がる田村に、三島の一言。
「やっぱ、やめとくか?」
「い、いや、やる!元の頼み事だもん。ちゃんとやります」
「そっか、ではでは・・・そろそろ」
そう言うと、二人は蒲団の中へ潜り込んだ。
「ただいま〜、なぁに?部屋こんなに暗くして・・・」
何も知らず部屋へと入ってくる仙田。
異様な気配を感じ取りながらも、仙田は部屋の中へと入ってくる。
「今だ!」
三島の掛け声とともに蒲団が宙を舞い、その布団の中から三島と田村が子猫に向かって飛び込んで行く。
「ヒッ」
突然の出来事に子猫は驚き、その場で一瞬固まる。
「神妙にお縄につけぃ!」
そう言いながら子猫にダイブしてくる三島の顔を蹴りながら、子猫は上に飛ぶが、それを先読みしていた田村が、両手でしっかりと捕まえた。
「捕まえた!」
「よぉし、大義であった美野!」
「何、なに、なに、なに?えっ?ちょ、美野ちゃん!何これ?いや、放して!」
パニくる仙田は、田村の腕を爪で引っ掻きまくる。
「痛い痛い痛い痛い!猫ちゃん、痛いって・・・」
「コラッ!かっちゃいてんじゃねぇよ」
三島は、仙田の首元を掴み、田村から引き剥がす。
「元ーー!こりゃ一体どういう事だ!・・おぃ聞いてるのか!」
首根っこを掴まれ、暴れようにも意味がないとわかった仙田は、三島に問いかけるがその声は副音声なので無視する三島。
「・・・でも、やっぱ可哀想だよ。こんなに嫌がってるのに」
「仕方ないだろ。俺だって初めてやった時は、可哀想とか思ったけど、終わった頃にはやって良かったって思うぜきっと」
そう言いながら猫をつまんだまま三島は、洗面台へと向かった。
そして、ある事を思い出した子猫は、また更に暴れる動作が激しくなる。
「わかったぞ!元、あんた、私をまた殺す気だな!」
「馬鹿・・人聞きの悪い事言うな」
田村には聞こえないように小さな声で仙田に話しかける三島。
「それに、お前がちゃんと体を綺麗にしないのが悪い」
「猫に対して「お前」って正直どうかな・・・」
なんて首をかしげる田村。
「イヤーーー!お風呂イヤーー!絶っ対に嫌!」
そんな事を言いながら暴れる子猫だが、田村の耳には副音声が届かないため、「ニャーニャー」言いながら、三島の手から逃れようとしているようにしか見えていない。
「はぁ〜、やっぱりペットっていいなぁ・・・私も猫でも飼おうかな〜」
「いやいや、自分の身の回りも管理できないのにペットってそれは無理でしょ」
三島の指摘に田村の手刀が火を噴いた。
「いってぇ!・・馬鹿、こっちは猫を捕まえてるんだぞ。」
「あぁ、そうだったごめん」
先ほどまで暴れていた子猫は、いざ水を目の前にして恐怖のあまり体をピンと伸ばし硬直する。
「さぁ覚悟はいいかな?」
「無理無理!絶対無理!なぁお願い、何でもするからお風呂だけは絶対に嫌〜・・・」
「問答無用!」
そう言いながら、三島は洗面台の前に立ち、子猫をお湯の中へ入れていく。
「人でなし〜」
「どうだ、見違えるだろ」
「ほぉ・・・確かに、サッパリしたかも」
胸を張る三島。そして、子猫の変身ぶりに感心する田村。
そして、その二人に全身の毛を逆立てる仙田。
「ねぇ、やっぱり怒ってるみたいなんだけど・・・」
「ん〜大丈夫だ。ホラっこれ」
そう言いながら三島は、田村に猫じゃらしを渡した。
「初めはそっぽ向いてるけど、次第に動き出すから」
「へぇ・・そうなんだ」
田村は、渡された猫じゃらしを子猫の前でチラつかせる。
子猫はそんな目の前で、三島にそんな事を言われて、馬鹿正直に釣られてたまるか!その意気込みで耐えていたが、一分も経たないうちに子猫は、本性を現してしまった。
三島の部屋の中に「ニャーニャー」とその猫の可愛らしさに「キャーキャー」と言う声が充満していた。
「・・・にしても、お前、猫アレルギーじゃなかった?」
「あぁ・・それがね、部活もなくなったし、暇だったから病院で実際に調べて貰ったらダニアレルギーだったみたい、私」
「ダニって・・お前、自分の部屋はどうなんだよ・・」
「わからない」なんて田村の答えに三島は、ダニも寄らない程の汚さがあるんだと自分を納得させた。
「おぃ、美野。お楽しみの所、申し訳ないが、そろそろ・・・」
「えっ、・・あぁそうだね。ごめんね、猫ちゃん。私達、そろそろ出かけないと」
「とりあえず、仙田の所に行って、猫を預けないとな・・・」
「うん、そうだね」
二人のやり取りを聞きながら、どこに行くんだろうか?と詮索をする子猫。
だが、その努力もむなしく三島がその子猫を捕まえ、カバンの中へと押し込んだ。
「そんじゃ、多分、明日迎えに来るから、それまで預かっておいてね。千尋」
「うん、行ってらっしゃい」
病院についた二人は、少し仙田と話をすると、すぐに子猫を仙田に任せ、病室から出ていった。
そして、それを何も疑わずに笑顔で送った仙田。
「・・・絶対にあやしい。」
鞄から頭だけ出す子猫が、そんな事を言った。
「あやしいって?」
「あの二人・・・・ねぇ千尋、後付けてみよう。」
「えっ、なんで?」
「私を明日、迎えに来るって事は、つまり二人はどっかに出かけて、外泊するってことでしょ?」
「ん〜、どこ行くのかな?・・・」
「もぅ!鈍感なんだから!・・・若い男女がどこかに出かけるって事は?」
猫の言葉の意味をしばらく考え、首をかしげる仙田。
そして、ある答えを導き出し、一気に赤面する。
「フォッ!・・・・えっ?・・いや・・・まさか・・・」
「わからないよ〜、若気の至りって奴は・・・」
「だって、二人はまだ高校生で・・・」
「いや、だからでしょ。学園物の小説一体何本読んだって言うのよ」
「えぇ〜だって、小説は小説だもん。現実とはきっと違うって」
「現実の方がきっともっとリアルでシビアよ。・・・ねっ、だから二人がそんな事にならないためにも、内緒でついて行ってみよう」
猫は、そう言うと、仙田の了解も得ずに猫の中に入っっていた透明な物が、仙田の中へと入っていった。
「・・・まぁ、ふ、二人の関係がどうだって訳じゃなくて・・・私は、ただ久し振りに出かけたいなって気持ちだから、・・・ただ、それだけ。偶然、一緒の方向に向かうだけなんだから・・・」
仙田は、そんな事をブツクサと呟きながら、私服に着替え始め、身長には不釣り合いな大きな帽子をかぶり、ベットでウトウトとし始めていた子猫を、鞄につめると病室から出ていった。
「ねぇ、時間までどこに行く?」
「ん〜とりあえず、さっさと向かっちゃおうぜ。向こうに着いてからなんか適当に時間でも潰そう」
田村と三島は、そんな事を話しながら、駅に向かって歩く中
「こ、これ、なら絶対怪しまれないよね・・うん、多分・・・大丈夫・・・」
サングラスと大きな帽子をかぶった明らかに怪しい少女が電柱に身を隠しながら二人の後を追い、トコトコと歩いて行った。




