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第十五話 猫の遠吠え

三島が次に目を覚ましたのは、アパートの近くをたくさんの消防車が、通り抜けていく音でだった。

「あぁ、ようやく目を覚ました。」

声のする所に目線をやると、部屋の真ん中で、仰向けに寝ていた三島の上に仙田が寝ていた。

「ギャアアァアーー!!」

「んニャーーーーー!!」

ガバッと起き上った三島、そして、それに驚き三島から離れるよう飛び跳ねた仙田。

「うわっ、何これ!デジャブ?」

そんな事を言いながら、飛び跳ねた仙田が猫だと言う事を思い出し、胸を撫で下ろす三島。

「・・・なんだよ。びっくりさせるなよ・・・」

「びっくりしたのは、こっちの方だ!なによ、突然」

そんな事をしていると、再び消防車がアパートの近くを通り抜けていく音が聞こえた。

「消防車・・・?」

「あぁあ、多分、神社の方よ・・・山火事でも起きたんじゃない?」

三島の部屋からは、その神社は見る事は出来ないが、先ほどの戦いを思い出し始める三島。

「・・・・俺、殺しちまったのか」

「・・そうね。あの時、頭にコブが出来た。」

「悪かったな・・・突然、暴れ出したりして。」

「・・・あんたの中で、一体何があったの?」

「別に・・・戦いを回想していると、もう一人の俺が、解説をし始めるんだ。この時、俺はこう思っていた。だからこう言う風に行動した。・・・いつも、俺とは別の考えを主張してくる。」

三島は、左腕を隠していた包帯を外し、傷跡が残る腕を仙田に見せる。

「俺は、その主張を鎮めるために、いつも自分の体を傷つけていた。・・・あの時の俺も一番、近くに目に入った刀に目がくらんだ。・・・・伊吹が止めてくれなきゃ、正直ヤバかったかも・・・」

「そうだったの・・・」

「そうなんです。・・・ごめんな」

「なに?・・・私に謝らないでよ。やだ、鳥肌立ってきた。気持ち悪」

仙田は、三島の言葉に体を震わせる。

「うわっ・・傷つくわ〜」

「むしろ、謝るなら伊吹の方なんじゃないの?」

「まぁ、それもそうなんだけど・・・今、どこにいるんだろうな」

「それより、お腹すいた。」

三島は仙田の言葉で部屋に飾られているデジタルの時計に目をやる。

「はぁ?さっき朝飯食ったばかり・・・って、うわっ!しまった。今日のテレホンのゲスト見たかったのに・・もぅ昼ドラの時間じゃねぇか」

「失神してたあんたが悪い」

「くそっ・・・こんな事なら録画しておけばよかった・・」

そんな事を言いながら頭を抱える三島の携帯が、鳴り始めた。

携帯を見ても、電話番号しか表示されず、「誰だろうな・・」なんて呟きながら電話に出る。

「はい、もしもし・・・」

三島も初めは気楽な感じで電話に出ていたのだが、電話の向こうから聞こえてくる激しい声に次第に三島の顔も青ざめていく。

「ん?・・・どうかしたの」

仙田の問いかけも聞かずに、三島は携帯を切ると、急ぎ学生服に着替え始める。

「しまったーーー!すっかり忘れてた」

三島の脱ぎ棄てた服のほとんどは、見たくもない映像に凍りついていた子猫に降りかかってきた。

「くっそ、地球争奪戦だがなんだか知らないが、そんな事よりも大事な行事があるのを、忘れてしまっているとは、この三島 元、一生の不覚!」

「フガ・・フゴ・・・・はぁっ、死ぬかと思った。ちょっと、さっきの電話は一体何よ!」

服が体に巻き付き、身動きが取れない仙田は、何とか、服の袖から顔を出し、学生服に着替え終えた三島に話しかける。

「あぁ?お前、知らないのか!・・仙田だって本来なら、行くはずなんだぞ!」

「はぁ?」

玄関に急ぎ、靴を履き、扉を開く。

「生徒の、生徒による、生徒のための」

仙田が付いて行こうと急ぎ扉に駆け寄るが、豪快に閉じられた扉に顔面からダイブする。

そして、扉を挟んで三島の言った一言は、仙田に聞こえていたのかは定かではない。

だが、一応なんと言ったかは、言っておこう。

「補講だーーーー!」






「み〜し〜ま〜、先生は悲しい!・・・お前が、仙田があんな状況だから日時をズラしてくれと言ったから、先生は感動して補講の時間をズラしてやったというのに、・・・まさか、忘れてるとは。はぁ〜先生は悲しい・・」

教卓の上に腰をかける担任は、自分を一時間以上待たせた三島を地面に正座させそんな事を言い始める。

「あの・・・先生っ、いい訳するつもりじゃないんですが・・あの間に色々とありましてですね」

「ほぉ・・・色々とな?」

「え、えぇ」

「どんなだ?・・産気づいたお婆ちゃんは無しだからな」

「ちょ、ちょっと、繁華街の方で・・あいつ等に見つかっちゃいまして・・」

「なんだと・・・」

その三島の言葉に、顔色を変える担任。そして、先生の表情に焦る三島。

「いえ、それは・・もぅ解決したんで、もぅ、大丈夫です・・もぅ、ご心配なく」

「そうか、もぅ面倒事は勘弁だからな」

「はい」

「では、気を取り直して、授業!・・・と、言いたいところだが、先生はこれから部活があるんでな・・今日は出席にしておいてやる。感謝しろ」

ドンと胸を張る担任に、三島は崇拝するように頭を地面に擦りつける。

「ハハーッ!お代官様!有難ありがたきお言葉」

「・・・おぉ、そう言えば田村達の試合結果は聞いたのか?」

「いえ、まだですけど今日は予選ですから、本選は明日です。」

「そっか、田村は人一倍努力してたからな・・・頑張って結果を残して欲しいもんだ」

「えぇ、そうですね・・」

頭を上げると目の前には担任の顔がヌッと出て来ている事に驚く三島。

「なぁ、本当は教員としてこんな事、聞いちゃいけないんだが、実際のところどうなんだ?田村は優勝できそうなのか?」

「そりゃ、あいつは優勝できるほどの実力はありますよ。けど、メンタル面で少々問題が・・・。実際、去年は、俺の事もあったし、秋の大会は出場停止になってましたから・・・でも、今年は多分大丈夫だと思いますよ」

担任の言葉に少しも悩まずに三島はそうキッパリと答える。

「今年が実質最後の大会だしな・・・頑張って優勝してほしいもんだ・・」

なんて頷きながら、担任が二年の三島にそんな事を言うのは、理由がある。

決して頭のいい高校ではない俺達の高校では、およそ八割以上が就職する。そのため、三年目は、就職活動がメインとなり、部活はその次。一応、出場は出来るが、毎年の事だがいい結果は残せてはいない。

だから、異種武道を高校に入ってから入部する奴もいるが、経験がものをいう競技のため経った二年と言う年月では、出場は難しい。

三島も田村もそうだが、大体は小学校、遅くても中学の時から始めた奴等は、なんとか出場できるかもしれない。

・・・・なんてそんな感じの狭き門のこの部活。だから、人気が出ないんだよ・・。

「まぁ男子はおそらく、子島が優勝すると思いますよ。」

「子島?・・・あぁあ、あの一年か?」

「えぇ、俺も少ししか顔合わせた事ないですけど、美野が言うには、かなり強くなったとか・・」

「あいつ、確か剣道の出だろ?高校から始めたと聞いてるが?」

「中学の時、たまに道場に顔出してたんですよ。剣道の帰りとかなんやらで、たまに練習もして、俺が遊び半分で期待の星だ!とか言ったら、どうやら本気にしちゃったみたいで、剣道、辞めてこっちに来ちゃったらしいんですよ・・」

「なるほど・・・っと、こんな話してる場合じゃない。じゃ、俺はこれから大会に向けての猛特訓だ!」

そう言うと、担任は教室から飛び出し、三島は足を崩し、息をつく。

外が明るい分、暗い教室に一人取り残され、しばらくボケっとする三島。

外では野球の金属バットのいい音が鳴り響いたり、女子の掛け声など聞こえ、学校内からは、ドラムがリズムよく鳴る音が聞こえる中、三島は教室の全ての窓を閉め、教室から出ていった。




校舎から隔離された場所に、小さな格技場が一つポツンとたたずみ、誰もいないその格技場の扉を開く。

靴を脱ぎ、入口に立つとフローリングの床と畳が敷かれた広い部屋が、見渡せる。

フローリングの床には、誰かが片づけ忘れたのか、棍棒が一つ、放置されていた。

棍棒に近づき、それを拾うと白いテープで四角く括られた中を動き回りながら、棍棒を巧みに体の周りを回し始め、次第にそのスピードも上がり、目線はグルグルと部屋を回る。


そして、目は次第に幻覚を見せ始める。

小さな格技場にいたはずだが、そこは全国大会の会場、みんなの視線はこちらへと向けられ、目も前には木製の偃月刀を両手に構える相手が立っている。

先ほどまで振り回していた棍棒は槍へと変わり、それを構え、しばらくの静寂が会場全体を包み込む。

全員が息をのむ中、小さなもの音が合図となり、二人の戦いは始まった。

振り下ろされる偃月刀を槍で受け流し、槍の柄で相手顔を狙い横に振るが、紙一重で後ろに反れて避け、下に潜り込んだ相手は、自分の足を狙ってくる。

一歩足を下げて、攻撃を避け、相手にひざ蹴りを当てようとするが、偃月刀で何の苦もなく防がれ、互いに距離をとる。

まだ、どちらもポイントは取っていない。これ以上の延長戦は正直、キツい。おそらく向こうも、そう思っている。

時計に目をやると刻々と時間は減っていく。

「ハァッ!」

距離を詰められたらこちらに勝機はない。相手に反撃をされないよう、遠くから素早く攻撃を繰り出す。相手はその攻撃を両手に持つ偃月刀を巧みに使い一つ一つ、防いでいく。

やはり、正面から堂々とやっていても、どちらも勝てない。なら、餌をチラつかせるか・・・

相手に槍を弾かれた時に、一度、攻撃を止めた。

すると、相手はそのチャンスを見逃さず、瞬時に偃月刀を逆手に持ち替えると、一気に突進してきた。

喰いついた!

突きだされる敵の攻撃を上にジャンプして避け、頭の上に持ってきた槍を自分が着地する前に相手に振り下ろす。

相手は、その攻撃に気づき、素早く頭上で受け止める体制をとる。

バレたか・・・だが、効果程度は取れるはずだ

そんな事を思いながら、槍を振り下ろす。だが、相手は槍の行く先から一瞬消えたように見えた。そして、次に現れた相手は、両手をダラリと下げて立っていた。

その謎の行動に、驚き、もう止まらない槍をなんとか止めようと努力しながら口を開いた。

「馬鹿野郎!避けろーー」



ドンッ!・・・フローリングの地面に叩きつけたれた衝撃で出た大きな音で三島は幻覚から解放された。

三島は額からは汗が垂れはじめ、肩で息をする呼吸をゆっくりと整え始める。

「・・・アホらしっ」

そう言って、棍棒を乱暴に床に落とすと、三島は格技場から出ていった。







びしょ濡れになった服を乾かすため、公園の椅子に座り青空を見上げていると、携帯が再び鳴りだし、仙田と表示されたいた。

「もしもし、仙田か?」

『もしもし、三島君?今どこにいるの?』

何やら慌てた声で、聞いてくる仙田

「ん?どこって・・・公園ですけど」

『公園?どこの』

「ん?あの・・ほら、高校の近くに誰も使ってない小さな公園あるだろ。そこだよ」

『うん、わかった。じゃぁそこから動かないでね!』

「へ?・・・せんだ?」

その問いかけには応じる前に仙田の携帯は切れた。

「何だったんだ?」

まぁ、どうせ服が乾くまでは動く気もないし・・そんな事を思いながら、椅子に寝転がり、強い日差しに目を刺激されながらも程よい眠気が襲ってきた。

「あぁ・・・今だったら眠れそう・・」

だが、そんな睡魔も吹っ飛ぶような、車の大きなブレーキ音で三島は飛び起きた。

その大きなブレーキ音とは、なんとタクシーだった。

そして、そこから飛び出してきたのは血相を変えた仙田だった。

「三島君!」

「うおっ仙田。おまっ・・動ける?」

「死んだりしちゃ、駄目ーー!」

そんな事を言いながら仙田は、三島に体当たりを喰らわせた。その衝撃で三島は椅子から転げ落ち、地面に落ちた。

そしてその上に仙田は跨り、三島の頬をビンタし始める。

「なんで、なんで、死のうなんて考えてるの!私だって、生きてて辛い事だってあったよ、でも、美野や三島君と出会って本当に毎日が面白く感じてきてたのに・・・それなのに、なんで、死んじゃ駄目なんだから!」

「いだい!、痛いって!ねぇちょっと!ねぇイダダダダダ!つねらないで、お願いだから!・・・何、死ぬって、誰からそんな嘘の情報を聞いた」

仙田のビンタはピタリとやみ、キョトンとした表情で三島を見つめてくる。

「えっ?死のうなんて考えてない?本当に?」

ズイッと顔を三島に寄せてくる仙田。それに、思わず後ろに下がろうとするが、下は地面で動く事の出来ない三島。

「もちろん、一体誰にそんな事、吹き込まれた」

「あの・・・この子」

そう言って、小さな仙田の持つ、小さなバックから、小さな子猫を取り出した。

子猫は、鞄の中でかなりもみくちゃにされたのか、力無く「ニ、ニャー・・」と声を出した。

「彼女が、私の病室にきて『元が死ぬーー!』って言ってきたの。だから、私もびっくりして、病院抜け出してきたの。一応、美野にも連絡して・・・」

「ちょっと待て、あいつにも連絡したって?」

三島は、携帯を取り出すとタイミングよく携帯が鳴り始める。

「はい、もしも〜し・・・」

『元ーー!!あんた、死ぬってどういう事よ!千尋に迷惑かけてんじゃないわよ!あんたそんなに死にたいならね。私が殺してやるから、ちょっと待ってろ!マジでぶっ殺してやるから!』

「おぅ、美野。それ誤解だから。もぅ解決したから、試合頑張れよ。じゃぁな」

『え?誤解?・・・へ?ちょっとま・・』

田村の言葉を最後まで聞かづに電話を切った三島。

「で?そろそろどけてくれるかな?椅子に座って話そうじゃないか・・・」

「えっ?あっ、ごめんなさい。私、すっかり忘れてて・・・」

そう言いながら、三島から急ぎ立ち上がり、素早く椅子にチョコンと座る仙田。

制服は生乾きのせいで土やら草がこびりつき、叩き落とすのが大変だった。


「で?今、あいつは仙田の中にいるのか?」

制服についた土を落とすのを諦めて、椅子に座り話を始める三島。

「う、うん。なんか早とちりした自分が恥ずかしい。とか言ってる・・」

「そうですか・・・で、どうする?そのままそいつを持って帰るか?」

三島の質問に仙田は首を横に振った。

「え?それでいいのか?」

「ううん。そうじゃなくて、私、こうやってたまに病院を抜け出せたらいいかな?って思うの。その方が、動ける有難みを感じれるかなって・・」

「有難みって・・いつも動けた方がいいんじゃねぇのか?」

「それじゃ駄目なの。本来の私が、いなくなっちゃう気がするの・・・」

「う〜ん、まぁそれもそうかもしれないけど・・・」

「だから、たまにこの子猫を私に預けてほしいの」

自分の膝の上で大人しく寝ている子猫を撫でる仙田。

「わかった。それでいいなら、そうしよう。」

「本当?ありがとう」

満面の笑みを浮かべる仙田に少々心打たれながら、再び携帯が鳴り始め、三島は携帯を取り出すが、鳴っていたのは自分の携帯ではなく、仙田の携帯だった。

仙田はマイペースで携帯を取り出し、表示される電話番号を見て「あっ」と声を漏らした。

「エヘヘヘ・・・私、そろそろ病院に戻らないと・・抜け出したのバレちゃった」

「なら、帰るか」

そう言いながら、先ほどから待っていたタクシーの方へ向かった。


タクシーの運転手は、車から降り少々一服していたが、こっちに向かってくる二人を見て急ぎ煙草の火を消し、後部座席の扉を開いた。

「それじゃぁ、また今度ね。たまにはお見舞いに来てね・・」

「あぁ、ちゃんと猫も持っていくよ」

そんな短い会話を済ますと、女性は車に乗り込み、男性は扉を閉めた。

そして男性はこっちの視線に気づいたのか目が合う。

「おぃ、兄ちゃん。何で死のうとか思ったかは知らないが、駄目だよ。そんな事したら」

「いや、だからそれは誤解ですって・・」

「誤解でもなんでも、そんな風に想像される方が悪い。まったく、こんな、可愛い子に心配なんか掛けさせやがって・・・」

なんて、呟くとなぜか男性のきらめく熱い視線がこっちに飛んでくる。

「やっぱりそうだよね!可愛いよね!いや〜、クラスの奴等はさ、やっぱり駄目なんだよ。目の付けどころが違うって言うかさ」

「あぁ、こういう子は、長年の経験上、あと2〜3年経てば、いい子になるよ。きっと」

「おぉ!話がわかる人にようやく出会えた気がする!」

そう言いながら運転手に手をさしだす男性。

「よぉ!同志よ!」

そんな事を言いながら車の後ろで熱く握手をする二人を見て「何の話をしてるんだろう・・」なんて首をかしげる女性。

「それじゃ、仙田の事よろしくお願いします」

「おぅ!任せとけ」

威勢良く、運転手はタクシーに乗り込み、乗り込んだと同時に急発進でタクシーは、遠くへと消えていった。





西向きの窓のお陰で、朝日は全く入ってこない部屋。まぁ広さは一人暮らしでは十分すぎる程広い。

昼ですら暗い部屋の隅で唯一、光が入ってくる所に体育座りで待機する伊吹がいた。

特にやる事がない訳ではない。バイト先からの連絡を待っているんだ。

「頼むよ・・・そろそろ、手持ちの金が無くなっちまうよ〜」

神頼みで願う事、数時間。黒電話が昔の音を響かせながら鳴り始める。

2コールもしないうちに、受話器を取る。

「はい、もしもし・・・・はい。・・はい・・・はい?」

はい、としか言わないが、その「はい」だけで色々と気持ちが左右しているように見える。

「はい、失礼します」

受話器をゆっくりと降ろすと、しばらく固まる伊吹。

そして、広げていた指を少しずつ閉じていく。

完全に閉じ終えると、その場に立ち上がり、握った拳を突き上げる。

「ヨッッシャーーー!」

口座が凍結されてから、一体何日経っただろうか・・大家の疑う目線を何度掻い潜った事やら・・

「長かった・・・本当に長かった」

但馬組の奴等をどれほど潰そうかと思った事やら。

「もぅ財布の中なんか10円玉すらねぇよ・・・」

とにかく、今の高ぶる気持ちは、誰にも止められない!

そんな事を思いながら、伊吹は部屋から飛び出し、アパートの門を飛び出す。

「神様ーーー!ありが・・・あっ?」

空は赤く染まり、その夕日に背を向けてゆっくりと歩く子猫に伊吹は目をやる。

その猫は、背中を丸め、やけにトボトボと、足取りも重い。

数歩歩くたんびに、立ち止まり深くため息をついている。

「あれ?・・・あの猫は・・・」

どこかで見た事が・・なんて悩む伊吹。まったく気付かない子猫。


仙田は、先ほどの勘違いをどう言い訳するかを考えながらフラフラと岐路にたっていた。

確かに薄れゆく意識の中で「補講だーー・・」と、言っていた気もするようなしないような・・

家に帰ったら一体どんな態度を見せてくるのか・・・

なんだぁ〜俺の事が心配だったのか〜なんて小馬鹿にされ・・大体、お前は早とちり過ぎるんだよ。と、自分の事を棚に上げといてそんな事を言ってきて。

もうちょっと冷静に考えて、第一、俺制服に着替えてたんだぞ!なんで、そこで学校関係だと気付かない。

「いやーーー!帰りたくないぃぃぃ!!考える前にまず行動するような奴に、そんな事言われたくない!!」

考えれば考えるだけ、自分を小馬鹿にする三島の態度が手に取るようにわかる。そう思うだけで、恥ずかしい思いをする。

「よしっ!決めた。今日は絶対に帰らない!」

そう言いながら、仙田は背に向けていた夕日の方へと走り出した。


副音声の聞こえない伊吹は、猫が突然大きな声で鳴き、夕日に向かって走っていく姿を見て一言。

「・・・・ね、猫の遠吠え・・?」





最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

そして、更新が遅れてしまい本当に申し訳ございません・・・

いい訳にもなりませんが、体とパソコンの調子が悪くしばらくの間、寝込んでいました。

これもしかして、新型インフルじゃね?

そう思って重い体を動かして病院へ行くと、ただの食あたりでした・・・・

なんでこんなになるまで放っておいたの!と医者に怒られてしました。

みなさんも、どうか体調がすぐれない時には急いで病院へ行きましょうww

では、これからも応援よろしくお願いします。

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