第十三話 見事な蚯蚓腫れ
『・・・・そぅ、ちょっと電話をするタイミングが悪かったわね』
「いや、俺があいつをからかい過ぎたのが原因だったもしれない」
頬に、綺麗な三本筋の蚯蚓腫れを作った三島は、田村に状況を説明していた。
「で?美野は、一体何の用だ?」
『いや、特にこれと言った用はないんだけどさ・・・まぁ明日から試合始まるし、一応ご報告を・・と思って電話してみただけなのよね・・』
「そっか、もぅ大会が始まるのか・・・頑張れよ、優勝候補」
『まぁ今回は、子島君も調子いいし、男子も女子も両方、優勝旗を持って帰ってきてやるよ!楽しみにしてな』
「へぃへぃ、良い土産話、期待してるよ・・・」
電話が切れると、携帯をテーブルに置き、三島は不機嫌そうに、その場に横になった。
「なによ〜・・さっきから何回も謝ってるだろ。ごめんって、まだ根に持ってるのか?」
三島の態度に、恐る恐る話しかけてくる仙田。
「別に・・・怒ってはねぇよ。」
「じゃぁ何だよ。この変な空気をか持ち出してるのは、あんただよ」
猫は、横になる三島の上にピョンと乗っかる
「か持ち出してない・・・」
「か持ち出してる。」
「出してない。」
「出してる!」
「じゃぁ出してる!」
「開き直るなっ!」
「・・・いいんだよ。ほっといてくれ・・・」
三島は、猫を摘みあげ、横に降ろした。
「何さ・・・美野ちゃんからの電話がそんなに嫌だったの?」
「別にそうじゃねぇよ。・・多分、あいつは、俺に気を使って電話してきたんだと思う。もぅ忘れろ!・・みたいな感じで」
「・・・忘れる?」
「俺が部活を辞めた原因をさ・・・」
『俺もあいつと同じ部活に入っててさ・・・』そんな事をたしか三島の奴言ってたっけ?そんな事を思い出しながら。田村の部活が何だったかを思い出す仙田。
「あぁっ、あんた、もしかして異種武道やってたの!?」
「そうだよ、なんだよ・・知らなかったっけ?」
異種武道。多種多様の武器を使い、その技、技術力を演武で演じたり、それぞれ武器を持ち、相手と戦い、点数を競うなど、まぁ・・人気はない上に、演武ですらとっても危険な競技。
さっきまでいい天気だったはずなのだが、段々と厚い雲が、空を覆い始めていた。
「なるほど・・・あんたが武器の扱いに慣れてる理由がこれでわかったわ・・・」
「俺はてっきり、美野から聞いてるもんだと思ってた・・」
「私が、千尋に戦いの事を話さないのと同様。美野ちゃんは、私達に部活の事はそんなに話してはくれなかったわ。あんたと出会ってから、少しだけ話してくれるようになったけど。」
「俺の事は言わなかったんだ・・・」
「うん、去年の大会では、男子の部は優勝者と準優勝者が、出なかったって言うのは聞いた。」
「・・・それ、どうしてかは聞いたか?」
横になっていた三島は起き上がり、猫を見下ろす。外の風が強くなり始め窓が音をたてはじめた。
「聞いては・・・ないけど」
「その大会の決勝戦は、俺が出場してたんだ・・・」
空がゴロゴロと鳴り始め、次第に雨脚が聞こえはじめ、強くなっていく。
三島は、窓を閉めようと窓に近づく。
「そして、俺はその決勝戦で、対戦相手を殺したんだ」
「うそ・・・」
三島が窓を閉じようとすると、その前に生暖かい風が、部屋の中を突き抜けて行く。
「本当だよ。俺は反則負け、相手は死亡。優勝者が出なかった理由さ・・・スポーツの分野で人が死ぬ事はたまにある。そして、俺は部活を辞めて、警察にしょっ引かれる事もなく、今こうしているって訳・・・。」
「えっ・・でも、・・じゃ、じゃぁだから、殺生が嫌になったの?」
「あぁ、でも、・・もし、それだけで済めば、こんな極端に嫌いになる事もなかったかもしんないな・・」
外では、いきなりピカッと光り、大きな音を轟かせていた。
「どう?俺の事軽蔑したか?」
「す、する訳ないでしょ。それはれっきとした事故なんだから、しょうがないじゃない」
「美野にも、そんな事言われたよ・・・」
「それに、私だってそれに近い事を向こうの世界で繰り返してきたのよ・・・そりゃ、人間は殺してはないけど・・私だってきっと同罪よ」
「・・・それは、言われなかったな」
「さ、さぁこんな話はもぅ終わり!あんたのせいで、天気まで崩れちゃったじゃないの!どうしてくれんのよ」
「何でもかんでも、俺のせいにするな!さっき天気予報で言ってただろ。それに、これは通り雨だ。すぐに止むさ」
三島の予想は的中し、雲は晴れるかと思ったが、雨は止んだが、雲は未だに元気そうだった。いつでも降らせるぞコノヤローみたいな、雲行きだった。
「カラッと晴れないとジメジメして最悪なんだけど・・・」
そう言いながら、子猫は顔を手で、洗い始める。
「あぁ、猫がいると意外と便利だな。天然の転機予報士だ。」
「そんなの迷信よ。当たる訳ないでしょ。もし当たってたら、猫が顔を洗うたんびに年がら年中、雨よ」
「まぁそう言うなよ。迷信だってご先祖様が考えた立派な、知恵袋だぜ。太陽の周りに傘が架かれば、次の日は雨とかな・・」
「傘?何言ってんの?」
「いや、太陽の周りにこぅ・・丸い虹のような物が出来てる時があるんだよ。」
寝っ転がりながら、腕を伸ばして表現する三島。
「ねぇ・・・また話が進んでない気がするんだけど・・」
「どこが?今日は俺の過去がまた一つ、明らかになったからこれでいいだろ。」
「えっ、じゃぁ今回はこれで終わり?」
「終わりでいいんじゃね?どうせ、戦いは次回に持ち越されるんだろうしさ・・・今日はここら辺でお開きに・・」
「なる訳ないでしょ!まだいつもの半分も行ってないわよ、きっと」
「なんだよ・・・なんで、張り切っちゃって、あんなに長い文章を書き続けたりしたんだよ。ネタが尽きてくれば、息詰まるのは目に見えてただろうが。」
「そんな事、言うんじゃないの!一応、話は出来上がってるんだけど、今そこにどうにかして持っていこうと奮闘してる最中じゃない!ちょっとは、協力しろ」
「・・・それは、お前の気持ち?」
「そう言えって言われた。・・・でも、私だってさっさと話を進めたいの!あんたが動かなきゃ、話が進む訳ないじゃない!」
「マジか・・今回は俺が主人公なのか?ヤダな〜主人公・・・面倒なんですけど・・まぁいいや、とりあえず、はい、携帯電話!」
三島がそんな事を言いながら、携帯電話を指さすと同時に、携帯のバイブレーションが震えはじめた。
「はい、もしもし〜」
相手も確かめずに、電話に出ると電話の向こう側は、やけに焦っていた。
『元、なんかヤバい事になってきたぞ。』
「よぉ、名前も出されない、クラスメイト君」
『何言ってんだ!おまっ俺の名前は・・・あぁいいや、とにかく、今繁華街にいるんだけど、但馬組の奴等が、お前を血眼になって探してるんだ。とにかく背恰好の似てる奴を片っ端から捕まえてってさ・・。俺もマジでビビったぜ。なんでも、伊吹って野郎を捕まえたとかどうか・・』
「マジ・・・」
『知り合いか?・・・とにかく、俺もそろそろヤバいから、ここを離れるけど。一応、伝えたからな、じゃぁな』
「おぅ、ありがとう・・・」
携帯を切ると、再び外は雨が降り始めた。
「ちょっと出かけてきます」
三島は、外へ出て、扉を閉めるが、その前に閉まる扉の隙間を抜けて出てきた、仙田もついてこようとする。
「どこ行くの?」
そんな事を言ってくる猫をつまみ、扉を開けると、豪快に部屋へと放り込んだ。
「ニャーーー!!」
「お留守番よろしく。」
そう言うと、三島は扉を閉め、傘も持たずに、下へと降りて行った。
不採用通知に落ち込んでいる伊吹を、但馬組の奴等はいとも簡単に捕まえ、ビルの建設途中に中止になったコンクリートむき出しの、建物の一室に監禁していた。
「・・・で?俺はいつまでこの調子なの?」
先ほどから、椅子に手足を縛られた、伊吹が部屋にいる人達に話しかけるが、全く声を返して来ない代わりに拳が伊吹の顔めがけて飛んでくる。
「いってぇな・・・俺、怒っちゃうよ〜」
口に溜まった血を、今殴った奴に向かって飛ばすと、その男は怒り、椅子ごと伊吹を殴り倒した。
「おぃ、殺すんじゃねぇぞ」
再び殴りかかろうとする奴に、他の男がそんな事を言うが、全く意味はなかった。
殴りつかれ、休憩を取り始めると、再び伊吹が、声を出し始める。
「なぁ、こんな事したって無駄だってわかってんだろ?もぅ何十時間経ったと思ってる。あいつは、すでに俺がらみの用は済ませてるんだ。お前等がどんなに待っても来やしねぇよ」
顔じゅう痣だらけになっているにも関わらず、全く怯む様子もない。
「あぁあ、バイトの面接が今日あるのに・・・どうしてくれるんだよ・・もぅ時間過ぎちまったじゃねぇか・・・なぁいい加減解放してくれよ・・」
縛られた手足をバタつかせ、音を立てまくる伊吹。
だが、全く反応を示さない彼等に、伊吹は遂に諦め大人しくなった。
倒れた椅子を直してくれる事もなく、伊吹が倒れたままの状態でまた、何時間か経った。
部屋にいる奴等は交替を繰り返すうちに、人数も減っていき、四人にまでなると流石に飽きてきたのか、麻雀をし始める始末だ。
「よし、きた。ツモっ!リーチ、一発、四暗口・・えぇーーとドラ・・ドラ・・裏ドラは・・キタッ!数え役満」
「なんだと!ふざけやがって、くそっハコった!」
そんな会話をしている時だった。一人の携帯が鳴りはじめた。
「はい、・・・はい・・・本当ですか・・・はい、わかりました。」
携帯を服にしまうと、横になってあの虚しい鼻歌を歌う伊吹へと近づいてきた。
「おぃ、よかったな。まだ見放されてる訳でもなさそうだ」
「・・・ん〜?何の話」
「俺達の仲間が数名、やられた。やったのは間違いなく元だ。そいつはお前の居場所を聞きたがっていたらしいぞ。まぁ聞ける前に見つかって逃げたらしいがな」
「それは、本当か・・」
「あぁ・・本当だ。これで、お前は利用価値がある事が証明された。・・・おぃ移動するぞ」
麻雀台の周りに座っていた残りの三人は、テキパキと片づけをはじめ、一つ大きなビニール袋を用意して、下へと降りて行った。
「あれ〜・・・おかしいな。あれってもしかして、俺の入る死体袋だったりする?」
「わかってるじゃねーか。別にお前には利用価値があるが、生きてなくても問題はない。むしろ、死んでた方がこっちには都合がいい。逃げる事も取り返される事もないからな。」
男は懐から黒光りする銃を取り出してきた。
「マジで・・・・」
「あぁ、マジだ」
銃を伊吹に向ける男は、煙草を銜え、ライターで火をつける。
「・・・ちょっと、聞きたいんだけど・・ここって何階?」
「そんな事、聞いてどうする。なんとか逃げ出して窓から飛び降りようとでも思っているのか?安心しろ。それは無理なぐらい高い。」
「そうか・・・それ聞いて安心した。・・・じゃぁな」
伊吹がそう言うと、銃を持った男の足場が崩れ、その穴から男の悲鳴と地面に落ちた音が聞こえてきた。
男の悲鳴と目の前に落ちてきた仲間に、下で待っていた男達は、異変に気づき、上へと急ぐ。
伊吹は、奴が吸っていた煙草で火種を作ると、手足を縛ったロープを焼き切った。
「くそっ、これって正当防衛だよな」
そう言いながら、立ち上がると、段々と敵の足音が近づいてくるのに気がつき、先ほど開けた穴から飛び降りた。
男達が銃を構え、部屋へ入ってきた時には伊吹は、彼等の車を破壊し、マンションの外へと飛び出している頃だった。
「あばよ」
そう言いながら、マンションを見上げ、右手を振ると、マンションは大きな音を立てながら崩れて行った。
三島は当てもなく手当たり次第に走る中、何台もの消防車が三島の横を猛スピードで駆け抜けていく。
「お願いですから、伊吹じゃありませんように・・・」
そう言いながら、三島はその直感を信じ、消防の後を追って行った。
三島の部屋に置いてかれた仙田は、猫の小さな手を使って、孫の手を持つと、窓の鍵を開けようと奮闘するが、しばらくすると、窓に映る自分のユラユラと揺れる尻尾が目に入り、窓に向かって突進し、頭を強打してその場でしばらく動くことはなかった。
雨が降る中、消防車からかなり遅れて、やってきた三島だが、そこはすでに野次馬が溢れていて、背伸びしても人影が邪魔で、何も見えなかった。
「くっそ、何も見えねぇ・・・」
周りを見渡すと、道路の横に大きな塀がある事に気がつき、三島は、止まっている車の屋根に飛び乗り、塀までジャンプした。
塀に腰を落ち着かせると、その先には大きな瓦礫の山があり、その近くに何台かの消防車が赤い光を出しながら、止まっている。
「一体何があったんだ・・・」
悩む三島に、塀から降りるよう言ってきた警官に従い、降りるがその光景を一人の刑事が見逃さなかった。
「ねぇ、一体何があったの?」
降りるように言ってきた警官に話しかけるが、「現在調査中」としか、言ってはくれなかった。
「いいじゃん、途中経過ぐらい教えてくれよ・・」
せがむ三島だが、全く喋ろうとしない警官。
「だったら、俺が教えてやろうか」
そう言いながら、やってきたのは背中を丸めた刑事。そして、そいつを目にすると三島の顔色が一気に変わった。
「若菜さん。駄目ですよ、こんな子供にそんな事言っちゃ・・」
「いいんだよ。・・こいつも関係している可能性だってある」
「関係って・・・こんな子・・・あっ」
三島の顔に見覚えがあったのか、先ほどの警察も三島を疑った目で見てくる。
そして、三島は、若菜と呼ばれる刑事から目を離そうとはしないで、ずっと睨みつける。
「こには、元々建物があった。建設は途中で中止になったがな・・。そして、ここの土地の所有者は、誰だと思う。・・お前を恨んでいる但馬組だよ」
睨みつけられているにも関わらず若菜は、三島にドンドンと近づいて行く。
「それ以上、こっちに来てみろ。ただじゃおかねぇ・・」
近づいてくる若菜に、顔を真っ赤にし怒りを表す三島は、指を差しながらそう言った。
「ほぉ・・こりゃ、脅迫罪だ」
周りの野次馬達も次第にこっちに注目し始める。
「若菜さん・・・マズイっすよ。俺達、彼の一件以来、この街じゃ目の敵なんですから・・」
「黙ってろ。俺はこいつに錠をつける時を、今か今かと待ち望んでたんだ。これだったら確実に現行犯で行ける」
若菜は、手錠を手に持つと、三島に近づこうとするが、警察に止められる
「逮捕してどうするんですか!こんな事では、訴訟も何も、検察にも相手にされませんよ」
若菜と警官のやり取りをしている内に、三島は姿を消し、その様子を遠くで伊吹が見ていた。
「あの刑事は・・・」
そんな事を言いながら、その場から逃げる三島を追い、伊吹もその場から離れた。
「おぃ、三島・・・ちょ、止まれって!・・・三島、・・み・し・ま!・・・おぃ無視してんじゃねぇ!気付けこの野郎!」
雨脚は強くなる中、走る三島を一生懸命追いかける伊吹は、三島に向かって叫ぶが、全く聞こえていないのか、三島は止まる気配が一向にない。
「三島ーー!・・とっまれ、・・・くそ、なんであんなに足が速いんだよ・・駄目だ・・もぅ無理、・・・煙草・・煙草のせいだ・・ヤベ・・吐きそう」
ヘトヘトになりながら、走る伊吹を誰かが、肩を掴んで止めた。
「お前、何やってんだよ。赤信号だぞ」
そう言いながら、止めてきたのは三島だった。
肩で息をする伊吹。
「あれ?・・・お前・・前走ってたんじゃ・・・俺追いついた」
「ちげーよ。ここの信号に捕まって、ずっと待ってたら、俺にぶつかりながらフラフラと道路に飛び出そうとしてる奴がいたから、止めたんだよ」
「あぁ・・そう。」
「にしても、自力で脱出したのかよ・・・かなりやられてるみたいだけどな。大丈夫か」
笑いながら三島は、傷ついた伊吹の顔を突っつく。
乱れた息も落ち着いてきた伊吹。
「いてっ・・・お前こそ、なんだその顔の三本線は・・猫にでもやられたか」
「その通り」
「なんだよ、面白みがねぇな」
「うるせぇ、で?さっきから俺を追っかけてきてたみたいだけど、何の用だよ」
「・・・お前、もしかして最初っから気付いてたのか」
「さぁ・・どうだか、傷だらけのお兄さんの全力疾走もちょっと見てみたい気もあったような、なかったような」
ちょっと半笑いで、伊吹の肩を叩く三島。
「・・・お前、いつか絶対に殺す」
「ほぉ・・・こりゃ脅迫罪だ」
三島は若菜のモノマネのつもりか、全然似ていないモノマネを伊吹に見せ、三島の今の行動で、言いたかった事を思い出した伊吹。
「そうだ。三島、お前、マル暴の刑事がなんでお前なんか知ってんだよ」
「伊吹。あいつの事、知ってんのかよ・・・」
「一度だけ、あいつガマガエルの所にやってきた事があったんだよ。だから、覚えてた」
「あいつは・・・俺の周りの人間をメチャクチャにしていった、最っ低な野郎だよ・・」
三島の目からは、まだ抜けていなかった怒りが再び燃え始めていた。
まぁ・・俺の人生をメチャクチャにしたお前に言われたくはないけど・・とは、心の奥に閉まって置こうと決める伊吹。
「まぁいいや、とりあえず、俺も無事だって事もわかって、明日の戦いは安泰だって安心できただろ。」
煙草を取り出し、口に銜えるが、吸うか吸わないか一瞬迷う伊吹
「伊吹・・・」
「なんだ」
「・・・俺、頑張るよ・・今度の戦い」
「あ?」
「今度の敵、俺が殺す」
三島から出てきた言葉に驚く伊吹。
「だから、武器生成してくれたら、うれしいな。別に何でもいいから」
「・・・・ま、お前にどんな心境の変化があったかは知らないが、お前が正々堂々と戦おうと言うなら、俺は協力してやろう」
「じゃぁ、今度仕事紹介してあげるよ。俺の紹介で」
「いらねって言ってんだろ。実際、もぅ決まってるんだ」
「そうなの?そんな変な服装してよく、バイト見つかったね」
「てめぇ・・・毎度毎度、一言余計なんだよ・・」
伊吹は、そんな事を言いながら、三島から離れて行った。
「ただいま〜」
三島が、扉を開けると、猫が玄関で座って待っていた。
「あれ?ここでもしかして待ってたとか?」
ちょっと悪い事したかな・・そう思い、猫を両手で持ち上げる
「ニャーー」
「・・・・はっ?おぃ、どうした、いつもの副音声は?」
「ニャー?」
「ニャァ?ん・・仙田?」
玄関の扉を開きっぱなしで、猫をよく観察する三島。
だが猫は、三島の謎の行動に首をかしげる事もなく、三島の顔を舐めるだけだった。
「元!」
そう言いながら、現れたのはアパートの廊下に現れたのは、露出の多い服を身にまとい、大きなサングラスが印象的だった。あの仙田が一時的に借りていた女性だった。。
「えぇっと、確か・・・安形・・さん?」
「違う!今は、田中よ!・・・ってそうじゃない!心配させんじゃないわよ」
「し、心配?」
「何も言わないで、部屋から飛び出して、ホントどうしたんだろうって心配したんだからね!」
そう言いながら、三島に歩み寄ってくる女性、そして、三島は
「・・・お前、仙田か!」
今頃、気付く
「だから、田中だって言ってるでしょうが!」
「だぁ、そうじゃねぇ!・・ってか、何、人の体勝手に借りてんだよ!ちゃんと元あった場所に戻してきなさい」
「・・わかった、そこを動くなよ」
そう言いながら、田中さんは、三島の部屋から5つ離れた扉を開き、中へと入って行った。
「同じ、アパートの人だったのか・・・」
しばらくすると、仙田は田中さんの扉から透き通って出てきて、三島の所にやってきた。
「で?どこいってたの」
「いや、伊吹の奴がな・・捕まってたらしくて俺のせいだし、助けに・・でも、意味無かったけど・・」
「まったく、どうして今は言えて、さっきは言えないかな。」
「いや、言ったら、どうせ行かなくていいとか、言ってくるだろうし・・」
「当たり前でしょ!・・・もぅ、変な空気か持ち出されたまま、残された身にもなってみろってのよ・・」
ぶつくさと呟く仙田の体をよく見ると、少々、服が濡れているようにも見えた。
「もしかして、探してたのか?」
「はぁ?違うわよ。私は、ちょっとオープンカーに乗りたいなぁって思って、彼女の体借りて、そこら辺、走ってただけよ。ただ、屋根の締め方わかんなくて・・大変で・・雨とか痛くて・・」
段々と身を縮こませ、言葉も小さくなっていく仙田。
「心配かけて、悪かったな。」
「だ、だから、心配なんてしてないって!」
「さっき、心配してたって言ってただろ」
「言ってません〜!仮に言ってたとしても、あんたの心配じゃなくって、私の夕飯の心配をしてただけです」
「なんだよ・・もぅ元とは呼んでくれないのか?」
「はぁ?何言っての」
「いや、さっきの登場での第一声が『元』だったからさ、もう一回ぐらい言ってくれないかなって思って」
「何それ、気持ち悪・・それに、私、最初からちゃんと呼んでたじゃない、・・げ、げんって・・・」
「えぇ?なに?聞こえなかった〜。いつも呼んでたんだろ〜」
ワザとらしい三島の態度に口を尖らせる仙田。
「元っ!」
「ん?」
「元、元、元、元、元元元元元っ!元ーーー!・・・って言うか!もぅ二度と言うか!さっさと猫返せ!」
「ウニャー!」
三島から無理やり猫を奪い取る仙田。そして、猫の中に入ると、三島の部屋の中へと入って行き、三島もその後に続いて、中へと入って行った。




