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第十二話 とにかく、アクション

三島の部屋に子猫と、それに取り付いた吸血鬼が居候するようになってから、二日が過ぎた。

あれから、『呼び出し』もなく平和な日々、そして仙田からは、まだ答えも聞けず・・現在は子猫と一緒のテーブルで朝食を取っている。

「多分、時間の問題よ・・」

猫から浮かび上がる仙田は茶碗を持ち、ご飯を口に運びながらそんな事を言ってくる。

「時間ね・・」

「千尋は一度、自由を手にした。その快感は、言っちゃえば中毒よ。千尋はその自由のためならいつ死んでもいい、そう思ってた。多分、それは今でも変わらないわ」

「そうだよな・・・あいつ、そんな事言ってたのに、なんで今になって悩んでるんだ?」

「おかわり」

空になった茶碗を三島に突き出す

「自分で、よそいなさい」

「私、物を掴めないのよ。どうやってよそげって言うのよ!」

確かに、それは事実だった。煎餅や自分の茶碗は持てるのに・・っていうか喰っているのに、掃除や手伝いをさせようにも、その道具を仙田は持つ事が出来ないのだ。

「なんで茶碗は持ててるんだよ・・・」

「知らないわよ・・・いいから、おかわり」

「へぃへぃ・・・」

仙田から茶碗を貰うと、中古屋で見つけた炊飯ジャーから、ご飯をよそう。

「そう言えば、この子もだいぶ回復してきたわよ。もぅ一人でも平気だと思う・・・」

この子・・・もちろん、猫の事である。確かに、初めて連れてきた時は本当に今にも死にそうだったのが、今は仙田のお陰かもしれないが、毛並みもしっかりとしてきた。

「それより・・いつになったら、向こうの世界に連れてかれるんだよ。この前まで大忙しだっただろ。なのにピタリと止みやがった。」

「ん〜まだ、ベルが鳴らないのよ。まぁ私にとっては、いつも通りに戻ったって感じかな」

「なら、今までが、かなり忙しかったと?」

茶碗いっぱいに、つめたご飯を仙田に渡す。

「その通り。余計な参加者が出てきて、地球君も対応が忙しかったんじゃない」

「その原因を作った奴がそんな事を言うか・・」

「だから、あんたに抱きついたのは、千尋が原因です〜。私じゃありません」

「抱きついた・・・」

横転する電車の中で、仙田が、三島にしがみ付いてくる光景を思い出し、思わず持っていた箸を落とす三島。

「ちょっと、千尋で変な妄想してんじゃないでしょうね?やめてよ、気持ち悪い」

「へっ変な妄想だと。・・それは、一体どんな事だったら変な妄想の部類に入るんだ」

「あんたの場合、頭の中に浮かぶ物全てが変な妄想に入るわよ」

「俺は、一体、どれだけ変な眼差しで見られてるんだ・・・」

「男は大体、同じ。みんな変態だって言ったのは、あんたでしょ」

「そんな事を言った覚えはねぇ」


朝食の片付けも終わり、やる事がなくなった三島は、部屋に猫と一緒に寝転がる。

「・・・にしても、やる事ないってのは、暇だね〜」

「あんた、学生だろ。宿題とか出されてるんじゃないの?」

「宿題?・・・あぁ、夏休み入る前に終わらせといた。面倒な事は、さっさと終わらせるタイプだから俺・・・」

外からは、さお竹屋が熱い中、さお竹を売ろうとそこら辺をうろつく音が聞こえる。

「へぇ〜、意外だわ〜。あんたの場合、夏休み終わる直前になって焦るタイプだと思ってた・・・」

「俺、意外と成績もいいんだよ〜。そうじゃないと部活動禁止になっちまうから」

「出席日数はギリギリのくせに?」

炎天下の中、セミ共がガンガンと呻き声を精一杯、出しまくる。

「それは、仙田みたいに諸々(もろもろ)の事情って奴だよ・・・あぁ〜暇だ」

「私、街に行きたいな〜」

「猫のくせに・・・猫は自由気ままに出かけてきなさい。俺はしばらくここでゆっくりしてるから・・・」

「そんなんじゃ、体が怠けるぞ!」

マジ寝に突入しようとする三島の上に猫が飛び乗ってくる。

「えぇ〜いいじゃん、たまにはそういう日があってもさ・・・」

「昨日もそれ、言ってたじゃん。あんたってさ、やる事ないと、動かないタイプなのね」

「お前な・・・人を分析できるほど、人付き合いがあったとは思えないんだが・・」

自分の腹の上で暴れる猫をつまみあげ、横に落とす。

「・・・それって、間接的に千尋を傷つける発言だと思うんだけど・・・」

「あぁ・・そっか、今のなし」

「それに、人付き合いがなくても分析ぐらい出来るっての!」

「はぁ?どうやって」

「小説やら漫画やら・・・」

「・・・・はっ?」

「まぁ、あんたみたいな奴には、小説とか似合わないと思うけどね・・・」

子猫に、見下された目で見降ろされる三島

「その台詞をバットで打ち返してやりてぇよ・・・ってか、小説なら俺だって読んでる!最初の仙田と会った時の事思い出してみろ(第一話参照)」

「あぁ・・・確かに・・でも、この部屋に本なんて一冊も見当たらないんだけど・・・」

猫が部屋一面を見渡すが、本棚すら見当たらないってか、何にもない。テレビ一台とベット。そして、無駄に手の込んだ台所があるだけだ。

「当たり前だ。俺は図書館で借りてんだから。本に金をつぎ込めるほど余裕もないしな・・」

「台所には、やけに力入ってるけどな・・・一般家庭に中華鍋なんて初めて見たぞ・・」

「まぁ、それは俺の実家が定食屋だったからな・・・」

「へぇ〜そうなんだ・・・」

「で?お前に全く縁がなさそうな小説とかを、どうして、お前は読んでるんだ?」

「そんなの決まってるでしょ。千尋はいつも検査とかやってる時に、読んでるから、私も読んでただけよ」

「そっか、あいつも読んでるんだ・・・まぁ似合いそうだな」

「そぅそぅ、病弱なヒロインが病院のベットの上で小さな本を読んでるなんて、ベタな恋愛小説とかでありそうね・・」

「あぁ悪い。俺、恋愛小説とか読まないからわかんね・・・どちらかと言うとアクション系とかホラー系です」

「うわっ・・・私、ホラ―とか絶対に無理なんですけど・・・」

「実質、幽霊のくせに何言ってやがる」

「幽霊じゃないもん!ドラキュラだもん!」

「どっちもそんなに変わねぇよ!」

「ねぇ!本っ当に暇なんだけど!・・何、この日常会話的な感じは、まったく進展性がゼロなんですけど!」

「だから、今日は何もしないの。きっとあれだよ・・あのホラっ・・お前が猫の体で外に飛び出して、ドラ猫達との出会いをなんか、やるんだよ。最近、伊吹が主人公的な感じで出てきた回だってあっただろ?きっと今回はお前が主人公なんだよ・・」

「伊吹が主人公って・・あれはどちらかと言うとガマガエルと昔のあんたが主だった気がするんですけど・・・」

「とにかく、俺、今日は何にもしないと思うから・・・一人で出かけて来い。そしてら、きっと話が始まるよ・・」

寝転がりながら、三島は猫に手を振る。

「ほ、本当でしょうね・・・私がこの部屋を出れば話が始まるんだよね?」

「知らね〜よ。とにかくなんかアクションを起こせ。そうすりゃ、嫌でも話が始まる」

「し、信じていいんだね?・・・私、そしてら本当にこの部屋から出て行くよ・・・」

子猫は恐る恐る、ベランダに出て、三島に話しかける。

「おぅ、夕飯までには帰ってこいよ。昼食はそこら辺でネズミでも食ってろ」

「誰が喰うか!・・・じゃ、じゃぁ・・・出かけてくる」

仙田はそう言うと、緊張した面持ちで二階のベランダから飛び降り、見事な着地を決め、蒸し暑い外へと消えていった。

そして、子猫が消えると同時に三島の携帯のバイブがブルブルと震えはじめた。画面に映し出される名前を見て

「ほらっ、話の進展が始まった・・・」

なんて、三島は呟いた。






「アジーー・・・なんだよこの暑さ・・・コートを身に纏ってる人の事も考えてほしいよな・・・あぁ、コート脱ごうかな・・でもな〜」

自販機の前で小銭を出しながら、ぶつくさと呟く伊吹。

炭酸を飲もうと、ボタンを押すと何故か温かいお茶が出てきた事に激怒!

「いい度胸だ!自販機!この俺に喧嘩を売ろうなんざ、百万年はえぇんだよ!」

とまぁ、そう言いながらも再び、財布を取り出し、小銭を探し、小銭がない事に肩を落としながら、温かいお茶を冷まし飲み始める。

「バイト・・・探さないとな〜」

伊吹の口座には、確かにかなりの金額が入っていた物の、かなりの額のせいで口座が凍結されてしまい、今や一文無し・・大家にばれたらまずい事になる。

この前まで町おこしのイベントで、人の前でマジックまがいな魔法を見せ驚かせていたが、不安定な収入で、大家さんは変な目でこっちを見ていた。

だが、あるイベントでガマガエルに気に入られ、かなりに高収入を期待できると大家に言ったら目の色変えやがった。

・・・・なのに、今となっては、不安定の収入の方が良かったかもしんないな・・今になっては、生命保険も愚か、身の安全も保障されねぇよ・・

コンビニで求人雑誌を見ながら溜息を洩らす伊吹。

「何やってんだよ。溜息なんてついて・・」

声のする方を向くと、自分の見ている雑誌を横から覗き見る三島がいた。

「あぁそうか、バイトがクビになったんだもんな。可哀想に・・」

本気で哀れんだ目でこっちを見てくる三島

「・・・同情するなら、仕事をくれ」

「仕事ね・・・どんな感じの職種がいいんだ」

冗談で言ったつもりが、本気で聞いてくる三島に正直焦った。

「冗談だよ!なんで、年下の奴に、仕事紹介させられなきゃいかねぇんだよ・・俺のプライドが許さねぇ」

雑誌を片手にレジへと向い、「230円です」その言葉と自分の小銭状況に目と口を大きく開きその場に固まる伊吹に、そっと金を置いて三島はコンビニから出て行った。

三島からの同情と、温かい優しさにプライドも何もかもズタズタにさせられた伊吹は、その場で気持ちも何もかもが崩れた。



「ああ、ぁあ、ききょ今日は、なんて、いい天気なっなんだろうか・・・」

一方、仙田は、そんな台詞を繰り返しながら、今は私が主人公!・・なんて気を張り詰め過ぎ、右手右足を同時に出すような歩き方で周りの子供達に「あの猫、変〜」とか笑われていた。





「よぉ、元気だったか?」

次に三島が現れた場所は、仙田の病室だった。

そんな感じで登場する三島に仙田は笑顔で答えた。

「うん、三島君も、相変わらずだね・・・ちょっと待ってね、今、起こすから」

仙田は慣れた手つきで、ベットをボタンで操作し体を起こした。

「今のベットって便利なんだな・・・俺が餓鬼の頃のベットなんて手動でハンドルをグルグル回してた気がするんだが・・・」

「医療は日々、進歩してるんだよ」

「そぅみたいだな・・」

仙田の横に置いてある椅子に腰を降ろす三島。

「・・・彼女は元気?」

「ん・・?あぁ、元気もなんも相変わらずだよ。ほっといたら煎餅ばっか食ってそうな勢いだよ」

「楽しそう?」

「楽しそう・・なのか?・・まぁ楽しんでんじゃねぇのかな?」

「あのね・・・三島君と会ってから、彼女と話してるとね、よく三島君が話題になってたの。」

「マジで・・変な奴とかそんな感じ?」

「まぁ変な奴・・とは、言ってたけど。変わった人間だ。って言ってた、私、学校で三島君が教室に来た時、本当は私を殺しに来たんだと思ったの・・だって、彼女、三島君を殺そうとしてたでしょ」

「殺しに・・・って、そりゃないでしょ」

「それでね、戦いについては何にも話してくれないんだけど、三島君についてだったら、よく話してくれてた。なんかね、いつも戦いについて聞こうとすると嫌な雰囲気になるんだけど、三島君の時だけは、やけに楽しそうに話してくれた。

・・・私、だから彼女は三島君と一緒の方が面白いんじゃないかなって思ったの。私なんかよりも三島君といた方が、幸せなんじゃないかって思ったの。私の自由なんかのために彼女を縛りつけるなんて私には出来ない。」

「えっ?仙田・・?」

「だからね、私、自由は要らないかなって・・」

「・・・それが、仙田の答えか?」

仙田に聞くと、仙田はしばらく間を取ってコクリと頷いた。

「相思相愛がすれ違いを生んだか・・」

三島はそんな事を言いながら溜息をつき、三島の言葉に俯いていた頭を上げる仙田。

「あいつな・・・この前、来た時あったろ?帰った後、泣いたんだよ。もぅ仙田に必要とされてないんじゃないかって・・」

「嘘・・・・」

「嘘じゃねぇよ。涙なんかボロッボロ流してさ・・・俺はずっと、あいつは仙田の考えを利用して自分の事だけしか考えてないと思ってた。でも、あいつが泣いてるのを見て、そうじゃないってわかった。

・・・口には絶対に出さないと思うけど、戦いの事なんかよりも、きっと、あいつはお前の事を思ってる。」

三島の話を聞き、小さな手で布団カバーを強く握りしめる仙田。そんな仙田の姿を見て椅子から立ち上がる三島。

「・・・それじゃ、また今度、日を改めて答えを聞きにくるよ。それでも、あいつの気持ちわかった上で要らないんだったら、俺が猫として飼う事にするよ」

そう言って、病室の扉を閉めると扉の向こうから、仙田の小さな泣き声が聞こえた。

「俺って、女性を泣かせることに関しては、天才かもしんねぇな・・」

そんな事を言いながら、三島は、日差しが強く照らす外へと歩いて行った。






「あっ、あれ、みみみ三島君、・・お久し・・じゃないか・・こんな所で、なな何をしているのかしら・・・」

ニャーの副音声は、かなり緊張した変な声を出しながら、帰宅途中の三島に声をかけてきた。

「おぃ、言葉が似合わないどころか、右手右足が同時に出てるぞ」

「えっ、うぞだ〜。ぬぁにを言ってるのかわかんない」

変な言葉を発しながら、三島に近づいてくる子猫

「で?一日主人公の気持ちはどうだった?」

「あっ、もぅこれで終わりなの?」

「しらねぇよ。まだ続けたいのか?」

「ヤダ!なんか変に気を使っているような気がするから・・・ホント大変だったわよ。ここら一帯を、牛耳ってるボス猫との対戦とか、マジで大変だった。」

「ボス戦なんてあったのか、スゲーな」

「いや〜手に汗握る展開だったわよ〜。ゴンザレスの奴、サシの勝負かと思ってたら、私相手に五匹で飛びかかってきやがって、まぁ私、子猫だけど、ドラキュラだし〜楽勝みたいな」

「いいや、そうでもないみたいだな・・」

三島は猫を抱き上げると、手足に擦り傷などが所々にあった。

「まぁ今回の主人公の物語はこれで終わりだな。そうじゃないと、この猫の身が持たねぇよ。」

三島は、猫を鞄の中に入れようとするが、仙田はそれを必死に拒否しようと暴れた。

「ヤだっ!変に気を使うな!気持ち悪い」

「別にお前のためじゃねぇ!猫のためだ。嫌なら、猫から出ろ」

鞄の中に猫を入れるが、仙田が猫の外に出ることはなかった。

「ねぇ、今日の活躍、どんな風に描写されるのかな?まぁ、描写とか下手くそだし、大した事ないと思うけど・・」

鞄から頭を出し、仙田がそんな事を言ってくる。

「俺が知るか。無駄に会話とか多くて、読み手とかが大変なだけなんじゃねぇの・・」

「あぁでも、私、今日はなんていい天気なんだろう・・・しか、言ってなかった気がする・・」

「お疲れ様です。」

「じゃぁ私の健闘を称えて、なんか買ってよ」

三島にスーパーを顎で指しながら、そんな事を言ってくる。

「あぁ?・・・ん〜、何がいい?」

「煎餅」

「お前、本当に煎餅しか喰わないつもりか・・・って、煎餅ならまだ家にあるから買わなくていいな」

そう言いながら、スーパーを通り過ぎようとする三島

「いや、待って待って、・・・ええっと、なら饅頭とお茶!」

「和菓子かよ!ドラキュラとかさ、海外出身だろ。洋菓子とかじゃねぇの普通」

「何その固定概念・・・捨てた方がいいわよ」

『三島君といた方が幸せなんじゃないか・・』先ほどの仙田の記憶が三島の中で現れた。

「・・・なぁ仙田。お前、俺といて面白い?」

「はぁ?何よ。いきなり、気持ち悪!・・・でも、まぁ千尋と一緒にいる時とは、違う面白さはあるのかな・・・」

「ふ〜ん」

「何よ!聞いてきたのはそっちだろ。そっけない返事しやがって!ああぁ、もぅわかった!饅頭とお茶と、ハー○ンダッツね!」

「ハーゲン○ッツだと!ガリガ○君でいいだろ」

「うるさい!今日は、私、本当に活躍したんだから、そんぐらい買え!」

「何だと!っていうか、絶対にお前の話なんて書かれねぇよ!俺だって今日は大活躍したんだからな!」


ニャーニャー叫ぶ鞄に入った子猫とその鞄をもった少年が、本気で討論する姿は周りから見ると、一体、彼は何をしてるんだろうか・・・そんな目で見つめられ、その中には、ここのスーパーに面接にやってきて、面接が終了した伊吹の姿もあった。

「あいつ、一体何やってるんだ・・・」

関わらない方がいい、そう思い伊吹は、三島達から離れて行った・・・

そして、二日後、不採用の手紙が伊吹のアパートのポストに入っている事になる。




「あぁ・・・暇だな・・・」

部屋で寝っ転がる三島と子猫をよそに、外では蝉が「蒸し暑いです!!」なんて言いたげにガンガンと叫んでいる。

「まぁ・・大丈夫よ。そろそろ暇じゃなくなるわ」

猫は、風鈴の揺れる下の短冊たんざくを目で追いながら、そんな事を言ってきた。

「なんで?」

三島は、その猫の動作に悪戯心が騒ぎだし、猫に気づかれないよう猫じゃらしを装備する。

「鳴ってるから・・」

「風鈴が?」

サッと猫の前に猫じゃらしを出し、フラフラと振る三島。

「違うわよ」

そう言いながら、目で追い始める仙田。

なら一体何だ・・・そんな事を思いながら、猫じゃらしを振るが、一つの可能性が三島の手を止めた。

「もしかして・・」

「うん、ベルが鳴りはじめた・・・まだ音は小さいから、大丈夫だけど・・まぁこの感じだと、今日ではないわね」

「なんだ、そうか・・・」

三島は、再び猫じゃらしを振り始め、仙田はそれをまた目で追いはじめた。

「ところでさ・・・この戦いって、一体何人・・いや、何匹?何頭かな・・登録されてるんだ?」

「知らない。私も実際は、途中参加だもん。・・・にゃーーっ!!」

仙田は、猫じゃらしに飛びつくが、その一歩手前で三島は猫じゃらしを別の所に移動させた。

「途中参加なのに、ベルが聞こえんのか?」

隙をついて、猫じゃらしで、猫の腹をくすぐる三島。

「だから、登録はされてたんだけど、戦えるような状態じゃなかったからね私は。壺に封印されてたんだから・・・ちょっと、くすぐったい・・うぃぃっ!ヤダっ、ちょっと!」

「なるほど・・・でも、今は猫だから戦えないんじゃないの・・」

猫じゃらしを座った状態で手をウンと伸ばし、上で振る三島。

「戦いでは確かに不利になるかもしれないけど、一応、早くは動けるわよ」

飛ぶタイミングを見計らう仙田。

「へぇ〜どれくらい?」

「まぁ、千尋の時で音速くらいだったけど、今はどうなのかな・・」

「あぁ〜だから、最初の時、刀を振り下ろした所が見えなかったのか・・・」

「ウニヤャーーー!!」

猫じゃらしに向かってジャンプした仙田は、残念ながら届かず、地面にべたっと落ちた。

「ハハッ、ドンマイ。頑張れもうチョイだ」

上で猫じゃらしを振り続けていると、携帯がテーブルの上で震えだした。

「ん?誰かな・・・ちょっとタンマな・・」

そして、携帯を取ると、そこには田村と書かれてあった。

「はい、もしもし?」


そんな事を言いながら、三島は猫じゃらしを誤って、顔の近くに持って来てしまった。

『ちょっとタンマ』そんな言葉は耳に入っていなかった仙田の目が光った。

「あぁ・・元?今大丈夫?」

渾身の力を込めた手が猫じゃらしめがけ、三島の顔に飛んでいった。

「ウニャャャヤーーー!!」

「別に大丈・・ウギャーーー!!」

「キャーーー!元?どうしたの?何があったの?元、ゲーーーン!」





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