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第十話 トラウマとトラウマ

「あぁ〜スッキリした。ねぇお茶とかないの?」

本当にスッキリとした表情で、ここは私の家と言わんばかりにくつろぐ仙田。

一方、三島は服に実際、ついてはいないものの、匂いが付いてそうで服を眺めながらにおいをかぐ。

「ちょっと、何。私の匂いでも確かめようって言うの?匂いフェチか?・・目の前にいるのにそんな事しないでよね。気色悪!」

「チゲーよ・・・吐瀉物が本当についてないか不安で不安で・・・」

「ちょっと、吐瀉、吐瀉、言わないでよ。もう一回するぞコノヤロー」

仙田は、そんな事を言いながら、口に人差し指を入れ始める。

「そん時は、もう一回、魔法瓶に入れてやる」

三島がそう言うと、仙田は渋々、指を突っ込むのを止めた。

つい先ほど、あの惨劇が起きた後、三島はとっさに先ほどの瓶を、仙田の頭に乗せた。

すると、仙田はスポっと言う音とともにビンの中へ入ってしまったのだ。

状況が読み込めず、倒れたまま三島は、頭の上で瓶を下に向けると再び、仙田が瓶から飛び出してきた。

そして、三島の上に四つん這いで現れた仙田は、第二周期が来たらしく、そのまま三島の顔面に「オボロロ・・・

「ぎゃぁぁーー!止めてくれ!!」

三島は、記憶の中で格闘を始める。

「そうだ・・別の事を考えろ・・・えぇっと・・・美野の部屋〜美野の部屋〜・・・オエェッ・・」

「なに精神障害トラウマ精神障害トラウマで打ち消そうとしてんのよ」

「駄目だ・・・逆効果だったみたい。気分悪い・・俺今日学校休む・・」

「夏休みなんだから、ある訳ないでしょ」

「そうでした・・・・あぁ・・気分悪い・・」

(しばらくお待ちください)






なんとか、気持ちを立て直し、本題に入ろうと思ったが、現在は早朝。仙田に電話をしても、一向にかかる気配がない。

「当たり前だよな・・・って言うか、病院で携帯電話なんてかけていいのか?(やってはいけません)」

「まぁ、まだ寝てるだろうね・・・」

「ところでどうして、お前は仙田の姿なの?」

電話を切り、お湯を沸かし始める三島

「ん?わかりやすいでしょ」

「いや、確かにそうだけど、お前の本当の姿〜とか、私の正体は○○なのだ〜。とか、そう言うのあるんじゃないの?」

台所から、お茶を取り出し、準備を始める。

「私の正体・・・言ってもいいけど、在り来たりよ」

「在り来たりって・・伊吹が魔術師って時点で在り来たりだから別にいいだろ」

「じゃぁ言うけど、私の正体ね・・・実は吸血鬼よ」

三島は、驚き持っていたお茶っぱを、下にこぼしてしまう。

「ちょっと、何してんのよ」

「ち・・血とか吸わないよな・・・」

少々身構える三島。

「吸いません!私が食べるのは死んだ者の魂よ」

仙田は、勝手に戸棚から煎餅を取り出し、食べ始める。

「おぃ、サラッと恐ろしい事言うな・・・って言うか、勝手に煎餅を食うな!俺の非常食だ」

「ちょっとお茶まだぁ〜」

掃除機を取り出し、コンセントを探す三島

「うるせぇな、まだお湯が・・ちょっと待ってろ・・・って、実体ないのにどうやって食ってんだよっ!」

なんて言いながら、掃除機のコードを地面に叩きつける。

そんなの三島の突っ込みも、気にせず、煎餅を食べ続ける仙田

「世の中、なるようになるのよ」

「どうなってんだか、この世界・・・」




お茶が完成し、再び本題へ・・・

「アッつ!ちょっと熱いよ、これ」

「うるせぇ!ちょっと何?このグダグダ感、さっさと本題に行け!」

「それでさ、本題に移りたいんだけどさ・・」

「何さ・・・」

「そろそろ、呼ばれる」

「はぁっ?」

しばらくすると、三島の部屋には、二つのお茶と食べかけの煎餅が、置かれそこには誰もいなくなり、三島の携帯が《仙田》と文字を出しながらテーブルの上で虚しく震えていた。





三島と仙田が連れてこられたのは、大きな湖が広がる綺麗な場所だった。

「あれ?俺ここ知ってる・・」

「はぁ?あんたには、こんな綺麗なところ似合わないわよ」

「うるせぇな、家族旅行で来たことあんだよ・・・えぇっとなんだっけかな?・・ホニャララ湖?」

「全然駄目じゃん」

「ちょっと待ってろ、今思い出すから・・・覚えてんのは、綺麗な場所なんだけど、かなりの自殺の名所で・・一度沈んだら、浮かんでこないんだよ」

「はぁ?何それ・・気色悪!なんでそんな事覚えているのよ」

「どうでもいい事だけ、俺覚えてるんだよな・・・確か、下には木とかが沈んでて、グニャッとアーチ状に曲がってんだよ。そして、それに死体がそれに引っかかってさ、土左衛門になっても水の中に沈んでて、最終的には魚の・・」

「いや、言わないで!それ以上、言ったら、あんたも湖に落とすぞ!」

そんな事を言っていると、後ろから草をかき分ける物音が聞こえてきた。

「おぃおぃ、独り言なんて言ってたらボケちまうぞ」

そう言いながら、現れたのは黒い服に身を包んだ伊吹だった。

「あれ?今日は、コートじゃないんだ・・」

「うるせぇな。あれから、色々と大変だったんだよ。お前のせいで・・・」

「俺?何かやったっけ?」

「・・・結局、クビになった。」

「はぁ?クビ?バッカじゃねぇの。結構なミスでもしなきゃ、クビにはなんねぇぞ。あの店」

「だから、てめぇの・・・あぁ、まぁいいや・・で?お譲ちゃんは今日は、留守番か」

伊吹は、そんな事を言いながら仙田の目の前でそんな事を言う。

「はぁ?何言ってんだ。お前の目の前にいるよ」

「冗談だろ。幽霊だとでもいうのか?残念だが、俺はそう言うの信じないタイプなんで・・」

仙田は、その伊吹の態度に怒ったのか、伊吹の腹を何度も殴るが、伊吹は全くの無反応。

首をかしげる二人に伊吹も首をかしげる。

「おぃおぃ、本当に目の前にいるとでもいうのか?・・・あぁなんかそう思うと腹痛くなってきたかも・・なんだこれ・・呪いか・・?」

なんて言いながら腹をさする伊吹・・・どうやら、本当に見えていないらしい。

「これチャンスかな?・・・私、あいつ今なら殺せるよ」

「やめなさい」

「何を止めろって?腹さするのをか?別にいいだろ・・痛いんだから」




そんな事を言っていると、湖が段々と荒々しく波打ち始めた。

「おぉ、遂に御出でなすったか・・」

伊吹は、腹をさするのを止め、構える。一方、

「・・・なぁ今回は、俺どうしたらいいの?お前、守るにも透けてんじゃん。透明じゃん。」

「うるさいなぁ、好きでこうなってんじゃないわよ。多分、私今回、何も出来ないわ。伊吹にも殺すつもりでパンチしたのに、全く効果ないみたいだし・・」

「おぃおぃ、あれ殺すつもりだったのかよ」

緊張感ゼロの三島。そして一応、仙田。


「なぁ頼むから、緊張感ってもんを持てよ、お前」

「だって、俺、敵が出てきても、何も出来ないよ。武器もないのに・・・」

「オーナーから聞いたんだが、お前、武器使えるんだよな?」

「武器って言ったって、ここら辺で使えるって言ったら、木の槍でも使えって言うのか?原始時代に戻れって言うのかよ」

「一言一言、うるせぇな、ちょっと待ってろ」

波が荒々しくなる中、伊吹は地面に手を置き、何やらブツブツと唱え始める

「伊吹、何やってるの?」

「この湖は、カルデラ湖だ。火山が近くに存在する。つまり、鉱物や鉄鋼が多く存在する。それを集めて分解、再構成・・武器何がいい?」

「え?・・な、なんでもいい・・」

「なんだよ・・・とりあえず俺の知ってる武器にするぞ」

そう言うと、伊吹は地面に手をズボッと突っ込み、一気に引き抜くと、そこからは大きな太刀が現れた。

「おぉ!すっげぇ、あれだあれ。なんかの錬金術師みてぇ!」

「当たり前だ。魔術も錬金術も元をたどれば、地・水・火・風・空と言った五大や五行といった原則に基づいて使われているんだ。俺達はその五大や五行を尊重し、錬金術は、その他に新たな分野を取りいれ、魔術とは離れて行ったんだ」

「うん、何言ってるか、わからない」

「えぇっとつまり、魔術は自然現象を主に扱い、錬金術は地殻変動に近い物を扱っているって事だ」

へぇ〜なんて、頷く仙田と首をかしげる三島。


「とにかく、敵さんもこんな長い説明してんのに、全く姿を現そうともしねぇ・・・どうなってやがる」

伊吹は、そう言いながら湖の中の様子を窺う。

すると、湖の中で大きな魚影が、見え隠れするのが見えた。

「なんだあれ?」

「えっ?なに」

そう言いながら、三島も中を覗き見る。すると、そこにいたのは、大きな体に長い尻尾、そして長い首に、亀のようなひょろ長い足。一時期、話題騒然となった・・あれである。

「うっそ、あれ?もしかして、・・・ネッシー?」

「ネッシー?」

テレビや話題、流行。そんな物とは、程遠い暮らしをしてきた伊吹には全く分からない。

「ねぇ、お願い。ネッシーだけは殺すのやめよう。可哀想だよ・・・」

涙目で訴える三島。

「その言葉、蚊とチュパカブラにも言ってやれ」

まったく襲って来ないネッシー、そして、横で呪文を唱え始める伊吹

伊吹が、唱え始めると雲の厚さが段々と濃くなり、雷雲が近づいているのかゴロゴロと鳴りだす。

「ウラーッ、お目覚めの時間だ!」

伊吹が、右手を振り下ろすと同時に、雷が大きな音を立てながら、湖に落ちて行った。

鋭い光に、思わず目をつぶる三島、そして、しばらくすると大きなネッシーが腹を上に向けて、プカリと浮かんできた。

「あらま〜どうやら直撃しちまったみたいだな・・・」

そんな事を言いながらのん気な伊吹

「おぃぃ!伊吹、おめぇこの野郎!きっと未確認生物愛護団体が黙っちゃいねぇぞ」

なんて声を荒げる三島。



「ちょっと、まだ終わってないわよ」

仙田が少し離れた所で、そんな言葉を発し、その言葉に気づいた三島はネッシーの方を見ると、段々とネッシーの周りの水が盛り上がり始る。

「なんだ?・・・」

突然、ネッシーが宙に浮いたかと思うと下から、大きなネッシーを丸飲みするような大きな口が、ネッシーを銜え陸に上陸した。

「うっわ、なにあれ!」

「おぃ、頼むから、緊張感を持てよ、てめぇ」

ぐったりとしたネッシーをその怪物は、食べ始め、その光景と言ったらとてもショッキングな光景だった。

食っている奴の大きさは、ネッシーとそれと言って変わらなく、胴体はネッシーと大差ないが長くて細い首の代わりに、太くて短い首に大きな口。

・・・例えるならワニかな?

ヌルヌルとした皮膚を除けば、ほとんどワニに近い、むしろワニ!かなりでかいワニ!


「ちょっと、あんな獰猛な生物が、今まで見つからなかったと思う?」

血の気を引きながらも伊吹に話しかける

「そりゃ・・・アマゾンら辺にいるんじゃないか?地球は広いし、あそこら辺まだ未開の地だし・・」

食事を終えた、大きなワニは、三島達に気づき、意外と速いスピードで、こっちに向かってくる。

最初に背を向けて走り出したのは、伊吹。そして後を追うように走りだした三島。

「おぃ、てめぇついてくんな!」

「冗談、あんな大きな奴、太刀一本で倒せるわけねぇだろ!」

「確かに・・・あの大きさは昔、龍とやり合った時以来の大きさだな・・・」

二人は、湖の周りを走るのを止め、森の中へと入り込む。

「はぁ?龍だって?あの空浮いてる奴?」

倒木や草木を飛び越えながら、後ろから追ってくるワニから逃げる二人。

「何言ってやがる。浮ける訳ねぇだろ!あの巨体が!地面張ってました。クネクネと動きも遅かったし、かなり倒しやすかった。」

大きなワニも二人を追い、巨体で木々を踏み倒しながら「ギャおー」とか叫んで追ってくる。

「それいいの?何か人気漫画で出てくる奴とか、いつも空浮いてたような気がするよ。」

「そんなのただの人間の妄想だ。実際は、へんてこりんなんだよ。だから生き残れねぇんだ」

「うわっ、夢もねぇ事言いやがったよ。こいつ」

「兎にも角にも、こいつを倒さないと、俺達が生き残れねぇ。」

俺達の中には、仙田も入っているんだろうか?

「どうやって倒すんだよ!」

「俺の電撃攻撃が、効かなかったって事は、おそらくあのスベスベとした肌は、ゴムで出来てる。そして、俺のお得意の火も今回は持ってきてない。」

「なんで?」

「火種が必要なんだよ・・・いつもは、ライター持ってたからさ」

「どうして今日に限って、持ってきてないの!なんで今日に限ってそんなイケメンです。みたいな服装なんだよ。いつものダサい服装はどうした」

そんな一言余計な言葉に伊吹も怒り爆発。

「オメーのせいだよ!コートの中にいつもはコートの中に入れてんだよ!・・・あぁ、走るの辛い・・俺もぅ煙草やめる!」

「体力の衰えを、煙草のせいにしてんじゃねーよ。このっ老いぼれ」

「てめぇ・・・マジでいつか殺してやる」

「で?どうするの」

「いいか、とりあえず、もう一度、電撃を奴に喰らわす。そのためにもしばらく、時間を稼げ。下準備はさっきの術式で完成してるから、そんなに時間もかからない。そして、俺が合図を出したら、その太刀を、あいつのどこでもいいから、刺せ。体内に電気を送ってやる」

三島の「わかった」なんてそんな言葉は聞かぬまま、伊吹は、ワニの進行方向から離脱した。

「あの野郎、俺が了解しなくても、逃げるつもりだったな・・」

三島は、そう言いながら、太刀を抜き、後ろを振り返る。

大きなワニは、木々をなぎ倒しながら、次第に三島との距離を狭めていく。

太刀を構え襲いかかってくるワニを待ち構える三島は、

「やっぱ無理!」

そう言ってワニに背を向け、再び走り出した。


「ちょっと、少しはかっこいいとこ、見せなさいよね」

横では、透明な仙田が、プカプカと浮かびながら三島の横について回る。

「何がカッコイイ所だ!俺の美学にカッコイイ物って言うは、玉砕だけだ!」

「じゃぁ、それやりなさい」

「死ねってか!せっかく伊吹から、助けてやったのに、その本人に向かって死ねって言うのか!」

「あぁ・・・後ろ、危ないわよ」

後ろを指さしながら、仙田は三島の元から離れ出す。不安を感じた三島が、後ろを向くとワニの口から大量の触手が飛び出し、三島を捕らえようとしていた。

「男の触手プレイなんて、見たってツマラネぇんだよ!」

三島は、太刀を振り回し、触手を切ると、触手達は、ワニの口の中に戻り、触手を切られたワニは、痛みでバランスを崩し、大きな音と土ぼこりを舞い上がらせながら、倒れた。

「触手プレイ?」

三島がさっき言った言葉に首をかしげながらやってくる仙田。

「・・・いや、今の言葉は、なんでもない」

走り続けたせいで、息を荒げながら大きな太刀を構える三島。

「これ、チャンスじゃね?」

横に倒れるワニを見て、仙田に問いかける。

「まぁ・・・そうなんじゃないかな?さっさと太刀をどっかに刺しちゃえば?」

「そうする」

三島は、ワニに向かって走りだす。ワニの近くで折れた木々を飛び移り、ワニの背中へと到着した。

ワニも走りつかれたのか、腹で大きく呼吸をしている。直に触って見てわかるこのワニの肌は本当にゴムで出来ていた。

「うわっすげーよ、これ・・・見て、摩擦かなりあるから走っても急停止できる」

なんて、ちょっとワニの背中で遊んでみる。

「ちょっと、早く刺しなさいよ」

「ん・・・うん・・」

太刀の先をワニの背中に置き、少し力を入れると、ワニの皮膚が少しへこんだ。

だが、一向に太刀は、それより先に進もうとはしない。

その光景を見て、仙田は溜息をつく・・

「ちょっと・・・ここまで来て、刺せないとでもいうの?大丈夫よ、こんなのこいつにとっては、針が一本刺さった感じにしか過ぎないんだから」

「いや、そう言う訳じゃないんだ・・・ただ、これを刺すと、俺がこいつに死ぬ要因を作ってしまうって事なんだよな・・」

「いいじゃない、そのぐらい。あんたが殺す訳じゃないのよ」

「でもよ・・・」

困惑する三島・・・そして、遠くでは伊吹が、合図を送ってくる。

「ほら、伊吹も合図を送ってる。さっさと刺して、逃げないとあんたも丸焦げよ」

「でも俺が刺さなければ、あいつは雷を落とせない」

「いいから、刺しなさい。私達は、この戦いで生き残らなきゃいけないのよ」

「俺は別に死んでも構わない・・」

「・・・あなた、何言ってんの?」

「別にいつ死んでもいいんだ・・・そういう生き方をこれまでしてきた」

遠くでは、伊吹が刺さない三島を見て、苛立ちを表わしていた。

「あんたね・・・そんなんでいいと思ってるの?あんたの周りの人はどうなのよ」

「美野には、その事はちゃんと話している。だから、問題は無い」

「じゃぁ千尋は?そんな生き方をしてるなんて、彼女は知らない。・・・もちろん私も」

「・・・また今度話してやるよ」

「じゃぁそのためにも、早く刺しなさい」

「そうだな・・・」

三島は、太刀を両手で構えると上に大きく振りかぶり、下に振り下ろした。

ブチッと言う音とともに太刀は、ワニの背中に深く刺しこまれ、刺さった場所からは、一気に液体が噴き出す。

ワニはその痛みで、突然暴れ出し、三島はバランスを崩た。


痛みに狂ったワニは走りだし、三島は、ワニの尻尾の方へと抵抗も虚しく運ばれ、宙を舞ったかと思うと、暴れる尻尾の攻撃をモロに喰らい地面に叩きつけられた。

伊吹は、右手を振り下ろし、雷が太刀に直撃し、内部に電気を喰らったワニは体を痙攣させながらその場に倒れ、動く事はなかった。

「三島っ!」

伊吹は、叫びながら地面にめり込んだ大きな穴へと急いだ。

中を覗きこむと、変に笑いながら倒れる三島の姿があった。

「ヘヘッ、生きてる・・・まだ生きてる」

「・・ったく、心配させやがって、おそらく湿地帯だった事も生き残った原因だろう・・んな訳ねぇだろ!なんで生きてやがる!死ねよ!死んどけよ、そこはよぉ!」


伊吹の手を借り、穴から抜け出し、体に泥は付いているもののこれと言って怪我はなかった事に一番驚いているのは、三島だった。

「奇跡だ・・・」

「あぁ・・奇跡だ」

「英語で言うと?」

「It’s miracle!・・・ってわかんねぇよ!あってんのか?」

「俺、英語苦手・・」

「高校生が・・勉強できんのは、今の間だけだぞ」

「もぅ、敵いないよな・・・」

「あぁ、もぅ終わりだ。でも、戻りたくねぇかも・・」

「なんで?」

「だ・か・ら!お前のせいだって言ってんだろ!・・・思い出した」

伊吹は、ある事を思い出し、三島を深刻な目で見てくる。

「な、なんだよ・・・」

明らかに、雰囲気の違う伊吹に、不安がよぎる三島。

「オーナーから聞いた」

「・・・どこまで」

「多分、全部」

「そう・・です・・か」

話について行けない、仙田は後ろで首をかしげる。

「お前、一体何やってたんだ?」

「オーナーから聞いた通りだよ。」

「正直に答えてくれ・・・お前は本当に人を殺した事があるのか?」

仙田は、伊吹のその言葉に驚き、まったく顔色を変えない三島を見る。

「あぁ・・・あるよ。だから、殺生が嫌になったんだ。それでいいだろ」

思わず、言葉を無くす伊吹

「そういや、あの街から逃げるんなら、公共機関は使うなよ、きっと見張られてるから」

そう言うと、三島は、森の中から姿を消した。

伊吹は、他にも聞きたい事があったが、その前に消えてしまった三島に舌打ちをしながら湖を後にした。







「ちょっと、どういう事?」

部屋に戻ると、早速、透明な仙田が口を開いた。

「どうもこうもねぇよ。そう言う事だ」

「説明になってない。」

段々と苛立ちを表情に見せ始める三島

「だったら何だってんだ!俺は、お前の過去も知らない!別にお前は、俺の過去を知らんでもいいだろ!何か支障でもあるのか!」

三島の大きな声に、怯える仙田。そして、それに気づき落ち着きを取り戻す三島。

「悪い、言いすぎた・・・」

「・・こっちこそ、ごめん。でも、気になっちゃって」

「悪い、いつか話す時が来たら話す。・・・・」


険悪なムードを壊そうと、仙田は一度手を鳴らした。

「はい、じゃぁ今の話は、終わり。これからどうするかについて、話し合おうじゃないか」

「あぁ・・そうだったな」

「とりあえず、私の寝床なんだけど・・・あのベットを」

三島のベットを指さし、言い続けようとする仙田の話を三島は止めた。

「ちょっと待て、なんでお前がここに住むんだよ」

「何、じゃぁ千尋の所に返してくれるの?」

「ん〜、まだあいつに答え聞いてないからな・・・」

「それともなに、か弱い女性を一人外に放り出そうとでも考えてるわけ?」

「それもありだな・・か弱くねぇし。第一、実体ねぇし、なんで俺は見えてるんだよ・・霊感でもあるって言いたいのか?」

「実際見えてる訳だし、あるんじゃないの?・・・とりあえず、お茶冷めてる」

「作り直せってか?・・ったくよ」

溜息をつきながら、三島は再びお湯を温め始める。

「でもよ、伊吹は、何で見えてなかったんだろうな。魔術師なんだから見えてそうだけど・・」

「あんたね・・なんにも知らないのにも限度ってもんがあるわよ。霊媒師と魔術師は違うのよ。おそらく、伊吹は幽霊とかそういうの全般を、あくまで自然現象と、とらえてる。だから、幽霊も魂の存在も見る事が出来ない」

「だったら、どうやって仙田からお前を抜き取ったんだよ」

「それは、この壺よ」

仙田は、壺を取って三島に見せる。

「魔法瓶?」

「違うわよ。これは元々、私が封印されていた壺なの。どうやって手に入れたか、知らないけど、伊吹はそれを持っていた。・・でもって、今この壺の所有者はあんたって訳。・・あっ言っちゃった」

「・・・つまり、お前を封印するもしないも俺次第って訳か」

ワナワナと震えだす仙田の手から、壺を奪い取る三島。

「さぁ・・・それじゃしばらく、睡眠を取っててもらいましょうか・・・」

三島はそう言うと、仙田のデコに壺をくっつける。仙田は、目をキュッと閉じ、身構える。・・・だが、何も起こらない。

「あれ?」

三島は、再度仙田のデコに壺をくっつける。

壺をぶつけられた仙田は「いてっ」なんて声を漏らすが、何も起きない。

「ん?どうなってる」

壺を調べる三島、そして壺に封印されなかった仙田も、横から壺の様子を見る。

そして、ある異常に気付いたのは仙田だった。

「あっ、有効回数が切れてる」

「えっ?どこにそんな事かいてある」

「ほら、壺の底の・・・そぅそぅ、そこそこ」

壺をひっくり返し、裏を見てみると、ご丁寧に《有効回数が切れています。ご更新するためには、・・》その後には、どこかおそらく海外であろう。知らない場所の住所が書かれてあった。

「どこだよ、そこ・・・」

「そこ、私の故郷ね・・・今、もぅないわよ」

「・・・って事は、お前を封印出来ないって事か・・」

「うん、そうみたい。残念だったね・・・・ん?」



仙田から殺気が、あふれ出し三島はその冷たい空気を嫌と言うほどに感じていた。

「よ、よくも・・・」

「ま、まて・・仙田様。落ち着いて話し合おうじゃないか・・・そうだ、寝床の事なんだが、俺の部屋には布団のスペックがある。」

火にかけたヤカンが段々と震えはじめる。

「残念だったわね・・“封印”出来なくて・・それにスペックじゃなくて、ストックよ」

「封印?とんでもない、俺はあなた様を俺の部屋に迎え入れる気満々だったよ・・・ねぇ仙田・・様」



ヤカンがお湯が出来上がった汽笛を鳴らすとともに三島の叫び声も、部屋中に轟いた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

なんやかんやで、十話目に突入することが出来ました。

これからも何とかやって行こうと思うんで、よろしくお願いします。

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