第一話 謎の世界へダイブ
いい事があるとその後に悪い事が起きる。
逆に言うと、悪い事があればその後にいい事が起きる。
では、いいこと尽くしの後は、どんな酷い災いが起きるのか?
逆を言うと、最悪な事が続くとその後は、一体どうなるのか?
今日は運がいい。毎日けたたましい目覚ましで叩き起こされると言うのに目覚ましの故障により、今日は目覚ましに起こされる事はなかった。
だが、あと10分で家を出ないと完璧に遅刻だ。
急ぎ歯を磨いて、残り少ない洗顔石鹸のチューブを絞るとちょうど一回分に相当する量だけ石鹸が出てきた。
おっ、運がいいね。
けどその石鹸を洗い流す時、蛇口から直接、顔にかけていると突然、お湯が熱湯に変わり
「ホアッッッチャーーーァァァァ!!」
なんて、ブ○ースリー顔負けのオーバーリアクションで後ろに仰け反ると、後ろの戸棚から一枚タオルが落ちてきて顔にパサリと落ちてきた。
やっぱり、今日はついてる。
だが、顔をタオルで拭った後で気づく・・・これは、雑巾だ。
朝食を我慢し、急ぎ外に飛び出し階段なんて面倒臭い。なんて思って玄関を出て、二階の踊り場から外へダイブ。
見事に着地も決まり、再度、俺って今日、ついてる。と、確認
けど、玄関の鍵を閉めるのを忘れたと思い、アパートの階段を上り自分の部屋の鍵を閉めた。
はい、二度手間。そして、腕時計を見て遅刻確実と言う事に気づき一人、溜息をつく。
「やっぱ、ついてないかも・・」
満員電車に揺られ学校へ向かう。スーツ姿の人達がギュウギュウ詰めになる中、学生服を着た三島 元が、小説を片手に席に座っていた。
だが、小説の内容など頭に入らないような状況が今、三島を襲っていた。
満員電車の中、席に座れているのは運がいいからではない。始発から乗っているからだ。
だから、別についてるとか、そんなのどうも思わない。
けど、今この状況は、はたしてついてると言えるのだろうか?
隣に座っている女子高生がうたた寝を先ほどから始め、現在、マジ寝に入っているのだが、寄りかかっているのは、そう。
隣の壁ではなく三島に寄りかかっているのだ。
初めは、まぁ、いつか起きるだろう。なんて甘い考えだったが、肩にあったはずの彼女の頭は列車が揺れるごとに段々と落ちて行き、そして現在。
彼女の頭は、三島の太ももの上にある。
めっちゃついてるだろうがーー!!・・とか、思ってる奴。
ウルッセェーーよ、男子ども!!実際にそんな事、体験した事ねぇからそんな事言えるんだよ!
チキンハートには、この状況は嬉しいんだが、嬉しくないんだが、よくわかんないような事になってるんだよ!!
くっそ〜肩の時に起こしておけば、よかったーーとか後悔する中。助け舟を求め周りに目をやるが、自分でどうにかしろ。なんて目つきでスーツのオジサンどもはそっぽを向く。
大人って冷たいな〜。
今、この状況で起こしたらどうなるんだろう?彼女はどう思う?気づくと知らない男の足を枕にして寝てて、天井の張り紙などには『痴漢注意』なんて書かれている。
・・・結果、起こせねぇ〜。
そうだ。音で起こそう。俺が小説を勢いよく閉じれば、彼女も起きるんじゃないか?
安易な考えだが試してみる価値はあるはず。では、やってみましょう。
ハーフサイズの小説だけどいい音出るはずだ。
・・・ポン。
彼女は、音に反応し眉を顰め、一度目をこすったかと思うと三島や、周りのおっさんどもが息をひそめる中、彼女は顔の向きを下に変えた。
向きを変えるなーーぁぁ!!
下って、下って、それって・・・絵的にまずいんじゃ・・・
もう駄目だーーー!!天は我を見放したーー!
三島が、天を仰いだ時に後ろの窓に頭をヒットさせ、ガンと言う豪快な音で彼女は起き、その痛みで前に俯いていると、彼女が起き上がり彼女の後頭部が、痛みに苦しむ三島の顎を襲った。
三島の足の上で後頭部の痛みに苦しむ彼女は自分の頭が今、人の足の上にある事に気付き、急ぎ元の場所へと戻し、第一声。
「あ、あの・・・すみません。大丈夫ですか?」
肩まで伸びた黒い髪を整えながらの彼女の第一声。窓に豪快にぶつけた頭や顎の痛みなんて忘れてしまうかのような、ひ弱そうな声・・いや、違うな。。なんて言うのかな、綺麗な声?
とにかく、学生服から出てる手、足、首の細さ、そして同じ高校生なのにこの身長差って・・って思うくらいの小ささから、出てきそうな大人しい声が三島の心配をしてくる。
そぅそぅ、大人しそうな声だよ。なんでこんな言葉をすぐに思い出せなかったんだろう。何がひ弱そうな声だよ。彼女に失礼だしね。そんな事。大体、
「あの?・・」
「えっ?」
「大丈夫ですか?」
「えっあぁ〜・・うん、大丈夫、全然平気平気。むしろ大丈夫?って聞きたいぐらい」
あっぶねぇ。しばらく固まってた。
そんな三島の思考は無視し、彼女はにっこりと笑い
「私も、全然大丈夫です」
やっべぇよ。この子めっちゃいい子だよ!さっきまで俺を苦しめていた子とは全然思えないくらいいい子だよ。
やっぱ、今日ついてるわ〜。さっきの苦しみまで幸福に思えてきたよ。
なんだよ。もしかして、これからラブコメ的な展開が待ってんのか?・・とか、思っていたが、そんな有頂天な気持ちから一気に下に落ちる事ってあるんだな〜って実感する事になる。
突然の列車の急停止。おぃおぃ、満員電車でそれありかよ!
車内は一気に悲鳴が響きわたる中、側面から黒い物体が襲来!もちろん、彼女である。
小さな彼女が、おそらく体重も軽いのだろう。急停車によってこっちに飛んできた。
「んなっ!!」
驚くも何も、飛んでくる彼女はキュッと目を閉じているが段々とこっちに飛んでくる。
そして、まるで吸い寄せられるかのように彼女の唇は、三島のくち・・・
それは何とか回避。とある亀の三兄弟の如き動きで避けれたが、彼女のラリアットを首にモロに受けた。
「んげっ!!」
彼女は、とにかく何かにつかまろうと必死だったんだろう。そのまま三島の首にしがみ付き引き寄せる。
首を絞めつけられ三島は必死にタップを彼女にし続けるが、彼女は気付かず、おそらく、このほとぼりが治まるまで叫び続けるつもりなのだろう。叫び声を上げる口は開いていても、目を全く開こうともしない。
列車の急停車なんてよく起きることだ。だが今日の急停車は何かが違った。
いつもなら、もう治まってもいい頃だ。だが、列車は止まらない。止まろうともしない。
立っている人達がドミノ倒しのように一気に倒れていく。
次第に三島まで飛んでいくはめになった。
「マジかよっ!」
前の方に飛ばされる中、一瞬見えた先頭車両の方はまるで圧縮機にかけられてるかのように、圧し潰されているのが見えた。
吹き飛んだ三島も人の壁に助けられたが、この車両も次第に横転しどっちが上なのかもわからない状態になっていった。
あぁ・・・俺、死ぬのかな?高校二年の夏。こんな蒸し暑い日に満員電車に押し込められ、ちょっといい思いして死ぬのか・・やっぱ今日ついてねぇ
「大丈夫?」
いや・・大丈夫じゃない。体が重い
「いい加減、放してくれないかな?動けないんだけど」
「はっ?」
目を覚ますと天井には、列車の椅子がさかさまになっていた。
そして、体が重く感じていたのは横たわる三島の上に彼女が横になっていたからだ。
いや、正確には三島が彼女を抱いたまま気を失っていたからだ。
顔だけ持ち上げると彼女の顔が目の前にあった。
「うおっ、ご、ごめん」
急ぎ手を放し、飛び退く三島
「いいよ、別に。私もさっき気づいたし・・こっちこそ、ごめん。」
「えっ?何が?・・・あれ?周りの人は?」
薄暗くてよく分からないが、この車両にはこれ以上無理って言うくらい人が乗っていたはずなのに誰一人、ここにはいない。
「やっぱ俺、死んだのかな?」
三島の独り言に彼女も独り言のように返してくる。
「死ねたら良かったのにね」
「うん?どういう意味」
彼女の返答に首をかしげる中、彼女はある方向に指をさす。
指さす方向を見るが、薄暗くひっくり返った車両があるだけで何が何だかわからなかった。
「なに?」
「よく見てよ」
そう言われ、注視すると車両の壁には何やら黒い影のような物が見えた。
「なんだ・・・」
壁に手を置き、目を凝らしてよく見ると、その影は何人もの押しつぶされた人だった。
「うわっ」
思わず声を漏らすが、よく見ると自分の足元にも倒れている人がいた。避けようとするが実際にはそこには人はいない。まるでよくできた絵のようだ。
何人も重なっている人が、車両の壁全体に描かれていた。
「なんだよ・・・これ・・」
「こんな状況なのに取り乱さないんだ」
「いや、結構取り乱してますよ。俺」
「質問される前に言うけど。あなたがここにいるのは私のせいで、この場所は簡単に言っちゃえば地球の裏側よ」
「マジ?ここブラジルなの?」
「・・・それジョーク?」
「いや、ごめん。かなり取り乱してる。・・・続けて下さい」
「他に言う事は、特にないんだけど。元の世界に戻る方法なんだけどね・・」
彼女が続きを言おうとしたその時、耳を劈くような高音の叫び声が、車両の中に響きわたった。
思わず耳を塞ぐが、その音は手を貫通して聞こえてくる。
「何だよ。これ!」
「敵よ。こいつを倒せば、元の世界に戻れる・・・ついてきて」
叫び声がする方へと彼女は走りだし、三島も急ぎついて行く。
あの嫌な音もしなくなり、列車の天井を地面に彼女を必死に追った。
「なんか天井を走ってるなんて変な感じ。」
「黙って!」
「ごめん、取り乱してる!」
もうすぐ、先端の車両につくかと思った時、彼女は止まった。
先に何があるのか気になり、彼女の頭の上から覗くと先には奇妙な生き物がいた。
例えるなら、頭はやけにでかいウサギで体はカンガルー?でも、毛がなくて皮膚むき出し。口からは立派な犬歯が二本、むき出してます。大きさは大きなウサギさんって感じかな?
「うわっ、何あれ気持ち悪」
「チュパカブラ」
「へっ?チュパ・・・何?」
「チュパカブラよ。知らないの?未確認生命体」
「いや、知ってるけどさ。こんな堂々といていいのか?」
「目撃者は、私とあんただけ。だから別に堂々としてるわけじゃない」
「そっか」
「あんた、読み込み早いわね」
「いや、見ている物が信じられないだけ」
「・・そう」
そんな会話をしていると、そのチュパカブラとやらが壁に立派な犬歯を突き刺した。そして、その突き刺した壁の先には人の絵があった。
「何やってるんだ?」
「見てわかるでしょ。食事よ」
確かにチュパカブラは、何やら吸っているようにも見える。そして、口先からは何やら赤い液体が垂れているようにも見える。
「食事・・・おぃそれって!」
止めに入ろうとする三島を彼女が止めた。
「大丈夫よ。あいつ等は自分より大きな相手だと死体からしか血は取らない。つまりあの人はもぅ死んでる」
「だとしても!そりゃ駄目だろ」
「それにあれは、まだ子供。おそらく親がどこかに潜んでるはず」
「親がいる?・・・冗談だろ。あんな小さい奴でも気持ち悪いのにあれの大きいバージョンってどれだけ・・・」
気持ち悪いんだよ・・・と言いたかったが周りを気にし、キョロキョロしていると窓の外に何かがいる。
窓の外から中を窺うような目つきは猫の目のようにつり上がっているが、瞳と白身の区別がつかないくらい、目は赤い。
前に突き出た鼻はヒクヒクと、今にも飛びかかるぞ!なんて言ってるかのように動かしている。
再度言うが、皮膚むき出し!前歯むき出し!ネズミ色っぽいし、なんか血管とかむき出してて気持ち悪さ倍増!
「も、もしもし・・・」
そんな事を言いながら三島は彼女の肩を叩く。
そして先ほどからのどこか気の抜けた三島の態度にしびれを切らせてた彼女は、少々声を荒げる。
「何よ!また取り乱した冗談だったら、ただじゃおかないわよ!」
「・・あれは、・・あの窓に映っているのはあの醜い姿は、俺達じゃないよね?」
「はぁっ?何言ってる・・・の」
しばらくの間、微妙な空気が流れる中、彼女は三島を盾にしながらゆっくりと後ずさりを始めた。
おぃぃっ!これは、何の冗談?
心の中でそれを言ったのか、口に出して言ったのかはわからないが、そんな事を思った途端。
大きなチュパカブラは、窓ガラスを割り、大きな音を立てながら車内に侵入。
そして、またあの高周波を出そうとしているのか、口を大きく開く。
「御冗談を・・・!!」
急ぎ耳を閉じ、待ち構えるが、
「コケケケケケケケ・・・」
あの高周波とは全然違う、とても聞き取りやすい声で三島達に警戒音を出した。
口を開くと口の中は、おそらく血を吸い取りやすいように進化したのだろうか、人間や犬みたいな空洞はなく、一本の太いストローがあるように見えた。
あえてもう一度言おう。気持ち悪い。
あなたは、カンガルーの形をした熊ですか?ぐらいの大きさで、ジリジリとこっちに近寄ってくる。
「もしもし、死体しか食わないんだよな?なのに、どうして俺達に近づいて来るの?」
「馬鹿ね、自分よりも大きな物は死体からしか食べないけど、小さければ話は別よ。生きている方が彼等にとって美味しいんじゃないの」
「で?いつまで俺は、あなたの盾なの?」
後ずさりしながら、盾になっている事についての疑問を彼女に聞いてみる。
「そうね・・・相手が隙を見せるまで」
「隙って?たとえば、どんな隙?」
「例えば・・・一番手っ取り早いのは、あなたが食されている時。」
「マジで?」
「もちろんマジ。」
「守ってあげます。とか、そう言うのないの?」
「なんで、あんたなんか、守らなきゃ駄目なの?」
「じゃ、じゃぁ。ついて来いって言ったのは?餌にするため?」
「もちろん。それ以外になにが?」
はぁ・・正直な発言に段々と笑みが零れてきそうだよ。苦笑いだけど・・・
「・・・ところでこいつを倒さないと、元の世界に戻れないって言ってたけど、倒す方法とかあるの?ってか倒す手段が君にはあるの?」
「ある。・・・けど、その方法は一度しか使えなくて、それを使うには、敵の隙が必要なの。相手が隙を見せればこっちのもんよ」
「つまり、あなたが言いたいのは・・・結局、俺に死ねと」
「・・・正解。頑張って死んできて」
ドン・・・えっ?ドンってなんで押すかな・・・?背中に手を添えたかと思うと一気に普通押すかな・・
大きなチュパカブラの間合いに入ってしまった三島。
二本の犬歯が三島に降りかかる。とっさに犬歯を掴むが、チュパカブラの力はかなり強い。一気に地面に仰向けに倒され、犬歯が車内の天井(現在は地面だが)に突き刺さる。
勢いよく落ちてくる犬歯を掴んで軌道を修正しなければ、今頃犬歯は三島に突き刺さっていたはずだ。
「あっぶね〜ぇ。」
チュパカブラの生暖かい息が三島の顔に吹きかかる。思わず顔をしかめるが、一本の長いストローの事だが、間近で見てようやくわかった。
・・・これ、こいつの舌だ。
なんて、思っているとその舌が三島の顔めがけて発射されてきた。
まぁ、もう一度言う事でもないんだが、もちろん避けました。それは、亀の三兄弟の如く・・あぁもぅやめとく。
とにかく、地面に犬歯も舌も突き刺さったチュパカブラは、身動きも取れず顔を右往左往に動かすが、一向に抜ける気配がない。
後ろ足の方に若干、隙間があるからそっちから抜け出し、彼女の方に行こうと思うがこのデカ物のお陰で右からも左からも通れないから背中をよじ登り彼女の方へ向かった。
彼女は、三島が死んだと思っているのか片膝をつき、両手を合わせ何やら拝んでいる。
「おぃ、隙作ったんだから。さっさと倒してくんないかな」
三島の声に驚き、デカ物の背中に立つ三島を見上げる彼女。
犬歯があと少しで抜けそうになるが、三島がデカ物の顔を思いっきり踏みつけ、再び深く突き刺した。
「は や く!俺の頑張りを無駄にしないでくれ」
三島の声で我に返った彼女は深くため息をつき。
「わかったから、さっさと離れなさい」
そう三島に促す。三島が指示どおりに離れると、彼女はどこから取り出したのか日本刀を取り出し、何やら呪文を唱え出す。
そして彼女が一瞬消えたかと思うと、次に彼女が目に入ったのは、いつの間にか刀を鞘から抜きチュパカブラの前で刀を振り下ろした後の光景だった。
刀を鞘に戻すとチュパカブラは縦に割れ、二つに分かれた体は、ドスンと言う音を響かせながら左右に倒れた。
この光景を見て三島が思った事は、・・・よくできた夢だな〜。
「お見事」
なんて両手を叩きながら言うが、彼女は片膝をつきやけに苦しそうだ。
「大丈夫か?」
「・・・言ったでしょ。一度しか使えないって、一撃必殺ってのは体に負担がかかるの」
「へぇ・・そうなんだ。」
「・・・ねぇ、さっきからやけに読み込みいいけど。もしかして、夢とか思ってる?」
「何言ってんの?これが夢じゃなきゃなんだって言うのさ。」
「呆れた!あんた本当に馬鹿ね。」
「もちろん、俺はバカだって自負してますから。さぁ俺よ、敵も倒したことだしそろそろ起きようぜ。きっと学校に行く時間だぜ!」
なんて言っても、この世界はなんら変わらない。
「あれ?」
「当たり前でしょ。まだもう一体いるから」
「もう一体?・・・・じょ、冗談だろ?こいつの子供まで殺せって言うのか?おぃおぃ俺はどんだけ残酷な夢を見てるんだ?・・俺は無理してでも起きるぞ」
なんて言いながら手すりに頭を何度もぶつけるが、全く起きる気配がない。むしろ頭が痛くなってきた。
「だから、夢じゃないんだから」
夢じゃない。もちろんわかってた。これが三島にとっての取り乱し方なのだ。彼女の夢じゃないという言葉でようやく我を取り戻し始めた。
「マジで?・・・これ本当なの?・・この壁に描かれてる人も、目の前で死んでる未確認生命体も?」
「そうよ。これは事実よ。生き伸びたいんだったら、いい事教えてあげる。私達がやっている事は地球争奪戦よ」
「はぁっ?なんだそりゃ?」
「とりあえず、詳しい話して上げるから、さっさと残り一体、殺してきて。私、しばらく体動かないから」
「いやです」
「いいから、そうじゃないと元の世界に戻れないわよ」
「だとしても、俺は殺生はしたくない」
「はぁ?何言ってんだか・・いい?」
三島達の会話を閉ざすかのように再びあの高周波が二人の耳を襲い始めた。
高周波が、出てくる方を見るとあの子供が鳴いていた。
「あいつか、この音を出すのは・・」
「そりゃそうよ。自分の身を守る方法がまだない子供の唯一の生存方法よ」
子供は親の死体を見つけ、再び怒り狂ったかのように鳴き始める。
鳴き止むと子供は動く事が出来ない彼女の方へ飛びかかった。
「危ない!」
三島はとっさに下に落ちている刀を拾い、彼女に飛びかかろうとする子供を鞘で跳ね飛ばした。
吹き飛んだ子供は、再び飛びかかろうと体制を整えるが、彼女の前に三島が鞘を構え立っている。
「頼むから、襲ってくるなよ。親が殺されて怒り狂ってるのはわかるが、力量ってもんを考えろ。お前じゃ無理なんだ。頼むから逃げてくれ」
子供に言い聞かせるように、三島が語る中、三島の鞘を掴む手が、震えている事に彼女は気がついた。
「ちょっと、なに刀捨ててるのよ。本当に殺さないつもり」
「当たり前だ!俺は無駄な殺生はぜってぇしねぇ!・・・だが、彼女を襲おうと言うのなら致し方なしだ」
「無駄よ。チュパカブラの子供は親にかなりの依存をしてるの。親を殺した奴は絶対に許せない、例え自分が死んででもね。」
「だったら、どうすればいいんだよ」
「何度も殴る撲殺と刀で一瞬の痛みで楽になるのどっちがいいと思う。刀を拾いなさい」
三島は彼女に言われるがまま刀を拾おうとしたその時、子供がその一瞬をつき三島に飛びかかってきた。
「危ない!」
彼女の声に気づき子供が三島の顔めがけて飛んでくる事に気づいた。とっさに右手を出すと子供は犬歯を三島の腕に突き刺した。
「いってぇ!」
さらに追い打ちで子供の舌が腕の奥へと突き刺さる感触が激痛とともに三島を貫いた。
三島は刀を逆手に取り、子供をそぎ落とそうとするが、刃は子供の前で止まってしまった。
「何してるの!自分の血を吸い取られたくなかったら、さっさと殺しなさい!」
「わかってる!わかってるんだ」
刀を持つ左手に力がこもるが、あと少し、あと少し左手に力が入れば子供をそぎ落とせるだが、そのあと少しの力が入ろうとはしない。
「くそっ、いい加減にしろよ。俺・・いつまで引きずってんだ。・・・あれは事故だ。そして、これをやらなきゃ俺が死ぬんだぞ。」
三島は自分に言い聞かせるが、一向に力を入れようとしない。
後ろでは彼女が叫んでいるが、次第に彼女の声が遠くに聞こえてきた。まずいな本当に血がなくなってきた。
子供にすら焦点が合わなくなってきた。
自分の足で立つ事すらままならない。気がつくと両膝をつき、体をだるさが襲い始めた。
マズイ・・これ、マジで死ぬ。
それからの事は、少ししか覚えていない。三島は倒れる中、子供が突如燃えだし、遠のく意識の中、彼女の声と男の声が聞こえた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
面白かった?う〜ん、微妙だよね。間違いなく・・・緊迫感があるのかないのか、わからないし・・
こんな感じで書き続けようと思っています。句読点少ねぇよ。などのご意見やご感想がありましたら、お待ちしています。
これから、よろしくお願いします。




