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美少女ふたり 早くも退場

いにしえから、多くの先賢たちが考えても分からないこと。いくら考えても人間には認識することが不可能なこと。


そういう、考えても仕方のないことを考えるのは、青春時代の時間の使い方としてはもったいない。


恋愛にもそれは言えるのではないかと思います。


特定の女の子を、必要以上に高めてしまって心の中の聖域とでも呼ぶような場所に置いてしまうこと。

そして失恋した場合、その後も、その気持ちを引き摺ってしまうということも。


女の子を好きになるということは、観念的に考えるようなことではないし、相性というものもある。

好きになっても相手にその気が無いのであれば、自分は、その人のタイプでは無いということ。

それ以上、一方的に好きであり続けても仕方ないし、その女の子が優しい子であるのなら、その人の気持ちの負担にもなる。


自分に合う女の子は他にいるのだ、と、そう思えばよいと思います。

魅力的な女の子は、周りにたくさんいるでしょう。


理屈で考えるのではなく、もっと自然に、心の中とゆったり対話しながら日々を過ごす。

そんな青春時代を送ってみたら。

そんなことを考えます。

 十歳の時に要の前に登場した美少女、原田久子は、要の同級生だった。


 中学生になって、一年のときは別のクラスになったが、二年になってまた同じクラスになった。


 喜ぶ要の前に、また別の美少女、西川節子が登場した。

 要は一目惚れしてしまった。


 要にとっては、こと女の子に関しては夢のような時間が始まった。


「いったい自分はどちらの女の子を好きになったらいいのだろうか」


 要はそんなことを考えた。


 中学二年というのは、はっきりと思春期と呼べる年代に突入し、そろそろ男女交際などというものも始まる時期でもある。


 どっちの女の子を好きになったらいいのか。


 要がそんな心配をする必要はなかった。


 高貴な美少女、原田久子。


 華麗な美少女、西川節子。


 当然のごとく、ふたりは男子生徒の間でとても人気があった。

 女の子の間でも、あのふたりは仕方ない。

 そんな目で見られていた。


 そしてその中学二年のとき、クラスの中で、その久子と節子のふたりの女の子だけが男女交際を始めた。


 原田久子は、クラスで最も運動のできる男の子と。


 西川節子は、クラスで一番ハンサムな男の子と。


 もちろんどちらも要ではない。


 もともととても夢見がちな男の子だった要は、そのふたりの女の子のどちらかと始まるはずの未来を夢見ていた。


 自ら恃むところ極めて高かった、そのときの要にとっては、ふたりに相応しい少年は自分しかいないはずだった。


 自分がどちらを選ぶかだけの問題だったはずであった。


 だがその夢はあっさりと破れた。


 要は夢見がちなだけでなく、とても理屈っぽい。

 それも宇宙がどうだとか、神様は本当にいるのかとか、人間の存在にはいったいどんな意味があるのかとか、直ぐにそんなことを考えてしまう。


 そして、直ぐに理想の世界、理想の女の子などということを観念的に考えてしまうのだ。


 哲学的な少年と言えば、もしかしたらかっこいいのかもしれないのだが、実際のところは、そんなことを考える自分に酔っているだけのことなのである。


 しかし、要が夢に描いていた理想の世界において、おのれが理想とする女の子とともに歩むはずだった理想の人生。


 それはもう実現することはない。


 とても理屈っぽい要は、この事態に対して一生懸命に考えた。


 理想が早くも潰えてしまった自分は、これからどういう人生を歩めばいいのか。

 どういう概念を心の中に保持して、これからの人生に臨めばいいのかと。


 そして行き着いたのが前章で記述した内容なのであった。


 理想を失ってしまったのであれば、別の理想を形成するか、

 あるいは、理想などということを考えるのはやめてしまうか。


 今の自分には後者がこころにしっくりする。

 要はそう思った。


 理想なき世界。


 その言葉は、要にはとても新鮮な思いをもたらした。


 女の子だけではない。

 この世界に対して要が考え、概念を構築していった、様々な理想。


 捨てよう。


 要は思った。もう極めて美しく、しかし現実の世界にその言葉が実体を持たない言葉を使うことはやめよう。

 こころに思い描くこともやめよう。

 この地上に確かな実体を持った言葉だけをこころに持って、これからの人生を生きていこう。


 要はそう決意した。



 さらに、あろうことか、ふたりの美少女は、中学二年が終わると、ともに、要の中学から転校していってしまったのだ。

 父親の転勤によって。

 遠方へ。


 そのことも要にとっては、自分があらたにたどり着いた心境を象徴する出来事だと感じた。


 要は、自分が、大人になったような気がした。


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