マルス
明日はないと思っている。明日は来ないと思っている。
君の血が僕の腹を染めた。空は緑だった。
今日は雪。
庭の牛がわんと泣いた。可愛くなりたかったと猫にリボンを縫いつけた。足の爪を朱が滲む。
1.2mmのかぎ針で、赤く縫った運命の糸。小指に巻き付け、君の残骸と結ばれる。
みどりの雲がさわさわと揺れる。段々とそれは黄色く変わる。そのうち赤になって雲は落ちた。空にヒビが入った様だ。
空に実がなった。赤い実だ。僕の頭に落ち転がったそれは、君の血と混ざって見えなくなった。
ないてほしかった。ないてほしかった。僕のために君がなけばいいのに。僕のために君が苦しめば良かったのに。
かろっという音を立てた。あまい。実を飲み込んだ、少し冷たい。
苦い、しょっぱい。君の香りがする。
嬉しくて、もう一度君をかじった。