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落ち続ける水滴

作者: 行世長旅

ピチョン


もう何日経ったのだろうか。ここには陽の光が入らないため、時間経過を感じる術が無い。


ピチョン


いや、正確に言えば1つだけある。何も変化の起きないこの空間で、唯一変化し続けているものがある。


ピチョン


一定の間隔で水滴が落ち続けている。

これはこの部屋で時間を知らせる唯一の変化だ。


ピチョン


約5秒に1滴落ちている。それはいい。いいのだが、あまりにも変化が無いため数え間違えてしまう。


ピチョン


そもそもこんなものをずっと数えてなどいたら気が滅入ってしまう。そう思って早々に数えるのをやめた。


ピチョン


言ってしまえば、経過時間を知る必要すら無い。知ったところで何の役にも立たない。


ピチョン


確か中国にこんな拷問があった気がする。額に水を一定間隔で滴らせるというものだ。


ピチョン


するとその人間はしだいに正気を失う。私は額に当たっているわけではないが、聞き続けているだけでも同じ効果があるだろう。


ピチョン


私はまだ正気を保っている。……保っているはずだが、それを証明出来る人は私しかいない。


ピチョン


もうすでに正気を失っていて、判断基準すら狂っていた場合は証明も何も無い。


ピチョン


けれどそんなことは些細な違いでしかない。ここに私しか居ない以上、私の正気など私にとってはどうでもいい。


ピチョン


私の意識はいつまで保つのだろう。

疎ましいはずの水音に、自身を確認するための次の音を期待した。

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