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華宮百合香は他人の部屋で目を覚ます 3

部屋に差し込む朝日で私は目を覚ました。あれ?カーテン閉めて寝る派なのに、おかしい。そう思って周りを見渡すと、昨日うっかりうたた寝してしまったソファが目に入った。

(あ、しまった、ここでちょっとうとうとするはずがいつのまにか本気で寝ちゃったんだ。)

気づくとベッドサイドの棚の上にメモ書きがあった。ものすごく几帳面な字で、

「お茶をお運びしましたが、よくお休みになられておられるようでしたので下げました

起こしたくありませんでしたのでお着替えはしておりません

ジスレーヌ」と書かれている。文面から言って、ジスレーヌさんがソファからベッドまで運んでくれたのだろう。悪いことしちゃったな……。

暖炉上に置かれた時計を見ると、時刻は8時手前を指していた。道理でもう騒がしいはずだ。みんなとっくに起きて忙しくしているのだろう。

(ていうか、これ、まだ夢の続きなのかな?なんか、夢の中でも寝てたなんてふしぎだな)

そうぼんやり考えていると、ドアをノックする音がした。

寝ぼけた頭で、「ど、ど、うぞ」と答える。入ってきたのは昨日のジスレーヌさんだった。

「オルレリア様、どうですか、よく眠れましたか?ご気分は?」

「あ、は、はあ……大丈夫、です」

相変わらずどういう風に答えていいかわからない。適当な生返事をすると、ジスレーヌさんは眉をひそめて、

「まあ、随分お悪いんじゃありませんの?オルレリア様らしくない」

と言って額に手を当ててきた。そして、

「おかしいですわね。熱はなさそうですし、もしかして神経のご病気にでも……」と呟いた。

もしかして、私はそのオルレリアって子のニセモノだとバレたのかも知れない。ジスレーヌさんにまじまじと見つめられて、私はついに白状することにした。もう無理だって心臓がバクバク言っている。たとえ夢の中でも、私って嘘つくの下手だし仕方ない。

「す、すみません!!……あの……私、オルレリアさんじゃなくて、その……」

ジスレーヌさんの眉がさらにひそめられる。メガネ越しの顔が更に厳しくなったあと、

急に爆笑された。

「どうなさったんです、オルレリア様!!フフフッ まさか劇でもおはじめになられるおつもりですか?私を騙したければ、少なくともお顔は変えないといけませんよ!」

そう言いながらジスレーヌさんはお腹をかかえてしゃがみこむ。どうやら笑いのツボに入ったらしい。

「フフッ オルレリア様、こんな冗談思いつくなんて、さてはショックからすっかりお立ち直られたようですね!

そ、それにしても、あのオルレリア様が『す、すみません!』なんて、フフアハハッ」

どうやら信じてもらえないらしい。私は諦めずにもう一度言った。

「は、ほんとなんです、気がついたらここにいて、髪だってこんなに長くなってて、それに私巻き毛じゃないし、でも騙すつもりとかなくて、ふつーに家でパジャマでゲームしようとしてたらここに……あっ!!!」

わかった。

オルレリア。最初からこの名前、どこかで聞いたことあると思ったら、あれだ。私は思わず、ベッドを飛び出すと昨日の大鏡に駆け寄って、改めて確認した。

膝まではゆうにあるピンクの巻き毛、水色の瞳、長い下まつげに薄い唇。そして何より、トレードマークのどでかい頭の上のピンクリボン。

間違いない、悪役令嬢オルレリア。

私のプレイしていた、『薔薇の乙女のアラモード♡』二周目以降のプレイから選べるシナリオに出てくる脇役キャラの見た目そっくりだ。

で、でもなんで私がそのオルレリアになってるわけ!??意味がわからない。

オルレリアと言えば、高飛車、人当たりがきつい、お金のある貴族としか付き合わない、いつも取り巻きの女の子に囲まれてないと気が済まない、主人公のフラグを折ろうとしてくる、……と、顔以外いいとこが無い迷惑キャラとしてプレイヤーからは悪名高いキャラだったはずだ。

つまり、顔は良くても、オルレリアとして人生を送るのはキツイ。というか、その争いを好む性格って、私の性格に合ってなさすぎる。え、私、本当にここで人生送んなきゃいけないの?ここは夢じゃなくて?……

そういえば、ここに来る前、ものすごい光の中で誰かが私に何か言ってたような。確か、私は誰かのプレイデータにどうこうとか……

頭がものすごい勢いで回転する。でも、だめだ、それ以上は何も思い出せない。私は大鏡の前で青ざめて頭を抱えた。

ジスレーヌさんはまだ笑っているが、鏡の前で慌てる私を見てなにか勘違いしたらしく、

「目が少し腫れてるのが気になってるなら、 それは昨日お泣きになられたせいですよ。湯浴みなさればすぐ消えます」と言ってきた。

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