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華宮百合香は他人の部屋で目を覚ます 2

燭台が何台も灯された晩餐室に迎え入れられた私は、急に知らない顔達に見まわされ少し怖気付いたけど、ジスレーヌさんが背を押してくれて私の座るべき椅子まで案内してくれたおかげで助かった。

無言で着席する。召使いの一人だろうか、男の人が椅子を引いてくれたのでちょっと戸惑ってしまったけど、きっとここに本来座るべきオルレリアさんには普通のことなんだろう。

「あ、ありがとうございます」

とその男の人(正直私と年変わらないくらいだと思う)に言うと、なんだか面食らったような顔で見つめられた後、慌てて頭を下げられた。

それに、先に席についていたおじいさんからも、

「おや、オルレリア、お前が使用人にお礼を言うなんて……とても、いい心がけだよ」と微笑まれてなんだか変な気がした。当然のことをしただけなのにどうしたんだろう?

向かいの席にいる生意気そうな女の子が、

「あらなんだか姉様らしくないわ。」と言ってくる。可愛い子だけど、なんだかそのヘラヘラした生意気そうな笑い方が、どうしてかわからないけど気に触る。

さっきのおじいさんが、「そんな事はないよ、アデル」と優しくたしなめたのでその場は収まったが、このアデルと呼ばれたその子がチラッとこちらを見ては一瞬だけバカにしたような笑顔をしたのを私は見逃さなかった。なんだか、嫌われてるみたいだ。

テーブルの端っことはいえさっきのジスレーヌさんも着席するので、私は(あれ、この人ただのメイドとかじゃなかったんだ?確かに服装も、地味なワンピースだけど上品な感じだし、そんなに使用人って感じじゃないな)と改めてその姿を眺めた。ジスレーヌさんは落ち着いた様子で目を伏せて座っている。

テーブルに着くのはこれで全員のようだった。

最初に見た優しそうなおじいさん(多分話から推察するに、これがジスレーヌさんが言ってた『旦那様』だと思う。)、あの生意気そうなアデルって子、それからその二人の間に座っているキツそうな目つきのおばさんは誰だろう?アデルの母親かな。確かに顔の感じも、金色の髪もお揃いだし。でもそうなら、このおじいさんはどうなんだろう?このおばさんの夫?いやいやいくらなんでも年が離れ過ぎてる気がする。特にアデルって子のほうは12歳ってくらいだと思うけど、親子っていうには相当差がある。

ていうかさっきアデルって、私のことを「姉」て呼んでたよね?……この子、オルレリアって人の妹なのかな?なあんかいやな予感しかしないな……。

そんなことをいちいち邪推しながら食べる食事は、はっきり言って味がしなかった。多分、豪華な食事なんだろうとは思うけど、そもそも一皿ごとにメイドがやってきては隣で給仕してくれるものだから、そのたびにいちいちどぎまぎしてしまってリラックスできない。

そんな私の様子を訝しんでか、最後の皿が終わったあとにキツそうなおばさんのほうが私を見ると、

「随分元気がないのね、オルレリア?今日は料理に文句の一つもつけないじゃないの。」と言ってきた。

まずい、オルレリアって子は食の好き嫌いが激しいみたいだ。あんまり普通に食べてちゃいけなかったかな!?

おじいさんが私の代わりに答えるかのように、

「おお、ルイズや、そりゃああんなことの後だ、オルレリアも傷心で喋る元気もないのだろう。オルレリアは感じやすい繊細な娘なのだから。そうだろう、オルレリア?」と言って私の顔を見つめてきた。

どう答えるのが正しいんだろう、わからない。傷心ってことは落ち込んでる様子を見せたほうがいいのかな。そう思った私は、無言でこくりと頷いた。おじいさんは、

「そうだろうねオルレリア、無理しなくていいから今夜は早くお休み。あのことはまた明日、書斎ででも話そう」

そう言って優しく微笑みかけてくれた。

ジスレーヌさんも、

「あとで寝室にお茶をお待ちいたしますわ。」と言ってくれる。どうやら、少なくともおじいさんとジスレーヌさんは信用しても良さそうだ。

「お姉様がおしゃべりしないととっても静かね!私このほうが好きだわ」という生意気なアデルはともかく、今日のところはオルレリアという役をなんとかやり過ごせたようだ。

私はほっとして席を立った。来た時と同じように、男の人が椅子を引いてくれるので、同じようにありがとうございます、と言って部屋を出た。

後ろから、「オルレリア様をお独りにするのは少々心配ですから」と言いジスレーヌさんも来てくれる。正直、部屋まで戻れる自信がないので助かった。

けど、どうしてみんな、こんなやたら優しくしてくれるんだろう?このオルレリアって子、ひどくつらい目にでも遭ったばかりというような感じだ。

まあ、どうせこれも夢の中なんだから当然だろう。なんか妙にリアルな夢だけど。

そう思いながら自室に戻った私は、食堂で知らない人をたくさん相手にする緊張が解けたせいか、近くにあったソファによろけるように倒れこむと、そのまま少し、眠ってしまった……。




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