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#3

絶体絶命のウォーレンを救ったのは

 『やめろ。この人間はお前達を傷付けたいわけじゃない。』


「…!?」





突然気配と声が現れた。


意識を向けると、黒竜の目の前に小柄な白竜が対峙しているようだ。


『人間はこんな場所に竜が棲みついたのを不思議に思って見に来ただけだ。』


ウォーレンには何を言っているのか分からないが、白竜が黒竜を諌めているのは感じられた。


「あんた…ドラゴニュートか…。」


魔力探知でその白竜が、竜にも人にもなれる竜人であることを…黒竜よりも高いLvであることを知る。





 白竜はウォーレンのいる方を見やり、更に首を5階層への入口へと向ける。


「…っすまねぇっ。」


逃げろ と言ってくれたのだと悟り、ウォーレンは≪超速移動≫のスキルを使用した。





 『怪我をしているがどうした? フリズスキャハク山に棲んでいた竜なのか?』


竜は力あるものに従う。


加えてこの時黒竜は、この白竜に言いようのない恐怖を感じていた。


黒竜は白竜に頭を垂れた。


『…そうだ。しかし今あの山には殆ど残っていないだろう。我は我が子を抱えて逃げてくるのがやっとであった。』


『と言うことは他にも傷ついた竜が方々へ飛び去っているのか…。すぐに確認・対処するよう他の竜人に呼び掛けておく。』


人間には恐れられる竜だが、竜人と竜は共にあることが多い関係だ。


竜の危機には竜人総出で当たらなければならない。


『助かる。』


黒竜はどっと倒れ込む。


『おい…っ!? この傷は…呪いなのか…?』


『そうだ…。徐々に魔力を奪い、体を中から蝕む…。』


黒竜は苦しげに呻くと、覚悟を決め卵を鼻で押し出した。


『子のことを頼めないだろうか…? 我はもう…。』


『…引き受けよう。』


『助かる…。ここで汝に会えたのは僥倖であったな…。』


黒竜は目を閉じた。


呼吸がゆっくりになっていく。


明日の朝には呪いに体中を食らい尽くされてしまうだろう。


白竜は卵を抱えると問うた。


『安らぎを…?』


『そうか…汝が竜殺しか…。頼…む。』


すると黒竜の体は小さな紫の炎に包まれた。


一万度を超える炎で瞬時に燃やし尽くされ、黒竜は消えた。





 後にウォーレンによって黒竜の気配が消え去ったことが確認され、残った熱や大気の乱れを魔法で調整した2週間後に再びダンジョンに出入りできるようになった。


その頃、スキーブラドニルから遠く離れた竜人の国ムスペルヘイムに1人の男が訪れていた。


「…ガイ!? 今まで何処に…! いやそれよりもよく戻って…。」


ムスペルヘイムの城下町、騎士団の上位者が多く邸宅を持つ地域がある。


その一角に大きな屋敷を構えるヴァン・シンシトーの元をガイはやってきていた。





 「竜からフリズスキャハク山のことを聞いた。何が起こっているか情報はあるか? ムスペルヘイムは何らかの対策を講じているか?」


ヴァンの言葉を遮り、ガイは早口に要件を告げる。


ヴァンは憂いの表情を浮かべた。


「その話は知っている。詳しく話すから座ってくれ。」


ガイを客間へと誘い―彼が竜の卵を抱えていることに気付いた。


「それは?」


「呪いに侵された竜に託された。この件でも話がしたい。」


ヴァンは頷いた。


 ヴァンは青竜の竜人で、黒髪、青眼の壮年の男性だ。


子爵家の次男で、現在は竜騎士団に所属している、ガイの昔馴染みである。





 「先に竜の卵だが…ヴァンとスキンファクセに頼めないだろうか。俺では育てられん。」


「確かに大らかな彼女なら里親として適任だが…成竜になった後は?」


「まだ竜を持たない騎士と結べばいい。難しいようならフリズスキャハク山に帰すだけだ。」


 竜人の騎士は障害の相棒として一頭の竜と番って戦に身を投じる。


スキンファクセとはヴァンの相棒となる青い雌竜で、何度か卵を産んでいるので、子育ても申し分ない腕前のベテラン竜だ。


現在スキンファクセは王城近くの竜舎におり、今期は卵を産み育ててはいない。


そして竜騎士と縁がない竜達は、通常フリズスキャハク山に野生竜としてのびのび生活している。





 「…ガイはその竜と結ぶ気はないのか?」


ヴァンが痛々しげにガイを見つめる。


「俺にはもう、どんな竜も懐かん。」





 ガイは滑らかな卵の表面を撫でる。


今は母竜の代わりにガイが魔力を注ぎ、仔竜の生命を保っている状態だ。


「分かった。預かるよ。」


ガイはヴァンに卵を渡し、本題に入った。


「野生竜達に何が起こっている?」

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