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#2

ダンジョン探索始まる

 「兄ちゃん!串焼き2本くれ!」


「毎度どうもっ。」


商業ギルド側の広場でそんなやり取りが飛び交う。


「久しぶりだねぇ。ウォーレンさん。」


「ああ、隣街まで商会の馬車を護衛に行っててさ。着いたところでスキードブラドニルから招集掛かってるって連絡受けて、慌てて戻ってきたのさ。」


革鎧にモカシンという出で立ちのウォーレンは高ランクのスカウトだ。


「と言うことはダンジョンの5階層付近にいるっていうドラゴン調査隊かい?」


「そうそう。」


美味い美味いと串焼きを頬張るウォーレン。


「明日のダンジョン入口周辺は結界が張られて、周囲2ケント(2km)は一時避難区域になるから、近づかないようにな。」


屋台の主人は苦笑する。


「俺はここから動かないからダンジョン近くには行かないよ。それより気を付けておくれよ。ウォーレンさんなら心配ないだろうが、今は竜の繁殖期で、気が荒いからね。」


「お、そうなのか。ま、竜って時点で気は抜けないが、肝に銘じるよ。ありがとな、兄ちゃん!」


串焼き2本をペロリと平らげ、ウォーレンは去っていく。


 「…明日の分は少なめに仕込むか。」


街を行き交う人も売り上げも少なそうだ、と屋台の主人は思った。





 「今回の任務は偵察だ。決してドラゴンを刺激しないようにしてくれ。」


ギルドマスターからレミィが鱗を拾った場所が書き込まれたダンジョンマップが渡された。


「相手はLv50以上と予想している。あそこでブレスを吐かれるとひとたまりもないぞ。」


 パーティーは騎士が2人、剣士1人、魔術師1人、僧侶1人、スカウト2人となっている。


魔術師にはダンジョン脱出用の魔符が渡される。


5階層までは各自1ソロでもモンスターは相手に出来るが、相手と退却時を考えた編成となっているのだ。





 「竜は今繁殖期だから注意しろって言われたよ。」


ウォーレンが情報共有するとサブマスターの顔が青ざめる。


「そんな時期でしたか…。卵を産んでいたら仔竜の巣立ちまでドラゴンは動きませんよ。当分ダンジョンは封鎖することになります。」


「それは困るな。」


人が多いこの街では、護衛や薬草摘みだけでは冒険者を食わせていけない。


「俺たちがどんな状況か確認してくるから、それからギルドで決めてくれ。」


 偵察パーティーはギルドを出てダンジョンへと向かった。





 魔力探知と生物探知を展開してみる。


「6階に強力な反応が出た。4~8階は他のモンスターが退避していてほぼいないようだな…。」


「3階くらいまで近づくか? それともスカウト隊に気配を消して6階まで確認してもらうか…。」


と騎士。


「鱗を見つけたパーティは5階まで行けたろう? 縄張りに入っても特に攻撃態勢は取らないのではないか?」


と魔術師。


「まず3階まで降りよう。3階で探れるだけ探ってみてから次を決めよう。」


剣士の一言で決まった。





 ウォーレン達は3階まで移動し、強い反応が出た真上で探知スキルを再び使用する。


「大きな個体と小さな個体が一つ…それ以外はないが、この距離じゃこれ以上は分からないな。」


「…餌かしら? 卵を産むために捕まえた3階層モンスターとか…。」


「どうだろうな…。卵か、孵化したばかりの仔竜かもしれないし…。」


パーティーリーダーの剣士は嘆息した。


「やはり距離がありすぎるか…。」


ウォーレンは申し出た。


「気配を消して6階まで行かなきゃ拉致が開かないだろう? 俺達がそこまで近づく。アンタ達は6階層入口で待機しててくれ。」





 6階層まで降りるとさすがに皆もLv50以上の大きな力を感じていた。


特に僧侶は強い気配に当てられ、顔面蒼白になっていた。


「相当危険だ。目標にはそれほど近づかず、あらかた分かったらすぐ戻ってくるんだ。」


スカウトの2人は防御力や素早さが上がる補助魔法をかけてもらい、≪透明化≫を使って最奥へと進む。





 「……!」


二壁越しで、探知スキルで見たそれは、巨大な黒竜だ。


Lvは150。


Aランク7人が襲われたら骨も残らないだろう。


しかし黒竜は翼付近に大きなダメージを負っているようだ。


(移動しない理由はこの怪我か…?)


そして傍らには卵が一つ。


ウォーレンは総毛だった。


警鐘は今やMAXだ。


速やかにここを離れて脱出しなければならない。


もう1人のスカウトに目で合図を送り、≪超速移動≫のスキルを使用しようとしたその時―





 『我の存在を確認し、討つつもりか、人間。』





視線は通らないはずだが黒竜がウォーレン達がいる方向を見据える。


竜が話しかけているのは分かる。


しかしスカウトの2人は竜語が理解出来ない。


魔術師なら、会話が出来て取り成すことも可能だったのかもしれないが―。





 1人は悲鳴を上げて逃げ出した。


BランクからAランクに上がったばかりの若者だった。


初めて見る竜に、その威圧に恐慌をきたしたのだ。





 ゆっくりと竜が体を起こすのが分かった。


濃い魔力の気配、この場でも感じられる熱。


ブレスを吐くつもりだ。





『卵を盗み、道具に仕立て上げるつもりか、人間!』





 魔符は遠く、どれほど速く逃げてもブレスが一瞬でこのフロアを焼き尽くすのが先だろう。


 ウォーレンは目を閉じた。

大気による可視光子の散乱は、紫、青、緑、黄色、橙、赤の順に少なくなる。紫の光子の方が散乱し易くてもその数は少なく、人間の目は紫色より青色に敏感なので空は青色なのである ~ニール・F・カミング





ドラゴニュートの眼は紫色も捕らえやすいとお考え下さい。


…そうすると白色は青っぽくなってしまうのかな…;

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