エピローグ
「どうして同じ高校に進んでしまったんだろうか、高城」
「それは運命だ。あきらめろ」
高校生活が始まった。
だからといって変わったのは学び舎が少しばかり海に近づいただけだ。
新宮の街にはなんでもある。それは、海と川と山に囲まれたがために、万が一あっても生きられるようにで、娯楽の少ないことへの言い訳にはならない。
だからといって、薔薇色の高校生活だというのに放課後まで腐れ縁のこいつと過ごすのは不毛だ。
「はいはい、諦めるからさっさと部活いけよ」
「なんだよ、まあいいや。また明日な」
放課後になり、閑散とした校内。陽が傾いてきた。西日で赤く染まった昇降口へ歩く。人通りは少ないが、どこかから部活動に励む声が聞こえてくる。
何も変わった所のない絵に描いたように当たり前の風景だ。
それが、心のスキマを刺激する。何かが足りないような、何か忘れ物をしているような物足りなさ。生きている意味だ。
校門を出ると解放され、思わず伸びをしながら帰り道へ向く。だが、脚が動かなかった。
隣の神社へと続く坂道に、陽を浴びてきらめく黒髪が目を引いたのだ。どこかで見たことがあるようなその姿に。
「な、なあ!!」
なぜか、俺はその後ろ姿に声をかけていた。
突然のことに驚いたのか、肩を一瞬震わせたかと思うと、ゆっくりと振り返いた。
「同じクラスの緑川さん?」
「突然、声かけてごめん。神社行くのか?」
神社へ行く道にいるのだから神社へ行くのは分かっている。突然、声をかけてしまった罪悪感と用意のなさからわかりきったことを聞いてしまったのだ。
「はい、ここの神社は私のおじいちゃんがやっているんです。緑川さんも行きますか?」
「あ、ああ」
景色の良い参道を、紫苑寺さんの後に続いて登っていく。こうして、人と神社へ行くのは初めてなのにどこか、既視感がある。
「なぜだかここに、いやキミに既視感があるんだ。どこかであったことある気がするんだ」
「私も、そんな気がしてました」
彼女を一目みた時から、そればかり気になって部活にも入りそびれ、授業も耳に入ってこなかった。
「でもそれがいつか思い出せないんだ」
今も、過去へ思考を巡らせていたら拝殿まで上がっていたことに気付かなかった。桜が広がる広場を背に彼女が言う。
「では、探してみましょうか。私とあなたの物語を」
そういうと、彼女は俺の方へ片手を差し出した。
風に乗り飛んできた、桜の花びらが何か意思を持ったようにその掌に乗った。
彼女の微笑む姿がある夏の日を想起させる。
ああ、新しい歯車が回り始めた――――――
約1年半という長期のご愛読、誠にありがとうございました!!!!
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また、徐々に読みやすく直していきたいと思います。
次回なに書こ状態ですが、書く気力だけはあるのでまたご縁がございましたら
宜しくお願いします。




