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第3話「春休み初日、最終日」

3月25日(土曜日)

和歌山県新宮市


紫苑寺 咲


 春休み初日、クラスの他の子達は元気に休みを謳歌するのでしょうか?

 

 私の身体は昨日と変わらず、調子がおかしなままでした。3月でまだ少し肌寒いのと、新学期にクラス替えで環境が変わることへのストレスから身体が弱っていたせいで、風邪を引いてしまったのだと思いました。

 


 その日、いつものかかりつけの医者にかかることにしました。ここらへんにある個人経営の病院で一番大きい病院です。しかし、土曜日はどこもそうなのでしょうか? 午前のみの診療になるので、小さなお子さんやおばあさんたちで大変混み合っていました。



「待合室、混んでいるみたいだからお母さん、車で待っているわね」


 私を山奥にある家から病院まで送ってくれた母は、受付に私の保険証と診察券を渡して出ていってしまいました。


 私の身体が弱いのもあって両親は少し、過保護なところがあります。学校やどこかに出かける際には必ず車で送ってくれます。いつもは車の運転は住み込みで働く諏訪さんがしてくれるのですが、今日は心配して母が送ってくれました。



 もう一度、待合室を見渡すと一番端っこの、しかし、TVの真正面の席が空いていました。さっきは空いていなかったので私と入れ違いで帰られたのでしょう。少し息苦しく感じていたので座らせてもらうことにしました。


 TVでやっているワイドショーをぼーっと眺めていました。ワイドショーでは連日、総理の友人が経営している学園と癒着していると、いった問題について延々とやっています。私には何が問題なのかもはや分からなくなっていました。



 そのままテレビを眺めて一時間くらいたったでしょうか? 待合室のスピーカーで私の名前が呼ばれました。



紫苑寺(しおんじ)咲さん、診察室2の前でお待ちくださーい』



 私は、気怠く感じる身体を診察室のある廊下へと進めます。診察室の前には黒のクッションがついた丸い椅子が置かれていましたが、それに座る前に診察室の中へと入れてくださいました。



「で、今日はどうしたん?」


 白髪交じりではありますが、中年くらいのまだ若い感じがするお医者様です。前まで大学病院で診察なさっていたすごい先生らしいです。


「少し風邪をひいてしまったようで喘息(ぜんそく)なのか少し息苦しくて・・・・」


 先生は相づちを打ちながら聞いて下さいます。先生が聴診器を準備し始めているので少し身構えてしまいます。身内以外の男性に触れられることなんてないに等しいからです。と言っても身内のお父さんにも触れられることなんて滅多にありませんが……

 Yシャツタイプのパジャマの上に羽織ってきていたパーカーのジッパーを開け、先生は裾の部分から手を入れ呼吸音を聞きます。


「吸ってーはいてー」


 やはり、少し恥ずかしいです。


「一応、喘息もあるし、胸部のレントゲンと血圧はかろうなー」


 先生が言い終わるかどうかで立ち替わりに、ベテランそうな女性の看護師の方が入ってこられました。


「じゃ、この患者衣に着替えてね。あ、あとレントゲンに写るといけないから下着も外して下さいね」



 レントゲンの撮影が終わると再び着替えて待合室で待つよう指示されました。母を外の車に長らく待たせているのが大変申し訳なく思ってきました。しかし、程なくもう一度診察室に入るよう先程と同様に呼ばれたので気にしている時間はあまりありませんでした。


「今日は、保護者の方と一緒にきた?」


 先生の表情が少し硬いです。あまり良い雰囲気ではないのが伝わってきます。


「はい、駐車場に車を止めて待っています」

「じゃ、悪いんだけど呼んで来てくれるかな?」



 母は車のカーナビで待合室と同じワイドショーを見ていました。


「長かったじゃない。どうやった?」

「ううん、まだ終わってないよ。先生がお母さん連れてきてって」

「そうなの、わかったわ」



 診察室にお母さんを連れだって入ると先生とレントゲン室に連れて行ってくれた看護師さんが待っていてくれました。



「お母様」


 お医者様が、看護師さんを連れだって話し出しました。


「は、はい」


 母はこの状況に飲み込めていないのか少し緊張した面持ちでした。きっと私も同じような表情をしていたと思います。


「娘さんのご病状なのですが、この胸部レントゲンをみるとここに何らかの影があるのが分かると思います。こちらではハッキリとしたことはいえませんが、心臓に異常が見られます。これから紹介状を書きますのでそちらでもう一度診てもらうことをオススメします。」



 私は、こんなにも驚いた顔をした母をまた見ることがあるのでしょうか?



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