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2-4「彼女の名はデンドロビウム」


 南雲なぐもヒカリ――彼女の正体こそ、ネット上で有名な上位ランカーことデンドロビウムだった。

そして、村正むらまさマサムネがあの時に見ていたプレイ――そのプレイヤーでもある。

彼女の実力は――言うまでもない程のレベルであり、それこそ初心者リズムゲーマーでは太刀打ち不能だろう。

ムラマサの今のスキルでは、到底相手になるとは思えないが――そこはリズムゲームなので、格ゲーと違ってワンサイドゲームにはなりにくい。

その理由の一つとして、リズムゲームはあくまでも対戦ゲームではない事にある。

稀に対戦要素を入れるタイプのゲームもあるのだが、基本的に他のプレイヤーとのマッチングやセッションプレイはゲームの勝ち負けに影響はしないと言えるだろう。

「まさか――本当にデンドロビウムが来るとは」

「騙りでは? 最近になって一部のプレイヤーにもなりすましがいるし――」

「相当の実力者ならば、腕が伴わなければ――単純に承認欲求を求めているだけと炎上するだろう」

「デンドロビウムを騙る以上は――上位ランカーレベルの腕がなければ――」

 周囲のギャラリーも半信半疑であるのは間違いない。実際、プレイヤーネーム被り問題は存在する。

リズムゲームVSで仮にビスマルクとプレイヤーネームを入れたとしても――別のゲームにおける同名プレイヤーのビスマルクと同一人物とは限らない。

こうしたプレイヤーネームの被り問題は――何処にでも存在する問題の一つである。せめて、ARゲームのシステムみたいにデータベース化されれば話は別だが――。



 彼女が演奏した楽曲は、レベルで言うと5、6、7の順番である。

レベル5までの曲であれば演奏失敗しても救済処置が取られる機種もあるが――リズムゲームVSでは3曲全部で仮に演奏失敗をしても終了はしない。

ただし、機種によってはどのレベルをプレイしても演奏失敗扱いにならない機種もあったりするので――さじ加減によるのだが。

「これは本物だったか」

「あの外見で偽者と言うのはおかしいだろう?」

 プレイを直接見ていたギャラリーからは偽者ではなかったという意見が出てくる。

「本物だったのか?」

「あのプレイだと、見間違えるわけがない」

 モニターで視聴していたプレイヤーは若干の疑問は出てくるが、本物であることを確信していた。

配信で見ている視聴者の中には、コメントで偽者だと打ちこんだりする視聴者もいるのだが――。

「あのプレイヤー、相当の実力者みたいだけど――」

 デンドロビウムのプレイを見て、興味を持ったプロゲーマーがいた。

身長180センチと言う長身長は――周囲からすると目立たないと言う方がおかしいだろう。

深く被った軍帽は特徴的と言うか、この外見で彼女が誰なのか見破れない方がおかしい状況だったのは間違いない。

ただし、彼女はネット上でなく別所での有名人であるのに加え――。

(ビスマルクだと――)

(あのプロゲーマーが注目をするのか? あのデンドロビウムを)

(彼女は確か別ジャンルのプロゲーマーだ。デンドロビウムとはジャンルが違うはず)

 周囲はビスマルクの出現に対し、かなり警戒しているようでもある。

それ程に彼女の実力は高いのは間違いないが――ビスマルクはリズムゲームに触れた事は一切なく、その辺りはムラマサと同じだろう。

「本当に実力があるのか試してみたい――」

 次に彼女が取った行動、それは受付での端末レンタルである。行動力が早いと言うべきなのか――。

ビスマルク以外にも数人のプロゲーマーやランカーが様子を見ていたのだが、あくまでもゲームの実力を確認していただけの可能性が高い。

しかし、デンドロビウムの目つきを見て――彼女が真剣にリズムゲームVSをプレイしていた事を、ビスマルクは理解していた。

それを踏まえてのお試しプレイを――始めようとしていたのである。ただし、順番はちゃんと守るようだ。



 南雲はムラマサのプレイが気になり、センターモニターで動画のチェックをしようとしていた。

ログに関してはちゃんと残っているのだが、他のプレイヤーが別の動画を見ていたので残っていたログの時間を確認し、タブレット端末で動画を見る事にする。

センターモニター前ではなく、別のリズムゲームの隣に置かれている待機席で動画の方をチェックしていた。

(わずか数回のプレイで、ここまで――)

 南雲が気にしていたのは、彼女のプレイ回数である。

レンタルガジェットで1回プレイしていたのは確認済みで、今回のプレイが2回目と言えるだろう。エントリープレイ自体は今回が初だが。

(もしかすると、ムラマサにはリズムゲームの適正があるのでは――)

 音楽の知識があるのとないのではハンデが大きいのは、リズムゲームの宿命かもしれない。

自分は音楽の授業がお世辞にもよかったとは言えないし――リズムゲームを始めたのも2000年に入ってから。

プレイ歴としては10年以上だが、機種によっては途中でサービス終了や筺体撤去でプレイ不能になった物もある為――色々と実力にも開きがある。

ネット上では歴戦リズムゲーマーと言われているのだが、それはネット上で神格化されているにすぎないのだ。

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