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 例によって、『オケアノス・ワン』草加店には客足が途切れることはない。駐車場は若干のスペースが空いているようだが、駐輪場は――何時も通り。

近くのパチンコ店は新台入荷で行列が出来ているが、それがこちらにまで影響はしていない。近隣住民からの苦情が来るのを防ぐ狙いか?

そして、店舗内には時間的に学生服の人物はいないので、授業を抜け出す生徒等はいないようだ。

 ただし、実在する学校の制服ではなく――アニメやゲームで見るようなデザインの制服を着ているコスプレイヤーはいるようだが。

あそこまでカラフルな制服を学校が採用するかと言われると、疑問に残るのでコスプレイヤーだと一般客でも即座に分かる。

コスプレイヤーと言うと、露出度高めな物とかパワードスーツと言うコスプレイヤーもいたが、さすがに入店拒否された。

 周囲の筺体は機種によって派手な配色であり、まとまりのない――と言う一角、それがリズムゲームのコーナーである。

これに関してはタチバナも悩みの種の一つと考えているようだが、リズムゲームの仕様と言う事で考えるのを――諦めた。

筺体の形状は様々だが、カラーリングは明るめな物が多く感じられるだろう。地味な配色の筺体とか清潔感をアピールするような白ベースと言う筺体もあるが、メンテナンス的には評判が良くない。

【オケアノス・ワンは――やはりというべきか】

【ここまでプレイヤーに配慮したゲーセンは少ないだろう】

【飲み物の持ち込み可能エリアの区別も出来ているのが大きい。筺体にこぼされると――】

 それに合わせる形やプレイヤーに配慮し、LED照明の明るさを調整、敷いてあるカーペットも滑りにくい材質の物を採用、受付に使い捨てのおしぼりの無料自動販売機を置く――。

その他にも透明な割れない材質で出来たパーテーションを一部機種で採用、ヘッドフォン端子を標準装備以外の筺体に外部取り付けをして爆音対策としたり――。

とにかく、リズムゲームに関しては他のジャンルとは違った配慮を系列店で行っている。

それが客足の途切れない店舗を生み出しているのかもしれない。ネット上の評判も――納得と言えるだろう。

(見た感じでは――学生と言うには、明らかに体格が違うだろうな)

 タチバナも店内の監視カメラ映像を受付でチェックしており、そこから客層を色々と考えていた。

未成年がまぎれているような事はなく――どちらかと言うとコスプレイヤーの20代が多い印象である。

(コスプレイヤーも多いが――ここはイベント会場ではないんだぞ。それに――)

 エスカレーターの方角から2階に姿を見せたのはユニコーンである。

入店する途中で真田さなだソラと鉢合わせになったが、特に何も言われていない。反論もしなかったので、妙だと感じたが。

真田としても、ユニコーンの外見である肩掛けのグレー系コート、明るいスカイブルーというメイド服を見て――即座に分かるはずなのに。

 彼女の顔はネット上では割れておらず、アバターとは顔が違うのは当たり前。しかし、銀髪のショートヘア、萌えポイントアピール的なあざとい前髪のメカクレも――アバターのままだ。

動画で使用しているアバターと同じ衣装でも――周囲のギャラリーの中には写メを撮ろうとスマホを向ける人物もいる中で、素通りするのは逆に怪しまれかねないのに。

その真田は――このタイミングでネット上のまとめサイトをメタルレッド的な色のタブレット端末でチェックしており、ユニコーンに視線を向けていなかった落ちだが。



 ネット上では『誰もが有名になれる』とも言われていた『リズムゲームVS』だったが、その真相を知ってからは素人が近づく事は減った。

その一方で腕に自信のあるプレイヤーが――自身の腕を磨く為の特訓用としてプレイするケースが目立つ。

実際、ユニコーンを初めとした動画サイトで話題となった2.5次元のゲーム実況者のバーチャルゲーマー、更には腕に覚えるあるプロゲーマーが目を付けていた。

 ある人物は他のゲームで不調になった流れを変える為、また別の人物は違うジャンルのゲームを開拓する為――様々な理由で挑んだと言う。

【最近は別のARゲームが注目されつつあるな――】

【飽きたんじゃないのか?】

【飽きられたら、それこそ客足が途絶えるはずだ。途切れないのはおかしい】

【一体、何が起こっている?】

【まとめサイトでは詳しい情報が得られないな。直接来店する必要性があるようだが――?】

【その必要がないような動画を発見した。これは――!?】

 リアルチャットや実況スレのようになっていた一連のやり取りでは、ある動画を発見した事で状況が変化した事が分かる。

誰の動画を見たのかどうかはURLも確認出来ない為――詳細は不明だ。

 その一方で、ユニコーンやガーベラと言ったプレイヤーに憧れてバーチャルゲーマーになろうと言うプレイヤーも出始めている

さすがにユニコーンも頭を抱える案件なのだが――関心を持つ事は悪くない。しかし、単純な理由で簡単になれる訳ではないのは――。

(歌い手や三次元実況者とかの夢小説――それを未然に防ぐ的な目的なのに、こうまで増えると何がどうなってるのか)

 ため息を吐きたい気分だが、テンションが下がっていると周囲に認識されそうなので表情は変えない。

ポーカーフェイスは得意分野ではないのだが――本音を漏らしてネット炎上するのは、彼女の本心ではないだろう。



「こうもタイミング良く彼女が来るとは――」

 若干胸の辺りの布を少し引っ張るが――特殊素材かのように伸びっぱなしにはならず、ゴムのように手を離すと戻る。

彼女が着ているのは紺色のスクール水着、それも特殊形状の物だ。下半身辺りは――色々と見えないように配慮されている形状で、特に街中で歩いても問題はない。

ただし――コスプレイヤーがコスプレ衣装のままで歩けるのは草加市内の限定エリアのみで、これには認められた店舗も含まれる。

 隣のパチンコ店は禁煙などの関係でNGだが、その目の前に立っているであろうコンビニは問題がない。

おそらくは、コスプレイヤーにも一定のモラルを守ってもらおうという狙いがあるのだろう。

彼女の名は村正むらまさマサムネ、バーチャルゲーマーである。彼女もアバターデザインはユニコーンと似たりよったり、それこそある程度の衣装カスタマイズだけで済ませていたと言える物だ。

 しかし、ユニコーンが来店し始めた時期で思う所があり、イメチェンを兼ねてメカクレは止めている。

「ここ最近はバーチャルゲーマー出身のプレイヤーも増えてるし、これは喜ばしい事かな」

 ムラマサは周囲の視線を気にすることなく、センターモニター近辺まで歩き始め――エントリー操作を行う。

手慣れた手つきで順番通りに操作を行い、特に大きなトラブルを起こす事なく整理券を発行した。周囲が拍手をしたりはしないが、心の中ではしているだろう。


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