第7話「ここが自分達のフィールド」
それから3週間近くは経過しただろうか?
様々な事件が起きては、ネットで炎上を繰り返し――それこそリズムゲームVSの上層部が懸念した展開を生み出した。
リシュリューの逆襲、アイドル投資家勢力の暴走、アイドルコンテンツを唯一神にしようと暴走するマスコミ――そう言った事件が起きつつも、リズムゲームVSは運営を続けている。
プレイヤーに関しても様々なプレイヤーが現れては、一発屋で消えるプレイヤーもいれば――現在も残り続けるプレイヤーもいた。
それ程にリズムゲームVSで生き残るにはハードと言えるのかもしれない。しかし、政治的駆け引きや芸能事務所の金に物を言わせるこり押しマーケティング――超有名アイドル商法もいらないだろう。
その状況下で、ある事件が起きた。それはデンドロビウムをジャイアントキリングしたガーベラである。
ガーベラ自身は『偶然』と語る程に僅差の勝利だったのである。実際、インターネットランキングでも集計期間や対象曲で滑り込めた可能性も否定できない。
【予想外の展開だったな】
【ああ。ガーベラのプレイも想像以上だったが――】
【あれほどの実力者がリズムゲームVSにいたとは】
【こっちだって予想外過ぎる。デンドロビウムが勝つとばかり思っていた】
【これは別の意味でも波乱の展開になりそうだな】
ネット上でも一連の話題は拡散している状況であり――これこそ、運営側が求めていた反響なのだろうか?
しかし、この動きに関して『これも炎上の可能性を秘めている』と言及するサイトがあるのは事実だ。
こうした意見を少数派と切り捨てて、多数派の意見ばかりに媚びるのも――何か違うと言わざるを得ない。
どちらにしても、これに関して言えば真田ソラの動向が待たれる。
4月15日、天気は晴れなのだが――『オケアノス・ワン』草加店の客足は全盛期よりも減っているように見えた。
それだけブームが落ち着いたとも判断できるかもしれないが、デンドロビウムがガーベラにジャイアントキリングされた事も原因と考えるプレイヤーもいる。
「まとめサイトでは大きな動きもない。悪質な運営者がBANされたのもあるかもしれないが――」
近くにあるコンビニ前でタブレット端末を片手に、一連のニュースサイトを見ていたのはビスマルクだった。
ゲーム外の話題は専門外を貫くのだが、今回は状況が状況だけに放置が出来ないのも事実だった。しかし、下手に介入すればネット炎上やSNSテロが起こるのは明らかだろう。
【どちらにしても、これに関して言えば真田ソラの動向が待たれる】
この一文をビスマルクは、表情一つも変えずにチェックし――すぐに別の記事へ切り替えた。
一体、ビスマルクは何を思っていたのか――。
「まとめサイトの煽り文句や炎上を想定した記事に対し、いちいち文句を言うのも――ワンパターンね」
その後、彼女はコンビニへ入る事無く、『オケアノス・ワン』の店舗へ向かう。
自転車に乗ってきた訳ではなく、彼女は途中のバス停がコンビニに近かったので――そこで降りたにすぎない。
ビスマルクとしてはバス移動をしたかった気分だろうか?
「こうしたワンパターンが小説サイトで人気があると言うのも――」
更に一言、思う部分はあったのだが――今はそれどころではないと感じていた。
リズムゲームVSは政治の駆け引き道具でもなければ、超有名アイドルのブレイクに利用されるかませ犬コンテンツでもない。
それは――何度も『過去の事例』や『アカシックレコード』で言及されていたのだから。
「これも一種のメタ発言――そう言う認識か」
同日午前11時――真田は別ゲームの様子を見る為に『オケアノス・ワン』草加店へ向かい、入口まで到着した。
真田も同じまとめサイトの記事をチェックしており、入店前にタブレット端末を片手で持ちながら――。
入店しようとした際に着信音が鳴ったのでタブレット端末をチェックしたら、このサイトのURLをショートメッセージ経由で流れてきた。
「向こうの事件は向こうの事件で放置すべき――そう限らない世の中になってしまったのか」
他のまとめサイトURLも一緒にメッセージに含まれていたのでチェックしたら、案の定とも言える物だったのである。
以前にアバターシステムを凍結された際、その通報手段で使われたシステムと似たような物を『嫌いなコンテンツを消す方法』として紹介されていたのだ。
これにはさすがの真田も怒り心頭と言うべきなのだが――怒りの感情のままで発言したら、それこそアンチ勢力に消されかねないだろう。
SNSテロの正体――それは、アンチ勢力による自分だけの世界を創造しようと言う――いわゆる夢小説を現実化する的な自分勝手に過ぎない。
真田の目的、それはSNSテロや炎上勢力を生み出す元凶とも言えるアンチ勢力の根絶にあるのだろうか――?