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4-4


 南雲なぐもヒカリは、何事もなかったかのようにリズムゲームVSをプレイする。

他のプレイヤーがプレイに違和感を持って――スコアが何時もと落ちているようなプレイも出ている中で、彼女は落ち着いていた。

まるで、ここが本来のフィールドであるかのように。歴戦のリズムゲーマーは筺体や作品を選ばないと言う証拠だろうか?

「化け物か――」

「しかし、あれが歴戦ゲーマーの実力と言う物だ」

「彼女はリズムゲームならば、何でもチュートリアルなしでクリアできるのでは?」

「そこまでの天才ゲーマーは創作の世界だけだろう。最低でもチュートリアルはプレイしなければ、プレイ感覚はつかめない」

「リズムゲームは格ゲーやシューティングと違って、コントローラが専用であるケースが多い」

「演奏をするというのがリズムゲームの目的だとしても、同じ感覚でプレイすれば結果は見えているだろう」

 センターモニターで視聴しているギャラリーは、デンドロビウムのプレイに驚いている様子だった。

そして、エスカレーターから姿を見せたビスマルクは――別の意味でも筺体の配置変更に無言で驚く。

(エスカレーター近くのゲームが入れ替わってる。クレーンゲーム系は1階に集約、プリントカメラ系は――)

 しかし、ビスマルクの目的はリズムゲームVSと思われたが――たまには別のゲームでも様子を見る事になり、近くにあった画面タッチ型の筺体へと向かう。

そして、筺体の前に立ったビスマルクは別の意味でも衝撃を受ける事となった。

(このガジェットは――リズムゲームVSと似ている?)

 ビスマルクは、ゲームのチュートリアルをチェックしながらタッチの感覚を確認している。

感覚としてはリズムゲームVSの感覚だが、それでプレイすると演奏に若干のずれがあるように思えた。

 無言で目の前のゲームをプレイしていく彼女だったが、やはりというか3曲目で――。

(やはり、感覚が違いすぎるか――)

 表情には出さないのだが、微妙にノーツをこぼしてしまった。

スコアとしては悪くないが、全力で挑んだ結果が1ミスなのはショックを受けるだろう。



 デンドロビウムのプレイを筺体より若干遠い場所から観戦していたのは――ガーベラだった。

若干遠いと言っても距離としては1メートルも離れている訳でもないし、他の客が通行するのに邪魔となってはアレだろう。

 ゲーセンの場合は、過去に通り道がないと思われるようなレベルで筺体がすし詰めになっていた時代もあるらしい。

今では――ソレと似たような事をパチンコ業界がやるとも言われているが、どちらにしても安全的な意味でも問題視される可能性は高いだろう。

(彼女がデンドロビウム――?)

 2曲目が終わった辺りで、ガーベラの隣に人影が――。

しかも、その外見は賢者を連想するようなローブと言う、明らかにコスプレイヤーを連想させた。

ローブの下はファンタジーチックではなく、普通の庶民的ブランドの服だが――。

「私に何の用だ? ヴェールヌイ――」

 ガーベラの方は彼女に見覚えがあるらしく、ヴェールヌイと思って声をかける。

「ヴェール――違うな、カトレアだ。私の名前はカトレア――それで通して欲しい」

 まさかの訂正を指示された事にガーベラの方は驚いていた。他人の空似だったのか――と言われると、それも違うらしいが。

最終的には彼女がカトレアと名乗ったので、そちらで通す事にした。

 その後、デンドロビウムが3曲目をプレイする間に色々と話をするのだが――。

「FPSや格ゲーではチートが横行しているという話がある。それが全てのジャンルに――」

「チート? リズムゲームに? それこそ馬鹿馬鹿しい話だ」

 カトレアはリズムゲームにチートが蔓延していると考えているガーベラの話を一蹴する。

「逆にリズムゲームでは、チートではなく別の不正プレイが流行している。それこそ、過去にも事例があったようなロートルな手段で」

 カトレアの話を聞いても、ガーベラは迂闊にうなずく事も出来ず――。

「しかし、チートの様なプレイがない以上――どのようなプレイがあるとでも? まさか――」

 自分が考えている事が思い浮かばず、具体案をカトレアに尋ねた。

そして、デンドロビウムの3曲目の演奏が終わると同時に、彼女は――。

「リズムゲームに不正プレイはないと――言いきれるのか? ガーベラ?」

 その言葉だけを残し、カトレアは別のゲーム筺体の方へと向かっていく。

おそらく、デンドロビウムを発見したのでどのようなプレイヤーなのか探る目的があったのだろう。

一応の目的は達成したので、カトレアはこの場を去った形である。



 3月16日、『オケアノス・ワン』草加店に到着したユニコーンは――自動ドアからエレベーターまでの短い距離を速足で歩いていた。

そして、2階のボタンを押して――到着を待つ。その時、彼女の持つスマホに着信が入ったのだが――。

彼女は無言でメッセージの内容を確認し、エレベーターの到着と同時に中へと入っていく。

さすがにエレベーター内でスマホを使う訳にはいかないので、2階に到着してから――と言う事にした。

(全ては――)

 エレベーターが上昇していく中で、自転車が整頓されていない駐輪場、その一方で駐車場には車が満車、隣のパチンコ店に並ぶ客――そう言った物が彼女の視線に入る。

パチンコ店と比べるとこちらへの来る客は少ないかもしれないが、平日なのにこの客足なのは健闘している方だと思う。

アミューズメント施設で暴れたりすればマナーが低いと認識され、そこからネットは炎上するかもしれない。ユニコーンも過去に――色々とあったのだ。

(私を――かませ犬にして莫大な利益を上げた芸能事務所は――)

 スマホを持つ手が若干震えたユニコーンだが、それを何とか抑えようと色々と試しても震えは止まらない。

それ程に、トラウマとしては想像を絶するレベルの悲劇が――過去のユニコーンにはあったのである。

この事件は週刊誌でも取り上げられたのだが、最終的に彼女が所属していた芸能事務所はユニコーンを追放するしかない選択に迫られた。

彼女の発言は芸能事務所だけでなくコンテンツ流通にも影響を及ぼす――非常に危険な思想だったことには違いないだろう。

(芸能事務所に復讐するなんて事は、くだらないのかもしれないが――)

 何とか腕の震えが止まり、スマホを落とさずに済んだユニコーンは視線をエレベーターのドア側を向いた。

しばらくすると2階に到着したアナウンスとともに自動ドアは開き、そこには盛り上がっている一角が視線に入る。

言うまでもないが、この一角は間違いなく――。


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