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それから1週間が経過した3月14日、様々なプレイヤーの活躍がサイト等で取り上げられる中で、それは起こった。
ネット上では既に一種の祭り状態になっており、衝撃度の大きさは明らかである。
【これは想定外だ】
【一体、何が起こった?】
【上位の顔触れが変わったと思ったら、3位にはガーベラがいるぞ】
【短期間のトレーニングでスコアが上がる物なのか?】
【付け焼刃では順位の維持は難しい。特にリズムゲームは】
【プレイ動画のチェックやネットサーフィンだけではだめなのか?】
【格ゲーとは原理が違う。それで上手くなれるほどリズムゲームは甘くない】
様々な反応があるのだが、ランキングの顔触れにガーベラがいる事に違和感を持っているプレイヤーが多かった。
付け焼刃で上位を維持できる程、リズムゲームが甘くないのは誰もが分かっている事実である。
実際問題、そう簡単に攻略出来たら困ると言う事で難易度が簡単に上げられるのが――リズムゲームなのだ。
譜面の配置、降ってくるノーツの数を変えるだけでも難易度が体感で急激に上がる事は、格ゲーやFPS、アクション系では普通考えられない。
ある意味でお手軽に難易度を上げる手段が存在するのもリズムゲームなのだ。
実際、同人ゲームで人間がクリア出来るのか疑わしい発狂譜面は存在し――これらをクリアしようと挑戦し、玉砕していくプレイヤーは数知れない。
それと同じ事を公式がやっているとしたら――? 真実かどうかは疑わしいにしても、格ゲー等のように繊細な調整はあまり必要とされないのがリズムゲームなのかもしれないだろう。
一部機種では、難易度の扱い方がアレ過ぎて作り直しになった事例があったり、譜面難易度が簡単過ぎて数日で全譜面が理論値達成と言う事例も――あるのかもしれない。
【このランキングって、機種は?】
【そう言えば、機種は――!?】
【どういう事だ? これは何かの間違いでは?】
【同人ゲームならば分かるが、このランキングは――】
【リズムゲームVSだと!?】
誰もが驚くランキング対象機種、それはリズムゲームVSだったのだ。
あのゲームを短期間で上位ランカーに迫るスコアを叩き出すなんて、どう考えても無理ゲーの領域でもある。
しかし、リズムゲームではチートや不正プレイの影響で上位プレイヤーが理論値だらけで該当プレイヤーが大量にアカウントはく奪と言うのもよくあることだ。
それを踏まえると――今回のガーベラが達成した短期間でのプレイは想像を絶する物だったに違いない。
このスコアを見て驚いた人物がいた。最近になってリズムゲームVSを始めたユニコーンである。
ゲーム中ではSFのパワードスーツを思わせるアバターを使用し、使用しているのは中距離タイプと思われるビームライフルだ。
「ニワカの様なゲーマーに遅れは取れない――」
ユニコーンの両目は青であるのだが、これはアバターの両目ではなく――プレイヤー自身の目だ。
彼女の外見は、見た目からしてバーチャルゲーマーで有名なユニコーンその物と言える。しかし、それが本人と気付くプレイヤーは周囲にいない。
その理由の一つとして、村正マサムネのように動画でリズムゲームVSへ進出する事を告知していないからだ。
彼女が動画でプレイしているのは、ほとんどがパズルゲームや他のリズムゲームであり、アーケード機種に該当するゲームは動画にアップしていない。
これは、アーケード機種は作品によって動画にアップしようにも権利関係の都合で削除されるケースがあるからである。
格闘ゲームや対戦要素が絡むゲームはアップを許可しているケースが多いのだが、リズムゲームでは少数派だろう。
さすがにストーリーが絡むゲームはアップできないだろうが――アーケードでアドベンチャーゲームやミステリー系が稼働している事はないので、その問題は考えない事にする。
「この私はユニコーンだ――ルールを破るようなプレイヤーに、ゲームを語る資格などない」
彼女はルールブレイカーやチートプレイと言った物を許さない。見つからなければいいと言う理由は、彼女の前では無駄だろう。
それを踏まえると、ビスマルクも同じような物だが――ユニコーンの場合は、単純に楽しみが半減するという理由でチートを嫌う節がある。
【ユニコーンをゲーセンで見た】
【えっ? ひと違いでは?】
【あの外見で人違いはないだろう】
【バーチャルゲーマーは基本的にアバターアプリが共通である以上、カスタマイズを含めて特定は難しいはず】
【アバターアプリを使えば――の話だ】
【まさか、本当にコスプレをしてゲーセンに?】
【草加市内ではコスプレが許可されていたはず。つまり――】
ネット上でもユニコーン目撃情報に関しては、嘘だと考えているプレイヤーが多かった。
バーチャルゲーマーのアバターアプリで提供されているモデルと瓜二つなプレイヤー等いるはずがない――と最初から否定ムードなのも原因だが。