表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

3-4


 翌日の3月6日、その日は快晴となっていた。昨日の小雨が嘘みたいな天気に、洗濯物を干す一般家庭も多いようである。

雨天の翌日もあってか――駐輪場には自転車が多く止まっているのが、『オケアノス・ワン』草加店だ。

他の系列店オーナーが様子を見に来る事が多くなっているのは、ここ数日続いている現象とも言える。

彼らも客足が遠のかないように試行錯誤をしているのだが、それだけでも限界はあるのかもしれない。

「今度は何処の支店だ――」

 さすがのタチバナも仕事の邪魔になるので追い出したいのだが、何も聞かないで追い出すのも上層部に何か言われるので――そこまではしない。

メールで済ませられるようなやり取りもあるのだが、直接来店するのは関東地方の支店オーナーやスタッフが多いようだ。

「さすがに同業他社がいたら、それはそれで大変だ」

 タチバナも同じ支店同士ならばまだしも――という考えはあるらしい。

さすがに他社が同じような規模で筺体を仕入れたからと言って、同じような展開になるとは限らないのだが。

 お昼時になると客足は遠のく――と言う状態にはならず、近くのコンビニでおにぎり等を買ってきての長期戦を決め込むプレイヤーもいる。

ただし、店内と言うか筺体近くに直接の持ち込みは出来ないので――近くの休憩スペースで食べるケースが多いようだ。

ゴミに関しては各自で持ち帰りと言うパターンが多く、この辺りはプレイヤーのマナー的な部分でも貢献しているのだろうか?



 午後になってから、若干の客入りが激しくなっていくリズムゲームVS周辺――。センターモニターでは、ある動画が注目されていた。

「これ、午後8時のプレイだな」

「そんな夜でもプレイヤーが来るのか?」

「平日だと、大抵はそうだるだろう。午後も仕事がないとか有給を取っているといったケースではない限り」

「つまり、このプレイをしている人物は仕事帰りと?」

「仕事帰りでここのオケアノス・ワンを利用するプレイヤーがいるのか? 自動車通勤ならともかく――」

「近くにバス停はあったぞ。それに、オケアノス・ワン独自のマイクロバスも運航していると聞く」

 プレイヤーの姿は確認出来ないが、プレイスタイルや傾向から腕の立つプレイヤーと予測している人物もいるらしく――。

「1曲目で、いきなりレベル6を選択するのも一種の博打だろう。演奏失敗したら――」

「リズムゲームVSは全曲プレイ保証がある。演奏失敗で即ゲームオーバーなオプションを付けない限りは、それが初期設定だ」

 プレイヤーがいきなりレベル6を演奏し、それを難なくクリアするのも――初心者と言えるのか疑わしい。

つまり、この動画のプレイヤーは上位クラスの腕を持ったプレイヤーと予測されてもおかしくはなかった。

「このプレイは、前日のプレイではない。一昨日のプレイだ」

「一昨日? どういう事だ?」

「動画が録画された日付で分かるようになっている。つまり、そう言う事だろう」

 昨日のプレイかと思われた動画、それは一昨日のプレイだったのである。

そして、これは既にセンターモニターで視聴可能な分だけでなく、動画投稿サイトでも拡散済みだ――。



 時間は昨日の5日までさかのぼる。『オケアノス・ワン』へ足を運んでいたビスマルクは、あるプレイヤーから動画を見せられて驚いていた。

「これは参考までに、彼女の外見だ」

 彼が最初に見せた動画は、ユニコーンの自己紹介動画である。

自分よりも身長が低く、大体159センチに見えるか――銀髪に前髪はメカクレ、衣装はメイド服にコートを肩にかけていた。

あくまでもバーチャルゲーマーなので外見が被るのもやむ得ない箇所もある。

実際、カスタマイズアバターを用いるケースが多く、そこからパーツを組み合わせてバーチャルゲーマーが作れるソフトがフリーで配布されていたから。

(この外見は――まさか?)

 ビスマルクは村正むらまさマサムネを連想するような重なるイメージに対し、ふと思う部分があった。

バーチャルゲーマーが増えつつある理由には、3次元の実況者や歌い手が夢小説で風評被害を受けた為――と何処かのWEB小説で書かれている。

WEB小説なのでフィクションだと考えていたビスマルクも、現物を見て衝撃を受けたのは言うまでもない。

「バーチャルゲーマーは、アバターカスタマイズこそ存在するが――イメージが被るのはやむ得ない」

「それを踏まえても、おかしくないか? ここまでムラマサに――」

「しかし、これは事実だ。彼女はムラマサと違うジャンルを開拓している以上――独自と言えるだろう?」

「ムラマサはリズムゲームが――」

 やり取りをしていく内に、ビスマルクは何かが引っ掛かった。

彼女はリズムゲームの知識が本当にあったのか――と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ