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第5話 「イベント大量発生」

今日は時間の流れがゆっくりだ。

いざ待とう、と決めたのだが、新しい事をやりたい気持ちが多すぎて

まだかまだかと時間の流れを気にしてしまう。

人間ってやっぱり新しい事には、積極的なんだなーとしみじみ感じた。

でもこの体の少年はいくら同じ行動をしても文句の一つも言わず、黙々と仕事をこなしている。

10歳ぐらいだとまだ遊びたがり、食べざかり、もっと自由にしていいのだと思うがこの世界では違うのだろう。

俺はつくづく幸せな世界で生活してたんだろうなー。。。。



着々と仕事をこなすティム。

少し小腹がすいてきたか。

この体の感覚は俺の感覚でもあるので

空腹や、痛み、悲しみ、喜び。全て筒抜けである。

よし!希望を再開しよう!


丸々とみずみずしそうな発色のいいオレンジが目の前にあった。

今日はオレンジにしよう!

と思った次の瞬間。『ピコン!』

やった!吹き出しが現れた!

発動条件は空腹なのかもしれない。

この体と俺の意思が連動すればイベントが発生するのではないか?

まぁ、まだまだ試したいことがある。とりあえずオレンジを食べよう。

軽くオレンジに触れると目の前に日本語で文字が浮かび上がってきた。


=食べる=   =食べない=


俺は迷わず=食べる=を選んだ。

そのまま一つオレンジを掴むと父親の方へ行き許可をもらう。

そして昨日の樽のところで美味しオレンジを頬張った。

多分俺の予想だとこの位置に来るとまた冒険者に声をかけられると思う。


「こんにちは」


予想どうり冒険者はティムに話しかけてきた。


「やぁ、僕はティム。このオレンジ美味しいんだよ。是非、冒険者さんもうちの店で買っていきなよ」


おきまりのセリフ。

まず自己紹介!偉い!

じゃなくて、まさかこの会話のイベントだけで終わりということはないですよね?と思いつつも冒険者はやはり自己紹介をしたティムを無視して店主の元へ向かった。

かわいそうに。頑張れ、ティム!

俺はちゃんと見てるぞ。


「美味しそうなオレンジだね。」


そう話しかけてきたのは朝によくここを通るこの町の住人のおばさんだった。

転生してから一度も昼間に住人に話しかけられたことはない。やはりこれもイベントなのか?


「こんにちは、マシェーラさん。今日は何を買いに?」


しかしこの体はこの女性を知っていた。俺が観察していた中でこの女性と会話したことなんてなかった。

しかも毎日買い物をしているかのような振る舞いだ。


「じゃあ、肉と芋と人参をくれるかい。」

言われるがままに女性のいう商品をカウンターに運んでいく体。

そして店主に渡し、店主が値段を言って支払いが進んでいく。

住人の初の買い物。俺が知らない日常。

今まで住人がこの店に買い物に来たのを見た事がない。初めてのことだ。


「ありがとね」


マシェーラさんはそのままお礼を言って

普通に帰って言ってしまった。

考えてみれば、肉や魚、野菜や果物を売っている店は見渡せる限りうちの店しかない。

じゃぁどうやって住人は食料を確保しているのか。

自給自足ってわけでもないだろうし、むしろこの店もどうやって仕入れをしているのかもわからない。

同じ一日を何日も過ごしているかのような日々。

自然の流れは進んでいるが、人間の生活は毎日同じ。

休みもなければ祝いもない。

でも今日で何もわからないけど少し時間が進み、日常が変わったかのように感じた。


そしてこの一日はマシェーラさん以外

変わらない一日として終わった。



翌朝。

いつも通り、箒を持って広場に出る。

ピコン。

ピコン。

ピコン。

ピコン。

明るい日差しとともに入ってくるなんとも機械的な音。

目を開けると通りすぎる住人一人一人に吹き出しが存在していた。

こ、これはどういうことだ?

昨日まであんなに一生懸命探した吹き出しがこんなにもある。

あんなに探していたのに。。。。


今からイベント大量発生じゃ!!!


昨日とはまるで違う世界。

早速近くにいたおじいさんの吹き出しに触れる事にする。

と言っても、果物やものと違って見知らぬ人の頭の上にある変なものは手を伸ばすのは躊躇する。

しかも腰は曲がっていてもこの体より一回りくらい大きいおじいさんの頭の上。

俺がいた世界ではいくら子供でも無言で近づいて頭に触れようもんなら流石に不審がられるに違いない。


目線をおじいさんの吹き出しに合わせるとすぐ体が動いた。


「おはようございます」


おじいさんに挨拶するティム。

頭の上の吹き出しには触れることはなかった。


「やぁ、おはよう」


=いい天気ですね=

=頭になんかついてるよ=

=なんでもない=


お爺さんが挨拶を返してくれた次の瞬間

日本語の選択肢が出てきた。

しかも3つ。


=いい天気ですね=

はごく普通の答えだろう。

間違っていないしこの三択からすると最もな答えだ。


=頭になんかついてるよ=

はおかしい。

どう見てもこの吹き出し以外頭に変なものはついていない。

俺以外にもこの吹き出しを見えている可能性もあるが、昨日とは違って町の人みんなに見えているならこの質問は正しいのかもしれない。


=なんでもない=

はちょっとこの流れからは会話がおかしくなるが、即会話を切り、この場を逃げ出せる感がする。


さぁ、どれを選ぼうか。

とりあえず様子見でもっともな答えを選んだこう。


「いい天気ですね」


「あぁ、今日も仕事日和だ!頑張れよ!坊や。」


お爺さんはその場を後にして去って行った。

周りを見ると気のせいか少し吹き出しが消えたよう思った。うん、思っただけ。


もしあの場で第2の選択肢を選んだらどう返されてただろうか。

この間もそうだけど父親には林檎やオレンジに吹き出しが見えるようには思えない。

だからといって変な質問ばっかり選んで変な子だと思われて最終的にはバッドエンドなんて事になったら。。。。

でも俺はやった事ないが、乙女ゲーとかギャルゲーなんかは意外な選択肢を選んで

それがイベントの引き金なんて事よく聞く。いや、やった事ないからわからないけど。

しかしこれはいよいよ俺は異世界転生をされたのか?

ゲームでもしてるのではないか?


とても不思議な感覚におそわれる。

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