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第4話「おら~なんだかワクワクしてきたぞ!」

感動しながら林檎を食べる俺。

美味しそうに笑顔で林檎を食べる体。


さて何が原因だったのだろうか?

なんとなく林檎を食べたいな。と思ったのが原因なんだろうか?

今まであんな吹き出しみたいなアイコン見たことがない。

ゲーム等でよく出てくる村人やものにアイコンがついたような簡単な絵だった。

いかにも『ここを押すとイベントが発生しますよ』といった感じに違和感のある吹き出し。

今後は周りを注意深く見ていこう。

そして俺には希望が見えた!

そう、その吹き出しを探すことによって何らかのイベント発生。

ゆくゆくは俺の意思で体が動くのではないか?

俺の存在が証明されるのではないか!?

おら~なんだかワクワクしてきたぞ!

と某サイヤ人風に希望と喜びを感じていた。



「やぁ」


ティムはビックリしていた。

冒険者が初めて声をかけてきた。

俺もびっくりした。

いままで「買いたい」か「売りたい」しか聞いたことがない冒険者の発言。

この人はほんとに冒険者なのだろうか?

もしかしたら同じこの町の住人ではないだろうか?

ティムだったら住人との簡単な朝の挨拶と銭湯での簡単な会話ができる。


「やぁ、僕はティム。この林檎美味しいんだよ。是非、冒険者さんもうちの店で買っていきなよ」


事前にセリフでもあったかのように返事をするティム。

まず最初に自己紹介とは偉い!

しかし変な大人に急に話しかけられて誘拐でもされたらどうするのよ~

と俺の意思では母性本能が目覚めた。

そのまま無言で冒険者は父親の方に向かい、話しかけた。

「買いたい」


ティムの自己紹介になんの返事もせず、父親の方へ向かうなんて

なんて失礼なやつなんだ!

と少し怒りを覚えたが、この一連の流れはなんだったんだろうか?

いままで全く、目も合わせずのガン無視だった冒険者がいきなり

「やぁ」とは。

まさか林檎をこの店の前の樽に座って食べたことによるイベント発生?

でも一瞬だがこの体も驚き戸惑ったようにも思えた。


林檎を食べ終え、いつもの立ち位置、通常作業に戻った。

そのまま夕方になり、店じまいが終り、家へと帰る。

「やぁ」と話しかけてきてくれた冒険者以外、話しかけてくる冒険者は一人もいなかった。

もちろん父親とも一言も会話をしていない。

夕飯を済ませ、今日はお風呂の日だ。

銭湯へ着くとやはり住人達は簡単な会話ができる。


「長老のところの娘さんが可愛い」

「よう、ティム!身長伸びたか?」

「いいゆだね~」


など一年間ほぼ変わらない会話。

一年が過ぎたけど誕生日という概念がないのか、自分がいつ歳をとったのか

両親は教えてくれない。

まさしてこの体は歳をとるのだろうか。まさかずっと10歳の少年だったりして。。。。


不安はまだまだたくさんあるが、

今日の林檎といい、冒険者といい、父親との会話といい

一日で大進歩を成し遂げた。

明日も同じことをできるだろうか。

いや、きっと明日もできるはず。

一年間ずっと見てるだけの俺にやっと何かできるという希望ができたのだ。

早く明日試してみたい。

明日が待ちどうしいなんて久しぶりだ。

俺の意思では笑顔なのだが、体は通常通り、笑顔でもなければ泣いてもいない。

ごく普通の顔をしていた。




ニワトリの鳴き声。

洗い物の水の音。

元気のいい近隣たちの世間話。

いつもの朝がやってきた。

お店の準備までは何も変わったことはない動き。

また吹き出しが出ていないか、ティムの目線ではあるが動きながら注意深く見るようにしていた。

そしてお店が開店するとお客さんが少ない合間を見て、『林檎が食べたい』

そう強く願いを込めた。

しかし昨日は林檎の籠に吹き出しが出ていたのだが今日は出ない。

おかしいな。何かが違うのか?

『オレンジが食べたい』『梨が食べたい』『肉が食べたい』

どの食材を強く思っても全く反応しなかった。

体は通常どうり冒険者が買っていき、棚からなくなった商品を補充する仕事をこなしていた。


何かの条件を満たしていないのだろうか。

時間帯だろうか。

昨日のことを振り返る。

昨日吹き出しが見えたのがお昼すぎ。たぶん2時か3時ぐらい。

この世界には時計がないので正確な時間はわからないが、中央の噴水が日時計の変わりで影を追うと時間が分かる。

時間帯が問題なのだろうか?

今の時間はまだ朝11時といったところだろう。

もう少し待ってみて、また繰り返せばいい。

一年何もしなかったんだ。まだまだ時間はある。

がんばれ!俺!


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