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第3話「林檎おいしい」

繰り返す毎日。

俺はどうにか自分を伝える方法はないか考えた。


手や足を自由に動かせたらどんなに便利だろか。

いままで自分の体なのに動かないなんて想像もしていなかった。

まず、手を動かすってどうやってやるんだ?

今までなら無意識で箸を持ったり、コップを持ったり、本を読んだり、

ほんと無意識で動かしていた。

やりたいと思ったことに体がついてきてるような感じだった。

しかし今はそれができない。


少しでもいい、

少しでもいいから手を動かせたら。。。

毎朝、階段でよろけるのでやはり俺の意識と体は少しではあるが、連動していると仮定する。

じゃぁなぜ酔が起こるのか。

それは俺の意思と体の行動があっていないから。

でも、ティムの意識があるとすると酔わないはずなんだよな~。。。。

だんだん深く、難しく考えて悩みの渦の中へ吸い込まれていった。


うん、考えてもしょうがない。

答えは全く見えない。もう俺の人生諦めよう。

願わくばこの少年の恋が叶うことを見届けたいところだけど。

考えたらお腹すいてきたなー。

林檎でも食べたい。甘酸っぱくて瑞々しいジュージーな林檎が沢山目の前にあるんだもんな。

でもまだおやつの時間には早いか~。


考えることをやめ、林檎のたくさん入った籠を見ると

吹き出しらしきアイコンらしきものが見えた。

ん?飾り?

でもいままでこんな飾り見たことないけど。

なんで吹き出し?文字は書いてないようだけど。。。

父親は気づいてないのだろうか?

そう思っておるとティムの指がその吹き出しに触れていた。


ピコン!


一瞬の出来事で何がなんだか理解できていない俺。

体が勝手にその吹き出しに触れたと思った瞬間、目の前に日本語で文字が浮かび上がってきた。


=食べる=   =食べない=


食べる?食べない?

俺への質問か?

目の前に浮かび上がった文字は目線を移動しても消えない。

目線を追って俺の目の前に浮かび上がっている。

そしてなんといままで首を振ることさえできなかったこの体が

今この瞬間。言葉が浮かび上がっている時だけう日が動かせるではないか!


あれ?やっぱり気づいてないのか。

必死に首を盾、横に動かしても父親は変な顔一つせず、日常業務に勤めていた。


まぁ仕方がない。

もっと違う激しい動きをしたら気づくかも知れない。

とりあえず、目の前の選択肢に答えようと思う。


=食べる=   =食べない=


俺は =食べる= を選択した。


俺の体は美味しそうな林檎を一つ手に持って父親の元へ向かった。

これは俺の意思ではない。

目の前の言葉が消えると同時に俺の意識と体のリンクが切れたかのように

全く動かせなくなったのだ。


「お父さん、この林檎食べてもいい?」


美味しそうな林檎を持ったまま父に向けて手を伸ばす。


「ああ、食べていいよ。店の前に樽があるからそこで座って食べなさい。」


優しい笑顔の父親。

俺が転生してから初めての会話だ。

初めての会話が一年越しなんて泣けてくる。

何もわからないけどそれでも大きな進歩なのだ。

何もできず、ただ見て、感じることしかできなかった俺の意思と

自分の生活をちゃんとしているこの体とつながることができた。

何がきっかけで、何が原因で、なぜ林檎の籠に

吹き出しのようなアイコンが出たのかは全くわからない。

なにかの条件を満たしたのだろうか?

かにかの考えがキーワードだったのだろうか。

林檎大切にたべろよ。ティム。

林檎にかぶりつく10歳の少年。

そう、俺は林檎を食べたかったのだ。

やっと俺の意思が通じたのだ。やっと。やっとだ。


あれ?おかしいな。

泣きそうだ。(笑)


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