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第2話「村人A」



ニワトリの鳴き声。

洗い物の水の音。

元気のいい近隣たちの世間話。


目が覚めた。

変な夢を見ていた気がする。

少年の体に取り付いていた夢。


おおおおおおおぉぉぉ

また動き出した!?

夢ではなかったのか!!!


急に起き上がり俺の意思とは関係なく動く体。

やはり昨日の出来事は夢ではなかった。

クローゼットから自分の服をだして器用に着ていく。

そして体は次の行動に移り部屋のドアを開け、階段を勢いよく駆け下りる。


毎朝毎朝元気だな、この体は。

しかし、階段を一気に駆け下りるのはどうしてもならない。

自分の意思とは関係なく、上下に激しく揺れるからだろう。


案の定最後と階段で体がよろけた。


「おはよーティム。大丈夫かい?」


階段を降りるとすぐダイニングだ。


「おはよー。母さん。多分まだ寝ぼけてたんだと思う。」


デジャブのように全く同じセリフを繰り返す母親とティム。


「おはよーティム。今朝もいい物が手に入ったぞ。」

今日も朝から一仕事終えた父親が肩からタオルをかけ、額にはうっすら汗をかいている。

ただ、手には美味しそうなオレンジが一つ握られていた。

オレンジを母親に渡し、隣の部屋へ入っていく父親。


今日の朝食はコッペパン、野菜スープ、オレンジ。

果物以外昨日と同じだ。


食事が終わり、食器を流しへ持っていき、「ご馳走様でした!」

と駆け足で玄関を出て行く体。


玄関を出るとホウキを持って店の前を掃除する。

変わるがわる挨拶をしてくれる住人。

そして自分の店の向かい、

宝石商の女の子。

今日も長い黒髪を二つ結びで、ヒラヒラのスカート。今日も可愛い笑顔。

目があい、手を振って逃げるように掃除に戻るティム。なんてもどかしい!

走って声をかけるぐらい出来るだろうに。

なんて思っていてもこの体の持ち主は10歳ぐらいであろう少年のものなのだ。

いくら俺の意識が走りたいと思っても体がいうことを聞かない。

なんてもどかしい!


朝の準備が終わり、集会場、宿屋から冒険者たちが出てきた。

冒険者がお店の前に立ち止まると

「いらっしゃい。色々揃ってますよ。」

この体の父親、店主が声をかけた。

「買いたい」

その一言で買い物が成立する。


この体の少年、ティムは冒険者たちによって棚からなくなった商品を補充するお手伝い。

無言で黙々と続けている。


体感的にはお昼をすぎた頃だろう。

この世界にはお昼ご飯というのが無い。

1日2食

お腹が空けば、おやつとして果物を一つ食べる。という感じだ。

ある冒険者がお店の前に立ち止まると

「いらっしゃい。色々揃ってますよ。」

といつものように声かけをする店主。

「売りたい」

初めて冒険者から買いたい以外の一言が聞こえた。

「新鮮な肉、魚、果物だったら買い取るよ。」

冒険者はその一言を聞くとカウンターに数個果物や魚を置いた。

ほとんどここで販売している商品とは変わらない見た目。

だけど買取価格は販売価格の2割ほどの値段で買い取り、冒険者は素直にお金に換えて帰っていった。

この場では商品を売ることもできるようだ。

それからは「買いたい」冒険者、

時々「売りたい」冒険者の繰り返しで1日が終わった。

店終いを終え、家に帰る。

すると母親が夕飯の準備を済ませ、待っている。

今夜の食事はパンと魚のオイル焼き。

野菜スープに林檎だった。

みんなで夕飯を終えると今日はそのままベットに入った。

1日が終わったのだ。


繰り返す朝。昼。夜。

あっという間に一年が過ぎた。

そう一年が過ぎてしまったのだ。

一年といってもこの世界は俺の体感的に半月で一年が回るようだ。

毎日毎日同じ生活。

変わったことといえば

毎日の食事のメニュー。主食はパンでメインが肉か魚。

野菜スープと果物。

この組み合わせだ。

お風呂は二日に一回。

基本的に祝日やイベントごとはない。

そして店の休みもない。

これじゃ向かいの宝石商の彼女の名前もわからない。

毎日毎日目があっては逃げるように掃除に向かうティム。

なんともどかしい。

これはなんとかしないと!!!

何も変化がないこんな世界なんて面白くない。これじゃまるで村人A。

モブキャラ!地味キャラ!誰も気にしないキャラではないか!!

おれはこのまま何もできないのか!!!

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