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ピーチチ、チッ、チッ・・・・・・
鉄格子の隙間から、ちらちらと舞う雪片が月光を反射させながら静かに舞い降りてくる。
ゴーン、ゴーン――――――
遠くから響く重たい鐘の音にのせて、人々の賑やかな笑い声も聞こえてくるようだ。
ふわふわと淡い檸檬色の、手の平に乗せられそうに小さい鳥が、まるで喧騒から逃れるかのように格子の僅かな隙間に体をねじり込ませる。
チチッ、ピッ、ピッ
もそり、と暗闇の中で何かが動く。
布擦れの音。艶やかな金色の輝き。怪しげに光る黄金の、瞳――――――。
白い吐息が、隙間から零れる月光に浮かんできらきらと散った。
――――――――――――暗々と広がる森の中、高くそびえる岩壁の塔。
どんよりと黒い雲が空を覆う満月の夜、物語はここから始まる。