第一章 第二話 出会いその4
お待たせしました。
完全に狼男に変化した男を、カミューは信じられないものを見たかのように驚愕していた。
それはそうだろう、人間が怪物に変身したのだから。
「グルルルッ!」
狼男は一吠えするとカミューに襲いかかるためだろう身体を屈めた。
「な、な、なんか知らんがヤベェッ!?」
カミューは咄嗟に身体を左側に地を蹴った。
ゴウッ!
それが功を奏したのか、今までカミューが立っていた場所に突風が駆け抜けていく。
…否、風ではなく狼男が駆け抜けたのだった。
「グルルルッ?…よく避けられたな!」
「あっ…ぶねっ…うおっ!?」
狼男の突進をギリギリ避けたカミューだったが、駆け抜けた際に起きた風圧だけは避けられず、僅かにバランスを崩した。
狼男はその隙を見逃す訳もなく、カミューに向かってまた突進をすると、今度は駆け抜けると同時に両腕に付いた凶悪な爪を奮うが、
カミューは感が働いたのか咄嗟にしゃがんでこれをかわす。
「ぐぁっ!?」
…が、やはり風圧でバランスを崩してしまう。
そこに狼男の尻尾がカミューの脇に振るわれカミューは吹き飛ばされた。
ドガンッ!
「ガハッ!?」
更に運の悪いことに、吹き飛ばされた先は民家を囲っているブロック塀だった。
背中からブロック塀に叩きつけられたカミューは咄嗟に受け身の体制をとったが、その前に受けた尻尾の一撃で肋のどこかを折ったらしく吐血してしまう。
「グルルルッ!
これでチョロチョロ出来んだろう!」
狼男はそう言うと、ゆっくりカミューの倒れている方に歩いてくる。
「ガハッ、ゴホッ、ゴフッ!?
(や、やべぇっ…!?
アバラ骨のどっかをやっちまったか!?)」
カミューは右手で脇を抑えてなんとか立ち上がり逃げようとするが、身体はいうことを訊いてくれず、またその場に崩れ落ちる。
「グルルルッ。
さぁ、殺されたくなかったら大人しくこの結界を解け!?」
狼男はそう言うと長い爪の生えた手で器用にカミューの襟首を持ち上げる。
「うぐっ!?」
当然そんなふうに持ち上げられれば首が締まり息が出来なくなる。
カミューはなんとかしようと狼男の手首を掴んだ。
「なんだぁ?…グァッ!?」
狼男はカミューが何も出来ないと思って僅かに腕の力を緩めたが、カミューが狙っていたのか偶然なのかわからないが、カミューは狼男の力が抜けた瞬間に両手を力いっぱい握った。
そのカミューが握った箇所は狼男にとって、いや我々人間にとっても急所である関節であった。
これにはさすがの狼男といえども溜まらず、カミューを放り出した。
「がっ!?」
「こ、小娘風情がぁ~!?」
狼男はカミューを憎々しげに睨みつけ、若干距離を取った。
「かはっ、ゴホッゴフッ!?
…ハァ、ハァ…なぁ、バケモン…ハァ、お前さっき、なんつった…?」
「…あ?」
カミューは狼男を見ながら、とある[疑問]を思ったので狼男に質問しようと口を開いた。
「ハァ、ハァ、ゴホッ、…ハァ、…お前言ったよな?この結界を解けって?」
「…だからなんだぁ?
解いてやるから見逃せってか?」
「いや…それはちっとばかし無理だ…ハァ、ハァ…ふう~。」
カミューは狼男の答えに確信を持つと呼吸を整えて[その時]を待った。
「グルルルッ…ならば、貴様を始末してから結界を解くまでよ!?」
「…ハァ…それも…無理だな!」
カミューに意識を向けていた狼男にはわからなかったが、カミューには見えていた。
先ほど狼男に振り払われた場所はちょうど竹林の方に狼男がいるかたちになっており、狼男の後方の竹林の奥は暗く見通しが悪かったが、座り込んでいるカミューには僅かだがその先に居るものが見えていた。
男か女かわからないが、弓らしき物を此方に、正確には狼男の方を狙っているのが。
<続く>
うーん、初めて戦闘シーンを書いてみましたが、難しいですね
前話までは亮やナンパしてきた人をポイッと投げたり、一発殴って終わらせたけど、本格的になったら駄文が余計にヒドくなったかもしれない…
ここまでお読み下さりありがとうございました。
次回もお楽しみに(笑)