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プロローグ

深夜の街中、

あたりは静かだ。

それはそうだろう。

深夜に、それも商店街や住宅街ならいざ知らず、

あたりにあるのは既に閉まったビル街だ。


こんな時間に人がいるはずもなく、ビル街の会社員をターゲットにした食堂ももちろん閉店後だ。


いるのは野良犬・野良猫だけのはずである。

だが今夜は何故かその野良犬たちも息を潜めて隠れてしまったのか、一匹たりともその姿を見ることが出来なかった。


まるで恐ろしい何かに見つからないように隠れてしまったかのような静けさを醸し出している。


だが、その静寂を破るかのように一人の若い男が走ってきた。


偶に後ろを確認しながら必死に走っている。まるで恐ろしい何かから逃げて来たかのように、その表情は汗だくで必死だった。



「…はぁっ、はぁっ、はぁっ、くっ、うわっ!?」


カランカラカラ…


後ろを振り返りながら走っていたせいか、

足下にあった空き缶を踏んずけてしまい、彼は転んでしまった。



「はぁはぁはぁ…クッソ、こんなとこでこけるなんて…ぐっ!?」


どうやら転んだ拍子に足をひねったらしい。

それでも彼はまだ逃げるつもりだ。


「はぁはぁ…は、早く逃げねえとアイツに追いつかれる!?」


彼は足を引きずって走り出すが、そのスピードはさっきまでとは雲泥の差だ。


彼は咄嗟にビルとビルの間、いわゆる路地裏に隠れて追撃者をやり過ごそうと思ったのか、

路地裏の方へ歩き出した。



「…はあはあ、あ、あそこまで行けば、なんとかなるか!?」



男はなんとか路地裏の入り口にたどり着くと、

そのまま奥の暗がりへ入っていく。


その先にはビル用の室外機が有り、ちょうど表からは見えない角度になっている。


男は痛む足を引きずりながら、その室外機の裏側へ入り込むと、その場にしゃがみ込んだ。


「はぁはぁ、はぁ、ふぅ…クソっ、繋がらねー!?

しばらくここにいるしかねぇのかよ!?」


彼はしゃがみ込んだまま息を整えると、少し落ち着いたのかスマホを取り出し、警察へ掛けようとしたのだろうが、残念ながらスマホのアンテナは0本、つまり発信することが出来なかった。



『グルルゥオォォォ!』


その時だった。

彼が逃げて来た方から何かの動物だろう遠吠えのようなモノが聞こえてきたのは。



「!?」



彼は咄嗟に口元を両手で抑え身体を小さくし、

必死で室外機の表から見えないようにする。



ソイツは、先ほど彼が転んだところに来ると、

その場にしゃがみ込んだ。


ソイツの見た目は、

身長は2メートルくらいだろうか。

もしかするとそれ以上あるかもしれない。


手足は太く体格も良さそうだが、

一番特徴的なのはその頭部だろう。ソイツを一言で表すとしたら、彼でなくともこう思うだろう。

[狼男]と。


そう、そこにはマンガやアニメ等に出てくるような狼男がいたのである。


犬や狼等の特徴的な口元には鋭い牙が並んでおり、一噛みで成人男性の首を噛み切りそうだし、

つり上がった眼のやや上方には、全身を覆っている体毛と同色の黒の耳がピンとそそり立っている。


更に両手の指の先にはヤケに長い爪があった。


それだけなら良く出来た特殊メイクだと思うだろうが、その狼男は呼吸をする度に胸元が上下しているし、臀部にある尻尾はユラユラとリズミカルに動いている。



『クゥオォォォン!!』



やがて狼男は立ち上がると一声叫び、物凄い跳躍でビルとビルの間を三角跳びのように跳躍して去っていった。



「…!?」



彼はソッと口元にやっていた両手を離し、室外機の裏から覗いてみるが、既に狼男は去った後の為その場に聞こえるのは彼がゆっくり呼吸する音だけだ。



「…ふぅ、行ったか?」



男は安堵の息を吐きだすと、ゆっくり立ち上がり室外機の裏から出てくる。



「クソっ、何なんだアイツ…は!?」



男は悪態をつきながら路地裏から出ようとしたが、それは最後まで言葉にならなかった。


何故なら立ち去ったと思っていた狼男が数軒先のビルの上からこちらを見ているからだ。



「ぎ、ぎゃぁぁぁ!?」


男は叫び声を上げると、焦って先ほどまでいた路地裏に入っていく。

だが残念ながらこの路地の先は袋小路だった。



「…ひいっ!」



路地の先が袋小路だと気付いた彼は、急いでこの路地から出ようと振り返ったが、それは遅かった。


そこにはまだ数軒先のビルの屋上にいると思っていた狼男が路地の入り口に、

男の様子を観察するかのように静かに佇んでいた。



『…』



狼男は何かを考えているように見え、彼から視線外そうとしない。



「ひ、ひいぃぃ!

く、来んな!

あっち行きやがれ!?」



男は袋小路の奥で狼男を振り払うかのように、

必死で大声を上げるが、

狼男はその声に対して煩わしそうに僅かに頭上の両耳を伏せる。


やがて…



『…チガウ、コイツジャナイ』




「…え?し、喋った!?」


そう、その狼男は人間の声より高い声だが確かに喋ったのである。



「な、な、なんだよしゃべれるのかよ!?

…な、なぁ、オレの言葉が分かるなら見逃してくれ…よ゛!?」



彼は人間の言葉を話した狼男に一縷の望みを託し、助けてくれるように懇願する。


…が、それはまた最後まで言葉にすることが出来なかった。


彼がその言葉を言い切る前に狼男の右腕が動き、彼の喉元に突き刺さっていたからだ。



「…〇★▲#◎◇!?」



恐らく刺された痛みによる絶叫を上げているのだろうが、狼男の右手の爪が突き刺さったところは声帯のある場所だったのだろう。


その声は音にはならなかった。



『…フン、ウルサイニンゲンダ…』



狼男は彼から右腕を抜くとそう呟き、その牙を彼の首筋に突き立てた。


…それが致命傷だったのだろう。男はそれっきりピクリともしなかった。


『…チッ、余計な手間とらせやがって!』



先ほどよりも流暢に話しながら狼男は彼だったモノから牙を抜いた。



『…まあいい。コイツはオレの夜食になって貰おう!』



そう呟くと狼男はその場に座り込んで文字通り食事を始めるのだった。


<続く>

この度は〔反転世界に行ったら、性別が反転していた(笑)[仮題]〕を観て下さり、

ありがとうございます。

m(_ _)m



小説を書くことが初めてなので、

小説タイトルは変更する可能性もあります(苦笑)


その為、タイトルの後ろに[仮題]と付けさせては貰いました。



この[仮題]が取れた時が、

この小説の真のタイトルとなりますが、

内容は多少は手直しするかもですがそれ程(話に影響しない範囲で)変更はしないつもりですので、

ご安心下さい(笑)



これからもこの小説をよろしくお願いします。

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