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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第三章 決着
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Conclusion:29 祈る者達

―――心からの祈りによって成し遂げられないものは、この世に存在しない―――


         ―――マハトマ・ガンジー


 

 私達は、カルくんの戦いを見ていた。

 カルくんが神殿に入り、私達が丘の上に集まったとき、空に二人の姿が投影された。

 彼と、彼の父親の姿が。

 何のためにその映像を写しているのかは分からなかった。けど、そのお掛けで、私達は戦いの一部始終を見ている。



魔人(イーヴィル)は、魔神(アスラ)が作り上げた存在の成れの果て』




 だから、魔人と神騎の成り立ちを知った。



魔神(アスラ)恩恵(ちから)を以て、彼女を呼び戻す!』



 〈代行者〉の、桐久保シンの目的を知った。



『オレは人間だ! 人間の、桐久保カルマだ!』



 カルくんの叫びを聞いた。



『オレの、オレの未練(ねがい)は、ヒナタと共に在りたい! ただ、それだけだ!』



 彼の、本当の未練(ねがい)を知った。



『あんたは、オレに遺された、たった一人の親父(かぞく)じゃないか!』



 カルくんの、慟哭を聞いた。



『言ったでしょ? 僕にはもう人間の部分は残されていない。息子(きみ)がいくら訴えかけても、もう僕には届かない』



 シンの、狂気を目の当たりにした。



『去らばだ、カルマ。我が愚兄』

『あばよ、マルカ。オレの愚妹』



 二人の、別れを見た。



 そして、



『あんたを止める! なにがなんでも!』

『君が何度そう言っても、僕は君を殺す!』



 カルくんの、信念の強さを感じた。










 今や映像の中ではなく、私達の目の前で苛烈な空中戦を繰り広げる彼らの声はもはや届かない。

 しかし誰もが、手を出さず、ひたすら彼らを見続け、そして信じ、祈っている。

 カルくんの想いを、カルくんの勝利を。


 私やルルさんも、一切目を逸らさずに見続ける。

 何度目を背けたい場面があっても、何度泣き出したい想いが込み上げても、何度彼の背を支えたくなっても、私達はただ、見守り続ける。


 それが、彼の望みだから。それが、彼との約束だから。


「カルくん…………」

「カルマ様…………」


 祈る。

 声を張り上げた声援では無く、武力を持った助力でもなく、ただただ、彼の勝利を祈る。


 祈るだけじゃ、何も変わらないって、本や漫画の人たちは言う。実際そうなのだろう。

 自分の為を想って祈り、何もしなければ確かに変わらない。変わりようが無い。


 けど、誰かを信じて、その信じた人の為に祈るのは、本当に無意味なのだろうか。


 私はそうは思わない。



 神を、〈魔神〉の名を冠した二人の戦いは、まさに人外の域。

 速く、鋭く、過激に、力強く、二人の四肢がぶつかり合う。 



 ―――頑張れ、桐久保君。

 ―――負けたら承知しないわよ、桐久保。

 ―――負けんじゃねぇぞ、坊主!


 ―――頑張れ!

 

 ―――行け!


 ―――桐久保カルマ!



 佐伯先輩や、サナちゃん、真柴さんの声を皮切りに、カルくんを応援する声が上がり始める。


「カルマ様、わたくしは、わたくしは信じております! あなたの勝利を、あなたの帰還を!」


 ルルさんも、声を上げる。

 だからというわけでは無いが、私も負けじと声を上げる。


「カルくん! 私も信じてる! 私も待ってる! カルくんがちゃんと勝って、帰ってきて、そして、私達の約束を果たしてくれるって!

 負けたら、負けたりなんかしたら、私だって承知しないんだからね!」




 声を張上げ、心の奥底からの想いを言葉にする。



「だから、カルくん!



 ――――――勝って!」



 その言葉が届いたかどうかは分からないが、直後、事態が動いた。







 終りの一撃が、放たれる。


…………名言持ってきたはいいけど、ガンジー、なんだよなぁ…………

非武装かー…………うーん。



あと、今回ちょっと短くてすみません。

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