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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第三章 決着
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Conclusion:23 希望に際立つ絶望


今年度中に終わると思っていた時期が僕にもありました

 

『【冥道之翼(アサーズ・デ・インフェルノ)】!』


 背に黒い翼を生やし、オレは飛翔する。


『カルマ!? いきなりそんな…………!』

『うるせえ! 出し惜しみしてる場合じゃねえだろ! ここで使わないで、いつ使うんだよ!』


 高速移動しながら、オレは親父の側面に回り込み、飛び蹴りを放つ。

 だが、


『【斥力障壁(リパルション)】!』


 親父の展開する魔術に防がれ、弾き飛ばされる。


『くっ、やはり足りぬか…………』


 マルカの悔しそうな声が聞こえる。

 確かに、足りない。

 力も。

 技も。

 経験も。

 そのすべてが親父に劣り、大きな差がある。今の一合で、それが判るほどの実力差だ。

 でも、


『【冥道の太刀(エスパーダ・デ・インフェルノ)】!』


 ――――それがどうした。


 力が足りなければ、技で補う。技も足りなければ、経験で埋める。それでも足りないなら、命で賄う。

 今までずっと、そうやって来たじゃないか。


『なあ、マルカぁ!』

『ああ!』

『【空間接続(エリア・コネクト)】!』


 翼と組み合わせ、複雑な動きをしながら、親父の死角に潜り込む。


『甘いよ、カルマくん』


 そこからの渾身の一撃はしかし、後ろを見ずに屈んだ親父に躱され、更にそこから放たれた下段回し蹴りによって、踏み込んだオレの右足が払われる。


『【冥道連弾(インフェルノ・バーラ)】』

『くっ!』


 バランスを崩した所に放たれた、冥道の力を宿した弾丸が、雨霰と降り注ぐ。

 それを、剣を杖にして跳ね、その勢いを使った羽ばたきでなんとか距離を取り躱す。


『ダメだよ? カルマくん。剣は大切に使わなくちゃ』

『いいんだよ、オレの魔力なんだから』

『それにしても、今のはいい動きだったねぇ…………父さんビックリするしちゃったよ』

『なら、そのままやられてくれりゃあ良かったのに』

『生憎、ウチのトガナは優秀でね』


 やはり、強い。

 命を賭しても、届かないのなら、次は何を賭ける?

 そんなものは決まってる。


『どうしたの? 僕を止めるんでしょ?』

『ああ、止めてやるさ!』


 オレは、オレを形作る全てを賭ける!

 魄も、魂も、その全てを。

 そして、この想いも願いも、その全てを以て、オレは親父を越える!


『【全展開(フルオープン)】!』


 魔力を、全開まで放出する。


『な!? カルマ、お前!』

『悪いな、マルカ。こうでもしなきゃ、親父に勝てそうにないんだわ』


 親父は、力も、技も、経験も、そのすべてに於いてオレの上を行く。

 でも、オレにあって、親父に無いものが、たった一つだけある。


『【冥道之翼(アサーズ・デ・インフェルノ)】』


 翼を拡げる。


『【冥道の太刀(エスパーダ・デ・インフェルノ)】』


 剣を持つ。

 そして、


『【双翼の刃(ツイン・エッジ)】!』


 その剣が佐伯先輩と同じ二刀流になる。


『なんだい、それは?』


 オレにあって、親父に無いもの。


 ――――それは、


『これは、オレの仲間の………友の力だ!』


 オレは独りじゃない。仲間がいて、友がいて、大切な人がいる。

 ただただ独りで、誰も信用してこなかった親父にはない、大切な(つながり)が、オレにはある!


『背負う物も、守る物も無いアンタには、決して手に入れる事も、知る事もできない(もの)だ!』


 飛翔し、斬りつける。。その速度は、先程までとは段違いだ。流石の親父も、目では追えず、幾重にも連なる斬撃をその身に受ける。


『くぅ! だが、この程度なら!』


 親父が身構え、動きを止める。オレが近づくのを待っているのだろうか。


『なら、それは無意味だぜ、親父』


 剣を消し、手に魔力を集中させる。

 イメージするのは、鋭い目付きが特徴的な、強がりな女の子。


『【銃の唄(ガン・ソング)】!』


 作り出されたのは、二丁のオートマチック銃。イメージで作ったので名称は無い。多分。


『【冥道の弾丸(バーラ・デ・インフェルノ)】』


 引き金を引き、放たれたのは、先ほど親父が撃った物と同じ、冥道の力の塊。


『【斥力障壁(リパルション)】!』


 親父に当たる寸前だった弾丸は、発動されたその障壁に当たり、跳ね返される。

 だが、その術が予想通りの物なら、


『ぐぁ!』


 黒弾が親父に当たり、その甲殻を削る。


『やはり、私の予想通りだな、カルマ』

『本当、頼りになるな、オレの妹は』


 【斥力障壁(リパルション)】。もしこの技が持続型だったら、オレに勝ち目は無かった。

 だが先程、マルカが言ったのだ。


 ――――なぜ、最初の蹴りは跳ね返して、その次の刺突は躱したのか?


 と。

 考えてればそうだ。あの時反撃するにしても、一度弾き飛ばして、その上で攻撃をされていたら、オレは避けきれなかったハズだ。だけど、親父はそれをしなかった。

 それはつまり余裕なのか、はたまた、そう、インターバルが必要なのか、だ。


 そしてそれは今、後者であると判明した。となれば、やることはもう一つ。


『もう一度だ、カルマ!』

『わかってる! しっかりカウント頼むぜ?』


 そのインターバルの時間を知ること。

 フルオートで黒弾をばらまく。


『…………なるほど、いい判断だよ、カルマくん。でもね』


 親父の両の手刀が空を薙ぐ。


『【冥道斬開】!』


 その手刀の軌跡を追うように、冥道が切り開かれる。

 だが、ぶつかり合った冥道同士が起こしたのは、対消滅ではなく、


『【冥道の弾丸(バーラ・デ・インフェルノ)】が、斬られた?』


 拳大の冥道弾が、親父の作り出した冥道に触れた瞬間、真っ二つになったのだ。


『残念。この術は、君も持っている【冥道開通】の改造版でね。触れるモノを斬り刻む事もできるんだ』

『…………へっ、説明乙、ってね』


 オレは、自分の術が破られた瞬間、練っていた次の魔力を放つ。

 イメージしたのは、金髪を揺らし誇り高く、けれど一途に、オレを慕ってくれる、幼馴染みの一人。

 彼女の、優しく残酷で、優雅な黒い蝶。


『頼むぜ、ルル。【黒冥蝶(インフェルノ・ボルボレータ)】!』


 また、冥道が形を変え、数を増やし、親父を取り囲む。


『今度は…………ああ、ルルちゃんか。

 しかしカルマくん。こんなに力を、特に冥道の力を使って良いのかい? 君にそんな力が遺されてるとは思えないんだが』

『大きなお世話をありがとよ!』


 言って、その蝶を操り、親父を包み込む。


『…………くっ! 難しいっ!』


 慣れない遠隔操作は、かなりの精神力と集中力を要した。

 それでもオレが上手く操れたのは多分、火事場の馬鹿力って奴だろう。もし戦闘後にやれと言われても、おそらくできない。


『カルマ! 集中が乱れているぞ!』

『すまん!』


 余計な考えを振り払い、目の前に集中する。

 蝶の密度が増し、並大抵の魔人なら、とっくに消えてもおかしくない程だ。

 その分、魔力も魄もゴッソリと持っていかれる訳だが。


『これで決めるぞ、マルカ!』

『了解だ!』


 冥蝶の嵐が吹き遊ぶ。

 触れるモノ全てを滅ぼさんとして。

 さしもの親父も、これなら無事ではいられまい。現に、もうなんの反応も無い。

 これなら――――――






『こんな物かい? 君の全力ってのは』





 ―――――そして打ち砕かれる。


『【斥力爆発(バースト・リパルション)】』


 蝶嵐の内側から膨らんだ斥力が、一瞬、蝶とせめぎ合い、そして破裂する。


『…………なん、だよ。そんなの、ありかよ…………』


 訪れた静寂は、絶望を感じさせるには十分だった。


『それじゃあ、今から僕の番だね?』


 親父が纏い始めた魔力は、これまでの誰よりも濃く、禍々しく、純粋だった。


『じゃあ、いくよ?』


 恐らくきっと、隠れて見えない親父の顔には、笑顔が張り付いてる事だろう。






 絶望が始まる。







やっぱりラスボスはこうでなくちゃ!


と思って書いてみました。


何気にというかやっぱりと言うか、ラスボス戦なので、一番長くかかります。

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