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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第三章 決着
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Conclusion:19 それぞれの後と、拳の始まり

さあ、盛り上がって来ました!(*≧∀≦*)

◆◆◆


 アタシの意識がゆっくりと浮上していく。同時に、思考も回復し始める。

 アタシは、どうなったのだろう?

 確か、テイムの自爆に巻き込まれたはず。なのにどうして生きて…………?


 ゆっくりと瞼を持ち上げる。


『ああ、ようやく目を覚ましましたね』


 目の前には、狐のような顔の人魔。そこから周囲を見渡すと、白い焔がアタシ達を囲うように燻っている。


『大丈夫ですか? 僕がわかります?』


 手に持った純白の、陽炎に揺らめく剣を置き、彼はアタシを覗き込む。


「竹井、さん? て言うか、顔隠してたら見えないわよ」

『ああ、すいません。大丈夫みたいですね』

「あの、アタシ一体どうなって…………」


 体を起こしながら問うと、彼は笑いながら答える。


『近くで戦っててホントに良かった。僕は〈白焔の黒狐〉。この白い焔は僕の敵とその力を焼き尽くす力を持っていましてね』

「それで爆発の魔力を焼き尽くしたっての?」


 呆れる程の火力だ。


「ここ、始めに竹井さんが焼いとけば良かったんじゃない?」

『いやぁ、これ使い勝手悪くてね、チャージ時間があるんだよ』

「ああ…………」


 その時、神殿の方で黒い蝶蝶の群れが空を覆い、時間を置いて白金と黒の剣戟が空に登った。


「二人とも頑張ってるなぁ」


 ―――また、ここに集まるのを、待ってるからね、皆。


 丘の上から終わりに近づく戦場を見ながら、()は祈った。



◆◆◆


「うぐっ…………げほっ、げほっ!」

『おう、目が覚めたかよ』


 咳き込み目を覚ました時、僕は黒と白の翼を生やした人魔の小脇に抱えられていた。


「あなたは…………?」

『あ、わかんねぇか。オレだよ〈黒白の騎士〉ユウリこと、柏木遊李だよ』


 そう言われて、竹井さんに紹介されて顔を合わせた人魔だと気づく。


「ああ、あの時の。助けて頂いて、ありがとうございます」

『いいって。照れるじゃんか。それより、飛べるか?』

「あ、はい大丈夫です」


 自分の翼を展開し、体勢を立て直す。


『この戦いの対局は決した。大介と合流するぞ』

「了解!」


 丘に近付いた時、僕はこちらに手を振る彼女の姿に気が付いた。


「良かった、無事だった…………!」


 そんな言葉が口をつき、そして無意識に笑みが零れた。


『ほっほーん』

「な、なんですか」

『いんや、別にー?』

「ち、違いますからね! 違いますからね!」

『ほいほい、若いねぇ』


 そんなやり取りがあった事は彼女に内緒だ。



◆◆◆


 私が地上を走り、ルルさんが空中を駆る。

 途中出くわす敵は、鋭さを取り戻した私の刀と、ルルさんの蝶の餌食となった。


『ヒナタさん! 前方に!』

「うん! 地上からも確認できた!」


 私たちが見たのは、多分、この場の殆どの魔人と魔獣に囲まれた神騎と人魔の二人組。


『あれは…………』

「ルルさん! あの蝶は?」

『品切れでしてよ!』

「品切れとかあるの!? ああもう! 行くよ!」


 その意思だけを疎通すると、私たちは互いを見やることなく、そこに駆けつける。


「助太刀!」

『いたしますわ!』


 その言葉に、互いに背を合わせていた彼らがこちらを見る。


『そいつは助かるぜ! 嬢ちゃん達!』

「すまないな!」

『貴女方は?』


 ルルさんが彼らに名前を問うと、


『はははっ! おいおい、忘れるたぁ寂しいねぇ!』

「仕方ないだろ! 俺たちは今マスクしてんだから!」


 笑いながら敵を斬り伏せていく二人。もしかして…………。

 

『俺は〈狂戦士(バーサーサー)〉のキョウジ、真柴恭慈だ。覚えたか?』

「俺は覚えてるだろ?〈輝光の神騎〉宇津木(うつぎ)燈悟(トウゴ)


 矢継ぎ早に名乗った彼らは、私達の方へ駆け寄ってくる。


『おーっしゃ、一気に蹴散らすぜ。嬢ちゃん、あの蝶は?』

『品切れですわ』

『んだよ…………ちっ、仕方ねえ』

「やるか?」

『さて、神騎の嬢ちゃん、さっきの白い斬戟はお前さんのだろう? まだ行けるか?』


 その言葉に、私は首を横に振る。


「すみません、私ももう力が」

『ったく、これだから若いもんは』

「じじ臭いぞ恭慈」

『うるせーよ、燈悟。仕方ねぇ、俺らの準備が終わるまで、嬢ちゃん達には時間を稼いで欲しい。行けるか?』


 その問いには、言葉で答えない。

 ただ、目の前の魔獣を屠りながら、行動でしめす。


「危なかったよ、二人とも」

『へっ、上等だ』

『さあ、安心して準備してくださいまし?』

「だってさ。目にもの見せてやろうぜ?」

「当然!」






 それから数分後、この四人のいた場所には大きく抉れたクレーターと、大地すら凍らせる巨大な氷柱が敵を飲み込み聳え立っていた。



『あははは、相変わらずデタラメな威力だねぇ、恭慈くんの氷は』

『てめぇの焔には言われたかねぇよ』

『燈悟お前! なんでお前だけ目立ってんだよ、ちくしょうめ!』

「俺に言うなよバカ」

「お二人とも、無事で良かった」

「ホントね。ヒナタ、ルル、おかえり」


 彼らは無事に切り抜けて再会できたことを喜んでいる。

 丘の下の戦いも、既に残存勢力に大差が付いており、もはや残党狩りとなっていた。


「うん、二人とも無事でなによりだよ。でも…………」

『ええ、まだ戦いは終わってませんわ』


 私たちは前を、神殿を見つめる。


『そうですね、まだ、一番大切な戦いが終わってませんね』

『まあ、アイツなら大丈夫だろ』

『おっと恭慈、その心は?』

『昔のお前に似てんだよ、遊李』

「ああ、バカそうだもんな」

『…………燈悟、それはアイツに悪いだろ、遊李(これ)と比べるなんて』

「あ、そうだな」

『なんだと!』


『ふふっ』

「どうしたのルルさん、楽しそうに笑ったりして」

『いえ、なんやかんやで、カルマ様が信頼されているんだなって思うと…………』


 その答えに、私は納得し、同じ様に笑みを浮かべる。


「確かにね」


 もう一度、前を見据える。


『今、わたくし達にできるのは、ただ信じて待つことのみ』

「うん、わかってる」



 ―――カルくん、私、待ってるからね。カルくんがちゃんと勝って、君の…………ううん、私達の願いを果たして、ここに帰ってくるのを、ずっと待ってるよ!


 ―――だから、勝ってくださいまし。生きてくださいまし!



◆◆◆


―――時は少々遡り…………


『外は大きいのに、中は空洞なんだな』

『ああ、まるでここで戦う事を目的としたかのようだ』

『親父の事だ、やりかねん』


 オレは、無駄に広く大きな神殿のなかを歩いていた。といっても、あるのは天窓のステンドグラスのみで、特に扉もなく、吹き抜けの天井も、かなりの高さだ。


 そしてその広間の真ん中にその()がいた。

 こちらに背を向けている男の姿は、逆立った髪に、黒の革ジャン上下。

 いかにも『雑種がぁ!』とか言ってきそうだ。武器の貯蔵は十分じゃないです。


 オレはその男を知らない。ただ、その男の醸し出す雰囲気というか、威圧感は、よく知っている。


「よぉ、遅かったな、カルマぁ」


 男が振り向く。

 やはり知らない顔だ。でも、


『お前、生きてたのかよ…………フィスト(・・・・)


 答えると、男…………〈覇拳〉フィストはニタリと嗤う。


「ははっ、よくわかったじゃねえか」

『この前戦った時、おかしいって思ったんだ』

「あん?」

『人魔じゃないお前がないどうして魔を殺す技を使えるのかって』

「それで?」

『今のお前を見て確信したよ。お前、人魔だったんだな』

「へっ、ご名答。だがな、カルマ。それで俺とお前の戦いが終わる訳じゃねぇよ」

『ああ、知ってる。お前はそういう奴だよ』


 拳を握りしめ、構える。


「はははははははっ! いいねぇ! 理解されてるってのは心地いいもんだな! やっぱお前、最高だわ」


魔人変躯(イーヴィル・トランス)!」



『吾が名は〈覇拳〉フィスト! 拳を意味し、全てを打ち砕く者なり!!』

『吾が名は〈同胞喰らい〉カルマ! 魔を狩り、己が(つみ)を纏う者なり!!』


 そして、同時に飛び出し、拳が交わった。


『おおおおおおお、フィストォォォオオ!』

『ふ、ふふふはははは! カルマァァァアア!』



 今日!

 ここでっ!

 この因縁に!



 ――――決着をつけるっ!




ダメだ、どうしても「アタシ」がオカマに見える…………

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