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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第三章 決着
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Conclusion:16 空の戦場に流れる終尾の旋律

ラスボス戦まであと…………ひぃふぅみぃ…………もう少しです!

「獣の動きが、鈍った?」


 一瞬、ほんの一瞬だけ、魔獣がその動きを止めた。

 直後に後方、梶原さんが戦っているであろう辺りが紅い閃光に染まった。


「梶原さん!?」


 その閃光が収まると同時に、先程までは連携の取れていた魔獣動きが、まるで統率の取れていないかのように暴れ始める。こうなってしまえば殲滅するのは容易だ。


「やったんだね、梶原さん」


 彼女の元へは向かわない。

 何故なら、彼女がそれを望んでいないから。

 そして彼女は、自らの戦いに決着を付けた。だから…………


「僕らの戦いにも、幕を下ろそうか」

『ふん、望むところだ』


 僕が目の前の魔人〈天翔空羅〉スカイに剣の切っ先を向けると、彼は不敵に笑う。

 同時に、僕と彼の、黒と白の翼が同時に広がる。


 つぎの瞬間、傍目から見たらきっと、僕たちは一瞬のうちにかき消えたことだろう。

 それくらいの速度で僕らは加速した。次いで、思考すら加速する。


『おおおおおああ!』

「はぁぁぁあああ!」


 余計な問答はしない。加速した肉体と思考の中で、僕らは剣と翼を打ち付けあう。

 加速した思考が、世界をスローモー感じさせる。


『【羽刃弾(ハネハダマ)】!』


 黒い羽根がマシンガンのように射ち出される。


「【翼刃白連(よくじんはくれん)】!」


 それらを、連なる白い刃で叩き落とし、スカイを切り付ける。


『【羽刃衝(ハネハヅキ)】!』


 しかし、こちらのその一撃を待っていたかのように、カウンターの一撃が僕の胸部を強打する。


「がふっ!」


 肋骨が砕け、口から血が溢れる。だが、ようやくここまで接近したのだ。この好機を逃すつもりは無い。

 右の刀を降り下ろす。

【翼刃白連】は分裂する白い刃だ。一撃目がスカイの甲殻にヒビを入れ、二撃目が砕く。そして最後の三撃目が彼の肉を引き裂いた。


『ぐぅぅ!』


 その一合をもって、互いに距離を取る。

 …………肋骨は逝ったが、大丈夫、肺のダメージは少ないようだ。

 しかし、それは向こうも同じだ。


「はぁ、はぁ…………ごぶ!」

『ぜぇ、ぜえ…………ぐう!』


 僕は口から血を吐き、彼は傷口から血を溢れさせる。

 息は上がり、互いに満身創痍。

 だけど、僕たちは笑みを浮かべる。


 そして、同時に叫び詠う。


『【我は天を翔た!】【空を網羅した!】【我は手に入れた!】【この空に至る(はや)さを!】【故に我は纏おう】【我は謳おう!】【闇夜に走る】【夢幻が如き】【悪夢の力を!】』


「【俺は人間だ!】【破壊衝動(バケモノ)を律した!】【だから人間(オレ)は誓おう】【俺は神騎だ!】【友を、大切な人を守ろう!】【この身に宿る】【過ぎたる騎士の力をもって!】」


『頂へ至れ、我が(はや)さよ【夢幻夜行の悪夢(ファントム・ナイト・ナイトメア)】!』

「愛しき友よ、ここに在れ!【光輪白夜の白騎士(ホワイト・ナイト・ミッドナイト)】!」


 黒と、白が、空を覆い尽くした。

 そして、音が破裂した。

 それは、一瞬のうちに、2つの物体が空気の膜、音速の壁を越えた音。

 産み出される2つの衝撃波(ソニックムーブ)は交じり合い、嵐となり、雲を裂き、地を抉り、結界を揺れさせる。

 余波に巻き込まれた魔人や魔獣が粉々に吹き飛んでいく。


「『おおおおおおおおおお!』」


 頭では既に追い付くことの出来ない領域の速さ。僕は考えない。ただただ剣を振るい、受けとめ、躱す。

 体の反応で、それのみで僕らは戦う。

 皮膚が裂かれる。甲殻を砕く。骨が砕ける。肉を抉る。


 血を撒き散らせながら、殺しあう。


『これで!』

「終わりだぁ!」


 距離を取った後の超加速。

 音速のその先に近づく。その衝撃に耐えきれなくなった体が悲鳴を上げる。

 鎧と甲殻が、ほぼ砕け散り、互いの顔すらも露になる。

 スカイは笑っている。多分、僕も。


 ―――なんだ、案外イケメンじゃないか、スカイ


 そんなことを思ったのもほんの刹那。

 直後、右の剣と左の翼の切っ先が重なり、せめぎあう。

 しかし、その均衡も直ぐに終わる。


 ――ピシッ


 そんな音と共に、僕の剣にヒビが入る。



 そこからは、より一層、世界がスローモーションだった。


 まず、右の剣を手放す。即座にスカイの左下、がら空きの懐へ潜り込む。

 突然、抵抗を失った彼は、刹那の時間、バランスを崩した。その刹那で、僕は充分だった。


「ああああああああ!!!」


 左の剣を両手で持ち、スカイの胸に深々と突き刺す。


『ぐぁぁぁああ!』


 それだけでは止まらない。加速し、上昇する。

 超音速の衝撃と負荷が、すべてスカイにかかる。

 雲よりも高い場所に到達する。


『く、ぉぉおお』


 そして――――


「やぁぁぁあ!」


 スカイの体を僕が突き破った。


『…………見事、見事だ、ショータ』

「はぁ、はぁ、はぁ」

『しかし、悔しいな。もう少し貴様と、戦い(あそび)たかったぞ』

「…………ふふ、同感さ」

『さらばだ、素晴らしき天空(そら)の覇者よ』

「うん、さようなら、(はや)大空(そら)の王者」


 そしてスカイの体は、塵のように消えて逝った。


 それを見届けた僕は、フッ、意識を失った。



 故に僕の体は、遥か上空より、地表へ向けて、落下していくのだった。



さぁて、佐奈と先輩をどーやって助けようか…………(汗)



いやホントマジで

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