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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第一章 追憶
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Recllection:5 怪我

お待たせ(?)しました!

ポチポチ書いて配信します

「これは驚きましたね、まさか魔人同士が争っているとは」


 現れた神騎の内、背の高い方が驚きを含みつつ歩いてくる。その顔は、多少は意匠は違えど、鎧とフルフェイスに覆われ見ることはできないが、おそらく笑っているのだろう。爽やかさのある男の声だ。


「手間が省けて良かったじゃないですか、先輩……じゃなかった、隊長」


 ――! この声は知っている。確か、隣の席の梶原だ。


「しかし、困りましたね」

「何がです?」

「彼、すごく強そうですし」


 梶原がいるという状況、そしてその言動から鑑みるに、隣の男もおそらくは同じ高校か。

 隊長と言うことはつまり、彼は神騎の上位にあり、数多の神騎を束ね指揮する存在。部隊長クラスの神騎。〈熾神騎(ししんき)〉か。

 厄介な奴が出張って来たな


「ま、致し方ありませんね。僕たちでやりましょう」

「了解です」

『オイオイ、当事者である魔人(オレ)の意見は聞かねぇのかよ。オレはとっととトンズラしたいんだが?』

「それは失礼。ですが、我々とて魔人を逃がすわけにはいきませんので」

『そら残念だ』


 熾神騎が双剣を、神騎が二丁銃を構える。


「行きますよっ!」


 前に重心を移した瞬間、彼の姿は掻き消え、一瞬にしてオレの目の前に現れる。


『速いなっ!』


 右足で踏み込み、右から左に首を狙って振り抜かれる左手の剣を、腰を落として躱す。

 彼が右足と左足を入れ替えながら、首を狙って繰り出される右の剣の刺突を左手でいなす。

 同時に右回転をしながら彼の左足、つまり軸足を払う。

 バランスを崩すも、とっさに片手を付いて飛び上がり、距離をとる。

 オレもまた、一度姿勢を立て直す為に距離を取る。


 ここまでで、約一秒。


「君もなかなかの速さですね!」

『光栄だな!』


 刃の銀閃が再び襲い来る。

 その刃は大した重さは無く、むしろ軽い。だがそれは自明の理。

 元来、双剣術という物は、力と重さで相手を『叩き切る』のではなく、その速度と鋭さにて相手を『撫で斬る』事に重きを置いているのだ。故に、その太刀筋の軽さは当然と言える。


「はぁああ!」


 繰り出される双剣の速度はまさに神速。

 左の剣が滑らかに切り払う。そのモーションを追うが如く、右の剣が突き出される。それを引き戻しつつ、再び左の剣が下から切り上げる。体を素早く回転させ、同じ軌道をなぞるようにして右の剣も跳ね上がる。


『くっ!』


 その全てを紙一重でいなし、躱し、或いは受け止め反撃に出る。


「初めてですよ! ここまで綺麗に避けられるのは!」

『それはどう……もっ!?』


 突如、オレの体に連続した衝撃が走る。


「硬いわね、コイツ!」


 見ると、梶原がその手に二丁銃を構え、こちらに照準を合わせていた。

 ホントに厄介だ。もう魔人も倒したし、ここはやはり逃げの一手に限る。


『ちぃ! 素晴らしいくらいに状況が良くない! マルカ、能力を使うぞ!』


 剣をいなしつつ、右拳に魔力とは違う、別の力を籠める。


「逃げる気ですか!?」

『当たり前だ、コンチクショウ! オレは今ここで死ぬ気もないし、お前ら神騎に討たれるつもりは、髪の毛一本、一ミクロだってありゃしねーよ!』


 能力を解放し、右拳を突き出す。


『【冥道開通】!』


 放った拳の先の空間に、直径5メートル弱の黒い〈穴〉が穿たれる。


「これは!?」

「隊長、下がって!」

『いい判断だ』


 穿たれたこの黒い〈穴〉は、冥界…全ての生命が最後に辿り着く、輪廻の終着点にして原始点へ、強制的に道を繋げる物。

 たとえ神騎であろうと、いかな魔人であろうと、この穴に吸い込まれては、無事ではいられない。


『じゃあな』


 オレは身を翻す。


「逃がさない!」


 梶原は一旦銃を消し、新たな銃を『召喚』する。

 召喚したそれは、一言でいえばスナイパーライフルだが、その砲身は長く、銃口は目測だが、五十ミリを超えている。


「ぶち抜く!」


 放たれた弾丸は、空気を切り裂き、冥界の穴の引力を振り切り、背を向けたオレの肩の関節、最も甲殻の薄い箇所を深々と抉る。


『がぁ!』


 弾丸は肩を貫き、千切れた肉片と、鮮やかな血飛沫を撒き散らした。

 しかしそれでもオレは止まらず走り続け、その場から離脱する。

 ――死ぬかと思った。



「逃げましたか……」

「すみません…」

「いいえ、梶原さんのせいじゃありませんよ。ただ、それよりも…」

「後片付け…ですね」

「派手に壊してくれましたからね、彼」

「はぁ…」



◆◆◆



 ………くそ、痛ぇ。何だこれ、洒落なんねぇ位に痛い。

 すでに変身を解いていて、隣でオレを支えているマルカが不安そうに聞いてくる。


「どうやら、魔人を弱体化させる効果がある弾丸らしい。大丈夫か? カルマ」

「おうともさ、この程度の傷、人魔の力ならすぐに塞がる……ハズだったんだがなぁ…。

 ていうか、お前に支えられる度に、なかなかにシュールな光景に見えて仕方ないんだが」

「ええい、文句を言うな! まぁ、それだけ軽口を叩けるのなら、大丈夫だろうな」


 右肩の痛み以外にも、体の疲労が半端ではない。

 なぜだ?


「今のお前の状態で冥界の力を使ったのだ、当前、反動で体にかなりの負担がかかっているハズだろう」


 確かに、体はすでにに鉛のように重い。肩から流れる血もそれに拍車をかけている。


「なぁに、今日は医師(せんせい)が来てくれる日だ。なんとかなるさ」

「そうだな……って、カルマ!? 大丈夫か!? おい、カルマ!」


 景色が傾く。


「あ、あれ…?」


 そしてオレは本日二度目となる意識の暗転を味わった。




ご愛読、ありがとうございます!


次は12/14(土)0時更新予定です

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