Conclusion:13 黎明の刻
遂にこの時が…………
いよいよ始まりますす!(震え声)
すべからく明けぬ夜が無いように、終わらぬ戦いもない。
空が瑠璃色に染まり、曙光が差し始めた明朝、駅前に七つの人影があった。
「6時きっかり。皆早いじゃねえか」
「いやぁ、あまり寝れなくてね」
佐伯先輩が苦笑しながらそう応える。
「ふふ、全員揃ったみたいだね、カルくん」
「ああ、そうだな」
オレは全員の顔を見渡して頷き、背を向け、言う。
「それじゃあ行こうか、皆。
―――頼りにしてるぜ?」
その言葉に、全員が声を揃え、応っ! と力強く応える。
大介さんに連れて来られたのは、あの桜の丘だった。
「ここは…………」
「あ、そっか、カルくんは知らなかったね。ここに、いるんだってさ」
「………そうか」
これは、ただの偶然か、はたまた親父の確信犯なのか…………。
と、林を完全に抜けきった時、オレはあることに気づいた。
「大介さん、これは、一体…………」
「ああ、彼らかい?」
その広場には、沢山の人影があった。
「彼らは〈サーガ〉のメンバーさ。全部で24班、総員は…………多分200名くらい」
「多いな」
「総力戦ですから」
そこに、一人の青年が駆けてくる。
「総帥! 全24班、総員揃いました!」
「了解しました」
その報告を聞き、顔を引き締めた大介さんが声を張り上げる。
「それではこれより、最終決戦へと入る! 泣いても笑ってもこれが最後だ! 皆、用意は良い?」
『「応っ!』」
その返事に満足したように頷いた彼は、こちらの方を向く。
「よろしい。それじゃあ、カルマ君、発破を頼むよ」
「な!?」
「当然じゃないか。君が、この戦いを終わらせる事のできる、唯一の主人公なんだから」
「…………わかったよ」
そういわれ、気恥ずかしいが、オレは前に出る。突然の事で緊張はしているが、何を言うべきかは無意識のうちに浮かんでくる。
だから、深呼吸をして、語りかける。
「最初は、ただ魔人と戦うだけだった」
静かに、自らに語るように。
「でも、その魔人が、オレの大切な者に手を出した。オレはソイツを守れず、この戦いの世界に巻き込んでしまった」
そう言って、ルルの方を見る。
彼女は瞑目して、静かに立っている。
「その時から、オレは大切なものを守るために、二度とと同じ思いをしないために、戦うと決めた」
思い出しながら。
「日本に来たのは、最も守りたい人がいたから」
ヒナタを見る。
彼女は微笑んでいた。それはいつもの、すぐに思い出す事のできる、オレの大好きな微笑み。
「そして、オレはここで、大切な仲間達に出会った。大切な友に出会えた。
だけど、オレはその仲間を、友を三度も失った」
キース、神谷、アスカさん。
「オレは、三人の仇を討ちたい! こんな悲しみを味わう人を、増やしたくない!
矛盾してるのは判ってる! でも、オレ一人じゃ無理だから、だから、力を貸して欲しいんだ」
ああ、判ってる。これは矛盾してて、身勝手な話だ。
でも、それでも…………っ!
「オレ達がこれからやるのは戦争だ。どちらにも必ず被害が出る。自分が死ぬかもしれない、目の前で大切な人を失うかもしれない!
でも、オレはこの世界が好きなんだ! どんなに不条理でも、理不尽でも、大切な人達がいる、この世界が!
オレ一人の両腕だけじゃ抱えきれないから、皆の手を借りたいんだ」
昂った感情を落ち着けるために、深呼吸を一度した後、
「どうかオレに、力を貸して下さい」
深々と頭を下げる。
そして、広場には、沈黙が訪れる。
オレは顔を上げ、全員の答えを待つ。
すると一人、眼鏡を掛けた男が前に進み出る。
「竹井の奴が発破だって言うもんだから、どんなものかと聞いてみれば、まさかこんな話を聞くなんてな」
それに追従する声も上がる。
「オレがオレがで、その主張ばっかり」
「それに、こちらの事はほとんど気にかけていない。交渉としては落第だな」
上がったのはオレを責めるような声ばかり。
つい、下唇を噛む。
それを見て、眼鏡の男がフッと笑う。
「だが、その心は気に入った!」
「え?」
「この世界は確かに不条理で理不尽だ。でも、俺たちだってこの世界が大好きなんだ。なあ、お前ら?」
男の問いかけに、皆が答える。
「当たり前だろ? でなきゃ、こんなところで人魔なんかやらずに、とっとと成仏してるっての」
「そーだそーだー、そうでなきけりゃ、神騎なんかやってられっか!」
「そんなわけだ、小僧」
眼鏡の男がオレに向き直る。
「小僧、死ぬかも知れねえぞ? それでも、良いんだな?」
「ああ、覚悟の上だ」
「へっ、良い目だ」
男はもう一度、皆を見る。
すると、そこにいる皆は、無言で頷く。
それを見た彼は、オレを見て声を張り上げる。
「〈サーガ〉第一班班長、真柴恭慈、以下一班班員は、桐久保狩魔の全面サポートに回る!
…………てめえの戦記、俺達に見せてみろ」
そう言って男、恭慈はニッと笑う。
彼に続くように、残りの23人の班長がオレに力を貸してくれると言ってくれた。
「…………ありがとう」
オレがもう一度頭を下げたのを見て、大介さんが前に出る。
彼は一度息を吐くと、大きく息を吸う。
「拳を握れ! 刃を掲げよ!」
まるで、これが本物の発破だと言うように、大きく力強い声で鼓舞する。
「我等は〈サーガ〉、戦記を紡ぐ者!
たとえ如何なる結末が待っていようと、我等は戦い続けよう! 戦友の為に、己が信念の為に!
―――さぁ、大切なモノの為に、世界を救おうじゃないか」
そして、空気が破裂する。
荒々しく猛々しく、頼もしい雄叫びが上がる。
「我等は勇者に非ず!」
「我等は戦士なり!」
「故に、世界は守れぬ!」
「故に、愛する者を守る!」
それを見届けた大介さんが指示を出す。
「結界を抉じ開けよ!」
そして、戦いの火蓋が切って落とされた。
あんまり上手く出来なかったような、全く出来なかったような…………
あと何話持つかなぁ…………




