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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第三章 決着
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Conclusion:8 乗り越える為に


…………前々から思ってましたけど、ルルが一番ヒロインしてませんかね?


作者の僕が言うのも何ですけどね

 大介さんのところで修行した日の夜、オレ達は三人で食卓を囲んでいた。

 オレと、マルカと、そしてルル。


「ふー、ごちそうさま」

「お粗末さまですわ」


 今日の晩飯はマルカとルルの合作。不味い訳がない。


「相変わらず、ルルとマルカは料理が上手いな。二つの意味で」

「あんまり上手いこと言えてないな、それは」


 オレとマルカのそのやり取りに、ルルは小さく笑う。

 けれど、その笑顔は、今までの屈託の無い笑顔とは違う。


「さて、それではわたくし、そろそろお暇いたしますわね」


 食後の片付けが終わり、他愛の無い会話をして、時計の短針が9を指し始める頃、ルルがそう言って立ち上がる。

 そんな彼女に、オレは声をかける。


「ルル」

「はい?」

「今日は泊まって行け」

「え?」


 いきなりのオレの提案に、ルルは少し驚いた顔をする。

 しかし、ルルは申し訳なさそうな笑顔を浮かべた。


「カルマ様、お誘いは嬉しいのですか…………」


 これまでなら、即答で承諾していたその提案を、彼女は断る。

 それでも、オレは諦めない。


「センさんの了承も得た。いいから、泊まって行け」

「カルマ様…………ふふ、今日は積極的ですわね」

「ああ、積極的さ。だって、お前のそんな泣きそうな顔を見て、オレが放っておけるかよ」


 彼女は笑顔を浮かべていた。でも、その目の奥には、堪えきれない悲しみと涙が見てとれた。


「………何でも、お見通しですのね」

「どれだけ一緒にいると思ってんだよ」

「そう、ですね…………」


 呟く彼女の頬を、一筋の雫が零れ落ち、そして、声を上げて泣いた。



「落ち着いたか?」


 ソファーに座る彼女の頭を撫でつつ、オレは隣に座る。

 すると、こてん、とルルはオレの肩に頭を乗せる。


「カルマ様、わたくしは、姉失格ですわね」


 ぽつりと、そう呟く。


「どうしてそう思うんだよ?」

「だって、大切な家族を、守ることが出来なかったのですから」

「…………」

「たった一人の、大切な………弟を、わたくしは…………」

「失格なんかじゃないさ」

「カルマ、様?」

「薄情に聞こえるかも知れねーけどよ、オレ達は今、命のやり取りをしているんだ。そしてここは現実で、漫画やゲームの世界じゃない。だから、味方が皆生き残る、なんて奇跡はそう簡単には起きないんだ」


 オレの言葉に、ルルは下唇を噛む。

 きっと、ルルにも分かっているのだろう。それでも、解っていても、認めたくないものは誰にだってある。


「それでも、わたくしは…………っ!」


 それでもいい募ろうとする彼女は、再びその双眸に、涙を溜めていた。

 しかし、そこから先は、言葉にならなかったのだろう。そのまま、オレにしがみつき、再び泣く。


「オレは、不器用で口下手だからさ、今、お前に掛けるべき言葉が浮かばない。でも、この胸くらいはいくらでも貸してやる。だから、今は泣け」


 そっと、彼女を抱き締める。

 ヒナタにやるような、愛を表す抱擁ではない。労るような、慰めるような、慈愛に溢れた抱擁。


「オレは、ここにいる。オレ達は、ここにいる。ルル、お前は独りじゃない。だから…………」


 安心して、今は泣け。その涙を流しきり、振り切った時、お前はきっと、キースとの思い出に微笑む事ができる。


 言いながら、頭を撫でる。




 それから、どれくらい経っただろうか、ルルも泣き止み、オレ達は沈黙の中にいた。

 不意に、彼女が顔を上げる。


「ありがとうございます、カルマ様」

「オレは何もしてねぇよ」

「それでも、ありがとうございます」


 彼女は、両の眼を赤くしたまま微笑む。


 ―――しかしこの時、オレは忘れていたんだ。





 ―――ルルが〈雰囲気粉砕(シリアス・ブレイカー)〉だと言うことを。


「…………ルル、何をしている?」

「何、とは?」

「そうだな、まずはオレのベッドにお前が入っている理由を聞こうか?」

「同衾ですわ」

「何でやねん!」

「先程の流れですと、当然の結果かと…………」

「うん、違う。全然違う!」

「ああもう、焦れったいですわね! 折角下着姿でベッドに入っていると言いますのに」

「マルカ、マルカー! ちょっとこの()どうにかしてー!」


 まったく…………。

 服を着せられマルカに連行されるルルの姿を、ため息混じりの苦笑で見送る。

 ま、完璧にとまでは行かなくても、ルルが普段の調子を取り戻す事ができたんだ。今はそれで良しとしよう。

 そんな事を考えながら、オレは部屋に入る。


「そういえば、アイツ、下着姿でこのベッドに…………」


 …………こう見えても、僕は思春期なんです。




 翌朝、オレの目元に濃い隈が出来ていたのは、当然の帰結といえよう。





カルマ君が口下手=僕が口下手な訳ですよ。


しかし、誰かを慰めるかのがこんなにも難しいとは…………

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