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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第三章 決着
71/100

Conclusion:7 想い

目覚めれば~

目の前にある~

彼女の素晴らしい美貌と愛らしい寝息の二つが織り成す芸術的なアンサンブル~(字余り)

 …………さて、現状を整理してみよう。

 まず、オレは更なる力を得るべく、大介さんに修行を付けて貰うために、彼の宿泊しているホテルへ訪れた。

 そんで、技の性質とかを聞いたあと、深層心理へとダイブした。

 ここまでは覚えている。当然意識を失った訳だから、ここで、大介さんの部屋のベッドで寝ているのもわかる。それで、マルカがオレを枕にして涎を垂れ流しているのも分かるような分からないような。


 だが、問題はそこでは無い。


「すー、すー」

「…………」


 問題は、何故ヒナタがオレに抱きついて寝ているか、だ。

 事情を聞きたいが、起き上がれない上に、近くに大介さんがいない。

 いやホント、何でいるの? いや、いるのが悪いって訳じゃないし、ましてや大好きな女性(ヒト)が添い寝とか、これ以上無いくらいの至福なのだけれども、けれども!


「ん…………、あ、おはよう、カルくん」


 女神、降臨。

 寝ぼけ眼で微笑む彼女は、夕暮れの斜光に照らされ、そう表現するしか無いような光景だった。


「お、おひゃほう!」


 うおお、餅突けオレ! ああいや、落ち着けオレ! この程度でテンパってどうする! いや、この程度じゃないけど!


「…………おはよう」


 ふう、落ち着いた。不意打ちのせいでイメージ崩壊を起こすところだったぜ。


「それは今更じゃないのか? カルマよ」

「そんなこと言うんじゃありません。それと心を読むんじゃねえ」


 ヒナタが起きたところで、何故ここに居るかを問うことにした。


「ん? 修行だよ?」

「うん、ちょっと話が飲み込めない」

「だから、深層心理へ潜る修行」


 そう言って、ヒナタはオレに抱きついて来る。


「ちょ、ヒナタ!?」

「ごめんね、カルくん。もう少しだけ、このままでいさせて…………」

「それはいいが…………どうした?」

「うん、ちょっと、怖くて…………」


 彼女は震えていた。

 それは修行の結果じゃない。修行のその先にあるものに、彼女は怯えているのだろう。

 オレはそっと、ヒナタの頭を撫でる。すると、ヒナタは訥々と、語り始める。


「カルくん。これから始まるのってさ、多分、これまで以上の、意味のある戦いなんだよね」


 そうだ。これまでのように、ただ神騎だとか魔人

だとか、そう言う理由だけでは戦えない。

 そう、これから起こるのは、戦争なんだ。


「私ね、松岡先生がいなくなって、キースくんも、神谷くんもいなくなって、本当に悲しかった。今でも、思い出すだけで悲しくて、怖くなるの」


 じんわりと、オレの胸元が湿っていく。


「次は先輩かもしれない、サナちゃんかもしれない、ルルさんかもしれないって、怖くなるの。

 でもね、本当に怖いのは、自分が死ぬ事じゃなくて、カルくんが死んじゃうかも知れないのが、一番怖い」


 嗚咽が、聞こえてくる。


「だって…………よ、ようやく、こうやって一緒に、いられるのに…………ひぐっ…………また、一人になるのは嫌だよ…………また、胸にぽっかり穴が空くのは、嫌だよ…………」


 オレは、その涙には答えられなかった。

 だって、この戦争がどういう結末を迎えようとも、きっとオレの命は長くない。

 だけど、オレは…………


「ヒナタ、オレは―――」


 その時、ドアが開かれた。

 しかし、その開かれ方は決して静かな物では無かった。


「聞いてませんわよ、ヒナタさん! 狡いではありませんか! 抜け駆けなど!」


 ルルが、飛び込んでくる。

 それはもう、こんな沁みっ垂れた空気などぶち壊してくれるわ、と言うくらいに。


「カルマ様! わたくしも修行を頑張りましたのよ! わたくしも労って下さいませ!」

「あー、はいはいお疲れさん」

「ああ! この適当にあしらわれるこの感覚! 何だかクセになってしまいそうですわ!」

「やめろ! お前がこれ以上変な属性を増やしてどうする!?」


 なんだってこいつはこうも元気なんだ。さっきまでのシリアスムードが完全に吹き飛んじまったじゃないか。

 ヒナタもヒナタで、何か復活してルルと舌戦を繰り広げ始めたし。

 ルルはこれから称号を〈黒蝶(プレート・ボルボレータ)〉から〈雰囲気ぶち壊し(シリアス・ブレイカー)〉に変更した方が良くないか?


「もー! オレのシリアス返せよ!」


 全く、こちとら凄く真面目な話をしようとしていたのによ。


 そう独りごちながら、オレはルルを見て、呆れたため息を吐く。

 本当に、コイツは無理をする。


「ふふふ、ヒナタさんが恋人でも、わたくしは妻でしてよ!」

「あら、その話はお流れにならなかった?」


 ヒナタと舌戦を繰り広げる彼女は笑顔だ。

 でも、そんなんじゃ、ガキの頃から付き合いのあるオレには隠せないぜ?

 ホント、いつもはあんなにストレートに来るくせに、どうしてこういう時は自分の心を隠すかね。





 本当に、しょうがない奴だ。


 

どうやらこの第三章は物凄く短くなる予定のようです。


ラストへ向けてスパートしていきますよ!


というわけで、よろしくお願いします

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