Conclusion:4 望むもの
カルくん、強化合宿なう
『はぁ、はぁ、はぁ…………』
『そおら!』
『くっ!』
飛ばされて来る魔力の弾丸を、横っ飛びで避ける。
そこに、アスカさんの転移で現れた『オレ』が、キースの剣を降り下ろす。
『こなくそ!』
転移で背後に回り、回し蹴りで足を刈り取る。が、倒れるその勢いすらも利用して、『オレ』は刃を振るう。
バック転で回避するが、飛ばされた斬撃が胸を掠める。
『おいおい、もう息切れかよ、だっせー』
『うっせーな、ウォーミングアップは息切れくらいが丁度良いんだよ』
強い。
それもそうだろう。
駆け出す。斬りつける。斬られる。殴る。蹴られる。
コイツは、オレが強い力を、今以上の力を望んだからこそ生まれたんだ。
だからコイツは強い。
『【冥道之翼】』
技量も、能力も、全てにおいて、コイツは今のオレより強いだろう。
だから、オレが望んでいて、それでも持っていない力を使う。
『【冥道之翼】!』
だったら真似れば良い。
追い付くまで、コイツが見せてくれる力の全てを真似て、覚えて、そして越えるんだ。
真似る。まねぶ。学ぶ。その語源の通り、真似て、学ぶんだ。
剣が、拳が、脚が重なりあう。
『おおおぁ!』
『ぐっ!』
入った!
オレの拳が、『オレ』の顔面へ突き刺さる。
それはつまり、『オレ』の予測を、オレが上回ったと言うこと。
コイツは確かにオレ自身だ。性格も、戦闘スタイルも、オレそのもの。
だけど、コイツには自我がある。
『【冥道之弾丸】!』
『【冥道之弾丸】!』
『同じ技ばかり…………なるほど、学習か』
『その通りだよ!』
自我があると言うことは、コイツ自身の考え方があると言うこと!
性格も思考ロジックも一緒だったとしても、お互いが戦っている以上、そこに状況の差違は生まれる。それはつまり、考えて導き出す答えがオレとコイツとでは違う所があるということに他ならない。
だから考えろ。足を、拳を動かせ。
コイツのも同じ事を考えるのだろう。だが、同じ性格だとするのなら、オレにしかわからない油断があるはずだ。
コイツはきっと、マルカと同じ、オレの分身体。だから、まだやりようはある。
思考を止めるな。動きを止めるな。ここは心象世界。どんなに体を酷使しようとも、肉体への影響は無い。多分。
加速させろ、動きと思考を。
『おお!』
懐へ潜り込む。『オレ』は反応が遅れている。
『【狩魔】!』
アッパーカットが、『オレ』の顎を見事に捉える。
ここだ。
今が、チャンスだ!
ここで、オレは学んだ魂術ではなく、編み出した魔術を使う。魂術は、切り札だ。
これまで見てきた、皆から学んだ事を。
『【双翼の刃】【銃の唄】!【起床指打撃】!』
仲間の、大切な人達の技の模倣だ。
魔力で形作られた剣が左手に現れ、魔力の弾丸をマシンガンのように射ち出したり、強力なデコピンを食らわせたり。
そして、
『【黒冥蝶】!』
黒い、影より現れた蝶が舞い、
『【魔人を喰らえ】!』
魔力を喰らう刃を産み出す。
それらが、一斉に『オレ』を襲う。
『くっ、痛いなぁ…………【冥道之太刀】!』
その一撃で、『オレ』は距離を取り、中に浮かび上がる。
『ふ、ふふふ! よくやった! これで第一の試練は終わりだ!』
『続きがあるような言い方だな』
『あるよ』
『あるのかよ』
『今からお前が挑むものこそ、お前が望み、オレと言う存在に具現化された物!』
『オレ』の体を、今までと比べ物にならない魔力が覆い、姿が変わり始める。
『さあオレよ! 桐久保カルマよ!』
『なんだよ、その姿…………』
『このオレを、お前自身を、越えて見せろ!』
この力は…………。
そうかよ、そういうことかよ、親父。
だからアンタはオレが、屍魔人が欲しいんだろう?
『良いだろう! かかって来やがれ! 返り討ちにしてやる』
『上等だ。行くぜぇ!』
拳が重なる。
カルくん、今日は能力大収穫祭でしたね




