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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第三章 決着
67/100

Conclusion:3 願い


3章に入って、文字数が減ったと思います

「ん…………」


 目を覚ますとそこは、真っ暗闇だった。


「ここは…………?」

「お前の心理、魂の在処さ」

「マルカ!」

「お前自信がこちらに来るのは初めてだな」

「お前は違うのかよ」

「戦闘時は、いつもここにいるからな」


 マルカは辺りを見回して、ため息を付く。


「しかし、ここまで殺風景なのは初めて見たな」


 そして、その言葉に答える声があった。


『それはそうさ。ここは深層心理。深海に光が届かないように、ここにも希望という光は届かない』

「誰だ!」

『誰だ、とはまた奇っ怪な事を訊く。オレはお前だと言うのに』


 闇から滲むように出てきたのは、一人の魔人。その姿は、オレの屍魔人(しかばね)と瓜二つ。


『ここはお前の、いや、オレ達の絶望の溜まり場、悲嘆の坩堝、そして………』


 ただ違うとすれば、髪は白ではなく白銀、眼は黒紅ではなく、真紅。

 彼は両手を拡げ、高らかに言った。


『オレ達の願いの苗床だ』



◆◆◆


 ベッドの上で眠っているカルマを見ながら、大介は小さく呟く。


「桐久保くん、君の深層心理では、きっとここと時間の流れが違うのだろうね」


 そう言って席を立ち、身支度を整える。


「必ず勝って、戻ってきておくれ」


 ドアに手をかけ、出ていく直前に、カルマの方へ顔を向ける。


「決して、自分の魔神(・・)なんかに負けてはいけないよ」


 そしてドアはパタンと閉められた。


◆◆◆


「お前は、なんだ」

『オレはお前だ』

「それは分かっている」

「だから、誰だ、ではなく何だ(・・)?」

『オレはお前の願いだ』

「願い?」

『お前が力を欲し、己の無力を嘆き、弱さに絶望し、それでも尚、希望を持ったが故に生まれた、いわばお前の力の塊だ』


 その答えに、ならば、とオレはまた問いを重ねる。


「どうすれば、オレは力を得られる?」

『簡単だ。オレを倒せばいい。オレはお前自身が無意識に作り出した、力の箱だからな』

「だったら…………」


 言おうとした言葉の先は、ただし、と彼に遮られる。


『言ったよな。ここは絶望の溜まり場、悲嘆の坩堝だって。つまり、オレは、パンドラの箱だぜ?』


 不敵に笑う。


『オレには、お前の絶望、怒り、悲しみ、そういった感情がギッシリ詰まっている。オレと戦いながら、それに耐えられるかな?』


 翼も無いのに浮かび上がる彼を見上げる。


『今回はお前一人だ。誰もお前を支えてくれないぞ? もちろん、マルカもだ』

「え?」


 気がつけば、マルカはどこにも居なかった。


「てめえ! 何しやがった!」

『嫌だなぁ、マルカはオレにとっても妹だからね。彼女はただ、ここへの道案内役だったからね。今は退場してもらった』

「変身、できなくなるぞ?」

『ここはお前の中だということを忘れたか? マルカがいなくても、変身はできる』

「そうかよ。魔人変躯(イーヴィル・トランス)!」


 確かに、オレ一人でも魔人に成ることができた。それを見て、もう一人のオレが笑う。


『さあ、始めようか! お前の、いや、オレ達の願いを掴む為に!』


『吾が名は〈同胞喰らい〉カルマ! 魔を狩り、(おの)(つみ)を纏う者なり!』


 オレの名乗りに、〈オレ〉も応える。だが、その名乗りはオレの物と全然違った。


『吾が名は〈同胞喰らい〉カルマ! 名は(つみ)を現し、其の罪を抱きて()へと成る者なり!』


『神だと!?』

『そおら、ボケッとする暇は無いぞ!』


 圧倒的な魔力を撒き散らし、〈オレ〉は肉薄してくる。拳が振るわれる。それを避けると、右から回し蹴りが飛んでくる。


『くっ!』

『おおー、流石オレ。避けるねー』

『けっ、舐めんな』

『いやいや、自分の実力くらい知ってるよ。ただ、今は〈オレ〉の方が強いんだけどね』

『チッ、やっぱりそうかよ…………』


 〈オレ〉の猛攻を防ぎながら、オレは後退する。


『逃げんなよ! 力を手に入れたきゃ、〈オレ〉を、お前自身を超えて見せろ!』

『ああ!? 言われなくても、そうするつもりだボケナスが!』


 オレは駆け出す。

 奴に届かせるにはどうしたらいい?

 考えろ!

 攻撃を転位で避け、背後を取るが、それすらも簡単に対処される。


『ああそうだ、考えろ!』


 〈オレ〉が叫ぶ。

『その試行錯誤が、オレ達の力になる! 時間はタップリあるんだ! うんと考えて、〈オレ〉を超えろ!』



 そして、オレ対〈オレ〉の永くて一瞬の戦いが始まった。




よーし、色々と、頑張るぞー

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