Conclusion:2 修行
初めての能力説明
頑張りました!
竹井さんがこの町にやって来て二日が経った。オレとマルカはその日、竹井さんが宿泊している宿を訪ねていた。
「竹井さん」
「大介でいいよ、桐久保くん」
「じゃあ、オレもカルマで」
「それで、なにか用かな?」
大介さんがカップに注いだコーヒーを差し出しながら、尋ねる。
「オレに、修行を付けてくれないか?」
「修行?」
「今のままじゃ、親父…………〈代行者〉に勝つことができないから、もっと力をつけたいから、あんたに頼みたい」
ふむ、と大介さんが考え込む。
「修行、という考えは悪くないけど、明確や理由が無くては意味がないよ?」
「だから、〈代行者〉に勝てるだけの力を…………」
「それじゃアバウト過ぎるよ。もっと具体的に」
そう言われて考え込む。
彼の元で修行して、何を得る? 格闘術? いや、我流でここまで来たのだ。習っても今更だろう。
となれば、冥道に変わる術か。
「オレに、術を、魔術を教えてくれ」
「術、か」
大介さんがなんとも言えないような顔をする。
「ダメか?」
「いや、教えるのは構わないんだけど、どう教えたものかと思ってね」
「どう言うことだ?」
なぜ彼が術の修行で悩むのか理解出来なかったオレは、大介さんに問う。
「君は、魔術あるいは魂術を使うとき、術式と言うものを組んだことはあるかい?」
逆に問われて、考えて見る。
「そういえば、無いな」
「この世界の術は、マンガやアニメみたいに複雑な術式や魔方陣を余り必要としない。大型の術に少し使うくらいだ」
「…………つまり、どういうこった」
まだ上手く飲み込めていないオレに、大介さんはいいかい? と、前置きをして話し始める。
「魔術や聖術、魂術には屍魔人の冥道という例外はあるけれど、基本的には決まりなんか無いんだ。それらは、術者の望むままに変化する」
ほら、と彼は掌に黒い火の玉を作り出して見せる。
「今のはね、本来あり得ない黒い炎というものを、僕のイメージ通りに魔力を練って作ったんだ」
そう言って笑い、オレへと視線を向ける。
「だからほら、君のハンティング・イーヴィル。あれは君の『魔人を滅ぼす』という願いに呼応して発現した術なんだ」
その説明に、オレはなるほど、と頷く。
「つまり、イメージが大切と言うことなんだな?」
「それはそうなんだけどね。やっぱり何事にも練習は必要だよ」
「まあ、確かに慣れた物の方が使いやすいし」
「それだけじゃなくて、最適化の意味もある。やっぱり使えば使うほど、燃費は良くなるよ」
ふむ、と考え込むオレに、彼は声をかける。
「だから、君が新しい力を求めると言うのなら、潜ると良いよ。君の深層心理に」
「深層心理?」
「さっきも行ったでしょ? 術は、術者の望み通りになるんだって。君が今、どんな能力を欲しているのか、自分の目で見てくるといい」
「それでなにか変わるのか?」
「論ずるより実践だ。何せ、屍魔人は不明な所が多い。つまり裏を返せば、それは可能性の塊なんだ。大丈夫、潜るのは手伝ってあげる」
「そうか…………わかった、頼む」
オレがそう言って頭を下げると、大介さんが困ったように笑いながらこう告げた。
「それはいいけど、彼女、起こしてあげなよ。じゃないと、潜っても意味が無いからね」
「あん?」
振り向くと、マルカがベッドの上で鼻提灯を膨らませていた。
「…………」
指先に魔力を込める。魔人モードではないので微々たる物だが、今はそれで十分。これは魔術だ。名前は…………そうだな、
「【起床指打撃】!」
ズバァン!
そんな音を響かせたデコピンにより、マルカは飛び起きる。
「あいたぁー! な、なんだ今のは!」
「デコピンだ。そんなことよりマルカ」
「そんなことで済まされる威力じゃなかったぞ!?」
「いいから、ほら、成るぞ」
「え? なぜ?」
キョトンとした彼女に、オレは無表情でデコピンの形にした手を向ける。
「お、おお落ち着けカルマ! その魔力量はちょっと洒落にならないから! わ、わかった、成る! 話聞いてなくてごめんなさい!」
「分かれば宜しい」
「「魔人変躯」」
そして魔人となったオレは、椅子の上に座る。
すると、大介さんがオレの姿を見みて頷く。
「やっぱり、いつ見ても屍魔人の白髪紅眼は綺麗だね」
「そうかね?」
「隣の芝生は青く見える、ってことさ。僕にはその髪も眼も無いからね」
そう言って、彼は座るオレの頭に手を伸ばす。
「それじゃ、行っておいで。僕が送るから、君は目を瞑ってて」
言われた通り、オレは目を瞑る。
「それじゃ、行ってらっしゃい。【心理の門】」
そして、オレとマルカの意識は、深く沈んで行くのだった。
『リンク・スタート!』
『言うと思ったよマルカ!』
『やっぱこれかなーって』
「いや、君たち真面目に頼むよ?」
そして今度こそ、沈んで行くのだった。
『バースト・r 『言わせねえよ!』
多分、次回は初の本格的修行になる…………かなぁ?




