Resolution:26 総力戦
我ながら、よくここまで続いたなー、って思ってます。これからも頑張りたいと思います。
昇った日は傾き、そして沈む。
夜が訪れた。
決戦が近い。
ここで神谷を守れるかが、これからの戦いに大きく影響してくる。
「カルくん、大丈夫、だよね?」
『もちろんだ』
確証はない。だが、そう思える何かがある。それは、オレが独りで戦っていないと言う事実。
それだけで、体に力が溢れる。
「桐久保、全員配置に着いたよ」
『了解。梶原も持ち場に戻ってくれ』
オレ達は今、魔人が現れるであろう通路に散り、神谷は病室で人魔の医者や看護師に守られている。
神谷は、まだ目を覚ましていない。
『神谷…………』
『そうやって物憂げに男の名を呟くと、ホモみたいだぞ』
『うっせ。確かにアイツはオレに攻撃とか攻撃とか攻撃とかしてくるけど………………あ、なんかぶん殴りたくなってきた』
『まあ落ち着け』
『それでも、お前がいて、ヒナタがいて、ルルやキース、皆がいる日常が、時間の無いオレには、何よりも大切なんだ』
『そうだな。そして、その皆の中には』
『ちゃんと神谷の席もあるんだ』
『ならば、負ける訳にはいかんな』
ああ、とオレは頷く。
やるべきことは多い。戦いながら神谷を気にかけ、終われば仲間の援護に回る。
『なぁ、マルカよ』
『なんだ?』
『今日、やるべきことはイヤと言うほど多いがよ』
『そうだな』
『成したいことは、一つだ』
そして、軽く笑う。
胸に、核となっているマルカに手を当て、二人で唱える
『『吾らは、願いを諦めない、想いを間違えない、絶対に』』
『私の願いは、魔人を全て滅ぼすこと』
『オレの想いは、仲間を大切に想うこの気持ち』
『『故に、吾らは拳を握る』』
『そういうわけで、ここは通せねぇな、〈覇拳〉』
オレは闇へと話しかける。応える声は闇からではなく、闇から現れた〈覇拳〉が応える。
『気にすんな。通るつもりはねえからよ』
『オレとの戦いのみを望むのか?』
『当然だ』
『吾が名は〈覇拳〉フィスト。拳を意味し、全てを打ち砕く者なり!』
『吾が名は〈同胞喰らい〉カルマ。魔を狩り、己が業を纏う者なり!』
『征くぞ、カルマぁぁあ!』
『望むところだ、フィストぉお!』
◆◆◆
「カルくんが守ろうとするものは、私に取っても大切な後輩。だから、私はこの剣を振るう!」
『よかろう。あの時の決着を、着けようか!』
『吾が名は〈剣影〉ブレイド。影を形成す刃にて、我が敵を刻む者なり!』
「〈太刀の神騎〉朝霧日向! 推して参る!」
『はぁぁあ!』
「やぁぁあ!」
◆◆◆
『あの子はカルマ様に笑顔を与えてくれる、大切な存在。カルマ様の笑顔を害する者は、全て排除いたしますわ!』
『言うじゃねーか。そこまで言うのなら、やってみろ!』
『吾が名は〈消滅〉ルイン。全てを虚無へと誘う、魔弾の担い手なり!』
『吾が名は〈黒蝶〉セルルト。共に在りたいと願い、愛した人を守ると誓いし者なり!』
『消滅しろ!』
『死になさい!』
◆◆◆
『神谷先輩は確かに、カルマ義兄さまとよく喧嘩するけど、その度に義兄さまは楽しそうだった! だから僕はその日々を守るんだ!』
『そんなことはどうでもいい! 僕はこの間の仮を返すだけだからね!』
『吾が名は〈毒刺〉スコーピオン。毒を喰らいて毒を制する者なり!』
『吾が名は〈剣士〉キースリア。大切なものを二度と失わぬと、この剣、この刃に誓いし者なり!』
『毒に溺れな!』
『僕が、守るんだ!』
◆◆◆
「魔神の復活だとか、桐久保の日常だとか関係ない! アタシはただ、アタシの居場所を守るだけよ!」
『あははは、さあ、お祭りだよ! 楽しもうよ!』
『吾が名は〈奏でし獣〉テイム。獣を従え、産み出す者なり!』
「〈銃の神騎〉梶原佐奈! ぶち抜くわよ!」
『そぉら、お前達、出番だよ!』
「一匹残らず、ぶち抜く!」
◆◆◆
「魔神復活を阻止する、という大義名分はあれど、僕はただ、剣道部の仲間を失いたくないだけです」
『ふん、そんなことなら見せてくれるのだろう? 貴様の本気とやらを』
『吾が名は〈天翔空羅〉スカイ。空を支配し、君臨する者なり!』
「〈双刃の熾神騎〉佐伯翔太。いざ、参ります!」
「おおお!」
『ふははは!』
◆◆◆
病院からすこし離れた木の上、満月の光に照らされて一人の男と女が立っていた。
彼―――〈代行者〉は、楽しそうに笑い、女に話しかける。
「フフフ、始まったね。僕らはここから高見の見物とでも行こうか?」
「イエス、マイロード」
応える声は、彼の分身体の声。
「さあて、カルマ君? 君はここを守れるかな? フフフフフ!」
そして月明かりの中、戦いの火蓋が、切って落とされたのだった。
さーって、一人の戦いの決着に、何話かかるかなぁ?
あ、この総力戦で二章は終幕となります。




