Resolution:25 神谷真琴
あれぇ?
二章ってもう少し長引かせるはずだったのになぁ? クライマックス近いぞ?
二章は50話まで行くと思ったのに…………
「神谷!?」
「神谷くん!?」
「どうしたのだ!?」
「神谷先輩!?」
「ちょっと!」
「大丈夫かい!?」
神谷が倒れた。胸を苦しそうに抑え、息を乱しながら。
「おい! おい神谷!」
脂汗をかき、苦しそうに抑えている胸からは、赤い光が漏れている。
「カルマ、この光は!」
「そんな…………神谷くん!」
「これは…………」
「ああ、間違いない。魔人の光だ」
魔人の核の輝き、魔力の輝き。
それが神谷から流れていると言うことは、つまり、
「神谷が、魔人…………?」
「で、でもそうだとしても、人魔だよね!?」
「多分な」
「でも、肉体を持ってるて事は」
「いや、私たち屍魔人は、本体は核を持っていないし、分身体の私もこんな事になったことが無い」
オレは神谷の上着をたくしあげる。ここに女子もいるが、そんなことは言ってられない。
そしてオレ達がそこで見たものは、
「これは、核…………なの? カルくん?」
左胸に埋め込まれた、拳大の赤い宝石のような塊。
「いえ、ここまで大きいのは見たことがありませんわ」
「確かに、大きくてもピンポン玉サイズですもんね」
「あああ、これじゃあ……まるで…………」
その先を告げたのは、オレじゃなかった。
『まるで、心臓その物、かい? 〈同胞喰らい〉君』
そこ声の主は、最近聞きなれてしまったその声。全ての黒幕の声。
「〈代行者〉!」
『やあ』
彼は片手を挙げて応じる。その挙げた手をそのままこちらに差しだし、
『その少年を、こちらに渡して貰おうか?』
「なっ!? ふざけるな!」
『ふざけてはいないさ。僕らには彼が必要なんだよ』
「魔神の復活、か」
「アスラ?」
オレの呟きに、マルカを除く全員が疑問符を浮かべる。
「ああ、コイツらは、魔人を作り出した神…………魔神を復活させたいんだとよ」
『へぇ、よく知っているね?』
「だが、一つ聞いていいか?」
『なんだい?』
「なぜ、神谷は急にこの状態になった?」
『それは君のせいだよ』
「なんだと?」
『彼は君に会うまで、魔人の魔力に触れたことはなく、逆に神騎の聖力で抑えられていた』
「そんな……」
『そして彼は時折、常人離れした耐久力や運動を見せたことはないかい?』
「あ…………」
『つまりはそう言うことさ。そして極めつけは、この間の彼の言霊無効化だ』
すると、今度は佐伯先輩が質問を投げ掛ける。
「では、なぜ今ごろになって? こうなる前なら、いくらでもチャンスがあったでしょう? これで彼は僕たちに保護される事になりますが?」
『その状態にならなければ、所詮『器』に過ぎない彼に、価値は無い』
「器?」
『そうさ、器。神の器が『神器』だとするのなら彼は魔神の器、さしずめ『魔器』あるいは『魔神器』といったところかな? ふふっ、我ながら安直なネーミングだ』
「魔神の器?」
『そうさ、彼は魔人でも人魔でも屍魔人でも、ましてや人間ですら無いのだよ』
「そんな……」
キースが息を飲む。いや、キースだけじゃない、ここにいる全員が同じ反応をする。
『彼は魔神が自らを甦らせる為に作りだし、偽りの記憶を与え世に放った人形』
だから、
〈代行者〉は言葉を繋ぐ。
『〈同胞喰らい〉君、君が彼を守る理由はどこにもない』
「それでも、こいつは!」
そして彼はこちらに数歩進み、言った。
『ねぇ、〈同胞喰らい〉君。
君が見ているもの、信じているものは、本当に真実かい?』
「当然だ!」
答えて、気付く。
なぜ、こいつがこの言葉を言う?
この言葉はアイツの…………
いや、ただの偶然だ。そんな筈がない。
だからオレは構わず答える。
「確かにオレはこいつと良く喧嘩をする! でもな、それはこいつがくれる、オレの日常だ! オレの大切なモノ達の、一つなんだよ!」
『そうかい、あくまでも、渡さないつもりかい?』
その言葉に、オレは答えなかった。なぜなら、
「愚問だな、全く」
「神谷くんは、大切な後輩だもの。カルくんに取っても、私に取っても」
「夫が守りたいものを手伝うのは、妻の役目」
「カルマ義兄さまの大切なモノ、騎士の誇りにかけて」
「アタシ達剣道部の結束力、舐めないで貰いたいわ」
「そう言うことです、〈代行者〉?」
皆が、オレと神谷の前に立ちはだかる。
すると、〈代行者〉がクスリ、と笑う。
『そうですか、なら致し方ありません。明日、我々の総力を持って、彼を貰いに行きます』
踵を返し、暗闇へ消えていく。そして、声だけが届いてくる。
『覚悟、していて下さいね?』
◆◆◆
「すまない、皆。大変な事に巻き込んじまって」
「何を言っているんですか、桐久保君」
「そうだよカルくん」
「それよりもカルマ様? 神谷をいかが致しましょう?」
「アスカさんの病院に行こう。アスカさんはもういないけど、あそこなら…………」
そして、夜は更けていき、
朝が訪れた。
次回、総力戦でございます。
神谷真琴
神 真
真神
魔神
…………無理がありました?




