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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第二章 決意
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Resolution:21 『武』

あの子がどんどん人間離れしていく……

あ、でも、完全に人間ですよ?


多分…………あ、いや絶対ですよ?

 今朝、親父が変なことをを言ったせいで、オレはその日、授業に集中できず、始終ボケッとしていた。


「おいカルマ、なにを伸びきった○び太みたいな顔をしているのだ」

「ん? ああすまん。それで、何の話だ?」

「もう、カルくんったら。今度の休日の話だよ」

「休日?」

「ええ、次の休みの日、どうやらお祭りがあるらしいですわ」

義兄(にい)さま! お祭り、お祭り行きましょう! 日本のお祭りですよ! 亀を助けた太郎と鬼が相撲をして、そのあと犬と雉と猿を連れて法師になって鬼の胃の中で暴れるんですよね?」

「まてまてまて、いろいろ合体してんぞ!」

「まあそんなことより祭りだカルマ。私も楽しみだぞ!」

「まあな。ヒナタや梶原達はともかく、オレは10年振りだし、マルカやルル、キースは初めてだからな」

「確かに…………10年前は、二人で行って迷って泣いたよね」

「あー、そんなこともあったな」

「で、ではカルマ様? 今回はわたくしと迷ってくださいまし? そして人知れぬ暗がりで…………フフフフ」

「行かねぇよ!? ホラそこ! ヒナタが恐くなるから煽らない! そしてルルは淑女らしくしろ!」

「夫の前で乱れるのが妻ですわ」

「極論だな! そしてオレはお前の夫じゃねぇ!」


 はー、いつも通り過ぎて、親父の言葉を考える暇も無いな。

 でも、これだけは言える。

 コイツらとのこの日常は、真実(ホンモノ)だってな。


「しかし祭りかぁ…………ねえねえヒナタ、やっぱり浴衣?」


 梶原がヒナタに聞いてくる。


「「もちろんだ!」」

「なぜそこで桐久保兄妹が答えるのでしょう?」


 佐伯先輩が苦笑しているが、今は無視だ無視。


「浴衣なー、これはもう日本の宝、否、世界の宝だね」

「そうだなカルマ。私も着てみたいものだ」

「男物の浴衣とかあるかな?」

「あるのではないか?」

「ヒナタヒナタ、この二人凄いテンション上がってんだけど…………どうしようか?」

「んー、放置でいいんじゃない?」

「割と冷たいわね…………」

「わたくしも着たいですわ」

「僕も!」

「そうだね、皆で着よっか。着付けは任せて」


 オレ達は部活が始まるまでの間、祭りに関する話題で盛り上がっていた。楽しみだな…………。





 そして部活は苛烈を極めた。何故か? それは言うまでも無いだろう。


「チェストォォォオ!」

「洒落くせぇ!」


 神谷が竹刀を降り下ろし、オレが竹刀で弾き、


「死に晒せぇ!」


 喉元一閃、躊躇い無く竹刀を突き込む。

 だが、次の瞬間オレは絶句した。


「なんのこれしき!」

「耐えた!? 防具ナシ(・・・・)で突き技を食らったのに!?」


 オレ達はさっきから試合をしていたのではない。防具無しで奇襲を受け、それに対処する殺死合いをしていたのだ。


「ふははは、驚いたか!」

「お、おう」

「毎日毎日、同じところに攻撃を受けているからな! 耐性が付いたわ!」

「なんか、悲しいな………」

「さあ行くぞぶらッ」

「か、神谷ー!」


 神谷が吹っ飛んだ! 正確には脇腹に突き込まれたキースの見事な突きによって、だ。


「危ないじゃないですか!」

「それはこっちのセリフだキースリア!」


 あ、またあの二人が戦い始めた。最近よく見るな、あれ。


「調子はどうですか、桐久保君?」

「佐伯先輩」

「神谷君にいい練習相手が見つかったようで、何よりです」

「別にそれはいいんだがよ、いい加減オレに力の使い方を教えてくれよ」

「もう教えているでは無いですか」

「へ? イヤイヤイヤ、教えて貰ったのは竹刀の振り方だけでしょ」

「それでいいんです」


 頷く彼に、オレは首を傾げる。


「桐久保君、力って何だと思います?」

「それは…………」


 すぐには言葉が出てこなかった。それを見た佐伯先輩が話を進める。


「力とは、手段です。何かを成すための手段であり、その目的によって、善にも悪にもなります。だから、使い方を誤っては行けません」

「それと剣道と、どう関係するんだよ?」

「では桐久保君、武器ってなんですか?」


 オレは手に持つ竹刀を見つめる。


「武器とは力です。相手を傷つけるし、傷つけられる。では、武道とは?」


 ここからは質問じゃない、答えだ。

 オレの問いかけに対する、答え。


「武道………『武』とは、(ほこ)……つまり力を止めると書いて、『武』です。武道は、その力を極め制御するための道、武器はその道具」


 いいですか、と佐伯先輩は視線で問いかけてくる。


「武器だけでなく、『武』を修めるということは、力を操り、制御すると言うことです。君はもう、制御できているはずですよ? 何せ、君の相手をした神谷君が無事ですから」

「いやぁ、それは違うと思うなぁ」

「…………な、何はともあれ、君の中に答えのようなものがあるのでは無いですか?」


 確かに、何かを感じる。魔力の塊のような、魂の塊のような、何かが。


「力は己その物です。その力に意味を、形を与えるのも君自身です…………まあ、長ったらしく言いましたけど、要は名付けとイメージです」


 彼は自分の手を見て、何かを思い出すように話す。


「イメージは力に形を与え、名は力に意味を与えます」

「イメージと名前…………」

「君が何を求めてその力を振るうのか、何を思ってその力を翳すのか、それを考えてください」


 そうか…………

 よし、


「決まった!」

「早いね!!」

「いやー、技が完成したら付けようとした名前があったし、欲しかった力もあるしね」

「渡りに舟でしたか?」

「もうナイスタイミング」

「それはよかった」


 そして先輩は外に目を向ける。


「もう一つ、ナイスタイミングですね。早速試せますよ」

「は?」


 オレが頭上に疑問符を浮かべた瞬間、道場内の人間(・・)がいきなり倒れた。


「言霊…………」

「のようですね」

「しかし、ホント休み無しだな。全く、何を考えてんだよ、アイツ」

「カルくん、アイツって?」

「アイツだよ、アイツ。確か名前は…………フリm…………げぶらっ! 何しやがるマルカ!」

「あ、いや、何故か無性にカルマの脇腹に飛び膝蹴りを極めたくなってな」

「なにその発作。お兄ちゃん怖い」

「ほらほら、バカやってないで準備して」


 梶原に促され、オレ達が外に出ようとしたとき、信じられないことが起きた。


「あ、あの…………先輩方、これは、一体…………」




 神谷が、起きていたのだ。




矢継ぎ早な戦闘ですいません。カルマ君も言っていたように、何を考えているんでしょうか、僕は?

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