Recllection:2 予測と目的
とりあえず、出来てる分だけ投稿していきます。
「驚いたな、カルマ」
「そうだな。イケメンなオレはまだしも、幼児体型のお前でさえ、あんなにチヤホヤされてんだからな」
転入手続きを終え、クラスに自己紹介をした日の夜、オレは親に与えられた新居のリビングでくつろいでいた。
「違う。自分でそれを言うか…まあ否定は出来んが……って、私は別に幼児体型ではない! ちょっと体が小さいだけだ!」
妹のマルカは、いつも猫を被る。それは贔屓目に見みなくても完璧だが、オレと二人になると、まぁ、当然ながら猫は脱ぎ捨てるわけだ。
「私が言っているのは、彼女の事だ」
「あぁ…」
「予想より遥かに美人だったじゃないか。それに、胸だって大きかったな。私のまな板とは…大違い…はぁ」
「自分でいって虚しくなるなよ。それに、今のオレには関係の無い話だ」
あれから十年も経ってんだ、あいつは結構変わってるだろうさ。オレだって、こんなに変わってしまったんだから。
「……すまない」
「なんでマルカが謝るのさ? 別にお前のせいじゃねーよ」
「だが…」
「やかましい!」
ウダウダとしている妹の頭にそれなりに力を込めた手刀を落とす。
「ぷべっ!」
「そんな事はいいから、さっさと飯食おうぜ。オレは腹がへった」
「ちょっと痛かったぞ」
頭をさすりながら、涙を滲ませ恨みがましくこちらを見やるマルカの視線を受け流す。
「作る、といいたいが、生憎とまだ材料を買ってきていないのでな、外食だ」
「よし、じゃあ行こうぜ」
よっこらせと、オレはソファーから立ち上がる。
「まて、カルマ。この辺の地図はどこに置いた?」
「食事処の場所なら既に把握済みだ。この近くにファミレスがあったはずだ」
「なぜ食事処だけはキッチリ把握しているのだ」
「紳士の嗜みだ」
そう言って、さっさと着替えを終えたオレ達は家を出た。
◆◆◆
私は、剣道部の部活の帰り、ファミレスにいた。
月曜のこの時間帯は家に帰っても誰もいないので、晩御飯はいつもここで済ませている。
「いらっしゃいませー」
カラン、とドアの開く音がして、店員の元気な声が聞こえてくる。
「久しぶりに来たな、ファミレス。といってもまあ、小学校入る前だから、よく覚えちゃいないけどさ」
「コレがファミレスか。私は初めてだ」
その声は、今日一日、私の思考を独占し続けた少年の声だった。
彼らは私に気付いていないようで、少し離れた所の席に座った。
「マルカ、なに食べたい? 千円以内な」
「じゃあ、この《スペシャルデミグラスハンバーグセット》が食べたい」
「ばかやろう、千より0が一つ多いじゃねえか」
「む? 見間違えたか?」
「ったく…オレは普通のハンバーグセットでいいや」
「なら私もそれだ」
マルカちゃんは意外とフランクと言うか、落ち着いた……いや、じじくさい喋り方をしている。
「ふー、うまかった」
いまだハンバーグと格闘中のマルカちゃんをよそに、既にカルくんは完食していた。
「それより…はむ…カルマよ……むぐむぐ…ふふひはふぉうふぉんふぁほは(薬はもう飲んだのか)?」
「食べながら話すな、ちゃんと飲み込んでから言え」
その言葉に、マルカちゃんはゴックンという音が似合いそうな動きで飲み込む。
女子として、それはちょっとダメだよ、マルカちゃん。
「カルマ、ちゃんと薬は飲めよ」
「わかってるって」
薬? カルくん、どこか悪いのかな?
「うへ、やっぱ苦いなぁ」
「良薬口に苦し、だからな。しっかり飲め」
「へいへいっと……ん?」
薬を飲もうとした彼が、私に気づいたようだ。
「おー、確かクラスの…」
「ああ、そう言えば」
カルくんとマルカちゃんが、話しかけてくる。
「朝霧 日向って言うの。よろしくね、二人とも」
私は、自己紹介をする。
「おう、よろしく」
「よろしくお願いします」
二人とも挨拶をして来るが…やはりカルくんは、私を覚えていないのだろうか。それとも、本当に只の他人の空似なのかな?
そんな事を思った時、私の胸の奥がチクリと痛んだ。
◆◆◆
びっくりした。いたのかよ、ヒナタのやつ。
しかも薬を飲んでる所までみられてしまった。
おそらく彼女は、オレが幼なじみの『カルくん』だと言うことに気付いているはずだ。
しかし、だからこそ、巻き込まない為にも、他人のフリをしなくては。
「朝霧 日向って言うの。よろしくね、二人とも」
彼女の前では、徹底して初対面を貫いた。
その時、彼女はとても寂しげな表情になり、オレは一瞬、全てを吐露してしまいそうになった。
――だめだ。巻き込んではいけない…――
そうだ、オレは彼女を巻き込みたくない。
だから、早くオレの目的を、日本にきた目的を達成しなくては………。
次は来週になります。
しばらくは一週間更新ですが、そのあとは亀更新になると思います。