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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第二章 決意
49/100

Resolution:20 情報

今回はガッツリ説明回ですが、飛ばさないでいただくと幸いです。


翌朝の早朝、不意に目が覚めたオレがリビングに降りると、親父がソファーでテレビを見ていた。


「こうして見ると、休日の親父だよな。今日は平日だけど」

「あはは、朝から辛辣だね」

「ところで親父」

「なんだい?」

「この間から気になってたんだけど…………『トガナ』さんは、どうしたよ?」


 トガナ。それは親父のビジネスパートナーであり分身体の名前だ。

 そう、あの事故の日、オレだけではなく親父も屍魔人(しかばね)になっていたのだ。

 分身は基本的に本体の側を離れない。一度だけ、オレとマルカが離ればなれになったことがあるが、その時オレは死にかけた。つまり、オレ達、屍魔人(しかばね)は、分身とも本体とも離れられないのだ。


 だから、聞いた。


「彼女は今、職場にいるよ」

「職場? 倒産したのに?」

「酷いなぁ…………ほら、僕新しい仕事に就くって言ったじゃないか。そこにいるよ」

「離れても大丈夫なのか?」

「うん、なんか大丈夫だったみたい」

「適当だな、おい」

「多分、この町内なら離ればなれでも大丈夫なんじゃないかな?」

「危ないな…………」

「心配してくれるのかい?」

「いや? オレとマルカの行動範囲が増えるかなーって」

「冷たいねぇ…………まぁ、また今度会えるさ」

「そうか、ならいいんだ」


 オレがそういうと、親父はオレの顔を真面目な顔で覗いて来る。


「なんだよ」

「カルマ君、君は、魔人とこれからも戦い続けるつもりかい?」

「なにをいまさら…………」

「僕は知っているよ。君の(からだ)が、もう限界に近いって」

「それは…………」

「それでも、戦うのかい?」


 確かに、(からだ)はもうボロボロだ。魄も残り少ない。戦わない方が得策だって、そんなことは知っている。でも、それでも、


「もちろん戦うさ」

「何故だい? あの事故の原因が魔人だったからかい?」

「それだけじゃない。ルルやキースを殺したのも魔人だし、それに託されたからな、アスカさんに」

「そうかい………それじゃあカルマ君。僕が知り得た情報を君に渡そう」

「へえ、毎日遊んでいるだけだと思ってたら」

「ねえ君ちょっと酷すぎやしないかい!?」


 ゴホン、と咳払いして親父は姿勢を正す。


「魔人の目的はね、自分達の創造主である魔神(アスラ)の復活」

「アスラ?」

「そう、魔人(イーヴィル)を創りし、生命の改変者、魔神(アスラ)。その力は死した者すらも甦らせるという」

「そんなことをしていいのか?」

「ダメに決まっているだろう、世界のバランスとしては」

「魔人はその魔神を復活させて、どうするんだ? そもそも、どうやって復活させるんだ?」

「沢山の魂と、〈代行者〉つまり、屍魔人(しかばね)の冥道の力。何故かは僕ではなく、彼らに聞くといい」

「魂!? 人間が殺られているってのかよ!」


 憤ったオレに、親父はそれだけじゃないさ、と言葉を繋ぐ。


「使えない、戦えないと判断された魔人も、その贄となっている」

「仲間を!?」

「いいや、カルマ君。勘違いしちゃいけない。彼らは基本的に仲間を持たない。それを今、魔神復活という大願成就のために〈代行者〉がまとめているに過ぎない」

「…………やけに詳しいな」

「倒産前に財力と権力とコネを使って調べまくったからね」

「それで潰れたんじゃないの?」

「いやいや、まさか…………多分」

「ダメだこの親父」


 親父が立ち上がり、


「まあとりあえず、そんな感じ。で、君は戦い続けると」

「勿論だ」

「…………はぁ、一人の親父として言わせてもらえばね、君にはもう戦って欲しくないんだが、言っても無駄だよね?」

「ああ、そうだな」


 それを聞いた親父はしばらく瞑目し、ため息の後顔を上げ、


「わかったよ。…………さて、そろそろ時間だし、僕はもう行くよ」

「もうか。早いな」

「遅れたらトガナに怒られちゃうからね」

「相変わらず、オレ達の分身は厳しいな」

「親子だからね」

「…………」

「なんだいその顔!?」


 そんなやり取りのあと、親父は荷物を背負い、玄関に立つ。


「それじゃあね、カルマ君」

「おう。さっさと出世して仕送り増やしてくれよ」

「ははは、お父様愛してるって言ったら…………」

「オトーサマアイシテルー」

「凄まじく棒読みだね?」


 そう言って親父はドアを開けて外へ出る。と、そこで親父は何かを思い出したように、ああそうそう、とオレを振り返る。


「カルマ君、こんな言葉を知っているかい? フランスの小説家、アーベルク・カミュの物語の一節なんだけどね」


 そう言って、その顔に笑みを浮かべ、


「『真実は、光同様に目を眩ます。虚偽は反対に美しい黄昏時であって、すべてを大した物へ見せる』ってね」

「は? どういうことだよ」

「さあね。ただ、これだけは言える」


 親父は一瞬笑みを深め、そしてオレに背を向けて、


「君が見ているもの、信じているものは、本当に真実(ホンモノ)かい?」


 そういうと、それじゃあね、と言って親父は歩いていく。

 オレは親父の意図が掴めず、ただ呆然とそれを見送った。


今回は親父がまともな動きをしていた…………だと!?

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