Resolution:18 帰ってきた日常
人生において、幸福と不幸は交互にやって来るものだと思っています。
翌日の放課後、オレとマルカはもう一度、剣道場に来ていた。
「…………昨日、そんなことがあったんですか」
「桐久保………」
佐伯先輩と梶原に事情を話すと、二人とも一度しか会ったことが無いはずなのに、悲しんでくれた。
何故か、それを嬉しく感じるオレがいた。
「それで君は、神聖術…………いえ、名付魔術でしたか? それを学びたいと?」
「でも、アタシ達は神騎でアンタは魔人じゃない。出来るの?」
確かに、梶原の疑問はもっともだが、それにヒナタが答える。
「多分同じだと思うな。魔人が魔力を練るのも、私たちが聖力を練るのも、なんだか似たような感じだったから」
「でも、桐久保君には魂術と言う人魔特有の技があるのでしょう?」
「いや、佐伯先輩、オレの魂術は冥道の力。強力ではあるけど、人魔の魂術と違ってオレみたいな屍魔人は、命、または存在とも言える魄を削って使うんだ。だから、連発は出来ない。」
「なるほど………」
「つまり、魂だけを削って使える名付魔術を覚えたいってわけね」
二人が納得して頷く。
「そーゆーこと。ああそうそう、マルカも一緒にやるからな」
「なんだと!? 聞いてないぞカルマ!」
「おいおいおい、何言ってんだよマルさん。オレとお前は文字通り一心同体だぜ? とーぜんだろ!」
「いや、体を動かすのはカルマだろう」
「魔力を操るのはマルカだぜ?」
「ぐ………」
よし論破。
オレ達の話が終わると、佐伯が手を鳴らす。
「ま、取り合えず、練習に参加してもらおうか」
「「は?」」
いきなり何を言い出すのだろうか、この人は。
「みんなー! 新しい戦力として、桐久保兄妹が入部するよ!」
「ちょ、まっ………」
「佐伯先輩!?」
オレとマルカの焦りの声は、次の瞬間、轟音に掻き消された。
「うぉぉぉおおおおお!!!! マルカさぁぁぁぁああん!!!」
「きゃぁぁあああああ!!!! カルマさまぁぁぁあああ!!!」
「…………なんだろう、スッゴいデジャヴ」
「カルくん、それはきっと、別の世界線で………」
「いや、運命探知の能力は持ってなねぇし、世界線も越えてねぇ」
そのとき、殺気を感じた。
群衆の影から、そいつは見事にオレの死角に入り込む。
そして、
「脳みそをぶちまけろ!」
「てめえはハラワタだぁ!」
回し蹴りが、見事にそいつの腹に突き刺さる。
「ほげぇ!」
「おいこら! またかよ!」
「チクショウ………朝霧先輩とイチャコラしやがって」
「嫉妬だな。カルマ、またヤっていいか?」
「何をだ?」
「愚問だな。無論、スプラッタ映像さ」
「スプラッタか………うん、よし殺れ」
「やめて御願い! …………ひ、あっ、アーーーー!」
よし、スッキリ。
「ふう、楽しかった」
「お前、神谷相手だとキャラ豹変するよな」
「きっと気のせいだ」
「しかし、死んだか?」
「さあ?」
「死んでねぇえ! いや死にかけたけど! チェストォ!」
「アブね!」
「フフフ、いつから俺が死んだと錯覚していた?」
神谷がどや顔をする。
なんか腹立つな、あれ。しかもなんか高い所に登って、今にも人がゴミだとかいいそうだ。
「ふははは! まるで先輩がゴミの様だ!」
「マルカ、あいつホールド」
「ラジャー、マイブラザー」
「え? な、動けねぇ!」
「あはは、バルス!」
オレは笑顔で二本の指をめり込ませた。
「ぎぃやぁぁぁああ! 目が! 目がぁぁぁぁあ!」
「アンタ、容赦ないわね、桐久保…………」
「何しやがる!」
「あ、復活した」
「早いわね!」
地面をのたうち回っていた神谷が勢いよく起き上がり、オレを指差す。
「桐久保先輩、一対一で勝負だ!」
「え、やだ」
「…………」
「…………」
「三文字で断られたーーーー!」
「いや違ぇよ、『、』も入れて四文字だ」
「そうだった!」
「論点そこ!?」
みんなの突っ込みが見事にハモっていた。
「く、取り合えず、チェストォ!」
「取り合えずってなんだ取り合えずって! 真剣白羽取り!」
オレと神谷のつばぜり合い(?)が始まった。あれ、おかしいな? オレ今日なんのために来たんだっけ? 魔術とか習うためじゃなかったか?
するとそこへ、もう一つの影が現れる。
「そいやー!」
「がふえ!」
神谷が飛んでいく。
ゴロゴロゴロ! ガッ! ゴッ! ズザザザザァ、どっしーん!
転がり跳ねて滑って、壁に激突する。
「飛んだな、ヒナタ」
「うん、飛んだね、カルくん」
「あれは何メートルだ、マルカ?」
「少なくとも五メートルは行ったな」
「不憫な奴だ」
所で、と、オレは神谷を吹き飛ばした人物に目を向ける。
「カルマ義兄さま、ご無事で!?」
「ようキース、何でここに?」
オレの質問に答えるように、佐伯先輩がキースに話しかける。
「あ、君がキースリア君だね? 入部届けはちゃんと受け取っているよ」
「ちょっと待て! キースは中等部だぞ?」
「うちはね、中等部と高等部が合同で練習してるんだ」
「そういうことです、カルマ義兄さま!」
そう言って、キースが笑う。
その笑顔に、男どもが見とれている。
…………………なんか、ありがたいな。
昨日の事を表に出さぬよう、懸命に隠しているつもりだが、自信がなかった。でも、周りがいつも通りだから、オレもいつも通りにできる。
だから、本当にありがたい。
こればかりは神谷にも感謝………
「桐久保先輩、誰ですかその美少女! またアンタのハーレムか!? 夜道に気を付けろよ!」
………したくないな。
取り合えず、一発殴って、説明せねば。
はぁ、今日も素晴らしく騒がしい、平和な日だな。
あんなことされてますが、神谷後輩はれっきとした人間です。
今回、パロがやたら多いです




